【7】
静かな夜。虫の音が響き、星が美しく輝いている。
晩は冷えるので、毛布をかけて寝ていると、急にガタンという音がした。
ー何? 何?
驚いた凛が目覚めると、他の家族も気づいたらしい。騒がしくなってきたので、床から出ると、音のしたほうへ向かう。定が灯りを持っており、大雅と兄の清が厳しい顔つきで紙を手にしていた。
ーもしかして…。
店の入口を見れば、石というか、岩に近い大きさの石が落ちている。大きな音の正体はこれかと知る。
「お父さん」
大雅に声をかけると、彼は紙を隠そうとしたが、凛はそれを許さない。手を伸ばし、
「私にも見せて」
と言うと、兄の清が怖い顔で言う。
「お前は気にしなくていいの」
「はぐらかそうとしても駄目」
ぴしゃりと言うと、大雅が諦めたようにため息をつき、
「それがー」
紙を凛に見せてくる。そこには「これ以上、玉雅巳に近づくな」と書かれていた。凛は驚いて食い入るように紙を見る。
「これは…。一体、誰なの!?」
今までの投げ文よりも具体的に人物の名前が出ているのが、驚きだった。ということは、雅巳のことを知っている人物の仕業ということになる。
ー雅巳さんを知っている人…? 誰なの?
唇を噛みしめていると、定も口を開く。
「こんな夜に何かと思えば…。物騒な」
「誰の仕業だ、全く!!」
清が怒りながら髪をかく。犯人が分からず、悔しいようだった。大雅がため息をつき、紙を叩く。
「具体的な名前が出ているのが特徴だな。凛、何か知っているか?」
「私? えっと…」
雅巳がそう言えば、視線を感じると言っていたことを思い出し、それを家族に伝える。皆、驚いたように目を開く。それから凛に対し、言ってくる。
「凛、雅巳と一緒にいる時、気をつけなさい」
「そうね。危ないと思ったら、散歩をやめなさい」
「そのほうがいい。父さん、母さんの言うことはよく聞け」
「…。はい」
少し考えて答えたのは、犯人を捕まえようと考えていたからだった。ここまで喧嘩を売られて逃げるなんて、何だか悔しい。
ー絶対、後悔させてやる!!
汚い字で書かれた紙を見、心に誓う。先に喧嘩を売ったほうが負けだと思い知らせなければならない。
ーでも家族を心配させないようにしないと。
本気で心配しているのが伝わってくるので、凛はありがたく思う。本当にこの家族で良かったと安堵する。
「とにかく気をつける。ありがとうね」
凛が努めて明るく言うと、皆、力をぬいたようだった。それを見、安堵した凛は紙を見つめる。
ー雅巳さんを知っている人物か…。これは大きなヒントね。
犯人的には警告のつもりなのかもしれないが、凛からすると逆に教えてくれたことになる。墓穴を掘ったなと思いつつ、一応、雅巳にも伝えたほうがいいなと考える。
「とりあえず、これは私が預かっておく」
大雅の言葉に、皆、うなずき、解散したのだった。




