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7.オーシ、お疲れさま。

◇◇narratorーpeoples of Ariadoll◇◇


 プリエラが王都に来てから三日間。


「ねぇ、ウェス」

「どしたのウァス」

「プリエラ様に荷物って来た?」

「見てないけど、来てないと思うよ」

「だよね~」

「だからどうしたの?」

「うん…………」

 何やら煮えきらない姉に、ウェスがイライラをつのらせつつある時、執事長のオーシがやって来た。

「プリエラ様を見なかったか?」

「「見てない」」

「そうか…………」

「「どうしました?」」

「いや、アリシア様がお呼びだったので探しているんですが……」


「プリエラ様なら、外でマニマニと走ってましたよ」

 通りかかったヒリスがサラッと告げた。


 外に向かおうとするオーシにウァスが声を掛ける。

「あの、オーシ様……プリエラ様に荷物とか来ました?」

「イイエ、何も」

「そうですか…………」

「もう、また!」

「どうしたのです?プリエラ様の荷物に何かあるんですか?」

「あっ、いえ」

「もう、ハッキリしなさいよ!」

「うん、私も気になりますね。何かあったのですか?」

「あ、はい。何かあったと言うんじゃないんですが」

「だったら何?」

「いや、荷物があるのよ」


 荷物があるからどうだと言うのだろう?

 ウァスが何を言いたいのか分からない、ウェス、ヒリス、オーシの三人は、ウァスの言葉を待った。


「だから荷物があるの。服も靴もクローゼットいっぱいに。本棚にも本が詰まってたの」


 確かに……。メイドや執事という仕事上、各部屋に出入りすることがある三人。その中で、当然プリエラが滞在している客間にも入ることもあった。その時には気にも止めなかったが、確かにそうだ、あの部屋には手荷物には収まらない程の荷物がある。


「そういえば──」

 ヒリス軽く挙手しながら口を開く。

「プリエラ様が来られた日、シーリア様に言われてお二人の部屋に行ったんだよね。夕食前に旅衣から室内着に着替えてはどうかと、聞いてこいって。だって、お二人、手ぶらだったから、屋敷にある衣装をお貸しするつもりで準備してさ……」

「でも、あの時は──」

 オーシは、思い出していた。あの時は、ちゃんと服を着替えられていたし、アリシア様と服のブランドの話で盛り上がっていたハズ。

「そう、既に着替えられてたの…………」

「不思議ですね」

「「「不思議ですね~」」」



 ◇◇◇


「ねぇねぇじいちゃん」

「どうしたリコや」

 庭の奥、樹木により林のような雰囲気を醸し出している一角で、庭師見習いのリコが祖父であり師匠のトラルド爺に質問をしていた。

「あそこの木、何故皮が抉れてるの?」

「ああ、プリエラ様じゃよ」

「プリエラ様がどうして木の皮を抉ってるの?」

「なんでも剣術の練習をしたそうじゃ」

「ふ~ん──」

 それにしても、プリエラ様たちが来られてまだ三日目、どうやったら三日でこうなる?という抉れようだ。

「──だったら、練習場ですれば良いのにね」

「いやいや、下が整った練習場よりも、根があったり他の木があったりで、足下が不安定で満足なスペースが取れない方が練習に良いとか言っておっての。ここならと、儂が案内したんじゃ」

「変なの」

「いや、懐かしくての。あれの父親のシリウス坊っちゃんもそんな事を言っておられてな。親の子じゃ」

「でも、シリウス様の親のマキシ様はされないけど?」

「そこは知らん──と、そうそう、オーシに用があったんじゃ。木を痛めすぎるから、人形を設置しても良いかと、マニマニにお願いされての」


「そうですか。一応、マキシ様に報告をしますが、問題ないでしょう」

「「うわっ!」」

 気が付けば、オーシがいた。

 まあ、毎度の事ながらオーシは急に現れるが、やっぱりビックリする。


「そうか、じゃったら早めにマニマニに教えてやらんとな」

「はい、そうしてあげてください」

「今の時間は走ってるじゃろうな」

「走ってる?」

「そうじゃ、プリエラ様と走っておったよ」

「どこを走っていましたか?」

「儂が見た時は、森の方じゃったがの」

「そういえば、朝も見たよ。走ってた」

「本当に、シリウス坊っちゃんとそっくりじゃの」



 ◇◇◇


「どうしたんです?この野菜の山は」

「あっ、オーシ。マニマニの要望だよ」

 オーシに尋ねられたホラックが呆れたように答えた。

「なんでも、プリエラちゃんが肉ばかり食べるから、野菜を増やして欲しいって」


「ほら、そこ、置くからどいてくれ」

 そこに、新しい野菜の入った箱を持つ料理長のバラックが入ってきた。


「何か、ドルミナクの郷土料理を聞いたみたいで、旦那がときめいちゃってさ」

「それにしても、この量は…………」

「だろ」


「あっ、オーシ。マニマニ見なかったか?夕飯にだそうと思う蒸し料理の突き合わせを聞こうと思ったんだが、見当たらないんだよ」

「私も探しているんですよ」

「えっ、私が見た時は、裏庭を走ってたけど、その前は西側」

「おう、だったら、この辺も通るな。ホラック、来たら捕まえてくれ」

「あいよ!」



 ◇◇◇


「ねぇ、母さま、プリエラの所に行っても良い?」

「駄目ですよ。これからお義父さまと剣術の練習でしょ」

 エファがアリシアと話しをしている。

「だったらマニマニの所は?」

「それ、同じよね。それにあなた、朝もプリエラちゃんの所に行ってたでしょ」

「う…………」

 このところ毎日、と言っても昨日と今日の二日だけだが、エファは暇があったらプリエラの所に行っている。朝食後、昼食後、夕食後と毎食後だ。

 エファの見たところ、プリエラの一日は大抵走っている。朝食後、ゆっくりとストレッチしてから昼食まで軽く走る。昼食後、まるで障害物競走のような林の中を、アフタヌーンティーの時間まで、飛び跳ねるように走る。今風に言うとパルクールと言うんだろうか。とにかく、飛んだり回ったり舞ったりしながら走る。アフタヌーンティーの後はひたすらに走り、長いストレッチとマッサージをして夕食。夕食後は座学。その上、どうも朝食前にも打込みなどの戦闘訓練もしているようである。とにかく、走っているのだ。

 一日目は、ただ見ていたけど、二日目の今日は、朝食後のランニングに付き合わせてもらったのだが、昼食を前にして足がガクガクでついて行けなくなった。今は、アフタヌーンティー前、そろそろ部屋に帰って来ているハズである。


「エファは、プリエラちゃんが可愛いのね」

「そ、そんな事な…………おじいさまの所に行ってきます」

 僕はプリエラなんかより、マニマニの方が良いのに……そんな事を胸に押し込んで、エファは部屋から飛び出した。

「行ってらっしや〜い。頑張ってネ」

 


「ところで、ねぇ、オーシ。プリエラちゃん見つかった?」

 アリシアが脇に控えるオーシに声を掛ける。

「はい、走っているのは確かなのですが、今、どこにいるのかは、把握できていません」

「まぁ、屋敷の事でオーシが分からないなんて。活発なのね、プリエラちゃんは」

「ところでアリシア様、プリエラ様にどのようなご要件でございますか?」

「う〜ん、プリエラちゃんもマニマニも、一日中お外にいるでしょう。なのに、全然日焼けしていないのよ。どうしているのかなぁって、気になっちゃうじゃない」

「はぁ………」


 そんな事、夕食の時にでも聞けば良いのではないのか?

 そんな事の為に自分は一日中、プリエラ様を探して屋敷中を走り回ったのか?

 ちょっとイライラとしたオーシだった。



 ◇◇◇


「プリエラちゃん、日焼けしてないけど、何かケアしてるの?」

「マニマニにケアしてもらってます」

「マニマニちゃん教えてくれないかな?」

「はい、アルファディオが調合してくれたのホワイトニングセラムを使用していますが」

「私も欲しいな~」

「お分けできますが、各個人の肌質に合わせて調合していますので、効果があるかどうかは保証しかねます」

「え〜〜、アルファディオさんって、家宰している人(悪魔)でしょ。お願いしたら作ってくれるかしら?お義母さま、ドルミナクに行きましょう」

「ハイハイハイハイ、馬鹿なことを言ってないで」

「は〜い」


 『はぁ、ドルミナクか、行ってみたいな』小さく呟いたシーリアの言葉は、オーシの耳にだけ届いた。


ありがとうございます。

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