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化物が人間だった日

『この作品だけを読んでくださっている』という方もいらっしゃるだろうということで、この場を借りて(誰から?)お伝えしておきます。私一応現役の高校生なので今回みたいにテストが近いと異常なまでに投稿頻度が落ちます。あらかじめご了承ください。(尚何もないのに遅くなることのほうが多い)

一度は裏切られたものの、僕らは整井(ととのい)桜走(おうわし)の共通の敵である御手洗(みたらし)足染(あしぞめ)を倒すため、隔多里(へだたり)甘劇(かんげき)を無理くり仲間に引き入れることに成功した。その道中で、隔多里の最も恨むべき人物がまたもや御手洗であると判明し、僕という羅和(あみら)千里(ちさと)(つづる)は、次の行動計画を立てていた。

なんて、タラタラダラダラと読み仮名確認のパートは終わりにしよう。その日、隔多里を倒し連行した次の日、僕達は例の某snsでの統率者(ルーラー)の投稿を見ていた。いやきっと僕たちだけでなく同じように能力を持っている元人間全員がそれを見ていたのだろう。約一カ月ぶり二回目の投稿内容は、参加者のファイリングだった。正確には能力者の殺害数が多い順トップ10が公表されていた。勿論名前だけで『どんな能力か』や顔写真は載っていない。と、ここまで話したのにも理由がある。その頂上に、つまり最も能力者を殺した人間の名前こそが、御手洗足染だったのだ。以下がそのランキングになる。

一位、御手洗足染 42人

二位、白雪(しらゆき)れむ 0人(39人)

三位、傷忌月(きずきづき)小瑕疵肉(あかしや) 30人

三位、蔵見(くらみ)詩亜(しあ) 30人

五位、桜走(おうわし)(みだり)27人

六位、獅海馬児(しとどに)益荒男(ますらお)22人

七位、刃渡(はわたり)(じん) 18人

七位、整井(ととのい)纏割(まとわる)13人

九位、隔多里甘劇 5人

十位、羅和千里 1人

尚既に死亡した人物の殺害数も経験値として回収されているものとする。

こんなものだった。意外というかなんというか、そもそも母数が少ないのか1人殺しただけで上位十名にランク入りを果たして──

「羅和!?なんだよこれ!?」

言い訳の途中であったが綴が言葉を抑えきれなかったらしい。

「俺っち達からすれば、正確に殺した人数が記録されていることに驚きだね。」

「それにも同時に驚いてるよ…羅和、お前あそこに来る前に何があったんだ?」

僕はただ黙っている。無論ここで思考を放棄し、とろかした頭で吐露するのもアリだろう。というかその気になれば桜走の交差する心象(スクランブル・ハート)で見抜かれてしまうのだが、本人としても僕の口から直接聞きたいらしい。嘘をついているかどうかを疑うより、より真実を求めるよりも、僕を仲間として信じたいという事なのだろう。しかし残念ながら僕にはまだその問いに答えるつもりは毛頭ないのだった。

「別に、集落に逃げ込むまでの間に絡まれたから抵抗しただけだよ。追いかけてこなかったから薄々感じてたけどまさか殺しちゃってたなんてね、僕も正直動揺してる。」

嘘である。正確には半分と少しが嘘である。

「僕のことよりもっと注目すべき箇所があるんじゃないかな?」

僕はそう言ってある名前に目を落とした。それはさっきまであんなにもフォーカスしていた御手洗ではなく、その一つ下に位置する人物、白雪れむと同率三位の人物等だった。

「まぁ…羅和君の言うことも一理どころか百理あるね。0人なのにランキングに乗ってるこの白雪君って人もだけど、その下の二人。手を組んでいると見て間違いないね。」

「それに僕たちと組んでいた時より倍以上の人を御手洗が殺している…いくら能力があるとは言え1ヶ月もない期間で20人以上も殺せるものなのかな?」

「そこは殺した能力者の殺害数も自分のものになるっていう仕様のせいなんじゃない?」

そう整井の疑問に答えたのは、この場にいる誰にも相応しくない高く冷たい声だった。

「おや、隔多里君。目が覚めたみたいだね。逃げも抵抗もする気はないのかい?」

「御手洗足染を殺すつもりらしいからね、私は都合のいい奴となら組むのもやぶさかではない元人間なの。」

二人が腹の探りあいを試みる間、綴は桜走の携帯で先ほどの投稿を睨み続けていた。

「よし!!」

僕が声を掛けるよりも先に、勢いよく立ち声を上げた。

「今から白雪れむに会いに行こう!」

拍車のかかった綴とは裏腹に、僕を含めた一同は唖然としていた。それも当然だ。一体全体如何様な力を使えば0(39)なんて歪な殺害数が生まれるというのか。おおよそ察するに直接な死因に寄与していないという所だろうが、それでも一位の御手洗に次ぐ数の能力者をその無意識()で殺めてきたということだ。ロジカルにシンキングをするなら会おうだなんて最終決戦以外で思えるわけもない。

「目的を聞いていいかな?少なくとも僕は白雪れむに会ったって自ら棺桶に入るような行為にしかおもえない。」

「俺っちとしてもそれは了承しかねるぜ?というかここまで目立つ立ち回りして御手洗に目をつけられてないとも思えない。アイツが白雪君を狙ってるとしたら準備の整ってない俺っちたちが鉢合わせる可能性があり、狙ってないとすれば、白雪君はそれほど近づいちゃあいけない人間って事だ。」

綴は何か言いたそうだが、しかし流石にこちらが正しいと認めざるを得ないだろう。整井と隔多里は何も言わないが、十中八九スタンスはこちら側の筈だ。そんな中でもやはり綴は顔をしかめて何とか僕達を説得しようとしている。何が綴をそうさせるのか、この時の僕はそれを知らないのだが、知らなくてよかったとすら言える。

「それでも!ランキング上位の奴らとはいつかやり合うんだ、だったらまだ善人の可能性がある奴に会いに行くべきだろ!?」

「だからさっきそれは桜走が…」

そこまで言って、僕はそれ以上何も言えなくなってしまった。綴が真剣な目で僕を見てくるからってのもあるが、この中で僕だけが綴の願いを知っていたからだ。

【全員でこの理不尽な世界を生き残る】

彼は僕たちが桜走と出会った日、統率者から提示されたルールを初めて知った日、僕に思いを打ち明けてくれていた。そういう未来を思い描いている彼にとって、殺害数0(39)の0の方を信じたいのだろう。本当に綴はズルい奴だ、僕が可能な限り綴に寄り添いたいと思っていると知ってこんな事をしてくる。気まずさに似た胸の切迫するような感覚を振りほどくため、結局諦めて首を振る方向を変えるしか無かった。

「なら、僕と綴の二人だけで行こう。最悪綴の空想日記エンプティー・ライターで2、3人くらいなら安全に帰れるんだし。」

それを言ってしまうんなら、時間はかかれど綴の指示のもと全員が行動すればという話になってしまうのだが…

「なんて事考えてるんだろ?羅和君。それを言うなら、認目君一人で行くべきだよ。」

桜走が僕の思考を遮って冷たくそう言った。驚いて向こうを見ると別に僕に触れて思考を盗んだ訳ではないらしい。たった1週間にも満たない期間で、桜走は僕の性格を完全に見きっていたようだ。

「何驚いたような顔してるんだよ認目君?当たり前だろう?羅和君が君を慕っているのを利用しようだなんてお見通しだし、それを許すほど俺っちは仲間をぞんざいには思ってないさ。」

「な!?俺はそんな事──」

「あるでしょ、そんな事。だってアンタ優秀な仲間か意志の弱そうな捨て駒を探していたものね。」

「隔多里!!」

彼女は憐れみと冷徹の混じった目で僕と綴を交互に見た。まるで『いい加減利用されていることに気づきなさい。』と諭されているようで、またそれを辞めるよう訴えているとさえ感じれた。

「わかった。俺一人で探して来るよ、羅和もそれでいいな。」

綴は未だ僕を力強く見つめている。それを信頼と捉えるには、やはり僕たちは出会って間もな過ぎるのかもしれない。何もすることができない故に、何かしようとする綴に流され続けてここまで来てしまった。

「僕は」

もしここで綴について行けば、僕はまた暫く彼に舵を切って貰えるだろう。人生全てを貸しきってしまえるのだろう。

「ここに残るよ。」

綴は何も言わずその場を去ってしまった。失望されただろうか。期待外れだと思われただろうか。それならそれでいい、僕が彼にとってそうとしか思われないような存在ならついていかないのが正解なのだから。


綴が単独行動を取り始めてから一晩が経過した。別に誰がリーダーかなんて決めていなかったが、少なくとも仲間を集めて統率者のゲームとやらを生き残るという目的の元全員が行動してきたため、僕たちは共通して『これから何をするのか』を考えていた。

「でも実はいい機会なんじゃないかな?羅和君だけじゃなく俺っちたちも何を掲げて命をかけるのかはっきりさせとかなきゃならないわけだしね。」

そんな事をこの中で最も腹の中が分からない奴が言い出した。

「そう言っても結局羅和以外は御手洗を殺す事になるんじゃないの?」

「当然それを分かった上だよ。問題なのはじゃあもし御手洗を殺したとして、それからはどうするんだい?俺っちたちも殺して一人生き残るとでも言うつもりなのかもしれないけど、曲がりなりにも隔多里君は一度俺っちたちに負けてるんだぜ?」

「僕もそこは一度冷静に考えるべきだと思う。まだこのゲームって奴が始まってから一ヶ月と少ししか経ってないんだし。それで何も考えず全員殺してはい終わりってのは、流石に推奨しかねます。」

確かに。としか僕は言いようがない。桜走と整井、隔多里が御手洗を倒した後のことは何も考えていなかった。というか前提として、僕たちは少しこの現状に適応しすぎているフシがある。いきなり自分以外の能力者を殺せと言われ、いや、そもそもいきなり謎の力を渡されて今日に至るまで『これからどうするか』ばかり考えていた。真っ先に『なんでこうなったのか』を考えるはずなのにだ。まさか知らぬ間に常識が改変されてしまったとでも言うのだろうか。あるいは、統率者の能力が『常識』や『ルール』を作り替えるという可能性だろうか。もしそうならば、僕達が現状も誰かの能力に誘導されているとしたら…考えれば考える程謎は生まれるし、その答えは一向に見えそうにない。だからこそ僕は思考を辞めて、至高の答えを諦めて、話し合い(泣き落とし)を施行するのだった。

「僕はこの能力の謎を解き明かしたい。」

それまで黙っていた僕が突然脈絡のない発言をしたことで、三人の視線は光の三原色で白色光を作る実験のように一点に集まった。

「きっとそれが僕達が殺し合いをしなければならない理由を解き明かす鍵になるだろうし、存在が消された謎も、能力者が何者なのかも、突き止めなければきっと統率者のゲームは終わらないと思うんだ。だから僕は信頼できる仲間(実験サンプル)が欲しい。つまりなんだ、君に残って欲しい隔多里。僕の目的のために利用されてくれ。」

隔多里は驚きと不快の混じった、苦虫を煎じて飲んだような顔で僕を見る。感嘆とも呆れとも捉えられるため息と共にだ。しかし驚くべきことに彼女の反応はどうも僕が想像していることは全くの別物だったらしい。

「そう。別に良いわその代わり私は暫く独断で動くし、整井を連れて行く。それに同意するならね。」

それは僕ではなく整井に同意を求めてほしいが…

「勿論、ただし期限は一ヶ月だ。恐らくそこでまたランキングなり何なりの情報が統率者から来る。それまでにもう一度このホテルに集まろう。」

「そうならさっさと行くわよ、時間が惜しいもの。」

そう言って彼女は整井の腕を引いて部屋から出ていった。…出ていったとは言ったもののこのホテルは綴名義で綴の金で泊まっていたため、結局僕と桜走も後を追うように部屋を出るのであった。


ふと桜走は整井たちについていかなくて良いのかと思い、その旨を問いてみた。十中八九彼らは御手洗足染を殺すために動くだろう。そう思ってのことだった。

「ん?まぁ俺っちは認目君を暫く張るつもりかな。いきなりあんな事を言い出すんだ。俺っちは認目君と白雪れむには面識があるんじゃないかと踏んでるよ。」

確かに言われてみればその通りだ。知り合いが39人を…正確には人だった能力者を殺していたかも知れないと思えば直ぐにでも駆けつけたくなるだろう。しかしそれではやはり腑に落ちない。そうならそうと説明してくれれば少なくとも桜走と整井なら納得してくれた筈だ。態々関係を隠す必要なん…て?

僕は『まさか』と思って苦笑いで桜走を見た。

「恋の予感がするだろう!?僕は色恋沙汰には目がなくてね、こうしちゃ居られないよ!収穫した情報は今度会った時交差する心象(スクランブル・ハート)でこっそり教えてあげるからねぇ〜〜!!」

ドタバタと渦を巻くような足で砂煙と共に桜走は姿をくらました。そうして僕はまた一人に戻った。一先ず、一度実家にでも帰ってみよう。


チーム(?)の一時解散から2日、桜走は街ゆく人々の記憶を頼りについに認目綴の現在地を特定した。色恋沙汰に目がないというのは別に嘘でもないが、やはり心配や警戒が上回って行動に出た故慎重に物陰から様子をうかがう。

(認目君と女が一人、多分あれが白雪れむか。)

160もなさそうな小柄な体型にそれにしても小さな顔、遠目でしか見れないが顔立ちも十分整っているように思えた。年齢は大方20弱といった所だろうか。若くはあるが高校生には見えない。如何にもsnsに自撮りを上げるタイプ。2人の接触の早さからやはりネットなりで始めから繋がっていたと見るべきだろう。

心残(コネクトレース)。」

整井にすら話していない桜走の2つ目の能力『心残』。専門家ではないため詳しい説明を省くが、桜走の『交差する心象』は量子もつれを端的に解釈した代物である。故に数回縺れる事で自身の量子を、残滓として残す事ができる。『心残』はその残滓を消費して僅かな情報を引き抜く事ができる。桜走が認目の脳内に潜り込むとほぼ同時、『何も起こらなかった』。そこに認目綴も白雪れむもいない。桜走だけが一人そこに立っている。

空想日記エンプティー・ライター!?勘付かれたのか?」

口にしてから桜走は一つの違和感に気づいた。認目綴の能力『空想(エンプティー)日記(・ライター)』は因果関係をなくすことはできない。以前聞いた説明では切断した紙を燃やした時、そのどちらかを無くすことはできない。正確には『紙を切断した』という過去を無くしたとき、切断される前の紙が燃え、その逆ではただ紙が切断される。もし認目綴が自身の能力で桜走の監視を振り切ったのだとしたら当然認目を追った桜走も空想日記の影響を受ける。認目が例えば『外に出る』という過去をなかったことにしたとしても、認目は監視を一方的にかいくぐる術は無いはずだった。


同刻、とある一軒家の前に羅和千里が立っていた。もの憂う視線の先にあるのはその家の表札だった。

「そうか、僕はやはり僕が今まで見てきた人間とは違っていたらしい。」

語るまでもないが僕は今実家に戻ってきている。隔多里によって飛ばされた身だが、その張本人を探したおかげで現在位置を把握できていた。もしくは帰巣本能のようなものかも知れない。ともかくして、僕は少しだけこの世界の根幹のようなものに近づけたらしい。何せ()()()()()()()()()()()()()のだから。そうしてノスタルジーを振り払うように、僕は一人独りでに次の目的地に歩みだした。統率者から新たな投稿が出ていたということを知らずに。


──────────

【ランキングの大幅な変動のお知らせ】

一位、御手洗足染 42人

二位、認目綴 39人

三位、傷忌月小瑕疵肉 32人

三位、蔵見詩亜 32人

五位、桜走妄27人

六位、獅海馬児益荒男22人

七位、刃渡刃 18人

七位、整井纏割13人

九位、隔多里甘劇 5人

十位、羅和千里 1人

ちこっと小話のコーナー

最近ゲームの種類を増やしたい。でもプレステは家のテレビの関係上難しくてデスクトップのパソコンを置くスペースもない。そんなこんなで18万くらいのノートパソコンを購入しました。今までスマホのフリック入力で何十万文字と書いてきた(今思うと頭おかしい)ため執筆意欲があってもおっくうでした。まぁそれが投稿の遅い理由の全貌ではないのですが、これからは少しだけ投稿頻度を上げることができそうです。

次回予告

次回「誰かを愛した日」

余談ですが小瑕疵肉の名前の由来というか、どうやってできたかというと『あや』で瑕疵かしを挟んでいる。それだけです。傷忌月っていう苗字を先に思いついたので使いたかった。

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