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30歳まで童貞を貫いた結果、魔法使いになった  作者: 小雨


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1/7

ep.1

有村裕二ありむらゆうじ、二十九歳。独身。

それに加えて、童貞。


どうして僕は、こんなにも拗らせてしまったんだろうか。


いや、タイミングはいくつかあったはずだ。

僕の計画通りなら、彼女だってできていたはずだった。


世間一般で言うところのスペックは、決して低くない。

エリートと呼ばれる部類の会社に勤め、身長も平均以上。

顔だって――少なくとも鏡を見る限り、致命的ではない。


それなのに、どうして。


原因はおそらく、この根暗で陰キャ的な思考の性格だろう。

それに加えて、男らしさもなければ決断力もない。

優柔不断の極みだ。


こんな男を、いったい誰が好きになるというんだ。


今日は、僕が三十路に足を踏み入れる記念すべき日だというのに、

部屋には僕一人しかいない。


同僚たちは次々と結婚していき、

僕だけが取り残されたような気分だった。


いったいいつまで、こんな時期を過ごすんだろうか。


壁に掛けた時計の針が、淡々と動き続ける。

短針と長針が重なり、午前零時を指す、その瞬間を待ちながら。


——その時だった。


ガーン、ガーン。


この部屋で鳴るはずのない、鐘のような音が響き渡った。


「……おいおい、何だこれは」


内心焦りながらも、冷静でいようと心音を抑える。


しばらくして音は鳴り止んだ。

時計を見ると、ちょうど零時になったばかりだった。


零時になるタイミングで、今の音が鳴ったのか。

そう考えてみても、どうにも腑に落ちない。


スマホから聞こえたわけでもない。

確かに、リアルな鐘の音だった。


いったい何だったんだ、今のは。


超常現象? ……いや、そんなわけないか。

おそらく幻聴だろう。あまりにも非現実的すぎる。


死神が宣告に来た、なんて笑えない発想まで浮かんだ自分に、

少しだけ嫌気がさす。


気を紛らわせるように、冷蔵庫へ向かおうと立ち上がった。


——その瞬間だった。


理解できない情報が、雪崩のように流れ込んでくる。


時間にすれば、ほんの一瞬。

それなのに体感では、数か月、いや、数年分の“何か”を

一気に押し込まれたような感覚だった。


今まで感じたことのない、とてつもない疲労感が全身を襲う。


あれ、これ……やばくね。


(た、倒れ……る)


ふふ、明日休みで良かった。


そんなことを思いながら、僕は意識を手放した。









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