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大空への夢を、異世界でもう一度!  作者: ふみ狐
二章 ~追いかけ続けていた翼~
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五一話 ~死闘 決戦~

だいぶ時間が開いてしまいました。

リアルが忙しくなり始めたのですん。


長かった野球回もこれで終わりです。

「ぬわぁぁぁぁぁんおかぁさぁぁぁん!!!!」

「ぐぬぬぅ……」


 スタングレネードで目と耳をやられたシルヴィア隊長を筆頭に、海兵隊チームは死屍累々状態となっている。

 二番バッターガレット副隊長には非致死性の催涙ガスグレネードを投げつけ、三番バッタートニーさんにはスモークグレネードで審判の目を奪ったのちにHMDのサーマル機能を使って顔面デットボールをお見舞いし、三者凡退に抑えたシャルロットさん。


 もはやこの三名は継戦能力のほぼすべてを奪われ、ベンチで衛生兵の手当てを受けている始末だ。


「戦争だ……」

「ある意味戦争よりえげつないよね」


 意気揚々とベンチへと戻るシャルロットさんとは裏腹に、空軍チームのほとんどがドン引き真っ最中。フレイアだけは何が起きたのか理解できずに、とにかく点を取られなかったということを無邪気に喜んでいるけれども……。


 こんなスポーツマンシップのかけらもない野球、元いた世界でもこの世界でもあってたまるものか。


 でもキャプテンシャルロットさんは、なんの悪びれもなくベンチで攻撃の準備を進めている。

 ここまでくると、いっそすがすがしい。


「ま、まぁ最初に戦車持ち出してきたの向こうだし、自業自得……かな……?」


 そう自分に言い聞かせ、苦痛のうめき声が絶えることのない海兵隊ベンチに背を向け、俺も自軍のベンチへと足を向けた。

 背中に突き刺さる怨嗟のまなざしがとても痛い。俺はなにもしてないのに……。



 しぶしぶとベンチに集まる空軍チーム面々。

 その中心には、キラキラした目でワクワクを抑えきれないとでも言いたげなこのチームのゲスキャプテン。


「よっし! とにかくこれで三者抑えた! 相手に与えた精神的なダメージは大きい!」


 いや、肉体的ダメージの方がはるかに大きいよ絶対にというツッコミは、きっとこの場の誰しもが思ったはずだ。

 でも、口には出せない。きっと今のシャルロットさんにはむかったら、海兵隊連中の二の舞になってしまうだろう。


「このままこの回で大量得点入れて、奴らを絶望のドン底に叩き落す! 行くぞ!!」


 次は四番バッター、整備班長ケインさん。

 このメンバーの中では一番ガタイがいい彼だけど、バッターボックスに向かう足取りはとても重い。

 その背中には、死への覚悟を背負っているように見えた。


 そりゃそうだろう。

 こっちもあんだけひどいことをしたんだ。

 向こうが同じようなことをしてくる可能性は非常に高い。


「というか、向こう試合続行できるんですかね? ピッチャーガレットさん、ショートシルヴィア隊長、ファーストトニーさん。大事なとこ全部負傷しちゃってますけど」

「そもそも最初のピッチャーとキャッチャーも退場してて、五人負傷したってことになるからね。四人で野球なんて無理でしょ」

「ですよねぇ……」


 向こうがこれで棄権し、このフザけた殺し合いに終止符が打たれることをひそかに期待する俺。

 いや、俺たち。


 だが、シルヴィア隊長はよよよと頼りない足つきながらベンチを飛び出し、何回か地面に躓いて転びながらもなんとかショートのポジションへと移動し構えを取ったのだ。


「試合続行かよ……」


 本当に、シルヴィア隊長とシャルロットさんの因縁はどこまでも深いらしい。






 二回からのゲームは、空軍チームが海兵隊チームをフルボッコにする展開になった。

 

 コントロールもままならないガレットさんのふわふわボールをフレイアでさえもヒットにし、ノーアウトのまま一挙四得点。

 センターに高く打ち上げたフライも、いつの間にか着陸してきていたアンジェのエイルアンジェがアフターバーナー全開で凄まじい爆風を発生させることで空高く舞うボールを吹き飛ばしてエラーにさせたり、そもそも海兵隊員たちを吹き飛ばしたり。

 内野ゴロになったとしてもスモークグレネードを投げ、視界を奪ったうえでこちらはHMDに投影される情報を頼りに悠々とランニングホームランに持ち込んだり。


 つまり、野球でも何でもない何かが粛々と進行されたのである。


 結局三アウトになるまでに二七点というパワ〇ロ君でもあまり見ない点差をつけ、この回は終了。

 海兵隊チームが次の攻撃で一八点を取らなければコールド負けという状況。


 しかし海兵隊チームも黙ってはいなかった。

 視力を取り戻したシルヴィア隊長とガレットさんはNBC防護服(化学防護服)と戦闘用ヘッドセットを着込んで万全の態勢でバッターボックスに立ち、動きにくい服装ということを一切感じさせない鋭いスイングで出塁。

 三番バッタートニーさんが確実に柵超えクラスの打球を放ち、センターのエイルアンジェが機体の腹にボールを当ててそれを阻止せんとする。


 いつの間にか野手陣がMANPADS(個人携帯式対空ミサイルシステム)を持ち出していて、いかにTT装甲とはいえ大量のミサイルを一度に被弾したエイルアンジェは煙を吹き出しつつ隣接している基地に墜落。

 打球はそのまま柵を超え、ホームラン。


 アンジェリカは無事だったらしいが、エイルアンジェは飛行不能。


 ……というか、落ちたの俺の機体だよな……?



 

 ともかくこちらも野手を一人欠き、形勢逆転。


 しかし海兵隊チームの攻撃は止まらない。

 ヒットにつぐヒットで、点差はどんどん縮んでいくばかり。


 シャルロットさんのゲスアタックもその鋭さを増し、ついには携帯式ロケットランチャーでボールを撃ちだし、デッドボールを狙っていくというクズっぷりを発揮。

 海兵隊チームの二名がこの犬畜生にも劣るゲス攻撃で戦闘続行不能となるも、続くシルヴィア隊長がこれを克服。

 結局この回だけで、海兵隊チームは二五点もの得点をゲット。


 試合は振り出しという形に戻ってしまったのだ。

 だが、海兵隊チームはもう五人しか残っておらず、こちらもアンジェが抜けて七人。

 ここでやめればいいものを、二人は決して勝負を投げ出そうとはしなかった。


 で、そのあとはもう地獄だ。

 今までも地獄だったけど、それはそれはもう今までが天国だったと感じるほどの。



 最終的にどうなったかというと、両チーム戦闘続行不可能。

 野球場はクレーターだらけになって使用不可能になり、隣接していた基地も作戦続行能力が奪われた。


 つまり、草野球で最前線基地が壊滅してしまったのだ。

 アンジェリカのコントロールでヘロン無人戦闘機までもが戦闘に投入され、それを阻止せんと海兵隊チームは対空戦車を投入。

 もう完全に対地攻撃VS対空攻撃という構図になり、みないつの間にか野球ボールではなく飛び交うミサイルを目で追うようになっていた。


 そんな状況になったら、結果など決まっているというものだ。


 負傷者四十九名。うち後送が必要になるほどの重傷者が十二名。

 ヘロン戦闘機二機とエイルアンジェ一機を損失。デュランダル戦車一両も損失。


 基地の完全な壊滅を持って、この海兵隊VS空軍の野球対決は幕を閉じることになった。



 こうして我々ルーニエス国防空軍は、最前線基地からの撤退を余儀なくされたのだった。




 

 

 






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