表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スリンガー -シングル・ショット-  作者: 速水ニキ
第2話 銃士達の邂逅
24/68

銃士達の邂逅 p.10

 合流した四人は捕らえた獣を囲んで立つ。


 アメーバ型はリーエンが作った檻の中で尚暴れているが、僅かなヒビを作るだけで出られそうになかった。


「状況整理だ」


 ジークは三人を見渡して現状の事態を並べる。


「どういう訳か本来のターゲットを喰ってこいつが現れた。明らかにこいつの力量は本来の任務難易度を超えている。(コア)を撃っても死なない獣てのは過去にいた事例は無い」


 (コア)は全ての獣共通の弱点だ。


 通常兵器などで攻撃を加えても獣はすぐに再生し、対獣として開発された(ヴォルフ)ですら、獣を仕留めきるのに(コア)を撃つ必要がある。


「現状コイツを二体目撃している。が、二体とも(コア)をぶち抜いたところで再生しやがった。弱点が他にあるのか――」

「いや、違う」


 そう思案するジークを遮るように、リーエンが口を挟む。


「弱点は(コア)で間違いない。ただ、こいつは(コア)を二つ持っている。私とシャムが遭遇して捕らえたコイツと、メリッサと貴様(ジーク)が戦闘した奴がソレだ」


 リーエンは右目の邪術を発動したまま、獣を観察し続ける。


「おそらく二つの(コア)を同時に破壊出来ればコイツは討伐できるはずだ」

「本当にそれで倒せるの?」


 少し心配そうにシャムがリーエンに訪ねるが、リーエンは迷うこと無く首を縦に振る。


「私の眼は渦の流れや邪術を解析できる。この(コア)がもう一方の(コア)と渦で繋がっているのが見えている。この(コア)は二つで一つなんだ」


 リーエンは右目の赤い瞳で目の前の獣を補足し続けながら言った。

 メリッサはリーエンの考察を黙して聞いていたが、内心はリーエンに寒気すら感じていた。


 ただ邪術を発動しているだけだというのに、リーエンの瞳から漏れ出る渦に底知れぬ力量を感じ取る。


 息を飲むメリッサとは裏腹に、ジークはふん、と鼻でリーエンを笑う。


「妙に協力的じゃねぇか。やる気がねぇって話だったんじゃねぇのか」


 変わらぬ上から目線で言うジークを、リーエンは静かに睨み返す。


「……べつに。ちょっとした気まぐれだ」


 さらりとリーエンは応えるが、口調はどこか影を落としている。

 しかしジークは全くそれを気に止めず、 パン、と拳を叩き、歯を覗かせて笑う。


「ともかく、種は割れた。後はぶちのめすだけだ」

「よーし、頑張ろう!」

「……」


 ジークに感化されてぴょんぴょん飛ぶシャムと、何を考えているか分からないがリーエンは黙して指示に従う様子だった。


 それまで一連の様子を眺めていたメリッサに、シャムが飛びついてきた。


「メリッサはもう飛び出しちゃ駄目だからね。これは命令なのだ!」


 シャムはメリッサの胸目がけて顔を埋めようとするが、メリッサの手がそれを阻止する。


「謎が解けたなら、私だけでもやれる」


 メリッサの手とシャムの頭が鍔迫り合いをしている中、ジークは煩わしい様子で頭をかく。


「まだ信用出来ねぇ、て面だな」

「べつに。集団で挑んだからって、獣を必ず討伐出来ると思ってないだけよ」

「俺様達を信用する必要はねぇ。だが、ここにいる全員が獣共のドタマに鉛玉をくれてやりたい集団だってことを忘れるな」


 ジークは避雷針が落ちている方角へと歩き出し、シャムとリーエンもそれに従って歩き始める。


「俺様達は獣を殺す銃弾になれればそれで良い」


 その言葉は冷たくも、メリッサにとってどこか馴染み深い響きにも聞こえた。

 しばらく思案したメリッサは、少し遠くを歩く三人を追って足を進める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ