表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スリンガー -シングル・ショット-  作者: 速水ニキ
第4話 亡国の王/虚空の暗殺者《前編》
47/68

亡国の王/虚空の暗殺者《前編》p.7

 街から離れた倉庫街の一室にて、白いスーツを着た男がノートパソコンを開いて作業をしていた。


 男はどこか苛立たしげにモニターを睨みつけ、キーボードを叩く。


 すると、部屋の扉がノックされ、男の集中力が音の先へと削がれた。


「……誰だ?」

「やぁライアットさん。また来たよ」


 男、ライアットの許可を待たずして、扉が開かれた。


「ルスト、貴様よくその面を下げて来れたな」


 部屋に入ってきたのはレザーコートとピアスが特徴的な男、ルストだった。


 何が面白いのか、ルストの口角はつねにつり上がっており、本人の軽薄さがにじみ出ている。


「あはは。苛立っているねぇ、ちゃんと休んでいるかい?」

「ここ最近、我々が保有していた研究施設や獣の保管所を片っ端からスリンガーとやらに破壊され続けているんだ。挙句に誰かさんの報告が毎度遅いがために後手に回り続けている」


 ぎろりとライアットはルストを睨むが、男は大袈裟に両手を上げる。


「まぁまぁ、そう殺気を立てないで。良い話を持ってきたから」


 ルストはヘラヘラと怪しい笑いを浮かべて、携帯端末をライアットの机に置く。


「スリンガーについてもう少し深く分かってきたよ。あいつらは“組織“というグループに所属して集団で行動している。アンタも分かっての通り、あいつらは獣を殺すことができる」

「獣は通常兵器で殺すことは不可能なんだろ。奴らのタネは掴めたのか?」

「あぁ、それがやべーんだよあいつら。獣が獣を殺せるのを利用して、生捕にした獣の身体を銃に改造して武器にしてんだよ」


 ライアットの許可なくソファに深々と座ったルストは、手を銃に見立てて人差し指をライアットに向ける。


 不服そうに顔を顰め、ライアットはノートパソコンを閉じる。


「ふぅ……良い話をしに来たのではないのか?」

「まぁまぁ、話はここからだ。そのスリンガーの集団がこちらに近々強襲をかけてくる」

「……なんだと。どうしてそれが分かる」

「奴さんも一枚岩じゃないってことさ。内通者からおおよその作戦をもらっている。ついでに陣形や人員もな」


 ルストはポケットから携帯端末を取り出し、それをいじる。


「奴らの手の内は分かっているんだ。返り討ちに出来る可能性は十分にある。それと、強襲作戦に参加する奴らの中に面白いのもいるんだよ」


 ルストがテーブルに置いた端末には、獅子を思わせる金色の髪をたなびかせた、ジークの姿が映し出されていた。


「こいつは……エルランドの王子? 生きていたのか」

「その通り。こいつは敵さんが詰めの時に使われる想定だが、これを撃退できれば一旦は相手を退けることができるさ。その後“教団”と合流してトンズラする寸法よ」

「そうそううまく行くかは知らんが……ふん、なるほど。まだエルランドの生き残りがいたとはな」

「悪い話じゃないだろ?」


 不敵に笑うルストにつられ、ライアットはギラリと歯を覗かせて画面に映ったジークに怨嗟のこもった視線を送る。


「あぁ。かつて私を国から追い出した恨み、もう一度晴らさせてもらおう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ