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スリンガー -シングル・ショット-  作者: 速水ニキ
第2話 銃士達の邂逅
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銃士達の邂逅 p.1

 銃声と獣声がまるで食い合うように、木々が生い茂る森の中を交差する。

 金色の髪を揺らし、メリッサは銃を片手に駈ける。

 すると、木々の向こう側から羽音が聞こえてきた。


 視線を凝らすと、木々を縫うように大きな物体が飛び、メリッサに接近を試みていた。

 ソレは人間と同じ大きさのハエと酷似していた。

 だが、頭部はハエの見た目とはかけ離れている。


 むき出しの脳が膨張し、それがそのまま頭となっていた。

 脳の形をした頭には口が突き出ており、鋭い牙を覗かせる。

 メリッサはその獣へ銃弾を放つが、獣は猛烈なスピードで弾丸を躱す。


 立て続けに銃弾を撒き散らすも、マガジンが銃から飛び出し、弾切れを知らせる。

 ここぞとばかりに、獣はスピードを一段上げて突撃をしかけてきた。

 しかし、獣は唐突に宙でバランスを崩して地面へと落ちていった。


 不規則に飛び回る獣の動きはそう簡単に捕らえられるものではないが、メリッサの動体視力はそれを上回っていた。


 ハエ型の獣の羽には銃弾によって空けられた穴が幾つもあり、メリッサの狙いが始めからそれだったことを獣は今更理解した。


 敵に向かって走っていたメリッサは、落ちてくるハエ型の真下で止まると、それを真上へと蹴り上げる。


 再び天高く飛ばされた獣を睨みながら、マガジンを再装填。

 むき出しの殺意を持って天に向かって引き金を引いた。


 宙で身動きが取れなくなったハエ型の獣は弾丸を何発も喰らい、銃弾のあまりの衝撃に身体がバラバラに千切れていく。


 獣の血肉がメリッサの身に降り注ぎ、メリッサは顔にかかったそれを鬱陶しそうに拭う。


「メリッサ! 突っ込みすぎだ!」


 メリッサの後方から、メリッサと同じ団服を着た男が叫びながら近づいてきた。


 男の後ろには他にも同じ服装をした者が数名おり、メリッサと同じスリンガーであると示す。


「単独行動は控えろ! お前の勝手な行動で仲間に危険を及ぼすんだぞ!」


 男は眉間に皺を寄せながらメリッサに詰め寄るが、彼女にとっては煩わしい以外の感想は出てこない。


「結果的に私一人の行動で任務を完遂できたでしょう。団体行動をしていたら討伐の効率が落ちるわ」

「なんだと!」


 激高した男がメリッサの胸ぐらを掴もうとするが、メリッサは男の手を払う。


『ケハハハ! 無傷で任務は終わったってのに文句垂れるのか。面白いな人間てのは!』


 メリッサが握っている生きた銃、ルーズが吹き出し、男の火に油を注いでいく。


「銃の分際でしゃしゃり出てくるんじゃねぇぞ!」


 男は懐からルーズと同じ形をした銃を取り出し、照準をルーズに合わせる。

 反射的にメリッサもルーズの照準を男に合わせ、結果的に二人は互いに銃を向け合うかたちになる。


「おいおい、なにやってんだよ!」


 男の後ろにいた残りのスリンガー達が慌てて介入してきた。

 スリンガー達は男を止めるが、メリッサから男を守るように間に割って入ってくる。

 止めに来た者全員が、メリッサへ奇異の視線を投げてきた。


 ある者は怒りを、ある者は戸惑いを、ある者は恐怖を、ある者は嫌悪の感情を浮き彫りにしている。


 それぞれの感情を感じ取ったメリッサは、胸のどこかがチクリと刺激されるも、それを誤魔化すようにルーズを腰の裏に吊っているホルスターへ仕舞う。


「お前の単独行動は流石に目に余る。あとで上に報告するからな」


 男が他の者達に止められながら、メリッサへ訴えかける。


「好きにしなさい」


 メリッサはそれだけを言い残し、その場を去った。

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