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オンライン・プレイヤー  作者: 牛さん
はじめての・・・冒険!
8/14

はじめてのろうや

ノウン「あの後、色々と計算してみたんですけど、腑に落ちないところがあります」

カミラ「(びくっ)ど、どこかしら」

ノウン「あの火の玉の魔術を使ったところです。ダメージ増強の付加もしていましたね。6歳のカーミラ嬢ではMP足らないはずなんです」

カミラ「(びくっ)あ、あれは・・・そう。私が持っていた革袋に、MPの肩代わりにする首飾りがあったのよ。それを使ったの! 泣き落としで落とせない冒険者用にと思って用意していた・・・。そう、それよ!」

ノウン「忘れていたアイテム説明も同時にしましたか」

ユカリ「作者の物忘れも酷いわね」

「そんな、カーミラちゃんがゾンビだったなんて・・・!」

「いえいえいえ。ゾンビではありません。むしろゾンビは居ないかも知れません。我々を釣る囮でしょうか」

「え? そうなの?」

「はい。あんなにかわいいゾンビはいないでしょ?」

「確かに」


 というわけで、我々はピンチである。


 カーミラ嬢が、まさかの裏切りにより、敵に捕まりそうです。林の中で。村人たちによって。


 じりじりと、手に農作業道具を持って、村人さんたちが包囲してきている。


 人数は3人。少ない。見くびられた者だ。


 その油断が命取りだ!


「ふっ!」


 短く息を吐く。下半身、特に左足に意識を集中。左足のかかとを軸にして、上半身を、くるっと、ひねる!



「「!」」


 カーミラ嬢とユカリが、驚愕するのがわかる。それもそうだろう。私が、よもや後ろ回し蹴りを使うとは、夢にも思うまい。


 左足にぐっと力をこめる。目の前に居る村人Aさんに向かって右足のかかとから小指に向かって足刀を作り、みぞおちにお見舞いする!


 「シッ!」


 短く気合いの息を吐く。


 足刀といっても、基本かかとをお見舞いする。足を伸ばし、かかとを伸ばすと、それだけで、足が固定されて、体重がかかとに乗りやすい。


「「!」」


 ふふ。カーミラ嬢とユカリが息をのんでいるのがわかる。ふふ。


 よし、しばらくは村人Aさんも動けまい。この瞬間を生かす!


 私の、華麗なる後ろ回し蹴りが、鮮やかに決まった!


 ぺこん。


 軽い音がする。村人Aさんが、まったく動じていない?! そんなばかなっ!


「うりゃぁー。とりゃー」


 ぺこん。ぺこん。


 ぜはーぜはー。こいつ、服の下に板金鎧(プレートアーマー)を着込んでいるに違いない!


「いえ。農作業服のままよ・・・」

「心を読まないで頂きたい!」


 くっ。なんてこった。物理攻撃が通用しないなんて!


「いえ。精神を操っているだけで、そんな手間のかかることはしていないわ・・・」

「ですから・・・」

「それに、攻撃を受けたら、自動反撃をするように、命令しているの。にもかかわらず、反撃をしない・・・。つまり、攻撃とみなされていないのね・・・」


 ユカリ様。そんな、残念な子を見るような目で、私を見ないで下さい・・・。


「つまり!」


 びしぃっ! っと、カーミラ嬢が私を指さしてとどめの一撃を放った。


「貴方の攻撃は、ダメージ(ゼロ)なのよ!」


 orz。


 ががーん。


 わかっていたことではありましたが・・・。


 やっぱり、筋力1は伊達ではなかった、ということか・・・。


 それでもっ! 私は、進まないと逝けないのだ!


「ユカリ! 私が囮になります、今のうちに逃げて!」

 

 ぺこん。ぺこん。ぺこん。


「さぁ、今のうちに!」


 ぺこん。ぺこん。ぺこん。


 くっ、足と、手が痛くなって来やがったぜ・・・。それでもっ! 私は、やめない! たとえ、手と足が、折れたとしてもっ!


 村人Aさん。「こいつ、どーしやす?」みたいな視線をカーミラ嬢に送るんじゃありません。


 そんな私に、業を煮やしたのか。


「いーかげんに!」


 カーミラ嬢が、私につつーっと、地面をなめるように走って向かってくる。


「しなさーい!」


 地面を蹴る。私と彼女には二倍とまでいかないが身長差があった。だが、彼女は、跳躍でその差を埋めたのだ!


 がすっ。


 手刀で、私の頸を刈り取った。意識が朦朧とする。そんな小さな手なのに・・・。さすがレベル31。格がちがったか・・・。


「体力1でしょ。ノウン・・・」


 ユカリまで、私の心のなか・・・を・・・。


 意識が闇の中に落ちていく・・・。





 

 目が覚めました。周りは真っ暗だ。何も見えない。本当の暗闇がそこに広がっていた。


 さて問題です。ここはどこでしょう。


 1,地獄という死後

 2,地獄へ向かう途中の死後

 3,牢屋の中という、もうじき死後にいく待機所。


 さて、どれでしょう。答えはもうじきわかります。


「なにくだらないことをやってるの? 早く、ここから出しなさい」

「すみません。いくら、『命令』でも、実行出来なければ・・・。あと、心をよm(ry」


 って、おや? こんな真っ暗な中、そう遠くない所から、ユカリの声が聞こえる。


「よかった。ユカリ。まだ、死んでいなかったんですね。というか、神が死んだらどうなるのか、ちょっと、知的好奇心がうずきますね!」

「そんな実験はしなくていいの!」


 はい。ごめんなさい。


「ユカリ。ここはどこですか? 普通の村に、ここまで光が入らない場所は無いはず。時間も、私の体内時計では、まだ午後4時過ぎ。夕方です。ここは村の中なのですか?」


 うーん。とユカリが考えている。どう答えるか考えているようだ。

 

「村から少し離れた林の中よ。そこに、よくゴブリンとかが、ねぐらにするような小さな洞穴があって、その中に、人工的な牢屋があった。というわけ。洞穴に手を加えたのか。洞穴がカモフラージュなのかはわからないぐらい、人の手が加わっているわ」


 説明ありがとうございます。説明キャラは私の役目ですので、立場が逆転したみたいだ。


「しかし、ここまで真っ暗だと、どうしようも無いですね」


 他灯明、自灯明(他人をよりどころにせず、自分自身をよりどころにしなさい)。ここでは、意味の無い言葉が頭に浮かんだ。灯明が欲しかったから・・・。


 あ。そういば。闇の精霊と仲良くなれるんだった。ここでこそ、そのスキルが生かされる。


「闇の精霊さん闇の精霊さん、私の言葉がわかりますか」

「・・・」


 ユカリが居る方から、かわいそうな人を見る視線を感じる。致し方ない。私自身もそう思う。


 話しかけて、少し経った。


 周りから、うふふ。あはは。きゃっきゃうふふ。と小さな子供たちの声が聞こえ始める。はっきり言って、怖い。


「あー。もしもし。聞こえますか」

(きこえるよ。きこえるよ。なーに? なーに? くふふふ)


「私は、ノウンと言います。精霊さんこんにちは」


 挨拶は基本ですよね。


(うふふ。こんにちは。こんにちは。私たちと話をできる人間なんてはじめてー。よろしくね。よろしくね)


 ふむ。根は良さそうな精霊さんたちっぽい。


 まずは。何を頼もう。とりあえず、こう暗いと何もわからない。現状把握のために、視界確保だろうか。


「精霊さん精霊さん。この暗闇でも、周りがわかるようにして欲しいんだけど。できますか?」

(いいよー。いいよー。かんたん。かんたん)


 おぉ。さすがだ。便利なもんだ。


(それで? それで? おにーさんは、何をくれるの? 何をしてくれるの?)


 はぅ。そりゃぁ、そうですよね。一方的にお願いを聞いてくれるわけがないか。


「MPをあげよう」

(おにーさん。MPすくないから。もらってもあんまりおいしくなーい)


 さすが、魔力1。素敵すぎる。


 魔石・・・もってない。宝玉・・・もってない。あぁ、どうしよう。これで、満足してくれたら、「今後ともよろしくなの!」とか言われそうだが。


 うーん。うーん。


「かいしょーなしの、おにーさん」


 誰が甲斐性なしか。だが、その可能性も否定できない。政治家のように、心の中で答弁してみる。


「モノよりおもいでがほしーの」

「!」


 なにぃ。こんなところで、18禁のめくるめく世界に突入か! 実は闇の精霊さんたち、実体化が可能という裏設定が・・・。


「きょう、おにーさんと、であったおもいでとして、ナマエがほしー」


 orz。


 あぁ。主人公やめたい。 


「名前ですね。えーと。うーんと」

「どうしたの?」

「あの。闇の精霊さんが、名前を欲しいとのことで、今考えています」

「それなら・・・。私たちがここから出してくれる、光明に導く精霊ということで、シャイニングから取って、シャインちゃんにしましょう」

「はい。断れません」


「君の名前は、シャイン・・・。でどうでしょう?」

(しゃいん。シャイン。うん! ありがとうー! ありがとー!)


 なにやら、名前を挙げた瞬間、私の周りを、飛び交う存在を感じることが出来るようになった。


 名前は契約の一種、というのをどこかの本で読んだことがある。名前一つで、人を(のろ)うことも出来れば、(いわ)うこともできる。それが名前だ。それを、もともと名前が無い存在に与えた。その意味は大きいのかも知れない。


ピコン。

【ユニークスキル:命名者 を入手しました。

スキル説明:アイテムやNPC(手懐けたモンスターも含む)に、名前を記入することが出来る。

スキル説明補足:名前を記入することにより、専有化することが可能。

スキル説明補足:専有化アイテムは能力が向上する】


 これはまた・・・。能力の向上・・・。魅力的だが、どれぐらい向上するのか未記載だ。まぁ、確認はあとですね・・・。


「暗闇でも視覚を得られるようにしてもらえませんか? シャイン?」

「了解ー」

「あ、私にも、その子の、シャインちゃんの声が聞こえた!」


 能力の向上を確認しました。これぐらいか・・・? 他にもありそうだ。楽しみ!


 しゅわん。という効果音が欲しいぐらいに、私の視界が一変した。暗視ゴーグルを覗いた感じ、と表現したら説明が楽できそうだ。


 周りを見渡してみる。


 それほど大きな牢屋ではなさそうだ。一人が入るには広いが、二人だと手狭。そんな牢屋だ。地面はむき出しの地面だし、壁も、レンガとかではなく、むき出しの壁だ(石のように固いけど)。鉄格子もさすがに、隙間から出るにはちょっと狭い。ちぇ。


 ユカリは私の入っている牢屋の向かい側に入れられている。手足を縛られたりしているわけではなさそうだ。ほっと、安心のため息をつく。

 

 残りの牢屋は2部屋。私の隣と、ユカリの隣。どうやら空室の模様。


 私とユカリの牢屋の間には通路がある。その通路は、私から見て右手に続き、5メートルぐらいで、見張り用であろうか、机が一つ、イスが一つ置いてある。そのすぐ横に扉が見える。おそらく、そこが階段で地上か、あるいは、洞窟へつながっているのだろう。


 机をよく見てみる。机の上には・・・ランタンが一つ。消えているが。消えていなかったら、闇の精霊さんにお願いしていない。


 さらに・・・。扉の横、机と扉の間ぐらいの壁に、わっかにぶら下がっている四本の鍵がみえる。


 


 ・・・。あやしい。怪しすぎる。あんな所に鍵おくかなー? スルーの方向で。


 となると、自力で脱出を模索しないと。この鉄格子が邪魔だなー。ゴツンと、一番端の鉄格子を、叩いてみる。


 グラリ。


 むむ。これは・・・。鉄格子を両手で握って、力を入れてみる。


 お? 動く。このままいけば・・・。


 ごとっ。っと、抜けた。鉄格子が。一本丸々。おや。ちょっと、これもおかしい。鉄自体さびているわけでもなさそうだし。罠かも知れない。けど、どうせ、生け贄になるのなら、その罠に飛び込むのも冒険というものであろう。


 鉄格子一本抜けるだけで、きつかったけど、通路へ抜け出る事に成功する。


 ユカリの牢屋も、同じかも。と考え、鉄格子を一本一本確かめてみる。すると、やはり、一番端の鉄格子が抜けるようになっていた。偶然では無いな。誰かの意図が働いているだろう。何はともあれ、ユカリを助けないと。


「ユカリ。助けにきましたよ」

 きりっ。


「あ、ありがとう。よく見えないけど、側に居るのね」


 そうだった、向こうは私を見られないんだった。


「手を引きます。途中、鉄格子を抜けますので、気をつけて」


 ユカリの手を握る。ユカリの手を握る。間違いじゃ無いよ。二回書いたんですよ。すべすべな肌。華奢な指。女性らしい手。ちょっとドキドキ。でも、それにかまっているよりも、先に脱出しないとっ! と、心を逸らす努力をする。


ピコン。

【ユニークスキル:誘惑の拒絶 を入手しました。

スキル説明:精神に作用する魔術を一切無効にする】


 やたー。これで、空気に流されて、一線を越す。とかのシチュエーションを回避できるね。く。べ、別に、期待していたわけじゃないんだからねっ!


 通路に出て、机まで進む。そうこで、机の上にあったランタンに気づく。これに火を付ければ、ユカリも一人で進むことが出来るだろう。荷物の中に火打ち石がいれてあったけど、今手元に荷物は無い。奪われたのだろう。


 と、火を付ける道具を探していたら、牢屋側からは見えなかったが、通路の奥に、他の、よくわからない道具と一緒に、我々の荷物も、無造作に置いてあった。ラッキー。良かった。


 ランタンに火をともす。今度、発火の魔法だけでも身につけよう・・・。ライターやマッチの存在を知っていると、火打ち石は大変だ。キャンプの時は、気にならなかったのに・・・。


 ランタンの、ほの暗い明かりが、周りを照らす。


「あ、鍵があったんだー! これを使えばよかったんだね!」

「ユカリ、その鍵に触らないように。恐らく罠ですよ」

「え? 遅いよ-。手に取っちゃった」

「え?」


 ユカリが牢屋の鍵を手に取り、掛けてあるところから取ると。


 ゴトン。


 と、鍵がかかっていた金具が、上に持ち上がって・・・。


 ビービービー!


 とてつもなく大きな音が鳴り響いた!


 あぁ、神様自ら、受難を招くなんて。さすが冒険者の神様だ! 


ユカリ「ふと、思ったのだけれど」

ノウン「世の中、思わない事が美徳だってあるんですよ」

ユカリ「ノウンって、格闘技スキル持ってた?」

ノウン「(びくっ)いえ。そんな物騒なモノは持っていません」

ユカリ「じゃぁ、なんで、あんな描写があったのかしら」

ノウン「さ、さぁ・・・。いえ。だから、ダメージが0だったんですじょ」

ユカリ「なんか、色々と、綻びが見えるわね」

ノウン「それを、自分でキャラに代弁させるとは。Mですね。作者は」

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