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6.マニマニは、コース料理が見たいのです。

何とか間に合いました。

体調不良でぶっ倒れていました。

◇◇narrator─Manisyu Mani◇◇


「うっわ広い部屋。ね、マニマニ」

「はい、プリエラ様。どうやら客間をお貸しいただけるみたいですね」

 私たちは、案内された部屋にいる。

 西の翼棟二階にある部屋は、中で更に幾つかの部屋に分かれている。

 入ってすぐの部屋が広間。広間の右手側に主人の寝室と従者部屋。左手側には、簡易浴室とトイレ、シューズクローク、ウォークインクローゼットが並ぶ。

「こっちが私の寝室だよね。うっわベッドに天蓋付いてるよ」

「こちらの従者部屋には簡単な炊事場がありますよ」

「この客間だけで十分生活できるね」

「ええ、凄いですね」

「こんな部屋が幾つもあったよね」

「ええ、扉の数で判断すると、この階だけで客間は三部屋ですね」

「一階は、キッチンとか大浴場とか共用スペースだったよね」

「あの規模は、キッチンと言って良いのかわかりませんが、そうですね。家族用と従業員用は別にあるようでしたから、もはや催し会場……」

「パパって、いいとこのボンボンだったんだ……」

「外では、パパではなく父上か父様でお願いします」

「は〜い」

「いや、ドルミナクの屋敷も大きいと思っていたのですが、規模が違いますね」



 ── ?

 廊下を歩く気配がした。

 忍ばせながら歩いている。

 扉の前で止まった。

 ノックがあるか?


「お前が田舎から来たって奴か」

 力いっぱい開かれた扉。

 私は扉の陰に移動すると、金色のリングで侵入者の両手を後ろ手に拘束する。これは、アルファディオ様の老人形態のアル爺から貰った〝アル爺の愛情リング〟左右の金色のリングからリングを生みだす魔道具で創ったリング。かなり扱いが難しい魔道具。

 なかなかに素早い動きだったと思ったが、プリエラ様もスカートの中から愛用のククリナイフを二本取り出し、侵入者の首筋に当てていた。


「どなたでしょうか?」

 侵入者が子供と分かったが、子供だからと危険が無いわけではない。まぁ、すぐに警戒するレベルの者ではないと分かったけど、今更、止められない。


「あ、あ、ぼ、僕はエファ・R・アリアドル……です」

「ご要件は?」

「い、従姉弟が来たと聞いたので、挨拶にまいりました」

「ノックもせずにドアを開けるのは、宜しくないですね」

 大人気無かったかな?なんて事を思いながらも、拘束しているリングを解除する。それにしても、レディのいる部屋にノックもせずに入るなんて、教育不足なお子様ですね。


「プリエラ・N・アリアドルともうします。エファお兄さま」

 両の手に持ったククリナイフを再びスカートの中に隠しながら一歩下がり、プリエラ様が挨拶をする。

 プリエラ様、上手なカーテシーです。

 でも、スカートを捲し上げてククリナイフを仕舞う姿は、駄目です。みっともないと言うか、破廉恥と言うか、とにかくNoGood。

 プリエラ様の愛用は、ククリナイフ。〝く〟の字に曲がった湾曲型のナイフで、短弧側に刃を持つ短刀。この湾曲が可愛いと愛でられているけど、私には理解不能。

 プリエラ様のお父様のシリウス様が、スクラマサクスを愛用されているので、似た者親子と言うか、短刀好きの親子だな。


「あ、ああ、年齢は同じ九歳と聞いているが、俺の方が生まれ月で、あ、兄になるからな。あ、挨拶に来てやった」


 なるほど、プリエラ様は晩秋の生まれで、この間誕生日を迎えられたばかり。と、言うことは、このエファという少年は、春か夏、もしくは初秋が中秋のうまれという事か、年齢が同じでも、僅かに上だとマウントが取りたかったのか。小さいな、少年。


 ちなみに、学園は春から始まる。

 冬になると、雪が降る可能性が高い為、辺境から王都までの距離を考えると移動が困難。だから私たちは、誕生日パーティーが終わり次第、秋の内に王都までやって来たのだ。ワイバーンがいるから冬でも良いのでは?って、冬の上空なんて寒くて無理。ワイバーンも、寒いと飛ぶの嫌がるしね(カラカラ談)。



 ◇


 夕食の時間が始まる。

 旅衣からちょっと良い普段着に着替えて食堂に行くと、初対面となる人は七人。現当主の妻アリシア様、年若い執事が二人、護衛が四人。

 私は皆に倣ってプリエラ様の後ろに立つ。

 地元では、みんな一緒に食べてたんだけどね。


 長く大きなテーブルの上には、各人に並べられたナイフとフォークとスプーン、そして二種類のグラス。

 まさか、噂に聞くコース料理という物なのだろうか?

 ハイソサエティーでブルジョアな人々が行うという、食事方法。

 どんな料理なのか見てみたい。逸る気持ちを抑えながら見ていると、食前酒?炭酸?みたいな物が各人のグラスに注がれた。慣れた手つきの執事さんたちは、格好良い。

 当然、立っている私には、グラスが無い。


 グラスに意識が偏ってる間に、挨拶が始まっていた。

 前当主のマキシ様、シーリア様、現当主の妻アリシア様、さっきの少年エファ様の挨拶が済み、プリエラ様の番。

 プリエラ様は、チラと後ろに振り向くと、私と視線を交わす。『勝負!』視線に込められた挑戦を、私は視線で返す。


 プリエラ様は、ゆっくりと皆に笑顔を振り撒き、フワッとした緩い空気を作って挨拶を始める。

「ドルミナクよりまいりましたプリエラ・N・アリアドルです。学園に通う間お世話になります。領を出たことのない田舎者ですが、皆さま仲良くしてくださいまちぇ」

 噛んだ!──わざとだ。あざとい。あざと過ぎる。

 そして、ダメ押しのテヘペロ。

 皆が胸を抑えながら耐えている。

「申し訳ありません。そして後ろに居ますのが、護衛兼侍女のマニシュマニです。マニシュマニ、ご挨拶」

 『私の勝ちでしょ』再び視線に言葉を込めて、プリエラ様は、私に挨拶を促した。


 小娘、年長者の技を見せてあげるわ。

 私は、声のトーンを落とし、より無機質に感じられるように抑揚を抑えて話し始める。

「ドルミナク領アリアドル家当主シリウス様、ドルミナク領家宰アルファディオ様の命により、プリエラ様側役の任に就かせていただいておりますマニシュマニと申します」

 ここで、いきなり人間味を出す。

「マニマニとお呼び下さい」

 そして、最後の一瞬だけ見せる、綻ぶような笑顔!

 

 皆、胸を押さえて蹲り、行動が停止した。

 ──私の勝ちでしょ。



 そして、話は、私の魔道具の話に行きかかって、服の話になった。

 私とプリエラの服は、〝MARUK〟って服飾店を経営しているマダマルコネから貰ったサンプル品だ。

 サンプルって言っても、私用、プリエラ様用にデザインされた物だから、殆どオーダー品。マダマルコネと、デザイナーのサーシスタが、私たちを見る度に『閃いた〜!』って、デザインを始めるから、どんどん服が増えていく。

 ちなみに、私の服が〝スタンダードエディション─ノワールコレクション〟。プリエラ様の服が〝バイドルデザインズ─リトルレディコレクション〟。随分、大層な名前で、かなり売れてるらしい。

 ついでに言うと、このマダマルコネは、シリウス様とバーサの知り合いで、とっても美女な男の人。元傭兵。

 サーシスタは、元シリウス様の同僚で、バイドル地方出身のちょい悪イケオジ。無茶苦茶強い。

 二人は、恋人みたいだけど、実際はよくわからない。


 とにかく、この〝MARUK〟の服が王都でも人気らしくて、アリシア様は興味津々なご様子。

 マダマルコネとサーシスタの二人、ちょくちょく王都にも来てるらしいし、プリエラ様の在学中に遊びに来るって言ってたから、来たらアリシア様に紹介してみようかな。


 それより問題なのは、まだ食前酒から進んでないって事。

 乾杯すらも済んでない。

 コースを見せてください。


ありがとうございます。

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