意外に強かった俺だが
「フハハハハ、大口叩いた割にはその程度の力とは、弱すぎて物足りないな!」
「く、クソ……………こんなガキに」
おっと、つい悪役の定番の言葉が口を付いてしまったか。
足元に倒れ伏す5番手の騎士は、それなりに強かった。だが魔女に鍛えられた俺は、自分でも驚くほど腕を上げていた。
最初の騎士見習いなんて「は!こんなチビッ子の相手なんてできっ、ぐふうっ」と、皆まで言わせる前に横腹に一発(模擬刀を)叩き込み即失神させてやった。
「次!」
5番手が肩に担がれて連れていかれて、代わりに6番手の若い男が前へと出て来た。
「始め!」
周りで見物していた騎士団の連中も、最初の時のように「うわ、可哀想な坊や」と冷やかしや意地悪そうに見ていた奴も多かったようだが、今はそれぞれ違う声援や野次を飛ばす。
「おい油断するな!」
「生意気なガキの鼻をへし折れ、比喩じゃなく!」
「魔女様とイチャつきやがって、羨ましい!」
「ここまで来たんだ、最後まで勝ち抜けよ!」
「お前、魔女様と本当はどういう関係だ?子供なのを良いことにちゃっかり懐に入りやがって悔しいいい!!」
まあ大体は嫉妬だな。
6番手の二十代後半らしき青年が、真剣な顔をして口を開く。
「よくここまで勝ち抜いて来たな。エリオット、まずは褒めて、うがっ!」
「何のラスボスだ」
もはや丁寧口調をする気にもならず、ボス的セリフを吐き切る前に6番手の胴に模擬刀を食い込ませた。
「つ、強い……………」
ガクリと意識を無くした6番手。
「フン、口ほどにもないな!」
釣られてしまって、恥ずかしいセリフ吐いちまったぞ。
「あのガキ、いやエリオット君なかなかだな」
「こりゃあ本気出さなきゃダメだわ」
見守る奴ら、他人事だとばかりにのんびりしてるな。大丈夫か、シェルマージ王国第一騎士団。
「次は私の番ですねえ、ひょほほほほ」
ひょろりとした痩せた男が出て来た。目つきが悪くて、殺しを生業にしてる感がある危ない顔つきだ。
「さぞかし君の血は鮮やかなんだろうねえ、きっと腹を裂いたらピンクの臓器が、うげっ」
「何の悪役だ、予想に違わぬセリフ吐きやがって」
個性派揃いだな。本当に大丈夫か、騎士団!
「8番手!カトリナ行きます!」
8番手は二十代半ばの女性騎士だ。キリッとして真面目そうな顔つきでこちらを見据える。
困ったな、女の子相手は苦手なんだよな。
俺には女の子は守るべき者であり、傷付けるなんて考えたくもない。性差別とかではなく、身体的な差異を踏まえて思うのと、命を育む器である貴ぶべき身体を敬ってのことだ。
そうだ、俺はアリシアと出逢い改心したのだ。
好きな女性であるメディアレナとの戦いは、尚更苦しい思いをしたものだが、彼女は俺より強かったからな。本気でかからないと痛い目を見ていたぐらいだったから、まだ安心できたものだ。
「カトリナ!頑張れ!」
「カトリナ、君ならいける!」
まだまだ数少ない女性騎士だ。こんな男だらけの騎士団で苦労しているかと思ったが、アイドル的な位置のようだ。皆の声援に熱が入っている。
「小僧、彼女を傷付けてみろ!許さないからなあ!」
「私は大丈夫!女である前に騎士なのだから、傷の一つや二つ、きゃあ!?」
「ごめんなさい」
一歩踏み出しながら、模擬刀を横に振った時には、カトリナさんの手から刀が跳んで地面を転がっていた。
「そ、そんな…………」
ガクリと膝をつくカトリナさん。
「私の負けよ」
「ええっと、ごめんなさい」
思うのだが、いちいちどこかで聞いたようなセリフを吐くのは流行りなのか?あと前置きいるの?
大丈夫か、騎士団!
「……………なかなかやるな、想像以上だ」
褒めてくれているのは分かるが、騎士団長、あんたのセリフも聞き覚えあるぞ。
「こんな子供相手に何をしているのだ!それでも国を護る騎士団か!?」
……………………焦りを滲ませるイサルよ、お前もだ。
俺は次はどんなセリフが聞けるのかと秘かに楽しくなりつつ、9番手をそれなりに打ち合ってから叩き伏せた。
俺はどうやら魔女によってチートにされていたようだ。
「よくぞここまで辿り着いたな、俺で最後だ」
おい、騎士団長。
俺の前に、ゆらりと立つランディが、やはりラスボスを意識してニタリと嗤った。
筋骨隆々とした見事な体躯は、相当な鍛練を積んで築いたものだろう。
力では勝てないのは一目瞭然だ。だが素早さと敏捷性、小回りが効いて有利なのは俺の方であるはずだ。
「行け、ランディ!捻り潰してやれ!」
イサル、お決まりか!
「散っていった仲間の為にも俺は負けんぞ!我が騎士団の誇りに掛けて!」
ランディ、誰も殺していないから縁起悪いことは言うな。どういう設定に浸っている?
「うおおおおお!!」
気合いの雄叫びと共に、ランディが俺に先制攻撃を仕掛けようと走り出た。
「くっ!」
思ったよりも素早い。
「許せ!俺にはお前と同じくらいの年の子供がいるんだ!辛いがこれも仕事だ!」
定番ばかりで聞き飽きたぞ!




