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小さな森の管理人  作者: 御影 彩
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森の管理人

そこは島の南の端にある巨大な森、アルラ大森林。この森は普通の森とは違い、霊力を纏った森林だった。

そよそよと吹く風、それに揺られる葉、辺りからは鳥の囀りが響き渡り、木漏れ日がよりそれらを幻想的に魅せる。

そんな森の中心部、巨大な木が一本。その木はこの世界では世界樹と呼ばれるものだった。そんな木の枝の上に横たわる少女が一人すやすやと気持ちよさそうに眠っていた。

普通ならばありえない光景。アルラ大森林は霊力が強すぎるがために、普通の人は寝るどころか近づくことすら出来ない。一体少女は何者なのだろうか。

その少女の名は____


ドガーン!!!


どこからか鳴り響く大きな爆発音。その音のせいか少女は薄らと目を開く。そして腰まで伸びている綺麗な銀髪の髪を揺らしながら上半身を起こし、その綺麗な碧眼で爆発音がした方向を見つめる。


「誰かが…森に侵入した……?」


そう透き通った声で言葉をこぼす。

すると、少女の元に一羽の小鳥が飛んでくる。そして少女はその小鳥が見た光景を自分の脳と共有する。


「森が破壊されている…誰かが力を使って暴れているの?」


少女は無表情でその森の先を見つめる。


「誰ですか…私の森を壊すのは、睡眠を妨害しているのは……」


少女は木から飛び降り爆発があった方へ向かった。






ドガーン!!!


爆発音があった同時刻。実際爆発が起きた森の入口近くではある組織の二人と一人の男が対峙していた。そのある組織は名をリストレイント、通称リストという。彼らは凶悪な犯罪者をある武器を用い、霊力を操って捕まえるこの島、ライド唯一の犯罪取締機関だ。


「いい加減、降参して捕まれや!!!」


そう犯罪者であろう男にハンマーのようなものを持って攻撃を仕掛ける男。しかし、それはすんなりと避けられてしまう。

その後も連撃を繰り出すが全て避けるか受け流されてしまった。


「あなた方も私を追いかけるの辞めてくれませんか?私も疲れますよ」


「やめて欲しけりゃ大人しく捕まれっつーの!!」


「はぁ…ほんとめんどくさいですね」


そう男は余裕の態度を見せつける。

ハンマーの男はその態度に余計にイラついたのか、動きがだんだんと大雑把になっていく。


「やめなさいルイドさん!挑発に乗っては相手の思うつぼです!」


「うるせぇ!俺はこいつをぶっ叩かなきゃ気がすまねぇんだよ!」


ルイドと呼ばれた男の顔からは冷静さが消え、怒りだけが表れていた。ルイドを宥めようと必死な仲間からは焦りが見え始める。

そんな時だった。


トットッ


森の中から腰まで伸び綺麗な銀髪で碧眼を持った少女が出てきた。

その場にいた三人は驚きと困惑で固まる。あの森から、あの霊力から何の衝撃も受けずに無表情で出てきたら誰でも困惑する。

それほど危険なのだ。アルラ大森林は。

少女はそこにいる全員を一瞥して


「あなた方ですか、私の睡眠を妨害したのは」


そう言った。


「これはこれは、私の目的の人が自ら出てきてくれるとは、実にありがたい。君がこの森の管理人であってるのかね?」


先程までルイドに攻撃されていた男が言う。

それを聞いていたリストの二人は驚きを隠せない。何せ、少女の事を都市伝説と言われていた森の管理人と呼んだからだ。


「おい待て、森の管理人ってあの都市伝説だよな?この森を作り支配しているという…」


ルイドは男にそう問う。

聞けば男はその問いに静かに頷いた。


「私の間違いでなければそのはずです。」


その少女は見た感じ10代くらいだ。

誰だって驚くであろう。だが、その少女に秘められた強大な霊力を三人とも感じており、半信半疑であった。


「…私は貴方を知らない。目的が何なのかも別にどうでもいいの。私の睡眠を妨害しないで、この森に近づかないで。」


そう少女は強く言葉を発した。


「失礼。私の名はラバー・ハーバルと申します。森の管理人様、貴方の力を我々に貸して頂きたくここに来ました。」


男、ラバーはそう語る。


「おいおい、テメェの目的はそこのガキかよ。森の管理人だか何だか知らねぇが、そこのガキは逃げろ。俺のハンマー、我流の巻き添えを喰らいたくなきゃな……!」


そうルイドはまたルイスにハンマー、またの名を我流を振り下ろす。ラバーはそれを簡単に避ける。

それをただ無表情に、静かに見つめる少女。少女はしばらく見つめたあと近くの木に触れ


「管理人の名において命ずる。枝うねり彼の者等を捕らえたまえ。」


そう唱えた瞬間、その木の枝が言う通りにうねり始め、ルイドとラバーを捕まえ、身動きが取れない状態にする。

ルイドは何とか動こうと藻掻く、その一方でラバーは感嘆の声を漏らしていた。


「素晴らしい!やはり主君の言うとうりです!さあ管理人よ、私たちに力を貸してください!」


そうラバーは拘束されていない右手を少女の方へ精一杯伸ばす。

だが、少女はそれを意に介さずもう一人のリスト所属メンバーを見て


「帰れ。」


そう冷たく言い放った。


「…ルイドさん、ここは一度本部に戻りましょう。」


「あ?!なんでだよ!ミルド!!」


ミルドと呼ばれた男は冷静に少女の事をその眼をもって分析する。

その結果が、撤退。ミルドはラバーはまだしも、少女には勝てないと悟った。一度本部に戻り社長に話した方がいいと判断したミルドはルイドの方をじっと見る。

それを察したのかルイドはしばらく黙ったあと渋々頷く。


「…帰るからこの拘束を解け。」


そうミルドが言うと少女はゆっくりと拘束を解く。すんなりと離してもらえた事に驚いたのか、ルイドは一度目を大きく見開くがすぐに普段の表情に戻りミルドの元へ歩く。そして本部へと帰路をたどる。

そこで何を思ったのかミルドは1度振り返り少女と目を合わせ


「貴方の名前は…?」


と問う。少女はラバーを少し離れた場所へ拘束を解き置きながら


「ライラ…」


そう小さく答えた。ミルドはその名前を聞いたあと ありがとうございます、ライラさん とお礼を述べ、その場を後にした。






その後、リスト本部についた二人はまっすぐ社長がいる部屋へと向かう。道中、リストを支援する人達に尊敬の眼差しを向けられ、ルイドは少し鬱陶しそうにしていた。ミルドは表情こそは崩さなかったが、あまりこの視線が好きではなかった。

社長室につくと、ミルドは扉をノックする。

中から返事が返ってくると


「「失礼します。」」


ミルドとルイドは部屋の中へ入る。

そこにはがっしりとした体格に額に傷があり、まさに歴戦をくぐり抜けたような人……ではなく、極一般的な、しかしまだ若そうな少年がいた。


「あぁ、ミルドとルイドじゃん!久しぶりだね〜社長は今出かけてるよ!」


そう呑気に話す少年の名はマイナ。

マイナはリストの社長の実の息子である。社長が留守の時は大抵マイナがここを管理している。

まだマイナは成人したばかりだが、社長譲りの才能と才覚を持ち、指揮系統に向いた頭脳を持っている。

だから、マイナが管理していることに誰一人として文句を言う者などおらず、むしろ戦争の支配者として闇社会の一部では恐れられていた。


「そうですか…ではまた後で出直します。マイナ君もお疲れ様です。」


「うんうん、気をつけてね〜!」


そう言ってミルドとルイドは一度社長室を後にした。

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