魔女の恋人がいる俺だが2
メディアレナと俺はベッドに横になって向かい合っていた。
そう…………俺は、彼女に添い寝をしている。
「…………………レナ、脱がせた方がいいか?」
「何を言ってるの?」
「まだ身体は未成熟だが、テクニックには自信がある」
「そういうところ変わらないのね。やっぱりリトだわ」
小さく笑って懐に入り込むように彼女が身体を寄せてきて、俺は「あ!あうあう」と何もしていないのに喘いだ。
「きゅ、急にどうしたんだ?」
メディアレナに抱き締められたことは何度かあったし、添い寝してくれたこともあったが、自分が逆の立場になると、途端にどうしたらいいのか分からなくなる。
「…………リトがリトだって分かったから、遠慮しなくていいのかなって思って」
「レナ、やはり脱」
「一緒に眠って欲しいだけなの」
服の襟を握って、彼女は子供のように甘えている。その仕草を見ていたら、これが本来の彼女なのだろうと思い至った。
可愛い、凄いキュンキュンするぞ。
「一応確認したいんだが、もし今お前に飛びかかったら………」
「どの魔法がいい?」
「いや、どれも遠慮します」
魔女には勝てそうにない。俺は大人しく服を着たまま聖人を気取ることにした。
彼女の背を軽くトントンと叩く。
「怖い夢でも見るのか?」
「…………………………」
俺に額を擦り付けるようにする彼女に何気無く聞いて、すぐにハッとした。
「見るんだな………………そうか」
俺が悪夢を見るぐらいだ。無惨な最期を迎えていながら前世の記憶を持つメディアレナが見ないわけがない。
「レナ、こっちを向いて」
懐に顔を埋める頬に触れると、俺の顔を見上げる彼女と目を合わす。
「悪夢は、どのくらいの頻度で見ているんだ?」
「ほぼ毎日」
ズキン、と胸が痛んだ。
「お酒で酔って眠れば見ないこともあったのよ」
「…………レナ」
初めてこの家を訪れた時にあったテーブルに積まれていた酒瓶。あれは彼女の苦しみの表れだったのか。
「でも不思議なの。リトが来てくれて一緒にいるうちに、夢をあまり見なくなっていったのよ。だから………今夜は見ないわ」
柔らかく微笑み、俺の腰に手を回す彼女に俺の方が泣きたくなる。
「守ってやれなくて、すまなかった」
「謝らないで」
「俺を恨んでいないのか?」
そうだ、彼女は俺や世界に復讐する正当な理由がある。魔女となることが復讐だなんて生易し過ぎる。
「恨む?リトを恨むわけない」
「世界に復讐しようとは思わなかったのか?こう…………世界を破壊し尽くすとか」
そう聞けば、メディアレナはキョトンとした顔で俺を見つめた。
「考えたことなかったわ。できないことないけれど面倒くさいし、ただランスロットに会いたかっただけなの」
そうか、できないことはないのか。
「それに、この世は結構優しいの」と言い切られ、いたたまれずに彼女の頭と背中を抱き締める。前世のアリシアの最期を思えば、到底簡単には言えないことだろうに。
「私が転生した主な理由は、あなたに逢う為だったから」
「レナ」
「ねえリト、私達……………今度は幸せになれるかしら?」
俺に抱きついたまま、顔だけを上向かせたメディアレナは、天窓に広がる星空を眺めて呟いた。
「俺が人間に転生した理由は、お前を幸せにする為だ。だから」
彼女のこめかみにキスを落とすと、顔を寄せたまま俺も星空に目を向けた。
「取り敢えず、今夜は良い夢を見ような」




