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僕、転生!?

「…と…みこ…尊!尊!頑張って…頑張ってっ。」


清水尊は、母親の声が聞こえ重い瞼を開けた。


「尊、大丈夫だからな。お父さんとお母さんがついているからな。」


苦しいよ、痛い。辛いよ、お父さん、お母さん。


尊は、幼いころから難病を患っており幾度となく難しい手術を行ってきた。

昨日も、容態が急変し緊急手術を行ったばかりであった。


「…今日の夜が峠です。」


医者が、重々しい雰囲気を漂わせながら両親に伝えた。


「でも、今、目を開けて、あ開けて、そんな、そんなことって…、あ、あんまりよ。」


尊の母親は、泣き崩れた。


「どうにか、ならないんですか。」


父親は、尊の容態が良くならないのか聞いた。


「こちらでは、どうすることも。申し訳ございません。」


「…あなたを、責めている訳では無いのですよ。」


父親は、自分の不甲斐なさに掌で顔を覆った。その手の下には涙を見せないよう、堪えていたのかもしれない。


どうしてらお父さんとお母さん泣いているの。僕は、大丈夫なのに。これくらいなら、まだ、頑張れる。


泣かないで、お母さん、お父さん。


尊は、力の無い弱々しい手で母親の震える手に触れた。

もう、手に力が入らないため握ることは出来なかった。


「尊…。」


母親は、尊の手を握り父親も頭を撫でた。


お母さんとお父さんの手、あったかくて落ち着くな。あれ、少し眠くなってきた。まだ、起きてたいんだけどな。


そんな様子を見て、両親は顔を見合わせて頷いた。


『尊。』


両親は、尊の名前を呼んだ。


「尊、よく頑張ってきたね。…もう大丈夫。安心して眠ってもいいんだよ。」


「尊、お母さん達の元に生まれてきてくれて…ありがとう。」




『これからも、ずっと大好き__。』


両親は、尊が長くないことを悟り子供が最期の時を安らかに迎えられるように深い愛情を込めて尊に伝えた。


お母さん、お父さん。

僕も"だいすき"だよ。これからも、ずっと…。


尊は、安心して微かに開いていた目をゆっくり閉じた。


尊がいなくなった病室から、啜り泣く泣き声が響いていた__。








あれ、ここはどこなのかな。僕は、死んじゃったのかな


『お待ちしておりました。』


「誰ですか?」


「僕は、神様。」


神様?やっぱり死んじゃったんだ。


「とっても言い難い事なんだけどね、君は本来違う世界に生まれるはずだったんだよ。」


「え?」


違う世界ってどういうこと?


「本当に申し訳ございません。ぼ、僕が尊くんの魂を間違えて入れてしまったんだ。それで、尊くんの病気がずっと治らなかったのも僕のせいなんだよ。」


僕の病気が治らなかったのって神様のせいだったの。そんなの、酷いよ。


「この世界に存在しないものが居続けたために、異物を排除しようとする力が働き、君を病気にしたんだ。僕の間違いで…。」


神様は、尊があまりにも不幸で言葉が詰まってしまった。


「お母さんとお父さん、僕の病気のせいでずっとつらい顔してた。僕だって、外で思いっきり遊んで見たかった…のに…。もう、会えない…。」


「うん、うん。本当にごめんなさい。」


神様は、謝ることしか出来なかった。

尊は、両親を想って涙を流した。


「それでね、尊くんが本来入る予定だった世界に僕が連れていくね。そこには、尊くんのご両親みたいに優しい家庭が待っているんだよ。」


「急に、そんなこと言われても、ヒック…わかんないよ…。それに、お父さんとお母さんは…。」


「尊くんのお父さんとお母さんがこれから幸せになれるように、僕がお手伝いをする。」


「本当?」


「うん、だから尊くんも幸せになろう。」


「…わかった、連れて行って。」


「了承してくれてありがとう。僕からの加護をささやかだけど贈らせてもらうね。」


そう言うと、神様は尊の額に指をあてた。


あ、お母さんとお父さんの手みたいにあったかいな。


尊は、再び目を閉じた。


『幸せになるんだよ___。』





あれ?体が痛くない。手が動く。


目を開けたら、知らない女性がいた。

あれ、手もむちむちだ。赤ちゃんの体だぁ!


「まあ、目を開けたわ。」


あれ。この女性は、誰なんだろう。


「リズ様の方を、じっと見ておられますよ。」


「初めまして、私は貴方のママよ。」


お母さん?この人が僕のお母さんになるの?


「あぅ あっ」


あれ、声が上手く発せられない。

そうだった。僕、今赤ちゃんなんだった。


「ふふ。よろしくって言っているのかな。もう少しでパパとお兄ちゃんが、来るとおも…。」


ダッダッダ バンッ


男性と小さな男の子がドアを勢いよく開けた。


わぁ、近い近い。


二人は、顔を近づけてきた。


「目を開けたんだなっ。」


「わぁ、小さくてとっても可愛いです。」


「ルーカスもこのくらい小さかったのよ。」


リズと呼ばれる母親に抱かれていたが、先程来た男性に渡された。


「パパだぞ~。しっかりとこの顔を覚えるんだぞっ。潰してしまわないか心配だな。」


「ぼ、僕も!見たいです!」


父親は、少年に見えるように屈んだ。


「よろしくね、僕はルーカスお兄ちゃんだよ。」


お兄ちゃん!前世では兄弟がいなかったからちょっと嬉しい。父親は、ぎゅっと抱き満天な笑顔をしながら上に掲げた。


『お前の名前は、"ウィリアム・ヴェスター"だ!』


ウィリアム・ヴェスター。

それが僕の名前か、いい名前だよ!


これからは、沢山遊んで、沢山友達を作るぞぉ!



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