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何も変わらない1日

お急ぎの方は3話からご覧ください。物語に然程影響ありません。2話は前日譚です。


 朝7時30分。目覚まし時計のアラームに叩き起こされた。

私はすみやかに起床し、登校前のルーティーンを始めた。

春から中学二年生に進級し、毎日登校するのが不安だ。一階に降りると、朝食の準備を始めた。

幼い頃に母を亡くし、父の手一つでここまで育ててくれたことには感謝しているが、父は常時仕事で忙しく、ほとんど家に帰ってきてはくれない。私は適当にパンをトースターにいれ、その間に紅茶で一服した。

 


朝食を食べ終えた後、足早に学校への支度を開始した。といっても、髪のセットと制服に着替えるだけだ。私はそれらをやり終えた後に、万年筆にインクを注入する。この万年筆は母の形見で、母が亡くなる直前に授かった物である。

正直、学校に万年筆を持っていくのは気が引けるが、母が私を護ってくれる様な感じがして、お守り代わりという意味でも持ち歩いている。インクを充填し終えた後に、私はそそくさと学校へ赴いた。

 


学校に着ついた。教室にはぼちぼち人がいて、私は足早に座席に着席し、一時間目にある漢字の小テストの勉強を始めた。

しばらくすると、扉が開く音がした。

「では、ホームルームをはじめましょう」

「起立!」

学級委員が声がけをすると、生徒は一斉に立ち上がり、号令をした。


「本日は特に行事などありませんが、気を緩めずに学校生活を心がけてください。後もう一つ。近頃この街の朝頃、濃霧が発生する事が多いですよね。登校時には事故に気をつけて。心配な方は懐中電灯を持参する事を許可します。くれぐれも、注意して登校してくださいね。以上でホームルームを終わります。みなさん

お疲れ様でした」



担任の近藤先生は優しくて、生徒から人気がある。

友達がいない私を気にかけて、話してくれる。


桜庭さくらばさん」噂をすれば先生が私の先に寄ってきた。

「なんですか?先生」

「いいえ。特にありませんが、困った事があれば、遠慮なく私に相談してくださいね」

「ありがとうございます」


正直、私はこのクラスで浮いてると思う。私は物事に集中すると周りの目が見えない。そしていつのまにか独りになった。他人と会話するのが怖い訳ではない。

ただ、私の母がすでになくなっている事はほぼ、このクラスに知れ渡っている。おそらくそうだろう。


 午前中の授業が終わり、昼休みに入った。私はブリキの弁当箱からおかずを貪り食う。弁当を食べてるさなか、鈴木さんと遠藤さんが声をかけてきた。


「ねぇ、ひなたちゃん、今週の日曜日に体育祭の打ち上げがあるんだけど、よかったら来ない?」

と、遠藤さんが。

「ごめんその日は用事があって……また今度誘って?」と返した。

「うぅん!全然大丈夫だから!じゃあね!」

わたしの席から離れる瞬間、

「ほら、やっぱダメだったじゃん」と鈴木さんの声が聞こえた気がした。



断った理由は、私がいることによって、また誰かが不幸になってしまうのが、怖かったからだ。

 

 帰宅し、夕飯の支度をしている最中、父が2ヶ月ぶりに帰ってきた。

「飯はいらない。またすぐ出張が入った。すぐに行ってくる。」

「そう……」 とあっけなく私は返した。

「そういえば、今日は母さんの命日だな。母さんがまだ生きていればな。」


父は一時間もしないうちに、スーツケースも持たないで、そそくさと家を出た。









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