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狐の嫁入り

作者: 飛凪刹華


空に晴れ間があるのに雨が降る。

そんな天気の時を『狐の嫁入り』と言う事がある。

そんな日はきっと山の中の狐が結婚式を挙げているから、山の中へは入っては行けないよ。


僕がまだ子供の頃、祖母に教えてもらった。

それが何なのか子供の僕には、よく判らなかった。

祖母の家は田舎の山奥で、その地域の言い伝え位にしか思っていなかった。


ある日、空が見えているのに雨が降った日があった。

僕は何故か祖母に言われたことも忘れ、無性に山へ行きたい衝動に駆られた。

そして、大人達の目を盗み山へ向かった。


いざ立ち入ってみると多少整備がされた山とはいえ、樹々が生い茂り、獣道のような道があるばかりだった。

生物も小さな虫ばかりでなんだか拍子抜けの様な感じで

来た道を戻ろうと考え始めた頃だ。


雨が止み今まで来た道が霧に覆われていた。

その奥から誰かが上ってくるような

そんな気配がした。

1人…2人?いや、遥かに大勢だった。

まるで列を成すかのようだった。

その時の僕は、親達が僕を探しに来たのかと思い咄嗟に茂みの中に隠れた。

祖母の言いつけを守らずに叱られると思ったからだ。


やがてぼんやりとしていた影が

ハッキリとした姿を現して僕は息を飲んだ。

だって、その姿は狐の姿をした人だったから。

否、逆か。人の擬人化をした狐とも言えばいいのだろうか。

白無垢と言うのだろう、和服の着物を着た狐。

まさに狐の嫁入りだった。

その列が僕の間近に迫ってきた時、声が聞こえた。


「人の子が居るな。我らを見たからには只では済まぬぞ」


その言葉が頭にこだまし、気を失った。

その後、気を失った僕は山の麓で父に発見された。

何でも1週間行方不明になっていたらしい。

そして、その間に祖母が亡くなっていた事もしばらくして教えられた。

母の話では祖母は取り乱し

「お狐様に連れていかれた」

と何度も言っていたらしい。

僕の名前を呼び「連れていくなら私にしてくれ」とも。

突拍子もない話に誰も祖母の話を聞くものはいなかった。

だが、僕が見つかる前日に祖母は野犬か何かに喉を噛まれ息を引き取った姿で発見された。

その場所が僕が発見された場所だ。


その一連の事で僕は狐に神隠しにされたのでは。

本来は狐の嫁入りを見てしまった僕が死ぬハズだった。

そして僕の代わりにに祖母が…。


あれから十数年たった。

今も僕は生きているが、あの山へは今も行けていない。


「再び山へ足を踏み入れれば次はお前だ」


祖母の家を離れる際、そう声が聞こえた。

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