希望の光、みつけたキラリ⭐︎
【1】
ズンチャカズンチャカ♪
『ロドリゲス丸川の!異世界転生チャンネルぅ!』
テテレテーテテッ♪
みなさんごきげんよう!異世界転生系ムーチューバー、ロドリゲス丸川だ!
人生で6回も異世界に飛ばされて帰還してきた俺が、今日はみんなに異世界に飛ばされた時、まず最初に何をすべきか教えておこうと思う!
最も優先すべき事は生きる事!覚えておこう!
『ひとつ目!今自分が立っている場所を見ろ!』
そこがマグマの上、剣山の上なら1発でお陀仏だ!気をつけろ!
『ふたつ目!近くにいる原住民に敵意は無いか!』
俺は何度か刺された事があったぜ!
突然現れた謎の人物を歓迎する奴なんてそうそういないからな!因みにその時に受けた傷のひとつが臍の横に残ってる!
『みっつ目!自分の体は人間のままか!』
人間のままなら良し!魔物の姿になってたら、無闇に原住民と接触するなよ!刺されるぞ!俺は一度スライムだった事もあったぜ!
その時のに刺された傷が右の尻に残ってる!
『よっつ目!その世界、言葉は通じるか?』
異世界の住人はだいたい日本語オッケーだ!でもな、元の世界の固有名詞の一部は、異世界では通じない場合があるぜ!発言には気をつけろ!
『いつつ目!所持品確認!』
いまや殆どの人が持ってるスマホ!こいつは当然使えない!俺が今まで飛ばされた異世界は何処も俺達の世界より文明が遅れてたぜ!電波なんて飛んでねーからな!誰とも連絡できねぇからって慌てんな!
『最後!むっつ目!』
自分の頬を力いっぱい抓る!もし痛かったら、夢じゃない!痛いって事!それすなわち…
お前はもう……転生している。
「い、痛い………」
何年か前に観た胡散臭いムーチューブを思い出し、私は自分のほっぺたを思いっきり抓りあげていた。
確かな痛覚が感じられ、これは現実に起こっている事なんだと実感すると、自然と涙があふれ出た。
「ろどりげすゔ〜」
目の前で困惑している青い髪の少女は、泣いている私に優しく声を掛けてくれた。
「あの…大丈夫ですか?ろ、ロドリゲスさん?」
自己紹介したんじゃねーよと、心の中で力無く突っ込んだ。
暫く固まっていた先生が、私をゆっくりと降ろしす。
よく見ると、先生の顔は青ざめていた。さすがのポジティブ明王もこの状況では混乱中のようだ。
「まずいぞ…明星…、どうやら僕達は……
パスポートを持たずに外国に来てしまったようだぁぁ!!どぉぉしよぉぉ!?」
あああぁ!と叫んで先生は両膝をついて頭を抱え込んだ。
…………やはり混乱中のようだ。
「…イヤ、問題そこじゃないって!!先生!もしかしたら私たちは、地震死んじゃって異世界に転生したかもしれないんだよ!」
自分より激しく取り乱してる先生を見て、私は少しづつ冷静さを取り戻す。まずは深呼吸だ。
鍛えてなくても酸素うめぇ。
落ち着くのよ!明星綺楽梨!まずは目の前の少女から情報を聞き出すのよ!
「あノ…ココはドコデスカ?」少女に質問をぶつけている最中、視界には中世のヨーロッパの山奥にありそうな木造の建造物群と、その他の人々が映り込み、無意識にカタカタになっている自分にきづき、、かぶりを振って、もう一度聞き直す。
「ここは、何処ですか?貴女は一体、何者ですか?」
あれ?この子、守田さんに似てる髪の色以外ソックリ…2Pカラーの守田さん?
守田さんと少女に失礼極まりない事を考えていると、少女は優しい口調で答えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。ここは、神がこの世界を創造した時、1番最初に造られたとされる、はじまりの村です」
何度かRPGをプレイした経験のある私は、既視感で背中がぞわぞわした。
…まさか、ここは、もしかしたら…
「私はこの村に住む召喚士、ハヤミといいます」
「貴方達二人の力をお借りしたく、この世界に呼び寄せました」
「突然こんな場所に呼んでしまい、申し訳ありません」
「お二人には早速、明日この村へやってくる…」
「ちょ!ちょっと待ったぁ!!」
一方的に話す少女を、両手を前に伸ばして制止する。
バリっバリ嫌な予感がする!召喚って?んで、明日がなんだって?
誰かが来るのだろう?きっとソイツはこのハヤミと名乗る少女と、村の人々にとって厄介な存在なんだろう?
「こ、コレは何かの間違い、そう!間違いが起きたのよ!私たちはアナタ達にとって有益な存在にはならないと思うよ!だって普通の人間だし!そもそも学校のオリエンテーリングの最中だったし!地震に巻き込まれたし!」と、あたふたと手を振りながらハヤミに私たちへ起きた事を説明していると、群がる人々を分けて長くて白い髭を蓄えた老人の男性と、鎧を着込こみ、赤いマントを羽織った吊り目の男の二人が現れた。
「長老、ミゲルさん…」
「おいおいハヤミ〜、この召喚は失敗なんじゃねーのかぁ?」吊り目の、ミゲルと呼ばれた男は、小馬鹿にした言い方でハヤミに近づく
ハヤミが男から目を伏せ、俯いた。
「お前、屈強なモンスターを召喚するって言ったよなぁ?なんだこの、ごぼう眼鏡とうずくまった肉団子は?」
こちらへ目配せしながらさらに嫌味を言う。
ごぼう眼鏡?私の事か…何こいつ、初対面なのに…
先生を肉団子と呼ぶのはいいけど、ごぼう眼鏡はかなりムカつく部類の悪口だわ。
「そ、それは…」返答に困っているハヤミとの間に老人が割って入る。
「まぁまぁ、勇者殿 ハヤミは今年召喚士の試験に受かったばかりの新米。大目に見てくだされ…」
長老と呼ばれた老人が言い宥めると、ミゲルは地面に唾を吐き捨てた
「チッ!まぁいい、明日来る魔王軍の攻撃を防ぐ壁にでもなりゃあ少しは使えるかもな…オラ!宴だぁ!俺様をもてなせ!明日の決戦に向けて英気を養うぞ!」
偉そうに悪態つきながら男は村人を数人従えて建物に入って行った。
勇者?あんなのが?私は怒りで自然と拳を握っていた。
てゆーか、そろそろ起きてよ、ポジティブ明王!
【2】
「わはははは!そう!ここの部位を大きく見せるポーズがサイドチェストだ!」
夜を迎え、村のみんなで卓を囲む中、わいわいと村人に囃されて先生は得意げにポージングを披露している。
昼間あんだけ落ち込んでたのに、この様…
それにしても、明日魔王軍が来るらしいけど、村の人達の余裕な雰囲気が気になる…
私はというと、まだ状況が整理できておらず、ずっとそわそわしたまんまだ。
ご機嫌な先生の横で正座して背中を丸めている私の元に、ハヤミが湯気の立つ飲み物が入ったマグカップを持ってきてくれた。
「これ、暖かいミルクです、よかったら飲んで下さい…」
「あ、ありがとう…」
ハヤミからマグを受け取り、礼を言う。
そして、まだ自分の名前を告げてない事に気付いた。
「ま、まだ私の名前、言ってなかったね、私は…ミョウジョウキラリ(現実ではない世界でもフルネーム言うの恥ずい)」
「そっちで筋肉講座してるのが、吉岡先生…」
両手に持ったマグに口をつけ、ずず…とミルクを啜る。立ち上がる湯気で眼鏡が曇った。
「ふたりは先生と教え子なんだね。
……キラリって、可愛い名前ね」
「え?」久しぶりに言われた言葉に驚き、ハヤミを見た。可愛い名前なんて言われたの、小学校低学年以来だよ…。眼鏡の曇りが晴れた先で彼女が微笑んでいる。
元気付けてくれてるのかな?
やっぱどこか守田さんに似てる。年齢、私と同じくらいかな?
「そ、そうかな…」
暫く沈黙が続いた後、ハヤミが口を開いた。
「…ごめんなさい…私が未熟なばかりに、間違えて貴方達を呼んでしまって…二人は明日の朝早くに、ここから逃げて」
「逃げるって、一体何処へ?」
「それは…わかりません…でも、ここ居れば、二人を魔王軍との戦いに巻き込んでしまう」
「逃げていいなら、そうしたいけど…アナタは大丈夫なの?戦うって、怖くないの?」
私の問いにかけに、ハヤミはある人を指差して、笑顔で
答える。
「大丈夫、この村には勇者ミゲルさんがいますから!」
ハヤミが指を向けた方には、昼間に悪態ついてたミゲルがいた。
下衆な表情を浮かべ、女の人にお酒を注がせてふんぞり返ってるいる。ここの人達が落ち着き払っているのはアイツが村にいるからなのね。そんな強そうにみえないけど…
「ねぇ、この世界の勇者って、どんな存在なの?そもそもアイツは本物なの?」
「…勇者とは、古の時代に悪いドラゴンの一族を全滅させた救世主様の末裔。
そして、この村の伝承には、村に厄災が降り注ぐ時、聖剣を携えた赤いマントの勇者が現れると伝えてられているの」
赤いマントと聖剣?確かに見た目はそれっぽいけど…
「勇者が持つ聖剣の鍔の部位には梟のレリーフが施されている。ほら、ミゲルさんが持つ剣にもそれあるの。間違いなく、彼は勇者」
遠目には判別し難いがなんとなく鳥のような彫り物がある。
「なんで…梟なの?」
「梟は神の使い、そしてこの村の守護獣。『福が来るから梟』とも言って、縁起が良い鳥としても村で信仰しているの。村では梟を模したお守りを皆んな持っているのよ。ほらコレとか」
ハヤミはネックレスの先の小さな木彫りの梟を見せてくれた。
梟、フクロウ…
暖かい飲み物を胃に流し込んだ事と、ハヤミと会話した事でなんだか考える力が湧いてきた。
まずは、元の世界に戻る方法を探すの最優先とし、
とにかく今はこの世界の事を知らなくては。
状況を整理すると…
私たちはハヤミの召喚魔法でこの村に呼ばれた。
此処は日本語が通じる。しかも『福が来るから梟』なんて、日本人が好みそうな駄洒落が使われている。
明日魔王軍なる者がこの村に来る。このままこの村に居れば、おそらく戦力にさせられるだろう。
昼も夜もある。月と太陽はひとつづつ、村の人達は人間のみ。屋外を照らす明かりは村の各所にある篝火、室内は油を使ったランプ。
文明は私たちが住んでる世界より少し前の時代なのかな?
持ってきたスマホは、電源は入る、画面の時計もちゃんと動いているが圏外表記。
他の持ち物はと、ナップザックの中身を全て取り出した。オリエンテーリングの冊子、水筒、弁当…
私は弁当箱を腿の上に乗せて包みをほどき、蓋を開けて両手で持った。
まだ手をつけていない弁当の中身の明太子入り卵焼きを見て、今朝の家族との会話を思い出した。
またポロポロと涙が流れ出る。
あの大きな地震…みんな無事なのかな?
「お母さん…お父さん…」自然と湧き出た涙が頬を伝ってこぼれ落ち、弁当の中身を濡らした。
「…キラリ……」
ハヤミが私の背中を優しく撫でてくれた。
「明星!家に帰れる方法を思いついたぞ!」
「ひゃっ!」
また急にデカい声を…
いつのまにか私の目の前で、目線の高さを合わせるように先生は屈んでいた。
「先生、か、帰る方法って?」
先生はニヤりと口角を上げた。
「日本大使館に向かうんだ!」
【3】
「日本大使館?」
そう聞いて私は落胆した。先生はまだここが、地球上の何処かの国だと思っているのかと。
「僕がこの村を見た所感だが、ここはアジアの国のどこかだと推測する!日本は150の国に大使館を置いてある!大きな街へ行けば必ず大使館はあるはずだ!そこで我々は迷子の旅行者として保護してもらうんだ!」
そんなもんがあるかと一瞬思ったが、在り得なくもない…
仮説だけど、もしかしたら私たちは、異世界に転生したのではなくて、あの巨大地震によって生まれた空間の裂け目にでも吸い込まれ、遠くのアジアの国に飛ばされたのでは?
かつてこの村が第二次世界大戦中の日本の領土の一部だったとしたら?
今でも彼らの間で日本語が継承され、使われている…とか、
………ハッ!
まさか、魔王軍はこの国の政府の隠語で、勇者は革命を企てる反乱者を意味するのでは!!!
「キラリ!戻れる方法があるんだね?」ハヤミの表情が明るくなった。
「その、タイシカン?て言うの?がよくわからないけど」
ロドリゲス曰く、『俺たちが知ってる固有名詞の一部は通じない!』
ハヤミは大使館を知らないのか…
「ハヤミ君!ならば大使館がありそうな大きな街を知らないか?」
「それなら…長老なら何か知っているかもしれません!ただ、あの方はこの時間は家でお休みのはずですが…」
今は早く情報を知りたい、でも私たちの都合で寝てる村の長を、ましてはお年寄りを起こすのは道徳心に反す…
「叩き起こしましょう!」
ハヤミは力強く言った。
ええ!?起こすの!?しかも叩いてまで!可愛い顔して容赦ないなこの子!
すかさず「助かる!」と吉岡先生
アンタ、そこは止めろよ!
「ま、待ってふたりとも、流石にそれは、明日聞けばいいのでは」
私が狼狽して止めようとするも、ハヤミは立ち上がった
「私たち村の都合に呼んでしまった二人が困ってるのなら、私は長老を無理にでも起こして、知ってる事を聞き出しますよ!」
「案内してくれ!ハヤミ君ッ!」
だから、遠慮しろ!お前本当に教師か!?
てか、この子もたいがい恐ろしいな…二人の熱意に身を竦ませたその瞬間…
バリバリバリバリ!ズガガガーッッ!!
閃光と轟音が鳴り響いた!
「ひゃああぁぁぁ!!」
突然の出来事に、私は頭を抱えて目を閉じ、身動きが出来なくなった。村人達の慌てふためく様子は耳からの情報で感じ取れた。
「敵襲!敵襲ぅ!魔王軍だぁぁー!」
村の入り口の見張りの叫びで瞼を開く
「そんな馬鹿なっ!!」
「うわぁ!起きろ!」
「女とこどもは隠れろ!」
「急げ!武器を持てぇ!」
蜂の巣を突いたような騒ぎとはこの事かと、さっきまで和気あいあいと語り合っていた村人達が慌てふためいている。
「来るのが早すぎる!…まさか!?」
ハヤミは杖を持って外へ飛び出した。
「ハヤミ君!」先生もすぐに追う仕草を見せたが、動けないでいる私に気づいて、ここに隠れていろとだけ伝えるとハヤミの後を追う。
窓の外を見るとゆらめく動くオレンジ色の光が見えた。
【4】
震える足でなんとか窓まで近づき、外を見ると一本の巨木がごうごうと音を立てて燃え盛っている。
そしてその炎の明かりが村中をくまなく照らしていた。
燃える巨木の前に人影……人の影?
違う、炎が照らしているのは…人ではなく、現実ではお目にかかれない異形の集団だった。
角の生えた毛むくじゃらの大男、背中に大きな羽が生えた口の裂けた者、下半身が蛇の女、長い牙と爪を持つ者、大きな斧を持つ豚の顔の者等…
アニメやゲームでしか見たことのない奴らが10ほど立っていた。3DCGのようなモンスター集団の中から、一匹の異形が、武器をもって待ち構えているハヤミ達村人へとゆっくり近づく。
「悪りぃなぁ、パーティの最中だったかぁ?」
あの迫力…コイツがこの集団のボスなのかな?
…なんて姿なの…
目が3つあり、背中には巨大な翼と、腰からは長い尻尾を生やし、刺青だらけの真っ赤な肌の上半身をむき出しにし、蛇のような形をした刃の槍を持っている。
見ただけで私の全身の震えは増した。
「あなた達がここにくるのは、明日の正午の予定だったはず!何故今日に!?」
恐ろしげなモンスターを前にしても、ハヤミは臆することはなく問いかける。
「別にいいじゃねぇか、いつ来たっても。どうせお前ら俺たちを歓迎する気なんてさらさら無ぇんだろ?ほら、現に臨戦体制じゃねえか」
3つ目のモンスターが槍の先端をハヤミに向けた。
「ぐっ…」鋭い刃を目の前に突きつけられたハヤミは身動きできずにいる。
「いい情報を仕入れたんだ…だからよぉ、予定を早めて来ちまったんだぜぇ、なぁ、居るんだろ?
この村に…勇者が…いや、俺達魔竜族の仇敵!
『ドラゴンランペイジハンター』の子孫がっ!」
え?
ドラゴン、ランペイジ、ハンター?
それって…お父さんの…
モンスターの口から放たれた意外な言葉に驚嘆した私の脳内で、今日起きた出来事、全てが繋がった!
ロドリゲス丸川『所持品確認!』
私はすぐさまスマホの写真アプリを立ち上げる。
「スクショ!スクショ!スクショ!」
そう何度も呟きながら、震える指で写真を探す。
夕月零くんの画像に紛れて、探している攻略サイト画面の写真が数枚見つかった。
「あった!ドラゴンランペイジハンター戦記2!」
続く




