表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滲む足跡──濡れた影が囁く夜  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/15

第1話 スーパーでの怪異

「よろしくお願いします」


深々(ふかぶか)と頭を下げながら、由美は背筋(せすじ)を伸ばした。


久しぶりの仕事。結婚(けっこん)してからというもの、家計(かけい)を支えるために節約(せつやく)(はげ)んできたが、そろそろ娘の教育費(きょういくひ)を考えなければならない。

旦那(だんな)収入(しゅうにゅう)だけでは不安(ふあん)があった。

そこで見つけたのが、家から徒歩圏内(とほけんない)のスーパーのパートだった。


仕事内容(さぎょうないよう)はレジ打ち。

単純作業(たんじゅんさぎょう)ではあるが、久々(ひさびさ)仕事復帰(しごとふっき)に少し緊張(きんちょう)していた。


「こちらこそ。何かあったらすぐ聞いてね」


店長の佐藤がにこやかに笑う。

50代(なか)ばの(おだ)やかな男性で、長年(ながねん)このスーパーに(つと)めているらしい。

他のパート仲間(なかま)もほとんどが主婦で、みんな親切(しんせつ)だった。


──けれど、初日(しょにち)から少しおかしなことがあった。


◆レジに立つ女

()れない手つきでバーコードをスキャンしていると、ふと、視線(しせん)を感じた。


レジの列には何人(なんにん)かの客が(なら)んでいたが、その中に、(みょう)な女がいた。


30代くらいだろうか。

細身(ほそみ)で、色の()けたような白っぽいワンピースを着ている。

髪は長く、顔がよく見えないほどにうつむいていた。


「……いらっしゃいませ」


由美が声をかけると、女はわずかに顔を上げた。


その瞬間(しゅんかん)心臓(しんぞう)()ねる。


目がない──いや、黒く(つぶ)れている。


まるで目の部分だけが(かげ)になっているかのようだった。


由美は思わず手を止めた。

何かの見間違(みまちが)いか? 

目をこすり、もう一度見ると──女の顔は普通に(もど)っていた。


(気のせい……?)


そう思いながらも、ざわざわとした不安が胸の奥で広がっていった。


◆ロッカー室の(ささや)き声

シフト終わり、ロッカー室で荷物(にもつ)をまとめていると、どこからか声が聞こえた。


「たすけて……」


耳元で(ささや)くような、かすかな声だった。


びくりと身を固くする。

ロッカー室には誰もいない。

風か何かの音だろうと自分に言い聞かせ、ロッカーを閉める。


ふと、壁にかかった(かがみ)が目に入った。


──そこに(うつ)る自分の肩のあたりに、誰かの手の影が伸びていた。


咄嗟(とっさ)に振り向く。

でも、何もない。


「……気のせい……だよね?」


そう(つぶや)いて、急いでスーパーを後にした。


◆自宅での異変(いへん)

「おかえり」


帰宅(きたく)すると、娘の美咲(みさき)がテレビを見ながら(むか)えてくれた。

旦那(だんな)はまだ帰宅していない。


「今日、初日(しょにち)どうだった?」


「うん……まあまあね」


(みょう)なことがあったとは言えず、適当に流した。

夕飯(ゆうはん)を作りながら、やっぱり気のせいだったのだろうと考える。


──しかし、その夜、違和感(いわかん)は家の中にも広がっていく。


夜中、ふと目が覚めた。

(となり)では旦那(だんな)寝息(ねいき)を立てている。

(のど)(かわ)いたので台所(だいどころ)に行こうと布団(ふとん)()け出した、そのとき。


ギシ……ギシ……


廊下(ろうか)の先、娘の部屋の前で、何かが動いている気配(けはい)がした。


(美咲? トイレにでも起きたのかな)


そう思い、そっと(ふすま)を開ける。


──誰もいない。


娘は布団(ふとん)の中でスヤスヤと眠っている。


では、さっきの音は何だったのか。


背筋(せすじ)がぞくりと冷たくなる。


そして翌日(よくじつ)、由美はスーパーでまた、あの女と出会うことになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ