第一章 出会いの思い出
第一章 出会いの思い出
壮麗で、優美なつくりの城は、ひどくにぎわっていた。
かつらをかぶり、装飾品でかざりたて、布を無駄なくらいに使った衣装を着た貴族たちが、わんさと城内を行き来している。
笑いさざめきが時々起り、時々、楽しそうでひときわ高い笑い声がひびく。
その夜も、定例どおりに、舞踏会が開かれていた。
王都にいる紳士淑女が集まり、情報を交換し合う。
今日は、国王の誕生日だ。
そんな人の波の中を、楽しそうに歩く少年が一人いた。
礼装は身につけているものの、比較的簡素で、動きやすい服装をしている。
すそのふくらんだ短いズボンなどをはいている人々を横目に、少年はくるぶしくらいまである長い貫頭衣をまとっていた。
が、それでもその少年はよく目立った。
夢見る乙女が望む姿そのものの白馬の王子さながらの容姿をしているせいだ。
金色の巻き毛に、大きな碧玉の瞳。
白い肌に、整った鼻筋。
その少年こそ、ハルファリア王国の第一王子そのひとだった。
名を、ラトゥルフェルク・ニリム・ハルファリアという。
本人は至って気楽に、ラティって呼んでよと言っているが、まわりは困り果てていた。
そういえば、とラティはふと昔を思い出した。
実は去年、ラティは体を少し悪くして、別荘で療養していたことがあった。
その時に、今は当たり前のようにそばにいる少年と出会ったのだ。
そんなことを思い返していると、その少年、ルーヴィンが駆け寄ってきた。
「殿下、こんなところにおられたんですか。
陛下がお呼びですよ」
「ああ、そうか。
そう言えば、まだ祝いの言葉とか言っていなかったっけ。
まあ、もういい加減中年で、毛もより薄くなりつつある年を食ったというのをわざわざ祝われるのを悲しんでますか、とでも言ってこようかな」
「またそんなことを」
ルーヴィンは呆れたように溜息をつくと、ラティの腕をとり、引っ張った。
「ほらほら、とにかく行きますよ」
「ああ。
なあ、ルーヴィン。去年のことを覚えているか?
僕はここにいなくて、お前はまだ貧乏な子供だったよな」
「ああ、そうですね」
ルーヴィンは、ラティを引っ張るのをやめ、立ち止まると、窓の外に広がる暗闇を見つめた。淡い微笑みが浮かぶ。
「あの時も、夜でしたよね」
「ああ」
ラティは頷いた。
脳裏に、昨年の冬のことがよみがえってきた。
軽く楽しめるコメディを目指しました。
よろしくお願いいたします。コメントをいただけると、励みになります。