化け物が死んだ日
あけましておめでとうございます。今年は受験やらなんやらでよろしくできないかもです。
これは僕という羅和千里の友人である認目綴の日記を僕が物語調に直した物。故に僕は語り手であって主人公じゃない。しかし先の戦い、傷忌月小瑕疵肉との一件により綴は心を閉ざしている。敢えてネタバレすると、あと一週間すれば僕たちのこの騒動、統率者の言う『ゲーム』とやらが終幕する。したがって今から記すのは、僕が語り、僕が主人公の何もできやしない、綴が復活するまでの繋ぎの物語だ。そしてこの物語は僕ではない人間の僕への半ば悪口じみた発言で始まる。
「ねぇ羅和君、君が傷忌月たちの仲間とは言わないけど綴君以外君を対して信用していないのはわかってるよね?そろそろ話してくれないかな、君のこと。」
死者1名、心神喪失2名、のこった2人の内僕ではない方、整井纏割はそう僕に詰め寄る。当の僕は困惑することもない。特別驚くことでも意外な事でもない。傷忌月の能力に何故か僕だけ軽症で済み、特別何もしないで戦闘が終わり三人が戦闘不能に陥る。彼からすれば僕が瑕疵付きの2人の仲間、もしくは裏切り者にでも見えるのだろう。そう断言しないのは蔵見詩亜の姦染を解除したことが原因と思われる。さてここで、僕にはやっとこさ選択肢とやらが与えられたらしい。と言っても綴と初めて会ったときにも有りはしたが、今回のはその時よりも重要なことだ。当時同様嘘をつく事もできるが、それをしたところで有意義とは言えないだろう。だから僕は今言える限りの本当を語る。
「僕は僕だ。そうであると願ってるし確信もしている。」
「それ、答えになってるのかな?」
「それ以上に僕について語る必要も文字数もないって事だよ。強いて言うなら以前は右半身を下にした状態じゃなきゃ寝れなかったんだけど、受験勉強でソファーで寝る機会が増えて最近では仰向けでしか寝れなくなった。これで満足かい?」
訝しげな表情が呆れに変わっていく整井の反論を待たず、僕は調達していたあるものを抱え目的地に向かって歩みだす。刷り込まれたひな鳥のように整井も僕の後をついてきた。当然懐いているからではない。3km近く歩いて整井は僕がどこを目指しているのかに気づいたらしく、しぶしぶ動かしていた足が初めて僕を追い抜かした。
「まさかとは思うけどさ、それを何に使うのかを教えてもらえるかな?」
若干引きつりつつある彼に僕はまた淡々と事実を告げる。やけに本格的なスコップを抱えながら。
「落とし穴を掘るんだよ。ここまで来たんだ協力してくれるんだろ?」
「イノシシでも捕まえて二人に精を付けさせよっていうつもり…じゃないと願うよ。」
「大体あってるかな、ほらいかにも似合いそうなやつとここらへんで会っただろ?」
そう、ここは僕たちが初めに拠点にしていた集落のある山──から少し離れた場所だ。刃渡刃と遭遇した場所でもある。僕はここに落とし穴を掘りに来たのだ。
「手伝ってくれるならその間僕の答えられる限りのことを話す。それならいいだろ?」
「有意義な情報じゃなきゃ帰っていいって受け取るよ。」
「安心してほしい。僕は有意義じゃない無駄は嫌いだ。もっとも有意義なら無駄口をはさむけれどね。」
そうして3日ほどかけて、僕たちは人一人がすっぽり入れるような穴を掘った。『傾くことのない天秤』で某クラフトゲームのように、地面から分離させられた土をブロックにしたことで作業はスムーズに済み、僕も多くを語ることなく終わりを迎えられた。ゲームを終わらせる準備の一つ目が完了し、僕たちは次の工程に進む。戦意喪失した二人のメンタルケアだ。今からそれを書いてもいいのだが、結局僕は何もできず綴の背中を少ししか押せなかった。僕目線でそれを記したところで面白味もないし、綴もあの時のことはいつまでたっても教えてくれないので、仕方なく整井側の出来事を書こうと思う。
整井纏割は扉の前に立っていた。地球にはこんな言葉がある『押してダメなら引いてみろ』。しかし相手は押せば押し返され引けば何も起きないあの隔多里甘劇だった。いますぐにでも業者を呼んでこの分厚い扉を取り外してもらいたかったが、彼は中で火災でも起きているかのように恐る恐るドアノブに手を伸ばす。当然のようにカギはかかっていて、薄い隙間に二つあるうちの一つの突起が動いているのが見える。深呼吸代わりのため息を吐き出し、彼は扉を3回ノックした。
「隔多里さん──その…いますか?」
当たり前だろうと自分に対して心の中でツッコむ。フロントに態々確認しに行ったのだから彼女がそこにいるのは知っていた。単純にそれ以外にかける言葉を思いつかなかったのだ。羅和千里に命じられるままこんなことをしているが、相手が誰だとか関係なく、彼は人を励ますのが苦手だった。自分が相手と対等だと思えなかったからだ。だからこそ羅和の指示には従うし、こうして誰かに寄り添うのは得意ではない。隔多里のことは仲間だと思っているが、イメージとしては所属が同じなだけの先輩といったものである。故に整井は5分近くそこで立ち尽くしていた。そんな彼の葛藤を打ち破ったのは扉が開錠される音だった。
「隔多里さん?」
「入って。」
彼女は短くそう伝える。なかなか出てこなかった理由が部屋を掃除していたとかそんな乙女チックなことは一切なく、1週間たたずではありえないほど部屋が散乱していた。何とか何も踏ます座れそうな場所を見つけ出し、彼は無意識に正座した。
「何の用。」
「あ、えと…羅和く──さん曰くあと三日あるかないかでこの『ゲーム』が終わるから隔多里さんにも協力してほしいと。」
「そう、悪いけど断るわ。」
またも彼女は短く返す。話はこれで終わりだといったようなものだが、なかなか帰ろうとしない整井をみて、紫煙を吐き出すようにこれまた短い言葉を吐露する。しかしそれまでのものと違い、そこに棘は無かった。
「能力が使えなくなったのよ。」
「な、なんで…でしょうか。」
「わからない。あの娘が死んでからそう。」
あの娘というのは勿論白雪れむの事だ。しかし今そんな事は重要ではない。能力が使えなくなった。それはつまり彼女の、隔多里甘劇の『瑕疵』や『願望』が消滅したということだ。白雪れむの死によって。
「傷忌月には隠された能力があったんでしょうか?」
「さあね。でもなんとなくわかる、同じだったと思う。」
意味深に彼女の視線はカーテンの閉められた窓へ向く。西側に取り付けられたそれらが知らぬ間に茜色に染まっていた。
「貴方が死んでもきっと同じだった。」
整井は呆然として部屋を出た。意識が微睡んでいて水風呂にでも浸かりたい気分だった。ふと隣の部屋を見ると先にことを済ませていた羅和と目が合う。
「準備はこれで終わった。あとは獲物がかかるのを待つだけだよ。」
整井は羅和に隔多里の能力の話を伝え損ね、彼らの最終決戦が始まろうとしていた。
有言実行って難しいですね。別に勉強してたとか行事があったとかでもないです。三作品全部の構成を作り直して、スランプ(ずっと下ぶれていても起こるものは起こる)解消にナイトシティに行ったり牢屋敷で魔女裁判してたりしました。ステラーブレイドでボスが倒せなくて詰まり、ナイトシティでの生活も一区切りついて、1月15日食らいには書き始めようと思っていたのですが、桜羽…エマ、君はいつもそうやって私を誘惑する。大体なんだそのガーターベルトは正しくない。
できれば今日中にもう一話上げます。すんませんでした。




