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意外に強かった俺だが2

 繰り出された攻撃を避けきれずに、模擬刀で受け止める。


「うっ」


 強い力が掛かり両手で支えるが、腕が軋むように痛んだ。明日は筋肉痛だな。


「うおおおお」


 悪鬼のような形相をしたランディが、更に力をかけてくるので、俺はとうとう地面に片膝をついた。

 ランディの顔つきが面白すぎて力が入らないせいでもある。相手は本気なので申し訳ないが、目を大きく開けて、鼻の穴も開いて息する度にスプスプ動いてるし、口から見える歯がガチガチと忙しなく音を出している。

 笑うな、笑ったら負けだ!


「リト!」


 いつもの清廉な声がして、そちらを向いたらメディアレナが立っていた。


「メ…………レナ!」


 今しがた知って駆け付けたらしく、長い髪を靡かせて、いつものシンプルなワンピースを着て心配そうに俺を見ていたが、すぐにイサルの元へと歩み寄り問い詰めた。


「陛下、これはどういうことです?リト一人で何人の者を戦わせたのですか?」

「そ、それは…………」

「皆して、リトに何をしたのです?」

「何をしたというか、こちらがやられて……………」

「私の大事な人に危害を加えるなら、この国がどうなっても知りませんよ」


 い、今怖いこと言った!


「………レナ」


 俺のために怒ってくれるのは嬉しい………嬉しいが、俺のために国を滅ぼしてはダメだぞ。傾国の魔女の弟子なんて、どんな伝説だ?


 目を逸らしながら、しどろもどろに答えるイサルに彼女が尚責め立てようと口を開こうとするのを騎士団長の変顔を見ないようにしながら制する。


「レナ、いいんです。大丈夫だから」

「でもこんな一方的な……………?」


 ようやく気付いたらしい。メディアレナが、まだ失神中だったり悔し泣きしたり呻いて転がる9人の騎士達を不思議そうに見つめた。


「俺、あなたのお蔭で強いんですよ」


 受け止めていた自分の模擬刀を押し返すのではなく、刀身に沿って横に流したと同時に身を引き、地面を倒れるようにしてわざと転がった。


「ぬっ!?」


 勢いのまま、模擬刀で地面を抉って前のめりになった騎士団長だが、素早く体勢を立て直すと俺を追いかける。

 一度切り結び、鍔迫り合いになるのを避けて距離を開ける。


「リト」


 不安そうに胸に両手の拳を当てる彼女に笑いかける。


「約束守ってくれるんでしょう?心配しないで信じて見ていて」


 保護者のように心配されたくはない。ちゃんと『俺』を認めて欲しいだけ。


「……………分かったわ。見届ける」


「そうだった」と頷いたメディアレナは、唇を結ぶと俺だけを見つめた。


「団長、頑張れ!」

「エリオットさんも負けるな!」


 騎士達がランディだけでなく、俺にも声援を送るようになってきた。しかも『君』から『さん』付けに変わっている。

 同じ剣を扱う者として、戦いを通して自然と仲間意識が生まれつつあった。


「その歳で、その剣の才……………エリオット殿、欲しい欲しいぞおおお!」


 ランディは『殿』付けか!いや、それよりもキモいぞ!


「ちょっ、欲しいって気持ち悪いんで」

「ぜひ俺のものに、いや騎士団に欲しいぞ!!エリオット殿!」

「うえ」


 目を血走らせて走って来るおっさんに、初めて恐怖を感じて慌てて後ろへ下がる。


「俺の求める(おとこ)を、やっと見つけたぞ!」

「おえ」


 おっさん、言い方!


 怯んだ俺の肩に、奴の刀身が叩き付けられる刹那、身を屈めた俺の攻撃が相手の脇腹に入った。


「きゃあ、リト!!」


 メディアレナが悲鳴のように俺の名を叫んだ。


「ぐっ」

「があっ」


 僅かに時を止めていた俺とランディだったが、二人同時に地面に倒れてしまった。


「ふっ、たいした(おとこ)だ………………エリオット………ど、の」

「うう」


 ガクリと気絶してしまったランディを横目に確認し、肩を押さえて痛みに呻いた。


 クソ、計算の内とは思えないが、奴の精神攻撃にまんまと嵌められて相討ちとは悔しい!


「リト」


 そっと頭を抱えられたと思ったら、メディアレナに膝枕をされて傷めた肩に手を重ねられる。


「レ、ナ」

「よく頑張ったのね、お疲れ様」


 仰向けにされた俺は、青空を背後に見下ろす彼女の青い瞳から雫が生まれるのに驚いた。


「な、泣かなくても」

「だって………………あなたが傷付くのを見るの、辛いもの」


 肩に治癒の魔法が掛けられて、俺は両腕を持ち上げて彼女の頬を挟むようにして包んだ。


「泣かないで、ごめんなさい」

「…………………リト」

「はい」


 一度、きゅっと唇を噛んでから、メディアレナは俺をしっかりと見つめた。


「私は、リトを愛してる」

「あ……………」


 俺と彼女を見ていた周りの人々が、ハッと息を呑む。


「…………………レナ」


 どうしてこう思い切りがいいのだろう。堂々として強くて弱くて優しいメディアレナ。全く…………そんな彼女を好きにならないわけがない。

 俺の胸の奥にあるものを揺り動かす、たった一人の女性。


「俺も、レナを愛しています」


 負けないように高らかに宣言して、俺は身を起こすと彼女を抱き寄せて頬を重ねた。






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