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スリンガー -シングル・ショット-  作者: 速水ニキ
第2話 銃士達の邂逅
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銃士達の邂逅 p.2

「ったく、これでここに来るのは何度目だお前は」


 とある執務室に呼び出され、メリッサは両手を背中に組んで起立する。

 目の前の机に座って呆れ声を上げた男に、メリッサは悪びれもせずに「さぁ?」と応えた。


「十回から先は覚えてないわ。毎度呼び出しても効果はないと思うわよ、ヴィン」


 目の前に座る男、ヴィクセントは深いため息を吐いた。


 四十代半ばで髪の所々には白髪が生えており、顎を覆う髭も相まって年相応の貫禄が見え隠れする。


 だが、室内にいるにも関わらずサングラスを掛け、机の上に置いた酒類などから、普段の素行の悪さが見え隠れしている。


 メリッサ達スリンガーと同じ団服を着ているが、あちこちの擦り傷などから長らくその団服と戦場を共にした歴戦の戦士であることが窺えた。


 そんなヴィクセントを前にしても、メリッサは一切物怖じすることなく、ふんと鼻息を鳴らす。


「ただでさえ最近は獣の数が増えてるのに、集団で数体だけ狩るなんて効率が悪いのよ」

『そうだそうだ、ウチのメリッサちゃんにチームワークなんて存在しねぇんだよ!』


 メリッサに続いて、腰にかかっていたルーズが声を上げる。

 ヴィクセントは机に置いた酒を取り、ボトルを直接口へ運んで酒を喰らう。


「――ったく、お前ら。チームを組んで討伐に挑むのは生存率を上げるためだって訓練で習ってるだろ。それからルーズ、お前もあんまり任務中に喋るな。メリッサがお前を使ってるだけでも気味悪がられるってのに、茶化したら関係を余計に悪化させるだろ」


『へーい、善処しやーす』


 一切の反省の色を見せないルーズを放り、メリッサは内心納得がいかず一歩前に出る。


「ヴィン。私にバレッツの資格を付与して。それがあれば単独で任務に就いても問題ないでしょ?」


 淡々としたいつもの口調で主張するが、ヴィクセントは「ハッ!」と笑う。


「バレッツは組織の中でもトップの実力を持った奴にしか与えられない資格だ。訓練を修了して半年そこいらのお前が貰えるような代物じゃねぇよ」


 ヴィクセントは持っていたボトルを机へ戻すと、サングラスの奥からメリッサをじっと睨む。


「お前はバレッツの資格を貰うどころか、現在進行形で処罰も検討されてんだぞ」


 ヴィクセントがそう言うと、メリッサは眉を潜める。


「は? どういうことよヴィン」


「どうも何も、そのままの意味だ。命のやりとりしてる戦場でチームとの連携が義務づけられてる以上、命令無視の単独行動してるやつを野放しにはしないだろ」

「……」


 メリッサは憤りを感じながらも静かにヴィクセントを睨む。

 だが、意向がそう簡単に覆るはずもなく、組織の副団長はふんぞり返るだけだった。


「さて、そろそろかな」


 ヴィクセントは時計に視線を送り、メリッサの後ろの扉の様子を伺った。

 すると、扉が勢いよく開き、メリッサも思わず振り返る。


「おっじゃましまーす!」


 意気揚々と入ってきたのは栗色の髪をした女性のスリンガー。

 ショートボブに切りそろえた髪をふりふりと振りながら、メリッサとヴィクセントを交互に観察する。


「おいシャム、うるせぇぞ」


 元気に入ってきた女性スリンガー、シャムに続き、大柄の男と、その後ろから性別が男性とも女性とも判断しづらい中性的なスリンガーが入ってくる。


「シャム、ジーク、リーエン」


 部屋に入ってきた順に、メリッサはぽつりと彼らの名前を呼ぶ。

 すると、大柄の男ジークの後から入ってきた男(女?)リーエンがメリッサの存在に気づく。


「メリッサも呼ばれたのか?」

「えぇ。訓練所以来ね」

「わー! メリッサ、久しぶり! 元気してた?」


 メリッサとリーエンが挨拶を交わしているとシャムが割って入りメリッサに飛びつく。

 だがメリッサは無遠慮にシャムの頭を鷲掴みにして遠ざける。


 メリッサは手の中で「いけずー!」と叫ぶシャムを抑えながら、ちらりとジークへ視線を向ける。


「ふん」


 ジークは何も言わずにただ鼻息だけを吹いてメリッサを見下ろす。

 メリッサはそれを見て自然と手に力が入った。


「いだだだ! 頭が潰れる!」


 未だメリッサに頭を鷲掴みにされているシャムの叫びをよそに、メリッサとジークはしばらく睨み合い続けた。

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