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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第6章 ダンジョンへ行く為には
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第62話 勉強と考察

お気に入り10000超、PV 3900000超、ジャンル別日刊18位、応援ありがとうございます。


祝!お気に入り10000件突破しました!応援ありがとうございます!

 

 

  

 


 放課後、俺達は図書室に立ち寄っていた。ゴールデンウィーク中日の放課後と言う事もあり、図書室の利用者はあまり居ない。ぱっと見、俺達以外には、受験を控えた3年が数人いる位かな? 

 そんな図書室で、俺達が何をしているのかと言うと……。


「なぁ、裕二? これって本当に役に立つのか?」


 俺は手元の動物図鑑を見ながら、小声で隣の席に座る裕二に話しかける。


「ん? まぁ、知らないより知ってた方が良いと思うぞ?」

「でもこれ……骨だぞ?」

「骨格構造を知っていれば、大体の可動範囲って物が分かるからな。モンスターと言っても生物の形をとっている以上、特殊な例を除いて基本的には変わら無い筈だ。今まで遭遇したモンスター達の動きも、基本的に通常の動物と同じだったからな」


 言われて思い出す。スライムのような特殊なモンスターを除いて、基本的にモンスターの動きは面影がある通常の動物とあまり変わらなかった様な気がする。

 レベル差もあるだろうが、初見でモンスターの攻撃を見切れたのも、TVで野生動物ドキュメントの狩りシーン等を見ていたのが関係しているのかもしれない。動物の攻撃手段のイメージが出来ていたから、初見でもモンスターの攻撃を凌げたのかも知れない。 

 モンスターの骨格がどうなっているのかは知らないが、知っていて損はないのかもしれない。 


「後、オークやゴブリンなんかの人型モンスターにも同じことが言えるぞ。アイツ等の動き、基本的に人の動きと同じだったぞ?」

「……同じ?」

「ああ、2足歩行をしているからなのか、種族毎に多少の違いはあっても基本的な動作は人のソレだ」


 ……確かに。  

 言われてみれば、基本的な動きは同じだった様な気がする。モンスターの外見を忘れ、動きを比べてみると……共通項が多数出て来た。

 それに、人型モンスターと対峙した時の俺達の戦闘パターンも、人を相手にした時のソレだな。


「勿論これは、今までに遭遇して来たモンスター達に関しての話だ。モンスターが戦闘補助系のスキルを使ってきたら、特殊な動きをする可能性もある」

「モンスターがスキルをか……」

「前例があるから、無いとは言えないからな」


 前例、オーガの事だな。

 確かに、回避系のスキルを使えば、体の動きと関係なく移動は可能だからな。全力突進からの、水平横移動とか。


「二人共、声が大きいわよ」 


 人体解剖図を見ていた柊さんが、俺達を小声で嗜める。

 俺が顔を上げ周りを見回して見ると、近くの席に座っている男子生徒が不快そうな表情を浮かべ俺達に視線を送って来ていた。俺と裕二が慌てて頭を下げると、男子生徒は軽く目を細め視線を手元の本に戻す。

 どうやら話している内に、俺達の話し声が大きくなっていた様だ。


「詳しい話は、図書室を出た後でな……」

「そうだな……」


 俺と裕二は小さく溜息を吐いた後、手元の図鑑に視線を戻した。

 

 

 

 

 

 1時間後、俺達は読んでいた図鑑を片付け図書室を後にする。

 人気の無い食堂近くに設置してある自販機で飲み物を買った俺達は、近くのベンチに座って図書室での失敗を反省し愚痴を漏らす。


「あぁ、失敗したな」

「小声で話していたつもりだったんだがな……」


 俺と裕二は改めて溜息を吐く。 

 そんな俺達に、柊さんが指摘を入れる。


「最初はね。二人の会話が進んで行く内に、段々大きくなっていたわよ? 利用者が少ない分、余計に2人の声が響いていたわ」

「……」


 俺は気まずげに頭を掻く。まぁ、済んでしまった事だ。今後は気を付けよう。

 俺は買ったコーヒーを一口飲んで、先程中断してしまった懸念事項の話を振る。


「そう言えば裕二。話が途中だったけど、コレからのモンスターはスキルを使用してくるかな?」

「……するんじゃないか? 現に、オーガは召喚スキルを使っていたからな」

「そうね。あのオーガが使っていた召喚スキルがエリアボス故の例外でも無い限り、モンスターがスキルを使用する可能性は大いにあるわ」

「やっぱり……」


 裕二と柊さんは、少し深刻そうな表情を浮かべる。

 コレまでの傾向を考えると、中層階以降のモンスターのスキル使用を警戒する必要があるな。

 理由は分からないが、ダンジョンは段階的に難易度が上がる仕組みだし、中層階への入口を守るオーガがスキルを使用した以上、中層階以降に出現するモンスターがスキルを使う可能性は高い。

 ……スキルによっては、これまでの様に簡単には勝てないかもな。


「低層階に出現していたモンスター達は基本、身体能力と種族特有の能力を使って戦っていただけだったからな」

「そう考えると、中層階で出てくる可能性があるスキル持ちのモンスターと戦う前に、低層階のモンスターと戦って十分に経験を積むって言う方針は悪い選択では無いわね……」

「そうだね。昨日のボス戦を振り返って見ると、俺達の連携不足はハッキリしたことだしね。低層階のモンスターとの戦闘で、色々試して経験を積んだ方が良いよ」 


 咄嗟の事とは言え、昨日俺達が取ったあの対応は無いよな。

 でも、咄嗟にあの行動を選択したということは、連携して戦闘すると言う事よりも個人で戦うと言う事が、俺達の行動基準として体に染み込んでいるということだ。

 早急に改善する必要がある。  


「やっぱり、暫くは連携強化を主眼に置いて、個々の戦闘スキルアップが課題だな」

「連携か……連携の習熟には時間が掛かりそうね」

「でも、コレからの事を考えると必須技能じゃないかな? 多少時間が掛かってでも、習得しないと。特殊能力を持つモンスターや大型モンスターが出て来て、連携が取れないってことになったら致命傷になりかねないしさ」


 例えばゲームなんかによく出てくる、同時にコアを潰さないと倒せない再生能力が高いモンスターとか、見上げるような大きさの大型モンスターとか。そう言う特殊なモンスターは、個人で倒すには難儀するだろうな。戦闘時間が延びることは、それだけ致命傷を負う確率が高くなるということだ。


「大樹の言う通りだな。ちゃんとした連携を覚えない内は、中層階に行くのをやめておいた方が無難だろう」


 裕二は俺の意見に賛成のようで、納得顔で静かに頷く。

 今の所、無理に中層階に行く気はないようだ。まぁ、日帰り探索だと時間が無いしな。

 話が一段落したので、俺は気になっていたことの話を振る。


「そう言えば二人共……ライトは成長した?」

「……いや。家に帰った後も少し練習したけど、あまり成長しなかったな」

「……私も。豆電球が常夜灯になった位ね」

「そっか。俺も似たようなものだよ」


 うーん、やっぱり。

 俺もそれなりの回数ライトを使って熟練度上げを行ったのだが、豆電球が常夜灯になった程度の変化しかなかった。マトモに使えるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。思わず、溜息が漏れる。 


「さて、と。そろそろ帰ろうか?」


 俺はコーヒーを飲み切り、ベンチから腰を上げ二人に声を掛ける。

 調べ物もしていたので、そろそろ良い時間だ。日もそこそこ傾いているしな。  


「そうだな……帰るか」

「そうね」


 二人もベンチから腰を上げる。

 そして裕二は何かを思い出したかのように、俺と柊さんに話を振る。


「そうそう、二人共。ゴールデンウィーク中に時間があるなら、ネット動画とかで動物の動きを見ておいた方が良いぞ。少しはモンスターの、動きの参考になるから」

「アニマルドキュメント系か?」

「それ系だな。他の動物と戦っているシーンとか、捕食シーンとかが入ってる奴が良いな。今日図鑑で見た骨格の動きを意識して動き見てみると、漠然と見るより動きの違いが見えるから」

「分かった。ゴールデンウィークはそこそこ時間もあるし……探してみとくよ」

「私も」 


 帰りに、レンタルビデオ屋に寄るか。

 にしても、アニマルドキュメント系か……借りたことが無いジャンルだな。

  

 

 

 

 

 

 夕日が沈み切る前に、俺はレンタルビデオ店のロゴが入った袋を片手に帰宅した。

 途中レンタルビデオ店によって、裕二が言っていたアニマルドキュメント系のDVDを借りてきたのだ。普段見ないジャンルだけに、探しだすのには時間がかかったよ。

 

「ただいま」

「おかえりー!」


 リビングの方から扉が開く音が聞こえ、美佳が姿を見せる。出迎えてくれるなんて、珍しいな。

 

「珍しいな、お出迎えなんて……」

「お兄ちゃんが帰ってくるのを、待ってたの!」

「……待ってた?」


 俺が疑問符を浮かべ、首を捻っていると、美佳の瞳に苛立ちの色が映る。

 あれ?俺……何か気に触るような事を言ったか?


「……朝、何で沙織ちゃんを誘ったの?」

「誘う……ああ、買い物の件か」

「そうだよ! もう、折角お兄ちゃんと二人で買い物にいけると思ったのに……」

 

 どうやら、朝の件について怒っていた様だ。


「いや、でもさ……ゴールデンウィーク中に何処にも行く予定が無いって聞いたら、つい、ね」

「むぅぅ……」


 美佳の頬が不機嫌そうに膨れる。納得は出来ないが、理解はすると言った所だろうか?


「そう怒るな、買い物の時に穴埋めはするよ」

「ふぁっ!」


 俺が謝りながら軽く美佳の頭を撫でると、妙な声を美佳が上げる。流れで頭を撫でてしまったが、不味かったかな?俺は自分の行動を反省しつつ、玄関を上がり部屋へと上がって行った。

 着替えを終えた俺は、レンタルしたDVDを持ってリビングへ降りる。リビングのソファーに美佳が、台所では母さんが夕食の準備をしていた。父さんの姿が見え無い所を見ると、今日は残業のようだ。  

 リビングのソファーに埋もれる様に座る美佳は、ふやけた表情を浮かべ不気味な笑い声を漏らしていた。その不気味な様子に若干引きつつ、俺は美佳の隣に座って買い物の話を振る。


「そう言えば美佳、買い物の予定はどうなったんだ? 沙織ちゃんと話して決めたんだろ?」

「……」

「美佳?」

「……! あっ、お、お兄ちゃん!」


 呼びかけても反応しないので、俺は美佳の肩を軽く叩きながら呼びかける。すると、美佳は顔を俺に向け、漸く反応した。 


「はぁ。で、買い物の予定はどうなったんだ?」

「えっ、あっ、か、買い物の予定だね! うん! ちゃんと沙織ちゃんと話し合って、決めてあるよ!」

「そうか。で?」

「えっとね……」


 美佳の話を聞くと、買い物は3日に行く事に決まったそうだ。デパートや繁華街を見て回った後、カラオケに行くとのことだ。 

 割と普通のコースだな。


「学校で流行っている物を見て回ろうって、沙織ちゃんと話して決めたの」

「へー、どんなものが流行ってるんだ?」

「今だと……化粧品かな?」

「化粧品?」

「うん。高校デビューで、皆気合が入ってるみたい。日焼け止めとかリップクリームとかの、校則に引っかからないで学校でも使えるナチュラルメイクの道具」


 言われて美佳をよく見ると、薄らとだが化粧をしているのが見て取れる。


「今使ってるのは、ドラッグストアで買った物なの。沙織ちゃんも一緒。だから、化粧品の専門店で買おうって話になったの」

「へぇー、そうなんだ」

「別に、ドラッグストアの物が悪いって訳じゃないんだけど、専門の店で自分にあった物を選んで貰うのも良いかなって」


 化粧品か……美佳も高校生になって、急に大人っぽくなったな。

 確かに化粧品とかは、専門家に選んで貰った方が良い分類の品かもな……俺は使ったことないから良く分からないけど。


「繁華街の方に、今高校生に人気の化粧品専門店があるの。沙織ちゃんとは、そこに行こうって約束してるの」

「高校生に人気って……女の子にだよな?」

「うん」


 思わず、俺の頬が引き攣る。マジか……そんな所には入りたくないぞ、俺。

 そんな俺の心情を察したのか、美佳が助け舟を出してくれる。 


「あっ、心配しないでお兄ちゃん。お店の近くにカフェがあるって聞いてるから、私達がお店に入っている間はそこにいてよ」

「あ、ああ。分かった」


 美佳の言葉に、俺は胸を撫で下ろす。

 最悪店の外に立っていようと思っていたが、化粧品屋の前に長時間突っ立って居たら不審者扱いされかねないしな。カフェがあるなら、コーヒーでも飲みながら時間が潰せる。

 俺と美佳が休日の予定を話し合っていると、台所の方から母さんが声を掛けて来た。 


「貴方達、そろそろ夕食にするわよ。テーブルに着きなさい」 

「はーい」


 母さんの声に美佳が答え、軽やかな足取りでソファーからテーブルに移動する。玄関で見せたような不機嫌な様子は見て取れないので、機嫌は直っているようだ。俺も軽く胸を撫で下ろしソファーから立ち上がり、テーブルに移動する。

 それと、父さんはやっぱり今日は残業とのこと。ゴールデンウィークの中日だけに、有給休暇を取っている人が多いらしく、残りの人員だけでは定時までに仕事が終わらないらしい。

 3人で夕食を済ませた後、借りて来たDVDをリビングのTVで視聴したのだが、内容が内容だけあり母さんと美佳からはブーイングの嵐。以降、この手のDVDは自室のPCを使って閲覧するようにと釘を刺された。

 

 

 

 

  

 

 

 


普通の動物の生態を参考に、考察しながらモンスターの勉強です。

ネ○チ○ーとか○ー○ャ○ズとか、動物の勉強になりますよね。

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― 新着の感想 ―
美佳ってこんなにブラコンだったっけ? 今まではダンジョンが先行してたから素のブラコンっぷりが出てなかっただけなのか?
今更だけど、表階層、低階層、中階層ときてつぎはなんなんだ?流れで言えば上階層だけど下に潜ってるんだよね?なら深階層?
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