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【17】

「ー大変だ、大変だ!!」

甘味処で休んでいた凛は、何事かと息の荒い青年を見る。常連客だと知り、白湯を飲むのをやめ、耳をそばだたせる。

「どうしたんですか?」

美加の落ち着いた声に、青年は意を決して言う。

「子どもが死んだらしい!! しかも路上で急に倒れ込んだんだって!!」

「まあ!! それはそれは」

美加が驚きの声を上げ、雅巳を見る。彼も何かを感じたのか、

「見に行ってもいいですか?」

と真面目に告げた。凛も真顔になって言う。

「私も行く」

「…。しょうがないわね」

美加は手を頬に当て、息を吐き出すと、告げてくる。

「行ってらっしゃい。詳しいことが分かったら、私にも言ってね」

「はい!!」

2人ははっきり答えると、常連客から場所を教わり、向かったのだった。

「ーここか」

2人がたどり着くと、人だかりができていた。

「失礼します、失礼します」

間をぬうように前に出、そして光景をまざまざとみる。

「…。これは…」

10代くらいの少年が眠るように倒れ込んでいた。

ー尊い命がなぜ?

将来があるのにと思うと同時に「あ」と声を出す。

「…どうした?」

「あの…その…この子…!!」

見覚えのある顔だった。忘れもしない、皿に欠けたところがあるとか、文句を言いに来た子だと決定づける。

ー何でこの子が…!!

知っていると思った途端、何とも言えない感情が湧いてくる。今、役人が調べており、何かに気づいたようだった。

「…それ!!」

少年の胸元から紙が出てきて、凛は声を荒げてしまった。何と紙には、「死ね」と書かれており、間違いなく脅迫文だった。字も同じである。

ー何のために…? この子、誰?

頭が混乱してきた。文句を言っていた子が何だって、投げ文なんてしたのだろうかと疑問が浮かぶ。雅巳にそのことを告げると、

「ー何なんだ? どういう意味だ?」

彼も戸惑っているようだった。さらに役人の言葉に驚く。

「これは毒殺だな。刺された傷なんかどこにもない」

「ー毒殺!!」

こんな若い子がなぜと思った。雅巳もぽつりともらす。

「毒殺…? …まさか」

心当たりでもあるのか、おし黙る。すると周りから情報が得られる。

「貧しい家の子らしいよ。何か最近、仕事が見つかったって喜んでいたようだけど」

「そうなの? でもなんで毒なんか…。滅多にあるものでもないのに」

「いや毒なんか色々なところで広まっているよ。ただ表に出ていないだけさ」

「そうかい。恐ろしい、恐ろしい」

身震いする男性を見、凛は複雑そうに顔を歪める。

ーまさか、見つかった仕事って、投げ文のこと?

そう思った途端、怖くなってきた。金のために、こんな小さな子どもが犯罪に手を染めるなんて、世の中、狂っていると首を横に振る。それを雅巳に伝えると、彼は深刻そうに眉根を寄せる。

「人間自体、狂った生き物だからな。何を考えているか分からないし、どんなことをしようとしているのか知る由もないんだよ」

「狂った生き物…」

急に寒気を感じ、二の腕を擦る。投げ文の犯人はこの少年で間違いと確信し、これからは安全に眠れるかもしれないが、さらに疑問が浮かぶ。

「誰か毒なんかー。自殺ってことは…?」

「まだ脅迫文を持っているのに、自殺なんかするか?」

「それは…。そうね」

何だか事が複雑なような気がして、凛は額に手を置き、落ち着かせる。雅巳も考え込んでいるのか、ぽつりともらす。

「毒か…。…」

2人は無言で少年の遺体を凝視する。何とも無残な最期だと思い、凛は手を合わせる。いたたまれない雰囲気に、2人は「行こう」とどちらからでもなく歩き出したのだった。

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