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オンライン・プレイヤー  作者: 牛さん
はじめての・・・冒険!
9/14

はじめてのだっしゅつ

ユカリ「ところで、気づいたんだけど」

ノウン「またですか? 今度は何を気づいたんですか?」

ユカリ「私たち、武器持ってない」

ノウン「!」

ユカリ「どうしらたいいかな?」

ノウン「祈りましょう! 神が救ってくれますよ!」

ユカリ「自信ないなぁ」

ノウン「そうか、あなたが神だった!」

ビービービー!


 けたたましいブザーが鳴り響いている。どんな作りで、こんな音が出るのやら(ちなみに、罠の仕組みはアナログだが、音は魔術で作ってある)。


「ふぅ。とりあえず、ここに居ても仕方ありません。扉を開けて、進みましょう! 願わくは、敵に出会わないことですが」


 私がそう提案する。ここに留まっていてもいいが、そこでおしまいだ。THe end. しかし、先に進めば何か打開策が見つかるかも知れない。今の我々には、それに賭けるしか無いのだ。


「そうね。先に進みましょう。冒険の果てに、栄光が待っているわ!」


 心強いお言葉を頂いた。冒険の果てが、死の果てにならないように祈ろう。


 扉を開けると、そこには、人工の階段があった。10段上った先にも、扉がある。そこから光が見える。さてさて、その光は、太陽の光か(夕方だけど)、どこかの部屋の光か(洞窟の中だろうけど)。


「ユカリ。あの扉の向こうは?」

「部屋ね。詰め所みたいなところだった。でも、見たところ、誰も使った形跡が無かったわ。ホコリだらけだったし。ベッドや机、イスも、朽ちていて、とても使い物にはなりそうも無かったし」


 うん。なんて、意味のないトラップだったんだ。ブザーが哀れだ。


 階段を慎重に登る。一歩一歩慎重に。敵が居ない可能性はある。だが、居る可能性だってある。まぁ、居たら、あのブザーで気づいているんだろうけど。


 扉の前まで来た。扉に手を当てて、向こう側の気配を探ってみる。


「そんなこと出来るの?」

「もちろん出来ません。気分です」


 そんなのが出来たら、村人Aさんたちに捕まる前に逃げています。


 聞き耳を立てる。判定に成功したかがわからないけど、物音がしないので、誰も居ないだろう。


 ゆっくりと、出来るだけ音を立てないように、扉を開けてみる。


 ぎぎぃー。


 そう。それでこそ扉だ。君はそのままの君で居てくれ・・・。


 そこは、3m×3mの小部屋だ。そこに、ユカリが言ったみたいに、机とイス、ベッドが置いてある。机は部屋の中心。ベッドは、ちょうど扉の正面にある壁側に置かれている。とはいえ、朽ち果てて使い物にはならない。


「さて、どっちへ進んだらいいんですか? ユカリ?」


 部屋は、右と左に続く道がある。どちらかが、出口に向かい、どちらかが、より奥へ向かうだろう。


「み・・・、いえ、左よ」


 大丈夫だろうか。右って言いかけたのでは無かろうか。怖い。


 結局は、言われたとおり、左へ進むことにする。どんどん進む。


 最初のころは敵が居るのでは無かろうかと思い、ゆっくりゆっくり進んでいたが、途中から、どうでも良くなってきた。だって、明らかに外には向かっていないんだもん。


 戻ろうかと思った。しかし、ユカリが、「奥へ進みましょう」と力強く言った。顔をのぞき込んでみる。冗談の表情ではなく、真剣なまなざしで、こちらを見返してきた。


 なにも言えい。私は貴方の(しもべ)。どこまでもついて行きますよ。




 しばらく、なだらかな下り坂になっている道を歩いて行くと、突然、大きな広間に出た。大きさは、高校の体育館ぐらいの大きさもある。天井も高い。こんな大きな空間が人の手でつくられるのか、と驚嘆する。


 壁には、等間隔にたいまつが掲げられており、この異様な広間を妖しく照らしている。


 なぜ異様かと言うと、その正面。祭壇があった。祭壇は生け贄の命を捧げる台のようだ。気持ちが悪くなる。


 そして、祭壇の奥の壁には、邪神ヴィックの神像が奉られていた・・・。


 邪神ヴィック。この世界は多神教だ。その中で邪神もなにも無いのだが、このヴィックだけは例外だ。


 理由は、その昔、ヴィック自身が「フハハハハハハ。私は邪悪な存在だ-」と、自分で宣言したらしい。実際に、悪いこと(いたずらのたぐい)をしたらしいのだが・・・。なんか、彼自身は憎めないんだよなぁ。昔話「泣いた赤鬼」の青鬼ちっくで。どちらかというと、後生のヴィック信者たちの方が、たちが悪い。本気で邪悪を象徴していて。


 で、今目の前にあるのが、たちが悪い方のヴィック像だ。


「ユカリ? どうしました?」


 ユカリがヴィック像をにらんでいる。目を赤くして。とっても悔しそう。


「ヴィック兄さんは、こんなこと望んでないのに・・・」


 ユカリさんは、いろんな神様と義兄妹の誓いを立てているのかも知れない。


「この像を破壊したい。手伝ってくれる? ノウン」

「もちろん。貴女がそう望むなら」


 さて、どうやって壊すかな。爆弾があれば簡単なのに・・・、と、私たちがやってきた通路から、話し声と歩く音が近づいてくるぞ。


「ユカリ、こっちへ」


 ユカリの手を引いて、できる限り目立たないように柱の裏に隠れるよう移動する。さらに、保険を掛けよう。


「シャイン? 我々を闇で包んで、できる限り、周りの風景と同化させてください」

「いいよー。で、なにしてくれるの? なにをくれるの?」

「そうですね。いろいろ考えましたが、ここから無事に出られたら、一緒に遊びましょう」

「やったー。いっしょに、あそぶーあそぶー」


 うれしそうで何より。どうやって遊ぶかは・・・未定。向こうから提案してくれるのを期待しよう。どうせ私は甲斐性なしだしね・・・。別に、悔しくなんか無いやい。


 ランタンの明かりを消す。しばらくして。


「生け贄が逃げたのは本当かね?」

「はい。そのようです。まだ駆け出しの神官だと思い油断しました。見張りを置かなかったのは誤りでした。私のミスです。申し訳ありません」


 そう言いながら広場に入ってきたのは二人組。一人は、背の高い、全身黒ずくめのローブを身につけた人間。男だろう。先ほどの声からすると。

  

 もう一人は、小さな女の子。かわいらしい服を着て、綺麗な銀髪を、肩ぐらいで綺麗にそろえている美幼女。カーミラ嬢だ。


「村人を使って、あたりをくまなく探させるようにしろ」

「ロイエ様。そろそろ、小麦や畑の収穫期です。これ以上、村人をそのようなことで使うのはご容赦を。冬を越せなくなります」

「それもそうだなぁ? だが、早く見つけたら、それでいいのではないのかね? まぁ、遅くなったらなったで、君のご両親が、食卓にのぼってもらえばいいだけのことだし・・・なぁ?」

「!」


 最後の部分は、わざわざ、しゃがみ込んで、カーミラ嬢の肩に両手を乗せて、顔をのぞき込むようにして言った。


 しかし、わかりやすい構図だなぁ。むしろ、私たちを騙すつもりで、演技しているのでは無いのか? というぐらい、テンプレートだ。


 話から推測するに、ご両親がローブの男、ロイエに捕まっている。それで、嫌々ながら、村人を洗脳したり、いろいろと悪さの片棒を担がされているのだろうか。


 牢屋の鉄格子もカーミラ嬢が細工してくれたのかも。感謝だ。何とかしてあげたいが。今の我々では、返り討ちだ。それでは意味が無い。


 そういえば、冒険者はどうなったんだろうか。もう村に到着していてもいいのだが・・・。


「村に冒険者が来たようだが・・・?」

「はい。洗脳度を薄くした村人で応対させました。さらに、私も直接出向き、あの話は虚言であることを説明しました。報酬はちゃんと支払われると言ったら、すんなり信じました。おそらく、今頃は帰路についている頃でしょう」

「そうかそうか。よくやった。だが、早く生け贄を捧げないと、ヴィック様からの加護を失ってしまう。他の神を信仰している神官を生け贄にすれば、よりよく加護を得られるだろうて。至急逃げた神官共を連れてこい」

「ロイエ様。今までどおり、羊や豚で、時には野菜を供物として捧げたらいいのでは無いですか? いままで、そうやってきたのではないですか。とうして突然、人間の生け贄だなんて・・・」


 ぎろり、とカーミラ嬢を睨み付ける。文字通り上から目線でロイエが言った。


「この前、ヴィック教団の定例会があった。その場での事だ。他の者が、どれぐらいの悪事を働いたと自慢をしていての。くだらないと、聞いていたが、向こうから言ってきたのだ。ロイエ殿は、どんな事をしてきたのかい? ってな。答えたさ。土を耕し、家畜を育てた。そいう営みこそが、本来のヴィック様の教えだと」


 ユカリも、うんうん、とうなずいている。私のヴィック教団の教えと全然ちがうんですが・・・。


「そう言ったら、笑われた。別に、笑われるのはかまわない。かまわないが、異端だと言われたのだよ。それだけは許せなかった。だから、私は異端では無い。その証拠を見せる。それだけだ」

「そんな、事で・・・」


 あぁ、目的と手段をはき違えちゃった人ですか・・・。信仰は自由だが、ときどき、こういった人が居るのが怖いんだよね、この世界・・・。私は正しい。正しいけど、周りの意見も尊重しちゃう。だから、周りの人が、正しいと言うことを実行しようとする人が。いままで通りでもよかったのに・・・。神を信仰する者として、気持ちはわかるが、もう少し、自分というものをしっかり持った方がいいと思う。ユニークスキル「神への抵抗」をもっている私が言うのもなんだが。


「どうせ一線を越えるなら! これ以上無く超えて見せる! 見ていて下さい! ヴィック様! 私はあなたに救われた! どうか、これからも私を見守って下さい!」


 叫ぶ。天に向かって。悲しそうに。


「そんなこと、ヴィック兄さんは、喜ばない!!」


 え? 何? 隣で大きな声が聞こえたよ?


「そんな方法、ヴィック兄さんを悲しませるだけよ!!」


 うわーい。ユカリさんったら☆


「なに?」

「え? あんたたち・・・。逃げてなかったの?」


 逃げたかったんですが。どうやら、クエスト名「受難の日々」の強制力は強かったようです。主に、神様に対して。さすが、神専用クエスト。


 さぁ、どうしよう?

カミラ「大どんでん返し、とはこのことなの!」

ユカリ「あれ? デジャヴュ」

ノウン「テンプレートで、安心クオリティですね」

カミラ「ノイエ様は、もともとは、いい人なの!」

ノウン「はいはい。そうですね」

ユカリ「そうか、ノイエさんが好きなのか。カーミラちゃんは」

カミラ「(ぽっ)」

ノウン「ロリコンめ」

カミラ「ノウンさんも人のこと言えないと思うの」

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