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オンライン・プレイヤー  作者: 牛さん
はじめての・・・冒険!
10/14

はじめての・・・

ユカリ「カーミラちゃんと、ロイエさんの関係は?」

カミラ「将来の夫婦です」

ノウン「いえいえいえ。そうでなくて」

カミラ「ちっ。村で先生をしています。さらに、魔法とか、いろいろと、こちらの事を教えてもらっていました」

ユカリ「そっか。そこで恋に落ちたのね」

カミラ「(ぽっ)」

ノウン「今は、残念な人になってますけどね」

 逃げるに逃げられない状況。


 人生において必ず訪れる試練。人によっては受験であろう。人によっては結婚であろう。人それぞれに決断を迫られる。立ち向かう、あるいは、逃げるかを、時限付きで選択しなければならない。


 保留。というのは、一番してはいけない選択肢の一つだ。状況がより悪化する。良くなることは滅多に無い。決断は早ければ早いほどいいのだ。


 時間が解決してくれないのだ。こればっかりは。


 


 

 まぁ、ここまで言っては何だが。選ぶことが出来る、という状況は恵まれていると思う。


 世の中には、その選択肢すら表示されない事もある。


 今の私たちが、まさにそれだ。 


 そう。「立ち向かう」しかないのだ。


 我が神が、宣戦布告しちゃったんだもの。おぉ。これが本当の「聖戦(ジハード)」だ。


「あ、今、ユニークスキルもらっちゃった」

「当ててみましょうか? スキル名「聖戦(ジハード)」でしょう?」

「え? 何でわかったの?」


 わからいでか。問題は、その内容か。


「えーと。スキルを発動すると・・・。死が怖くなくなります。だって。よかったね」

「ガクガクブルブル」


 なんて、恐ろしいスキルだ・・・。


「何を言い合っているのかわからんが、おとなしく生け贄になるのだ」

「ロイエ様、あの者たちだけは許してあげください! 私と同じ世界の人なの!」

「ええい。うるさいうるさい。こうなったら、評価が下がるが、あの方にお願いするしか無いか・・・。契約の元、おいで下さい! ヴィック様!」

「!」


 どうやら、我々のことを、過大評価して頂いているようだ。


 隣で、ユカリが息をのむのがわかる。そりゃぁそうだろう。神を降臨させるのだ。かなり高位の僧侶で無ければ無理だ。しかも、呼び出す神様が義兄妹の誓いをした相手となれば、なおのことであろう。


 ロイエさんが、印を結び、懐から出した瓶に人差し指を入れて、空中になにやら魔方陣を描き出す。止めたいけど、遠い。むりっぽい。


「カーミラ嬢! ロイエさんを止めて下さい! 今ならまだ、引き返せる! それに、ロイエさんを止められるのは貴女しか居ないはずだ!」

「え・・・でも・・・。どうしよう」


 こういうときに限って、優柔不断なんだから☆。二律背反なのはよくわかりますけど。


 そうこうしている間に、広間の空気が重くなった、気がする。若干空気が澱でんできたような・・・。


 ロイエさんが描いた魔方陣が独りで動き出す。広間の中央まで飛んでいったかと思うと、地面に落ちた。そうして、ゆっくりと、垂直に登っていく。その、魔方陣が過ぎていったところから、爪が立派な獣のようなつま先が、毛むくじゃらな足が、赤黒い胴体が、丸太のようにでかい腕が、そうして、悪魔のような形相の顔が、角をもった頭が出現した。頭まで出した魔方陣は、そのまま空気へ解けるようにして消えていった。


「おぉ。ヴィック様・・・。お待ちしておりました!」

「え? ヴィック様、こいつが?」

「ん? ヴィック兄さん? あれが?」

「おや? ヴィック様ではないんでは・・・?」


「フハハハハハハ。ようやく、儂の出番か。ロイエよ、よくやった。アレなら、生け贄一千人分すらも凌駕するぞ!」

「はは! ありがたきお言葉!」


「ロイエ様・・・。そいつは・・・」

「こら! カーミラ。神様に向かって、そいつなんて。ヴィック様申し訳御座いません。後で、きつく叱っておきます」

「よいよい、気にするな。大事の前の小事である」

「寛大なご配慮、ありがたく!」


 あぁ、ダメっぽいなぁ。もしかしたら、ロイエさん、洗脳か、それに近い精神汚染受けてそうだ。


 それに気づいたのかカーミラ嬢、ぶつぶつと、なにやら唱え始めた。時間を稼がないと。そう思った矢先。


「そこのレッサーデーモン! 敬虔なヴィック兄さんの信徒を騙し、さらに、カーミラちゃんまで、こき使わせるなんて、ゆるさない! 私がここで成敗してやる!」


 威勢がいいなぁ。かっこいい。実力が伴っていれば、なお良いのだが。


 過程はどうあれ、向こうの意識はこちらに向いた。カーミラ嬢とアイコンタクトを取る。細かい連携は無理でも、何とかしてくれるだろう。


 カーミラ嬢が、なにやらぶつぶつと唱えて、ロイエさんに向かって走り出す。そうして、私が受けたように、身長差をモノともせず、ロイエさんの頸・・・ではなく、頭に触る。


 途端、びくっと、ロイエさんの体に、電気が流れたように痙攣をして、そのまま意識をなくしたように、膝から地面に倒れかかる。倒れる寸前、その体は小さなカーミラ嬢によって抱きかかえられ、その場を離れるように、広間の隅っこへ移動する。


 その間、レッサーデーモン閣下は、にやにやしながら、私たちと、カーミラ嬢を眺めていた。余裕ですね。しゃくに障るぜ。


「まぁ、十分楽しんだしな。哀れな子羊ちゃんは、ご退場願おうか。くひひひ。人間というのは、本当に愚かで面白いなぁ。やめられん。そして、今回は、神様が生け贄だなんたなぁ。ついてるぜ。レッサーから、グレーターに昇格できんじゃね? くへっへっへっへ」

  

 きっ! とレッサーデーモンを睨み付けるカーミラ嬢。怖い前に可愛い。


「・・・許せないわ。やっておしまい!」

「あらほらs・・・げふげふん。くはー。空気が悪いみたいだ。咳き込んでしまった」


 それを見ていたレッサーデーモンさん。おもしろおかしそうに言った。


「そうだなぁ。気丈な女の子を、いたぶっていたぶって、最後に、殺して下さい! と懇願させるのもいいなぁ。見てみたい。ようし! まずは、こいつらで、あそんでやらあ!」


 と、大きな無骨な指を、パチンと鳴らす。なんと、地面に十個の魔方陣が突然現れて、骸骨(スケルトン)が召還された。


 ピンチ! 


 こういう時こそ祈ろう! 助けて神様!


「うーん。そう言われても」


 く。神が隣に居るのに。


「ごめんなさい。まだ、力が弱い神様で」


 いえ。そんなことは・・・あるけど、しょうが無い。


 しかし、僧侶なら、アレをもっていてもいいのでは無いか。そう、アンデット系に、よく効く、例のアレ。実に欲しい。神様おねがい!


 じりじりと、骸骨どもが近づいてくる。スキル「聖戦(ジハード)」中なので死ぬのは怖くないけど、それとは別に、ホラーとして怖い。


 このままだと、ユカリを守れずに死んでしまう。それが一番怖い。なんとしても避けたい。なにか方法は無いものか。アレさえ手に入れば!


ピコン。

【ユニークスキル:ターンアンデット を入手しました。

スキル説明:死者属性のモンスターを退散させる。】

 

 来た! 待ってました!


 ここで、使わないでいつ使う!


「死者どもよ! えーと・・・。ターンアンデット!」


 いい言葉が思い浮かばなかった。ちゃんと、考えておこう。


 両手をかざす。柔らかな光が、骸骨たちにふりそそず。そうして・・・。


 くるっ。くるっ。くるっ。


 と、方向転換をして、通路の方へ進み、そのまま退場していった・・・。


「あぁ、こっちのターンか・・・」


 つまり。地面へ還る(ターン)ではなく、方向転換(ターン)の方か・・・。昔のTRPGにはあったんですよね。通称赤箱に入っているソロシナリオで、愕然とした記憶がありますよ。


「うわっ! こいつらなんだっ!」

「くっ。隠れているのがばれたのか! やっちまえ!」


 おや? 通路の奥から声が聞こえるぞ? さらに、剣劇が聞こえ始めた。


 ふと、カーミラ嬢と視線が合った。にっこり笑って、かわいらしい右手をぎゅっと握って、小さな親指を立ててから、首をかききる仕草をして、親指を上向きから下向きへと、くいっと・・・。あぁ、ごめんなさい。そんな、ロイエさんの精神汚染を解除中にも関わらず、そんなことするなんて。


「ああ! もう! せっかく、冒険者に小芝居打ってもらって、こっそりきてもらったのに!」


 色々とごめんなさい。「受難の日々」クエストは、どうやら、私も駒の一員のようです。


「おやおや。遊んでいる時間はなさそうだなぁ? 仕方が無い。終わらせるか」


 ずしん。ずしん。と一歩一歩近づいてくる。


 ユカリの前に立って、せめて盾にでもならないと。


「ユカリに指一本だって、触れさせるもんか!」


 ずしん。とうとう、目の前まで来た。私の後にはユカリ。ユカリの後ろは壁。カーミラ嬢も何か呪文を唱えているが、どうやったって間に合わない。それに、多分MPがない。ロイエさんの回復で手一杯だったはずだ。期待はできまい。


「ユカリ。すぐに逃げて下さい。おそらく、通路の奥に冒険者がいますから」


 返事を聞く前に、レッサーデーモンに飛びかかるが。


「はいはい。雑魚はさっさと、死んでくれ」


 頭を、その大きな手で、わしずかみにされた。片手だけで。


 足が地面から離れた。ミシミシと、頭が押しつぶされる感覚を味わう。


「こら! ノウンを離しなさい!」

「ユカリ・・・逃げて・・・」

「ノウンをおいて逃げられるわけないでしょ! そんな事をする神がどこにいるのよ!」


 涙がでる。感謝ではない。


 悔しくて。自分自身に。


 悲しくて。護ってあげられない事に。


 苦しくて。何も出来ないこんな自分に。


 怒りで。護ることも出来ない存在意義の無い自分に。


ピコン。

【ユニークスキル:聖騎士化 を入手しました。

スキル説明:戦闘中聖騎士になる。

スキル説明補足:戦闘終了後、聖騎士化の時間に応じて成功判定をする。

スキル説明補足:100分以上は100%即死(判定不可能)。それ以下の時間であれば、一分(端数切り捨て)ごとに1%づつ減少していく。一分未満であれば0%。】


 私は迷わない。神を護るのだ。


カミラ「ノウンさん、(おとこ)ですね!」

ノウン「いやー。あっはっは。照れます」

ユカリ「途中が残念ではあるけどね」

ノウン「でも、次回戦闘入るでしょうけど。戦闘って苦手なんですよね。描写が」

ユカリ「大丈夫よ。戦闘以外も苦手でしょ?」

ノウン「ごもっとも」


がんばります。

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