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ヒューマンドラマ・ホラー短編集

小瓶と感謝のガラス玉

作者: 宝月 蓮

以前見た光景で色々と妄想してみました。

 物心ついた時から、俺には何故か他人の頭の上に小瓶が見えた。勿論、自分の頭の上にもだ。

 小さい頃、その頭の上の小瓶は一体何なのだと親や学校の先生に聞いたら不思議そうな顔をされた。

 それで分かった。この小瓶は俺にしか見えないんだって。

 そして小瓶にはある秘密がある。


 会社からの帰宅途中、電車の中にて。

 大学生であろう男性が、目の前のお婆さんに席を譲る。

「良かったら座ってください」

「おやまあ、親切にありがとね」

 するとどうだろう。大学生の小瓶に、キラキラとしたガラス玉が入る。

 俺は小さい頃からこの小瓶とガラス玉は何なのかずっと疑問に思っていたが、それがだんだん分かってきた。

 電車の中で大泣きする赤ん坊に、オロオロする母親。

 その隣にいる女子高生は、リュックに付けている何かのマスコットで赤ん坊をあやす。

 すると赤ん坊はキャッキャッと笑い出した。

「ありがとうございます」

「いいえ。赤ちゃん、可愛いですね。笑ってくれて良かったです」

 女子高生の小瓶には、ガラス玉が2つ入る。


 駅から帰宅途中、ポケットからキーケースを落としたまま気付かない女性がいた。そしてそれを拾って届ける男子高生。

「危なかった。ありがとう」

「いえいえ」

 やはり男子高生の小瓶にガラス玉が入る。

 もうお分かりだろう。頭の上の小瓶は他人からの感謝というガラス玉が入るのだ。

「Excuse me」

 俺は突然観光客らしき外国人に声をかけられた。

 どうやら道に迷っているみたいだ。

 幸い俺は英語が得意な方なので、受け答えはできた。

「Thanks a lot」

 外国人観光客はは俺の説明で目的地への行き方が分かったみたいだ。

 ふと、店の窓に映る自分を見ると、頭の上の小瓶にはガラス玉が1つ入っていた。

 今日はビールでも買って帰ろうか。


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― 新着の感想 ―
素敵な世界……! たまるのがガラス玉というのもかわいらしいですし、主人公の見る景色を想像したらとても綺麗ですね。 ビールでも買って帰ろう、の主人公の小さなご褒美感も微笑ましくて癒されました。 宝月さん…
[良い点] 大きな善行ではなく、小さな優しさでガラス玉が小瓶に入っていくのが穏やかで優しい感じがして良かったです。 そしてちょっと良いことがあったのでビール、というのもふんわりとした穏やかさがあって…
[良い点] しみじみと気持ちに染み入る物語ですね。短さがキレの良さに繋がっている。 ラストの一言、すごく効いてると思います。 [気になる点] 凄くポジティブになれる物語で、別の要素を入れるとこの味が薄…
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