表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

染みを増やす日々

「君のソナタ」でも書きましたが、1回ボツにしたので投稿が遅れました。(ブックマークつけてくれてた人ごめん)


先に書いておくとあとがきは長いから読まなくていい

「じゃあ白雪れむの事任せましたよ。」

「なんで私が相手してやんなきゃなんないのよ…アイツでもいいじゃない。」

「そのアイツが僕たちと一緒に行動するって話しましたよね?」

とあるホテルのとある部屋、そこで悪態をつく隔多里(へだたり)整井(ととのい)が何とかなだめている。何故そんなことをしているのか、それは桜走(おうわし)の裏切りと残り人数の大幅な減少に対応しようと、認目(したため)が周辺警戒とこの世界、及びゲームの謎を調べようと提案したのが昨日の事だったからだ。現在認目、羅和(あみら)、整井の三人がしばらく拠点を離れようとしており、必然的に白雪れむの監視ができるのは隔多里のみ。その上先の態度を見れば説明は不要だろうが、隔多里は白雪れむのことを嫌悪している。隔多里が現状に不満を持つのは致し方のないことだった。そも何故に隔多里は白雪のことを嫌うのか、それを最も説明しているのは彼女の能力だ。『万有斥力の蓄積リレーション・テクトニクス』自分を除く万物を拒む隔多里にとって、昨日会ったばかりの人物に接触しなければならないというのは何とも気に食わないだろう。ましてや元アイドルのくせに男性恐怖症だということも。現に白雪とホテルに来てからただの一度も会話を交えていない。部屋の隅でうずくまって認目の名前を不定期につぶやくのみの白雪をまるでいないものとして扱っていた。

「とにかく頼みましたからね。」

昨日の今日で隔多里に臆することのなくなっていた整井は心底面倒くさそうに扉を閉める。反論の間に合わなかった隔多里が呆然として立ち尽くし、白雪が黙ってそれを見つめている。遂に周りから男性がいなくなったことに気づいたのか、それから数分して白雪が隔多里に声をかけた。

「なんかごめんね。」

か細い声だったが嫌に静かな狭い一室では十分な声量で、隔多里は突然の出来事に再度硬直した。

「何に対する謝罪かわからないけれど、喋れるならもっと早くそうしてもらえるかしら?」

「変なしゃべり方…」

通り魔のような口撃にぷつっと頭の血管の切れるような感覚を抑えるが、そんな彼女を前にしても白雪はそれ以上何も言わなかった。憤った隔多里を恐れているのではなく、只管に興味がないような素振りだ。

気まずい沈黙はそれからも続き、いよいよ隔多里がドアノブに手を添えたとき、もう一度白雪が口を開いた。

「それはダメ、綴に部屋にいろって言われてる。あなたが従わないなら力ずくでもとも。」

「そう、私を止めれるつもりなの?そういえば昨日も獅海馬児(しとどに)の腕を凍らせてたわね。あれをするつもり?」

昨日の一件から実のところ隔多里は白雪をひどく警戒していた。もし白雪が『なんでもいいから物を凍らせたい』と渇望する変態でない限り、ただ物を凍らせる能力は存在しえない。無論それも羅和の考察が正しいという前提の上ではあるが。ともかく『相手に触れることなく動いている人物の腕という局所的部位を凍らせられる能力』を白雪が持っていることは確かなのだ。相手が近づいてくる必要がないなら隔多里に対抗策はないが、腕を狙ったのではなく効果範囲が狭いのなら逃げれるとも踏んでいた。

「そうだけどそうじゃない。あなたの場合、多分体全体が氷に覆われて冷凍保存されると思う。だからドアを開けるのは推奨しない。」

「そう、じゃあ昨日はまだ全力じゃなかったのね。」

自身の推測が外れたのか、はたまた脅しなのか、何度も言うように能力の詳細を知らない以上隔多里は不用意には動けない。少しでも情報を得ようと思案していたが、欲しかったものは何もせずとも手に入れられた。

「私は『自己愛』の瑕疵付き、能力名は『白接吻夢(スノー・ホワイト)』。私を一番に愛してくれる人以外をキスをすることで仮死状態にする。あの大きい人にやったのは『檸檬接吻杯(スパークル・チャーム)』、投げキッスをした相手を凍らせる能力。私のことが嫌いであればあるほど効果は大きくなる。」

白雪はもはや住所や銀行口座、クレジットカードの暗証番号よりも貴重になった自身の能力を簡潔ながらも嘘偽りなく告白した。おそらくその信頼は隔多里ではなく認目に対してのものだろうが、突然の情報の開示に隔多里は困惑していた。それでもやはり白雪はそんな彼女の様子を心底つまらなそうに見ている。あたかも『これで抵抗が無駄だと理解できた?』と降参を促しているが如く。




同日、認目、羅和、整井の三人はもう一度獅海馬児が縄張りとしている山に足を踏み入れていた。大まかな目標は前述した通りだが、今はもう少し細かい目標のために行動していた。それは昨夜の事、白雪を新たに仲間に加え、桜走が裏切り、認目が帰ってきたことで白雪を除く全員で会議をしていた。

「勝手なことをしてすまなかった。」

部屋に入って開口一番認目が頭を下げた。当然理由は明白で、白雪に会いに行くためだけに半ば仲間を捨てる決断を下し、それまで全員の共通認識だった『可能な限りの不殺』を白雪の仮死状態にしていた人たちの責任を取るという形で言い出しっぺがそれを破ったのだ。

「そういうのはいいから、さっさと今後の計画を立てましょう。」

以外にも認目をはじめに許したのは隔多里だった。

「あと一人死んだら位置情報が公開されるとしたら、先に狙うべきは御手洗(みたらし)だと思います。アイツの能力完全犯罪の心得パーフェクト・クライムはこっちの居場所がばれるとそれだけで蹂躙されかねませんし。」

後に続いた整井も認目の過ちよりもこれからを気にしていた。当然羅和もだ。認目はあっけにとられながらもどこか嬉しそうに話を進める。

「俺たちの目的は『御手洗への復讐』と『全員生き残る方法を探すこと』だ。むやみに攻め込むのは得策じゃない。最初に達成するべきは後者だと思う。」

「それなんだけど」

それまで黙っていた羅和が声を上げ、全員の注目が一か所に集まる。

そうして時系列は帰結する。


山の山頂につくと相も変わらず荒れた集落が広がっていた。三人がここに訪れたのはある人物をおびき出すためだった。それが誰か、それこそが昨晩の羅和の提案につながっている。

「見つけた。あれは誰だ?整井。」

「あれは…刃渡刃(はわたりじん)だ、間違いない。」

開けた集落からまた森の中に二等分線を引いた端の方で獅海馬児の協力者、刃渡刃を捉えた。無論探していたのは彼ではあるが彼ではない。刃渡はあくまでも本命を釣るための餌でしかなかった。

「で、どうするんだ羅和?お前の推測じゃ10分もしないでアイツがくるって話だったが。」

「このままでいい。しばらくしたら予定通り三人で刃渡を襲う。」

当の刃渡は瞑想でもしているのかその場から動くことはなかった。三人も同じように気配を殺してその時を待ち、羅和が一歩目を踏み出すと同時に三人で刃渡に向けて発砲した。三つとも整井のコレクションで型も古く、素人の腕前も相まって全くの見当違いの場所へ銃弾が飛ばされたが、整井のものだけ確実に刃渡の胴体へと突き進んでいた。

九十九刀の掌中インスタント・ブレイド。」

甲高い金属音が鳴り響き、どこからともなく現れた刀によって刃渡は銃弾を防ぎ、彼の眼光はすでに鋭く三人を順番に突き刺していた。

「ここで」

寒気すらする殺気に三人は身構えたが、刃渡はすぐさまどうにかしようというつもりはないらしく、何かぼそぼそとつぶやきだす。

「ここで君たちを殺さなかったら、御手洗が今より強くなるかもしれないし桜走の得る情報が多くなる。逆に殺せば面倒事も起きないし、突然人に向かって実弾を放ついかれた集団がいなくなってこの世界の治安が守られる。つまりそう、」

誰も口をはさめないまま人形のようだった刃渡の表情が少しほころんで明るくなり、耳にまとわりつくような君の悪い音を発した。

愚生(殺人)は正義みたいだ。」

今度は体から無数のナイフを取り出し、それを三人の方へ勢いよく投げ飛ばした。散弾銃の様な質素な刃物が張り詰めた空気を切り裂き数十本のうちの何本かが一歩前に出ていた羅和へと迫り、その喉元を──

傾くことのない天秤イブネス・プラットフォーム!!」

突如としてナイフがぴたりと止まる。言わずもがなその要因は整井だ。どうやら刃渡の能力によって生み出された金属はすべて同じ価値として扱われるらしく、さっき放り捨てた刀によって運動エネルギーを封じ込めているようだ。刃渡もそれを直感的に判断したようで距離を詰めることを優先しナイフの結界へ駆け出した。整井が能力を発動するころには既に手を伸ばせば触れられるものになっていた。

早咲きの離弁花(ドッキリ・フラワー)。」

ナイフを投げるでも、刀を具現化するのでもなく今度は指に鉤爪のような鋭利な針を生やして、それらが肉を突き刺し血しぶきが舞う。一つ彼ら四人が理解できなかったのは、その血はそこにいる誰のものでもなかったからだった。



刃渡が突進をしてからコンマ数秒、羅和千里は現状を受け入れられずにいた。周りにはさっきまでの三人はどこにも居らず、木の生え方や間隔が少し異なっているような気さえしていた。そんな中ではっきりとわかる違和感。羅和の肩を確かにつかんでいる人物がいた。昨日彼らを裏切った張本人、桜走妄だ。

「ごめんね、どうしても今君を殺させるわけにはいかなくてさ。少し乱暴な手段を使わせてもらったよ。」

「今のはなんだ、まさかテレポート能力にいきなり目覚めたなんていわないよな?」

「さすがにこんな世界でもそんな都合の良いことは起きないよ。言ったろ?俺っちの『交差する心象スクラスクランブル・ハート』は情報(・・)を入れ替える能力だってさ、だからこんなこともできる。」

桜走は羅和の思考がまとまるよりも早く、血の溢れる手をそばに立つ木の幹に添えた。その衝撃によってまた少し血液が漏れ出て玉になって霜を赤く染める。視線が自然と下に持っていかれ、それをもう一度上に戻すと次に滴って落ちてきたのは褐色に艶めく樹液だった。今は1月も後半、真冬とは言えないが十分に寒くまだ街路樹は萌えていない。当然樹液なんか自然に垂れることもそれ目当てに飛んでくる虫もいない。何が起きたのか、それをこの時の羅和が知ることはできないが何が原因で起きたのかは一目瞭然だった。さっきまで痛々しい傷口を外気に触れさせていた桜走の手がまるで初めから何も起きていなかったと言わんばかりにきれいな状態になっている。

「どうせ纏割君からばれるしね、君にも見せてあげようって思ったのさ。これが僕の切り札の一つ『交差する心傷(スクランブル・ハート)』、状態そのものを情報として入れ替えるのさ。今回はたまたま木が病気をもってなくて助かったけど、病気だった場合は俺っちがそうなる。いつも通りそこはピンキリだね。」

羅和は絶句した。位置情報の入れ替え、ケガの代替。目の前で二回起きた桜走の芸当は、今まで近くで見てきた彼を全く連想できないほど強力で、『恐ろしい』と思ったことすらあれど、『強い』を先行して感じたのは今日が初めてだった。

「じゃあ俺っちは刃渡君を止めに行くから。」

条件が揃っていないのか、さっきのテレポートではなく自らの脚でさっきの場所まで戻ろうとする。急ぎっぷりから決して『押すなよ』的なフリでないことは分かる。しかし羅和は2人が死ぬかもしれないと分かっていながら、桜走を止めなければならない。それは彼らの探していた人物が桜走妄その人だったからだ。

代行日記(ゴースト・ライター)解除。」

リードの長さ分の円から出られない犬のように、ビタリと桜走の脚が止まる。当の本人はこの現象を知っている。整井纏割の能力『傾くことのない天秤イブネス・プラットフォーム』。それを羅和千里が使ったのだ。

「成程それが白雪君の経験値を得た、認目君の新しい能力ってわけだ。でも」

「効かないって事は整井から聞いてるよ。一瞬でも動きを止めればそれで良い。」

それだけ言って羅和は桜走に向かって走り出す。迎え撃つように桜走はさっきの木の傷口からもう一度ダメージ(情報)を自身に移し、羅和に向ける。桜走は自分から動くことはなく余裕綽々に向こうから手に触れるのを待っていた。その油断が、相手から情報を盗めば良いという思い上がりが、今後もう一度起きるか分からない桜走の油断を作り出した。

「これは!?」

桜走の手に触れた羅和は、手に傷が出来るどころか散り散りになって空気中に消えていった。

ここまで起きれば桜走も嫌でも気づける。『模倣接続(コピーバンド)』、羅和千里の始まりの能力で、空間を切り取って貼り付ける能力。彼が触れたのは仮想の空間だったのだ。桜走が事態の緊急さに焦って羅和に対して『心残(コネクトレース)』を使おうとするが、既に羅和は彼の背後に回っており、持っていた拳銃をこめかみに押し付けている。

「僕の勝ちだ、桜走。こっちの要望に従ってもらう。」

「で?嫌だって言ったら君は引き金を引けるのかい?」

もはやどちらにイニシアチブがあるのか分からないほど、桜走は極めて冷静で飄々としていた。不思議なことに羅和にはそれが強がりには見えない。焦りを誤魔化すように銃口をもう一度強くこめかみに押し当てる。

「まぁ当たらないんだけどね。」

突然目の前から桜走が消え、手に伝わる反作用は失くなっていた。

「駄目だぜ?そんなに俺っちに密着したら、折角背後とっても取り返されるんだぜ?」

桜走は今度こそ足早に走り去っていった。


桜走の背中が遠のいてから数秒、当然羅和もそれを追いかけようとする。しかし彼の足を止めるあるものが足元に転がっていた。桜走の携帯電話だ。何の引力か、羅和はそれを拾い上げ画面を上にスワイプする。ロックは掛かっておらず最近まで桜走が見ていたであろうネットニュースが開かれたままでいた。記事の見出しは【地下アイドルの枕営業発覚と逃避行】。そこには枕営業によってとあるアイドルが感染症を広めてしまい、一部芸能界隈の上層部が機能しなくなるという概要と、そのアイドルの芸名と本名、そしてアイドルを連れ去ったという男の名前が記されていた。アイドルの名前は【白雪れむ(本名 蔵見詩亜(くらみしあ))】。男の名前は───

千里(せんり)アミラ】。

現在3作(1作失踪中)連載していますが、実は幾つか理由があります。一つは以前書いた『こっちを終わらせないと鈴音がちんぷんかんぷんになるから』です。もう一つは『私の作品への考え方の変化』です。簡潔に言えば最近のワンピースがあまり好きではなくなったって事です。

「鈴音」を書き始めた頃は複雑なストーリーが『面白い作品』だと思ってました。やっぱ中学生だし世代ど真ん中なんで「進撃の巨人」とかに憧れちゃうんですよね。特にあの時期はショート動画でワンピース等漫画の小ネタとか伏線の解説(とは言えない何か)が流行ってたりで、有名な作品=伏線の多い作品って考えになってましたね。

でも書き続ける内に、『これは読んでる人が本当に楽しめる作品だろうか』と思い始めました。そこは今でも独りよがりな作品であることに変わりないのですが、多分初期よりはマシだと思います。話を戻すと、そも小説って何で書くんだろうかと、現代小説は何を目指しているのか。多分今の小説、特に物語の目指す場所ってメディア展開なんだと思います。プロレタリアとか、〜文学が失くなってるのも原因だとは思うんですが、本の存在価値が『活字を読む』『金を稼ぐ』になりつつあるとも考えてます。現に私現代小説とかドラマ嫌い何ですよね。やる事は使い回しなのに主人公の周りの環境のレパートリーを増やすだけ。ミステリーって言われてる作品は作者の作ったフローチャートの一部を隠されて、最後にそれを見せられるだけ。そんな作品が今多い。無論なろう(ラノベ)にも、漫画アニメにもこれは当てはまります。なら物語の面白さや受けの良さは捨てて、自分が書きたいことを物語形式にしよう。そう思って出来たのが、♯11以降の「君のソナタ」です。そして「君のソナタ」を進める中『次初めから物語を書くならどうなるだろうか』って考えるようになりました。なので「カテイ(以下略」は複雑さでも、自分のメッセージでもなく、『読みやすさ』を重視してます。ようは何が言いたいのか、「鈴音」書き直してぇ…


次回予告

次回「好きを巡る君」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ