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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第20章 後輩とダンジョンへ

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第569話 今後の為の基準を

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 ウォーミングアップを完了した俺達は、移動行列に乗って階層移動する。最短距離を移動するとなると、多少のロスはあるがコレが一番早く消耗が少ないからな。

 もちろん移動行列が出来ていないルートを走れば移動時間は短縮できるが、移動中にモンスターと遭遇し戦闘する確率、トラップの回避や解除、移動時の体力及び精神力の消耗率等々、トータルで考えればダンジョンに慣れた高レベル探索者でないとあまりメリットは得られない。


「ココまで下りてくると、だいぶ人も減るよね」

「そうだね。新人さんやたまに来るって層の人が居ないから、皆手慣れた感じで先に進んで行ってるよ」

「だね。見た感じ……企業系の人が多いかな?」

「装備に同じエンブレムつけてるし、そうじゃないかな?」


 人が減り移動速度の上がった移動行列を駆け足気味で歩きながら、美佳と沙織ちゃんの雑談を耳にしながら俺も周りを観察してみる。

 確かに防具に似たエンブレムを付けたパーティーなので、企業系探索者パーティーの可能性は高いな。もしくは……。


「最近は学生パーティーでもチームエンブレムを制作し、仲間内で使うのが流行っているらしいぞ? 仲間内の連帯感が上がるとかどうとかって」

「ああそれ、俺も聞いたことあるな。パソコンとプリンターがあれば簡単に作れるから、チーム結成記念で作るとかどうとか……」

「チームエンブレムを付けていると、企業のスカウトに見つけて貰いやすくなるとかって話も聞いたことあるわよ。ヘッドハンティング狙いの子や知名度目当ての子がやってるとか聞くわね」


 ダンジョン探索で目につく活躍をした学生パーティーが、ダンジョン系企業に好待遇でスカウトされているのは公然の事実だ。ダンジョン事業を拡大したい企業としても、即戦力になる探索者の確保は最優先事項である。その人材確保策の一つに青田買い、実績を上げている有望な学生探索者パーティーのスカウトである。

 しかし、一言で学生パーティーへのスカウトといっても、探索者が活動しているのはダンジョンである。モンスターとトラップが犇めく危険地帯、人事部のスカウトマンが現地に赴き活動内容を観察し判断をとはいかない。


「それなりに活躍している探索者をスカウト目的で観察しようと思えば、スカウトマンもそれ相応の探索者じゃないとメインで活動している階層にさえ到達できないからね。そしてそういったプロのスカウトマンが、それ相応の探索者である可能性がどれだけあるか……」

「まぁかなり低い可能性だろうな。そうなると後はやっぱり自社所属の探索者に目につく学生探索者パーティーに目星をつけて貰って、スカウトマンが対象の素行調査を含めた活動実績を鑑みてって感じになるだろうさ」

「そうなるとやっぱり、何か目印が欲しいわよね。現場で目星を付ける自社探索者とスカウトの間で、認識の間違いが起きない個人が特定できそうな目印が」


 柊さんのいうとおりである。例えば目星を付ける探索者が、高校2年生ぐらいの男女5人のAという学生パーティーが良い感じだと伝えたのに、スカウトの方では同じような構成のBという学生パーティーに話しかけるとかな。流石にそこまでの連絡ミスは無いだろうが、些細なミスで他社に先を越され有望株のスカウトを逃したら目も当てられない。

 そういった連絡ミスを防ぐ為にも、活躍する学生探索パーティーがチームエンブレムを付けていたら、チーム構成とそれを伝えるだけで大幅にミスを減らせられる。


「チームエンブレムを付けて活躍していたら、他の学生パーティーより目立つからね。それに企業側としても、チームエンブレムを付けている学生パーティーというのは、高確率でスカウトに興味があると判断できる材料になる。お金や時間といった労力をかけて調べたのに、いざ声を掛けて見たら全くスカウトに興味が無いとなったら無駄骨だし浪費だからね」

「そうだな。少し前まではちょっと活躍していれば手当たり次第にって感じだったけど、最近はある程度様子を見てって感じになってるみたいだ。一般入社組の探索者がある程度育った感じだからか、活躍する探索者パーティーをスカウトして即戦力を今すぐ確保って感じでも無くなったんだろうな」

「飛びぬけた探索者はスカウトして確保するにしても、一定のレベルの探索者を育てる育成ノウハウが溜まったんでしょうね。企業として高価値アイテムは魅力的でも、需要のあるアイテムを一定数確実に確保出来る態勢こそ求めているって事でしょ。取引先の企業としても、安定した納品が保障されない企業とは契約しづらいでしょうから」


 納品数が安定しませんが偶に高価値アイテムが納品出来ますよでは、商売相手としては信用できないし取引をしたいとは思わないだろう。その数必要だから頼んでいるのに、必要数を用意できませんでは話にならないからな。偶に付くオマケは豪華だから許してってか、冗談だろ?

 逆に高価値アイテムはなくとも、求めるアイテムを安定して供給してくれる企業の方が信用できるというものだ。高価値アイテムが必要なら、用意できるところに頼むのが正解である。

 

「そうなると、やっぱりスカウトに興味があると周囲に意思表示しやすいチームエンブレムを付けるのは有効な手段だよね。スカウト成功率が10回に1回から5回に1回の成功になれば労力が半分なんだから」

「そうだな。まぁパーティー結成記念に付けてるだけの連中も多いだろうから、チームエンブレムを付けているからといってスカウトを受けたがってるとは限らないだろうけどな。これからエンブレムを付けるのがブームになるのなら、その手の層も増えていくだろうし」

「まぁそうかもしれないわね。基本的にダンジョン探索はチーム制だし、この手の流行ものってちょっとした切っ掛けで一気に広がるもの」


 装備品なんかで他のチームとの差別化が難しい現状、ちょっとしたワンポイントという形で流行りそうだからな。ダンジョンという場所柄、実用性を無視して見た目重視で防具や装備品を選んでしまったら死傷率が上がる。結果として、皆が似通った実戦証明済みの装備品に行きつくんだよな。 

 そこに実用性を確保しつつ代り映えしない見た目を変えられるアイテム、他人と違ったものを求める学生層等に流行る要素は高い。


「へぇ、スカウトする企業側からはそういう風に見るんだ。じゃぁお兄ちゃん達は付けないの?」

「ああ、俺達は別にスカウトされたいとは思ってないからな。実際、何度か直接声をかけられたけど全部断ってるぞ」

「えっ、お兄さん達ってスカウトされた事あったんですか? しかも直接」

「あったんだよ、でも今いったように全部断ってるから」


 俺達3人はスカウトされた時の事を思い出し、大人が精力的に自社の魅力を売り込み勧誘してくるのを断るのが面倒だったなとしみじみと思い返した。

 そこそこ条件面は良かったが幸い俺達は金銭面で余裕があったし、何よりバレたら困る秘密を抱えているからな俺達。


「まぁ今はスカウト云々気にするより、着実に探索者としての実力を伸ばす方が良いぞ。実力に釣り合わないモンスターを相手にしたり、あともう少しといいつつ踏み込んだ探索をしたら即怪我なんだからな?」

「うん、まぁそれは分かってるよ。怪我するのは嫌だしね」

「自分達の実力に見合った探索をする、ですよね」

「そうだね。中にはスカウトされたくって無茶な探索をした結果……ってのは良くある話だからさ。2人も見栄を張るのは良いけど、見栄の為に実力に合わない無理はダメだよ」


 企業スカウト組の好待遇具合を耳にした日々の活動費に苦慮する探索者パーティーが、一発逆転を夢見て実力に合わない見栄を張ってアピールした結果、嘘を誤魔化す為に無茶な探索を行い怪我をするというのはあるあるだ。

 探索者が増えドロップアイテムの供給量が上がった事で、買い取り額が下がった頃からよく起きる様になったんだよな。


「うん」

「はい」


 まぁ美佳と沙織ちゃんは比較的マシな間に資金繰りが難しい初心者期間を抜けられたから良かったが、これから初心者期間を迎える舘林さんと日野さんは気を付けて見ていないと不味いだろうな。2人が焦って無茶をする可能性が無くはない。

 レベルに差はあれど探索者という同じ立場に立った以上、どうしても俺達と自分達を比較してしまうだろう。その上、自分達の育成の為が友達の足を引っ張っていると感じ出したら……まぁ無茶をやるまで秒読みだろうな。


「さて大分早く進めた事だし、もう少しで目標の階層につくかな」


 そこそこの時間、最短距離を駆け足気味に移動してきたのでもう間もなく到着だな。

 さぁていよいよここからが本番だ、美佳と沙織ちゃんがどう上手くやるかじっくり見せて貰おう。






 俺達は無事に20階層に到着した。15階層に到着するまでにかかった時間の5分の1以下だ。どれだけ上の階層が混んでいたかがハッキリと分かる。15階層以下ともなれば大体の探索者は初心者の域を抜け出し、中堅に手をかけ始めているかそれ以上の者ばかりだ。

 道中モンスターやトラップの出現が有ろうと、上の階層以上に移動速度が上がるのは当然の事だろう。

 

「思ったより早く着いたね。正直もう少しかかると思ってた」

「うん。ウォーミングアップをしていたのに、遅れるかもと思っていたスケジュールより早く到着できちゃったね」


 美佳も沙織ちゃんも予想より早く目的階層に到着でき、少し目を見開きながら驚いていた。

 やっぱり15階層より下をメインに活動する中堅探索者以上の者にとって、いかに早く混雑している上層階部を抜けるかがネックだよな。最短距離が一本しかない以上混雑するのは分かるが、高速移動優先レーンみたいなものを設定して貰いたいものだ。多分ダンジョン系企業とかからもダンジョン協会の方に要望は出ているだろうな、階層移動の速度が利益に直結するし。


「よし2人とも、少し休憩しながらこの後の動きについて相談しようか?」

「うん」

「はい」


 20階層ともなると大分人影も少なくなり、階段前広場では他のパーティーが疎らに散って休憩をとっていた。俺達もダンジョンの奥へつながる通路から少し離れた開いている場所に腰を下ろし、水分補給とこれからの動きについて話し合う。

 基本的に行動の選択権は美佳と沙織ちゃんに預けているので、これ迄と同様に俺達からどうこうといった指示を出す気は無い。だが、最初に基本的方針の共有はしっかりしておかないと、後々になって齟齬が発生し厄介な事になるからな。


「当初の予定より少し早く到着したけど、どうする? 余った時間は、ミノタウロスとの戦闘時間を伸ばすか?」

「……ううん、余った時間分は繰り上げて予定通りのスケジュール時間内でやって見ようと思う。移動時間が多少増減するのは最初っから分かってた事だし、今回は時間が余ったからって無理に伸ばすより、決まった時間内でどれだけ出来るのかって基準作りに当てた方が良いんじゃないかなって思うの。沙織ちゃんはどう思う?」

「そうだね、私もそれの方が良いと思うよ。確かに時間があるのなら活動時間を増やしたいという気持ちはあるけど、決まった一定時間でどれだけやれるのかという基準を作っておいた方が、今後の活動計画を立てやすくなるんじゃないかな。今回少しの収益アップを狙うより、今後の活動を見据えての基準作りに注力した方が絶対ためになるんじゃないかな……と思う」


 余った時間の活用方法を聞いてみると、予定を繰り上げし延長はしないで今後の活動の為に基準作りを行いたいとの事だ。確かに今後の活動を考えれば、どれだけの時間を掛ければどれくらいアイテムを確保できるかという参考に出来る基準が一つあれば活動計画は立てやすくなる。

 1度の探索でどれだけの物資を事前に用意しなければならないのか? どれくらいの活動時間で積載容量が一杯になるのか? どれくらい最低限活動すれば赤字を出さずに撤退できるのか?といった判断の材料になるからな。闇雲に挑むだけでは、ちょっとしたアクシデント一つで活動計画が崩壊するといった事になりかねない。


「なるほど、確かに基準が一つあると活動計画が立てやすくなるからね。今後の為を思えばそれが正解かな?」

「良いと思うぞ、闇雲に挑むよりちゃんと計画を立てて挑む方が安全だしな」

「そうね、今後の活動を見据えた良い選択だと思うわ」


 2人の堅実な選択に、俺達は感心した表情を浮かべた。目先の利益だけに囚われていたら、これ幸いと活動時間を伸ばす選択をするだろうからな。

 しかし2人は目先の利益に囚われる事なく、今後の活動を見据えて次につながるよう選択をしっかり判断した。舘林さんと日野さんという、一緒に行動する探索者としての後輩が出来た影響かな?

 

「じゃぁ休憩が終わったら出発だけど良いよね?」

「ああ、もちろん」


 話し合いの結果、予定を繰り上げスケジュール通りの活動時間で動くという基本方針が固まった。

 さぁて、もうひと踏ん張り頑張るか。
















たたき台に出来る参考基準が一つあるだけで、計画の完成度に差は出来ますからね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
「やっぱりスカウトに興味があると周囲に意思表示しやすいチームエンブレムを付けるのは有効な手段だよね」 逆に言えばスカウトに興味がないなら紋章は着けない方が良い、と。
ふと思い出したが、タイトル由来の机の引き出しダンジョンの事を大分ほっといているけどスタンピードとか起きないのかね?
発信は大事ですからねぇ特に自身の能力証明したければ若ければ若いほどきちんと書いて実績になるのは何でも書くといいらしいですしね。日本ではないけど戦略ゲームで1位とったみたいなのさえ海外だと実績になるとい…
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