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EP.リスタート

「それじゃあ、クエストの成功を祝して乾杯」

「「「乾杯!」」」


 王都にあるラック酒場にグラスをぶつける音が鳴り響くも、すぐさま周りの喧騒にへとかき消されていく。

 俺たちはグラスに入った蜂蜜入りのノンアルコール麦酒を一気に飲み干した。

 炭酸が喉を通り、今までの疲れが抜けていくのを感じる。

「はぁ~っ! ようやく休めるぜ! まさかまたアルバの街で働く事になるとは思わなかったけどな」

「ですがわたしのポーションの効果、すごかったでしょ?」


 確かにすごかった。

 シュラ戦があると思い、張り切って俺はポーションを呑み極限まで体を高めたが、キャロルたちが撤退してしまったことによりその力を使うことはなかった。

 その結果どうなったかと言えば、俺は有り余る力を使いアルバの街の復興作業を手伝うことになったのだ。

 ポーションのおかげで俺は夜通しでも疲れず、着々と作業を進められたため、次の朝には街の修復が終わるという驚異のスピードで街を直すことに成功。

 それでも体力の余った俺は、三人を肩に乗せて一日で王都にへと舞い戻り、帰ってきたのである。

 尚、着いた瞬間に効果が切れて丸一日寝るハメとなったというオチ付きである。

 

「あのポーション、確かに強力だけど迂闊には使えないな」

「ですね、まだまだ調整が必要がありそうで楽しみです!」

「なんでもいいですけど、もう当分は私は休みますわよ。というか、休ませてもらいませんと私の体が持ちませんわ……」


 げっそりとした顔をするベルルートを見ると確かにヤバそうだ。

 俺も正直働きすぎたし、少しは休みたいものである。


「そうだな。次の魔王幹部がどこにいるのかも分からないし、情報が入ってくるまでは大人しくするか」

「そうですわよ! 鍵も一つ手に入──むぐッ!」

「あほ、大きな声で騒ぐな」


 鍵を手に入れたなどともし誰かに聞かれれば、他の冒険者たちに狙われる可能性が出てくるのだ。

 いくらレベルが20を超えたからといって迂闊に言っていい話題でない。

 ベルルートにそのことを耳打ちして、相づちしたのを確認して手を離してやった。


「ならわたしもしばらくは研究に専念できるというわけですね! ふふふ! 楽しみです! そうだ、この際、ナナシさんのお体も調べさせてもらってもいいですか?」

「……やっぱり調べたい?」

「はい! 是非ともナナシさんのその秘められたその秘密、探ってみたいです!」


 どうやらどうしても俺の体を調べたいらしいが、どうしてものか。

 確かにこの不具合が直る手がかりが見つかる可能性があるのだから、俺としてもやってもらいたいのだが、その……なんだか絵面的にまずい気がする……。


「駄目だ! ミライ!」

 

 いきなり聞こえてきた声に振り向くと、黒髪で眼鏡をかけた一人の男性が仁王立ちで立っていた。

 黒髪……? まさかこの人て……、


「お、お父さん!?」

「うん、多分そうだと思った」


 この世界で黒髪の人物など、そんなに多くはない。

 ミライが父親といったその人物はミライにへと近づいてしゃがみこむと、彼女の手を握った。


「お前なぁ~! 心配させるなよ! お父さん思わず巨大ロボでも作ってお前を探すところだったんだぞ!?」

「あはは! ごめんてお父さん、でもお父さんが悪いんじゃん、わたしが旅に出るの反対するし」

「当たり前だろうが、お前の歳でまだ旅は早いんだよ!」


 確かに十歳で旅に出るのは早いわな。それは心配する。


「せめて旅に出るとしたら、俺と母さんが死んでからだ」


 いや、それは時間が経ちすぎだろ。なんとなくミライが無理矢理旅にでも旅に出た理由が分かった気がする。


「さあ帰ろう! ミライ! お父さん、ミライが心配で心配で死んじゃうところだったんだぞ!」

「いやです! わたしはナナシさんという最高の研究素材が見つかったんです! それにみんなで魔王を倒すんです! だから帰りません!」

「そんな物よりもいいもの見つけてきてやるから! 魔王もお父さんが頑張って倒すから、頼むよミライ! お父さん、ミライがいないと夜も眠れないんだよ!」

「嫌です! ナナシさん以上にミステリアスで研究しがいのあるものなんて、他にありません!」

「駄目だ駄目だ! お前みたいな超絶美少女、こんなぼんやりとした顔の男の近くに置いとけるか! 何をされるか分かった物じゃない!」

「むぅ! そんなこと言うお父さんなんて嫌いです!」

「ごめんなさい許して嫌いにならないで! お父さんミライに嫌われたら死んじゃうよっ!?」


 ミライは口を膨らませて、父親と目を合わせなくなってしまった。

 それに本気でショックを受け涙目となる父親は、ミライから視線を移して俺を見た。その瞳には殺意が浮かんでおり、「殺す」の二文字が書かれている。


「そうかそうか……つまり貴様がいなくなればいいだな……? そういうことなんだな……?」

「え、ちょっ……ぎゃっ!」


 そんな不穏な言葉を言った後、ミライ父は衣服の下から機械の腕を無数に出して俺の体をしっかりと掴んだ。

 他の腕からはドリルやメスのような刃物が取り付けられており、俺に向かって迫って来る。


「なんだよその典型的な科学者キャラみたいな武器は!?」

「ほう、そんな感想を持つということは、貴様転生者だな! ならますますミライの傍にいさせるものか! これでなんかの拍子に娘とフラグでも立てられたら洒落にならんッ!!」

「な、ナナシさん!」

「ひ、ひぃっ……!」


 俺はひたすらにそれらを抜けだそうとしても、ビクともせず、むしろもがけばもがくほどに体にへと強く引き締まっていく。

 周りではそんな俺たちのその状況を、喧嘩の一種として取られて賭けが始まっていた。

 仕切ってたのたはラックさんである。あの人は──ッ!!


「や、止めろぉー!」


 機械の腕がもう少しで顔にへと到達する──がその直前、腕は四方八方バラバラとに崩れ去り辺り一面にへと飛び散った。

 だが、別に刃物で切られた訳でも、力で無理矢理壊された訳でもない。

 明らかにそれは、誰かの手によってバラされたものだった。

 では誰がそんな芸当をしたのか。

 その答えはミライである。

 彼女の手には一本のドライバのような工具が握られており、その先端にはネジのようなものが付いていて振動で床にへと落ちた。

 

「全く、どうしてお父さんはわたしよりも頭がいいのに、わたしが絡むとわたし以上にバカになるの!」

「だ、だって! だってミライに帰ってきてほしいから……」

「ナナシさんをバラしたらわたし、お父さんのこと一生嫌いになるから」

「ははは! ごめんなナナシくん! これからは仲良くしようじゃないか!」


 先ほど俺を殺しに来たとは思えないほどフレンドリーに語りかけてくるミライ父だったが、目だけは笑っていなかった。

 確実に娘の前だから無理矢理そうしていることが分かる。

「なら分かった。こうなったら仕方が無い。お父さんも少しだけミライたちと同行する」

「……え?」

「お母さんはいいの? お父さん?」

「ああ、家セキュリティは万全だ。何かあれば、量産型ロボットたちが侵入者をデストロイしてくれる。NTR展開になることもないだろう」

「そっか、なら安心だね!」


 ロボット? このファンタジー世界でそんなもの作ったのか、この人?

 いや、先ほどの機械の手からして予想できるか。

 ミライ父は再び俺の方向にへと向きを直すと、手を差しのばして握手を求めた。


「というわけだ。これからよろしくな、ナナシくん?」


 無理矢理掴まれた手からにじみ出る、強い怨念。そこには俺に対しての宣戦布告の意志が感じられた。

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