はじめての・・・冒険!
ユカリ「ノウン? どうしたの、そんな隅っこに逃げて?」
ノウン「いえ、やはり、戦闘描写は無理なんじゃ? と、思っただけです。やはり、勢いで書くには限度があります」
ユカリ「まぁ、この小説は九割九分勢いだからねぇ」
ノウン「残りの一分は?」
ユカリ「設定」
ノウン「少なっ!」
聖騎士、あるいは、聖戦士とも言われる存在。
過去数百年において、その姿を見たモノは居ない、とされている。
そりゃそうだろう。よっぽどのことが無い限り、僧侶が戦闘には参加しません。クエストに絡むとしたら、せいぜい、町から町への護衛でNPCとして出会う程度だ。
それ以外に出会うとしたら、毎週の祈りとか、毎日のお勤めとかに、参加したら出会うことは出来るだろうが、PCはそんなことはしない。よって出会わない。
PCにとって僧侶というのはそれほど縁遠い存在なのだ。
さらに、ユニークスキル「聖騎士」についての情報は出回っていない。そして死にスキルだ。持っていたとしても使えない。
何分か経過したら、それだけで、死の危険がつきまとうのだ。100分以上なら確実に死ぬ。
そして、聖騎士で死んだら、それは、神に命を捧げたと同位だ。つまり、死から甦ることも出来ない。
よって、誰も使わない。だから、誰も知らない。
だが、私は、躊躇しない。
護るために。
まばゆい光が私を包む。その光が私の表面を覆う。どうやら、私のレベルが低いようだ。防具としての形を作れないでいる。だが、相手はデーモン。光属性だ。私の頭をつかんでいた手から、煙が立ちこめる。聖水を掛けられた悪魔のように。
頭から手の感触が消える。
私は、地面にうずくまり、相手の動向をうかがう。
奴は、私をつかんでいた右手を押さえている。手のひらから、白い煙が立ち上っている。本当にやけどをしたのかも知れない。チャンス。呼吸と体勢を整え、ゆっくりと立ち上がる。
あらためて、自分の体に起きた現象を確認する。
立ち上がって相手に対峙をした瞬間、右手に武器が握られた。しかし武器もどうやら実体化出来そうも無い。光り輝く棒切れのようだ。長さはだいたい80cmぐらいだろうか。重さを感じないぐらい軽い。筋力の低い私には好都合だ。
盾は現れなかった。あっても使うほどの技量がない。もしかしたら、スキル使用者に合わせたのかも知れない。
「ぐぬぬ。なんだ貴様、なんなんだ貴様!」
大変ご立腹のようだ。いままで、雑魚と思って接していたら、がぶり、と手を噛まれたのだ。そりゃぁ、腹が立つだろうて。だが、手を噛む程度では済まさない。
(だいたい3mぐらいか。今ならいけるな)
聖なる棒(?)を半身で構えたまま、左足に力を込め、その力を解放する。奴との距離を一足で詰める。
そこから、棒で袈裟切りにする。
「ぐぬぬぬ。速い!」
ち。避けられるか。だが、終わらない。躱されても、棒はとっても軽い。だから、着地した同時に、さらに踏み込みながら、下から切り上げる。今度は両手で。力一杯だ。
こんどは逃がさなかった。奴の左足から右肩に掛けて、棒で切り裂く。形状が棒なので、切り裂くことは出来なかった。でも光の属性には弱いのだろう。その一筋から、煙がもうもうと、出ている。
「貴様ぁ! 貴様ぁ! 貴様ぁ!」
どうやら、頭の方が賢くないようだ。助かる。ここで、冷静に分析されて、私個人の技量を判断されたら、やばい。
いったん距離を離された。ちぃ。攻撃の手を緩めたくなかったのに。
奴の手から、禍々しい形の剣が現れる。うはー。剣と言うよりも、肉切り包丁を大きくしたような形だ。なんとなく、血で汚れていそう。
「ぶしゅー!」
気合いの声なのだろうか。私に向かって、その肉切り包丁を上段から振り下ろしてきた。私の棒で受けることは無理だろう。
ドゴン!
広間一帯に、とてつもない大きな音が鳴り響く。
奴の肉切り包丁が、地面をうがった音だ。
私は、肉切り包丁が振り下ろされるのに合わせて、棒でいなしたのだ。杖術ではよく使われる技だ。いなしながら、歩を進めて、相手の内側に入る。そうして、棒でもって、相手の手首に向かって、思いっきり、振り下ろした。
「ぐぎゃー。痛ぇ。痛ぇ」
どうやら、戦闘中は、言語能力が低下するようだ。
あれ? 戦闘が始まってから、私、言葉を発していない気がする・・・。
そんな、バカなことを考えているから罰が当たるのだ。
「ぬん!」
レッサーデーモン閣下が、そのでかい図体を利用して、タックルを仕掛けて来た! これは躱せない。
「ぐっ」
私の体は宙を舞い、壁に激突した。
息が詰まる。頭がくらくらする。目が回る。なんてこった。体がダメージを受けることに慣れていないのだ。あぁ、やばいやばい。足に力が入らない。なんて情けない!
「ぐひひひ!」
そんな品の無い笑い方をしながら近づいてくる悪魔さん。ちゃっかり、肩口から、煙が立ち上っているので、触れただけで、ダメージを与えたことになっているようだ。これで、相打ち。いえいえ。こちらは動けない。
「これで、おしまいだなぁ? 俺の様の勝ちだ。安心しなぁ? すぐに、そこの神様も、送ってやるよ?」
頭に血が上るのがわかる。
体よ、うごいてくれ!
「これでもくらいなさい!」
カーミラ嬢の声が響き、レッサーデーモンに対して、純粋の魔力をたたきつけた。ようやく魔術を行使できるタイミングを見つけたのだろう。不意打ちでもあったのか、かなりのダメージを与えたようだ。私の目の前まできておいて、その動きを止め、倒れるのを耐えているようだ。
「こいつでどうだ!」
まだ、力が入りきらないものの、右手に握っている棒で、足を思いっきりたたきつける。
はぅ。ちゃんと、握れなかったのが災いした。たたきつけた後、その衝撃で、手から離してしまったのだ。
地面に転がり、そのまま空気に解けるようにして消えていった。
「あぁ・・・。なんてこった・・・」
ずしん・・・。
ん? 視線を目の前に移すと、とうとう、耐えきれなくなったのか、足を折り、膝で立っている状態だ。
ちょうど、私の目の前で。無防備な体をさらしている。でも、私は武器を持っていない。
「そんな、趣味はないが、致し方ない!」
奴が動き出す前に行動に移さないと!
がばっと、今持てる力を振り絞って・・・、奴に抱きついたっ!
「うぎゃー!」
私の全体が光に包まれて居るわけだ。つまり、体全体が武器そのもの。気持ち悪いとか言ってられない状態だ。ただただ、離さないように、死にものぐるいで抱きついた。
いつまでそうしていたのか・・・。
気付いたら、ユカリの膝枕をされていた。びっくりだ。
私の横では、レッサーデーモンが倒れていた。全身から白い煙が出ている。そうして、そのまま消えていった。無事に倒したようだ。最後は、かなり、ずるかったけど。
「もう・・・。無茶をして・・・」
私を覆っていた光の粒子が、空に舞いながら、消えていく。
私を覆っていた光だけでは無い。
足のつま先、髪、いや、私の体全体が、光の粒子となり、消えていった。
「私は、ユカリを護れましたか?」
「うんうん。ちゃんと、護ってくれたよ? だから、どこにも行かないで、これからも、私を護ってよ・・・」
「そうですか、よかった。こんな私でも、護れたんですね」
ユカリの後半部分のお願いは聞けそうに無い。
私は、どうやら、聖騎士状態が長かったようだ。
賭けには勝った。ただ、もう二度と、ユカリには会えなくなるだけだ。
悔いは無い、とは言えないが、今の私には、充足感で満ちていた。
「ユカリ。泣かないで。せっかく、眩しいぐらいの笑顔が似合うのだから」
「いや! まだ、冒険してないでしょ? 何最初のクエストで死んでるのよ! これからでしょ!」
そんなに泣かないでほしい。私も、未練が残ってしまう。
「お願いがあるんですがいいですか?」
「なに? なんでも言って」
「ユカリと出会った時に、貴女から言われた事を、言い直すだけですよ」
「えっと。なんだっけ」
「私にキスをしてください」
さすがに、ちゅー、とは言えない。恥ずかしい。
「うん・・・。わかった・・・」
ユカリが目を閉じ、顔が近づいてくる。
私の唇と、ユカリの唇が触れあう直前。
私の体は光の粒になった。
ノウン「もう少し、書こうと思ったのですが、本日(九月四日)仕事で失敗をしてしまい、その影響で・・・」
ユカリ「言い訳ね」
カミラ「いい訳ですか」
す、すみません。
戦闘描写勉強します。