初めてのお友達
「私は、神官のモリスと申します。魔力属性検査室にご案内致します。」
「ああ、よろしく頼む。こちらを。」
そういうと、ギルベルトは神官に重そうな何かを渡した。
「いつも、ご贔屓に。神の御加護があらんことを。」
お父様、今お金渡したのかな。どのくらいお金かかるんだろう。
「ウィリアム、ここは広いから迷子にならないように手を繋ぎなさい。」
「はい、お父様。」
ウィリアムとギルベルトは手を繋いだ。神官に案内されている時、キョロキョロと辺りを見回しウィリアムは初めて見る神聖な場所に目を輝いていた。
うわぁ、中結構広いんだ!それに、僕と同い年くらいの子もここで働いているのかな。みんな同じお洋服着てる。
『ヒック、ヒック』
ビクッ
ウィリアムと同年代の男の子が父親らしき人と手を繋ぎ、ポロポロと涙を流しながら部屋から出てきた。
『…も立派な属性ではないか。』
びっくりした。どうして、泣いているのかな。この子も僕と同じくらいだからきっと属性検査に来たんだよね。検査って注射みたいに痛いのかな。血採るの?
「おぉ、ギルベルトではないか。」
泣いている子と手を繋ぎながら、その男はお父様に話しかけた。お父様、この人と知り合いなのかな。
「久しいな、ロザン。」
ギルベルトも挨拶を交わしている。この人は、ロザンさん?
「そちらの子が、ウィリアム君かな。」
不意に、ロザンと言われる男性が僕の方に視線を向けた。
「ウィリアム、ご挨拶を。」
そう言うと、ギルベルトは繋いでいた手をそっと離した。
「は、はい。お初にお目にかかります。ウィリアム・ヴェスターと申します。」
ウィリアムは、貴族であるため基本とした礼儀作法は身につけていた。
「初めまして、ウィリアム君。俺の名前はロザン・アルベールだ。君のお父さんとは旧友なのだよ。」
お父様いわく、アカデミー時代からのお友達だと言っていた。階級は、伯爵位を授かっているって。
「ヒックヒック」
「おっと。もう、泣き止め。」
ロザンは、泣いている子の頭を優しく撫でた。
「どうして泣いているのですか?検査は、痛いものなのですか。少しなら、我慢できるのですが…。」
ウィリアムは、気になってロザンに聞いた。
「いや、検査自体は痛みを感じるものでは無いから安心して。この子は、自分の検査結果、属性が納得いっていなくてな。」
「ヒック俺、"闇属性"と"火属性"だったんだよ。」
「闇属性?」
確か、闇属性は光属性と一緒で稀有な存在だったよね。でも、犯罪に手を染める人が多くて後ろ指をさされるって。それで、属性に納得いってないのかな。僕にとっては、とっても凄い事なのに。
「闇属性って、とっても珍しいんだよね!」
「ヒック…え?」
「闇属性を持つ人って少ないんでしょ。凄いなぁ、それに火属性でもあるって二刀流じゃん!かっこいい。」
「そ、そうかな。」
俯いていた顔が少し元気を取り戻したかのように上がった。
「うん!かっこいい!」
「えへへ、嬉しいな。」
ウィリアムが自分の気持ちを素直に伝えると、恥ずかしそうに嬉しがっていた。
「ありがとうウィリアム。俺の名前は、イグニスだ。よろしくな。」
イグニスは、ウィリアムの事を良い奴判定していた。
「よろしく!」
「ウィリアムの属性が分かったら、今度教えて。」
「うん!」
ウィリアムとイグニスは友達になった。
ウィリアムはこれから、魔法属性検査があるのでアルベール家とは別れた。
「お兄様、僕に初めてのお友達ができたぁ。」
ウィリアムは、目を輝かせながらルーカスに報告した。はしゃいでいる様子を見て、ルーカスは微笑ましいと思っていた。
「良かってわね、お友達とは仲良くするのよ。」
お母様は、僕に仲良くするように言った。でもそのつもり!前世では、友達なんていなかったからすっごく嬉しいな。
闇属性と火属性を持ってるなんてイグニスはかっこいいな。僕にはどんな属性があるのかな。
「こちらが魔法属性を行う部屋でございます。中に入ると、神官長がいらっしゃいますのでそちらの指示に従ってください。」
モリスさんとは、ここまでなんだ。
「はい、案内してくれてありがとうございます。」
ウィリアムは、律儀にお礼を言った。
神官のモリスさんは、そう言うと大きな扉を開けてくれた。