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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第20章 後輩とダンジョンへ

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第565話 打ち上げは楽しくね

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 査定明細を覗き込んでいた舘林さんと日野さんは、中身を確認すると少し目を見開き驚きの表情を浮かべていた。

 それは後ろからのぞき込んだ俺達も同じで、意外と高額な査定額が記載されていたからだ。


「「六千二百円……」」

「おお、意外に値が付いたね」

「やっぱり回復薬だったんだな、アレは」

「それならこの買い取り額にも納得ね」

「「おめでとう!」」


 提出した回復薬?は査定の結果、間違いなく回復薬であると確認された様だ。お陰で提出アイテム数は少ないが、そこそこの査定額が付いたらしい。美佳が手に入れたコアクリスタルを含めて、3つだけだったのにね。やっぱり回復薬は需要が高いから、初級でもそんなに値崩れはしていないらしい。

 とはいえ、ダンジョンでモンスター相手に命がけの探索を行った上での報酬が1万円にも満たないというのは判断が難しい。護衛が付いて実働1,2時間とはいえ、命をかけている事に違いは無いので高いのか安いのか……。


「あ、ありがとうございます。まさか最初のダンジョン探索でこんな査定が出るなんて……」

「ネットとかでは良くても、1000円いくかいかないかって話だったのに……」

「まぁ今回は運が良かったってのもあるね、回復薬が出ていなかったら噂通りだったと思うし……」


 正直今回のダンジョン探索では採算度外視で、舘林さんと日野さんがモンスター相手に実戦経験を積めればそれで良しという程度だったからな。

 回復薬がドロップした件は棚ボタ的幸運だった。


「えっと、お話し中の所すみません。それでどうしましょうか、ご提出いただいたアイテムの方はお持ち帰りになりますか、それともこちらでの買い取りをご希望されますか?」

「「す、すみません!」」


 俺達が仲間内の話が盛り上がっていると、少し焦れた様子の窓口の係員さんが話しかけてきた。

 いや、申し訳ない。


「それで、どうされますか?」

「買い取りでお願いします!」

「買い取りですね、全て買い取りでよろしいですか?」

「「はい、お願いします」」


 舘林さんと日野さんは今回、回復薬を残すより換金する事を選んだようだ。まぁ今暫くは俺達が同行している上、モンスターと戦う事に慣れる段階だ。通常のダンジョン探索に比べ、怪我をする可能性は格段に低い。俺達も怪我をされると面倒なので、指導期間中は出来るだけ怪我をしない様に見守るしな。

 そう考えると現状では回復薬が必要になる機会は少ない為、回復薬を換金し今後の活動費に充てるという判断も間違ってはいない。それに努力の成果がお金という目に見える形になった方が、今の舘林さんと日野さんにはモチベーション維持の為にも良いしな。 


「分かりました。では買い取り金の方は、現在カードをご提出されているお二方の口座へのお振り込みでよろしいでしょうか?」

「はい、それでお願いします」

「分かりました、それと振込割合の方は半々で?」

「はい」


 係員さんが俺達5人の方に視線を向けながら振込方法を尋ねて来たので、それで問題ないと頭を縦に振りつつ了承の意を伝える。

 7人組で2人しかカードを提出してなかったら、そりゃぁ念の為に確認を取るよな。


「では、現在提出していただいてるカードの登録口座の方に買い取り金の方は振り込ませていただきます。よろしいでしょうか?」

「「はい!」」

「ではお手続しますので、少々お待ちください」


 2人の了承を得た係員さんは手早く端末の操作を始めた。

 そして5分と経たずに手続きは終了、2人の探索者カードが返却される。


「振込手続きが終了しました、こちらのカードはお返しします。それとコチラが買い取り証明書になります」

「「ありがとうございます!」」

「はい、ではこれで手続きはすべて終了となります。またのご利用お待ちしています」


 係員さんが小さく会釈をしたので、舘林さんと日野さんも少し慌てた様子で会釈を返した。

 良し、とりあえずコレで初めてのドロップアイテムの査定換金手続き終了だな。まぁ何回か繰り返せば、これもすぐに慣れるだろう。


「それじゃぁ皆、とりあえず休憩場の方に移動しようか? ここに居座ると邪魔になるしね」

「「「「はい!」」」」

「おう」

「ええ」


 それほど混んでいないとはいえ、何時までも窓口の前を大人数で占拠しているのは迷惑だろうからな。

 とりあえず建物の外にある自販機コーナーへと、皆で移動する事になった。






 自販機コーナーに移動し全員の飲み物を購入した後、俺達はとりあえず簡単な反省会を兼ねたお疲れさま会を開く事にした。まぁ反省会という名の、ストレス発散を兼ねた愚痴聞きなんだけどね。

 こういった反省会は、実感が残っている内に早めにした方が良いからね。無理に溜め込んでいても、いい事なんて一つもないよ。


「まずはお疲れ様、無事に初めてのダンジョン探索は全て終了だよ。どうだった、実際にダンジョンに来てみた感想は?」


 舘林さんと日野さんに今日の探索についての話を振る。 


「正直まだ、ちょっと夢心地の様な気がします。思っていたよりあっさりと終わったというか、なんというか……」

「私も同じです。もう少しこう、モンスターと激しい戦闘が……と思っていたんですけど」

「うん、まぁそういう感想が出るのも無理は無いかな。よくテレビやネットで流れるモンスターとの戦闘映像といえば、主演の探索者が切った張ったの大立ち回りといった見栄えを重視した戦闘シーンが目白押しだからね。そういうのを想定していたのなら、確かに今日の探索は拍子抜け、あっさりしていると感じるのは当然だよ」


 実際今回の探索におけるモンスターとの戦闘は、どちらかというと戦闘というより処理や駆除といったモノだ。罠を使い相手を無力化した後で、安全を確保した上で確実に倒したからな。

 思っていたのと何か違う、と言った感想を持つのも当然だろう。


「は、はい。あっでも、モンスターに止めを刺した瞬間はやっぱりこう、何ともいえない手の感触が少しきましたね」

「まぁそうだね。俺達もそうだったけど、やっぱり初めてのあの感触は今でも覚えてるよ」

「……何度もダンジョンに潜ってる先輩達でもですか?」

「もちろん。探索者を続けていれば慣れはするけど、忘れる事は出来ないよ」


 今はそうではないが、あの何ともいえない感触と後味の悪さを覚えている。

 まぁ探索者をやっていれば何れは慣れるし、慣れないのなら探索者を続けられていないからな。


「もちろん、無理に慣れる必要はないからね? 無理に慣れても結局は内に溜め込んでいるだけだから、何れは耐えきれずに爆発するなんて事もあり得る。どうしても慣れる事が出来そうにないのなら、素直に探索者は引退する方が良いよ」

「引退、ですか?」

「そっ。無理をして我慢し続けた結果、心のバランスを崩す探索者ってのも少なくないからね。事の軽重はさておき、探索者を始める前より暴力的な振舞いが増えたとか、感情の起伏が激しくなったとか、意味不明な言動が漏れる様になったとかってのは偶に聞く症状だよ。探索者活動が性に合わないのに無理矢理続けるってのは、そういったリスクも併せ持ってるんだよ。確かに装備品なんかに掛けた初期投資を無駄にしたくないってのは理解できるけど、そのせいで体や精神を壊したら元も子もないからね。特にダンジョン内で爆発したら即、命の危機に直結するよ」

「「……」」


 厳しい言い様だが、適性が無いならあきらめた方が良い。モンスター討伐も数を熟せば慣れはするだろうが、無理に続けると消化しきれないストレスが蓄積し続けるからな。

 そして探索者を始める時、最低限の初期投資でも十数万から数十万は掛かる。慣れない中でも初期投資分の回収だけでもと探索者を続ける人もいるだろうが、ドロップアイテムの買い取り額の高かった昔ならいざ知らず、買い取り額の下がった今では余程運が良く無ければ活動維持費という名の出費の泥沼にはまるだけだ。無理をして1か月我慢は出来ても数ヶ月、1年の我慢は無理だからな。絶対に途中で爆発する。


「まぁ2人は今日を含めて暫く様子見だね、始める前にいったけど2人の探索者としての適性を見極めないと」

「「……はい」」

「そう暗い顔をしないでよ。今の所2人の探索者適性は、普通か高い方みたいだからね」

「「えっ?」」


 俺の適性がありそうだという言葉に、少し驚いた表情を浮かべる舘林さんと日野さん。

 全く適性がないのならモンスターと立ち会った段階で、足が竦みまともに動く事も出来ずに攻撃を受け怪我をするものなのだ。そして適性が無い寄りだと、無力化したモンスターに止めを刺す事も出来ない。それを思えばモンスターの攻撃を回避し止めを刺せた時点で、2人の探索者適性はあるといってもよい。


「探索者の適性が全くないのなら、2人が今日の探索で取れたような行動は一切無理だからね。いくら事前に訓練をしていたからといって、適性が無いのなら碌な行動はとれないものだよ」

「「は、はい」」

「とはいっても、実際にモンスターを討伐したのは今日が初めてなんだ。2人にどんな影響があるのかまでは時間を置いて見守るしかない、だからもし少しでも違和感を感じたのなら俺達だけじゃなくご両親にもちゃんと相談するんだよ? 俺達も気にはしておくけど実際、どんな違和感なのか、どう気分が悪いのか、ちゃんと言葉に出して伝えてくれないと周りは気付けないものだからさ」

「「はい」」


 良し。本人達にも一応釘はさせたので、何か感じるものがあれば手遅れになる前に相談してくれるだろう。ご両親にも家に送る時に注意する様に伝えておけば、2人がおかしな様子を見せれば連絡してくれるだろうから一応フォロー体制はこれで大丈夫かな。

 となれば、反省会はとりあえずこの程度で良いかな。


「じゃぁ反省会はこのくらいにして、今日の2人の初ダンジョン探索成功の打ち上げをどこでやるか話し合おうか? せっかく大成功したんだから、パーっとお祝いして盛り上がろう!」


 反省会の暗い雰囲気を打ち払う様に、俺はこの後の打ち上げについて話を振る。


「「えっ、あっはい!」」

「「やった!」」

「まっ、そうだな。お祝いの打ち上げも良いだろうな」

「そうね、どこのお店が良いかしら?」

「地元駅の近くのお店も良いけど、ここら辺で探すのも悪くはないと思うよ?」


 打ち上げをする事が決まると美佳達4人は喜びの声を上げながら、早速スマホを取り出し良さげなお店を調べ始めた。

 まぁ何時までも暗い顔をしているより、折角の初ダンジョン探索成功をみんなで和気藹々とお祝いする方が良いよな。さて、どこのお店が良さげかな……?






 ダンジョンの近くにスイーツ食べ放題の店があったので、舘林さんと日野さんの希望もありそこに行く事になった。90分3千円でスイーツとドリンクが食べ放題との事なので、まぁお祝いにはちょうど良いかな? 金額的には今日のダンジョンでの収入分が無くなるんだけど、ダンジョン探索に成功すれば毎回これくらいのお店で飲み食いできるよと示すのは良いと思う。

 何故なら、ダンジョンで頑張ればこうやって美味しいものが食べられる、目先の目標としては十分だと思うからね。


「それじゃぁ皆、お疲れ様! 面倒な挨拶は抜きにして、頂きます!」

「「「「「「頂きます!」」」」」」


 皿一杯に盛られたスイーツに喜びの表情を浮かべる女性陣を前に、長々とした音頭をとる度胸は無いので早々に終えた。早く早くといった目力が怖いんだよな、目力が。

 そして制限時間一杯まで色とりどりのスイーツを楽しんだ後、俺達は打ち上げを終え帰宅の途に就く。


「それじゃぁ日野さん、今日はお疲れ様ゆっくり休んでね」

「はい、ありがとうございます!」

「それじゃぁ裕二、柊さん、日野さんの事よろしね」

「おう、そっちも舘林さんの事頼むな」

「任せて」


 家の方向的に舘林さんは俺と美佳と沙織ちゃん、日野さんは裕二と柊さんの方が近いとの事なのでこういった振り分けになった。今日は2人の初ダンジョン探索だからな、万一帰宅の途中で気が抜けて……という可能性もあるからね。 

 まぁ打ち上げの様子を見ていれば大丈夫な気はするが、念のためだ。


「それじゃぁ皆、こっちも帰ろうか?」

「はい、よろしくお願いします」

「うん」

「はい!」


 日野さん達が帰るのを見送った後、俺達も舘林さんを送る為に帰路へとついた。道中は美佳と沙織ちゃんが舘林さんの話し相手になってくれたので、賑やかなものになり舘林さんの表情も穏やかなものだ。今の所、モンスター討伐の影響は特に見て取れないな。

 そして特に問題が発生する事もなく舘林さんの家に到着、家にいた舘林さんのお母さんに無事引き渡しが完了した。


「じゃね明美ちゃん!」

「今日はゆっくり休んでね!

「うん、送ってくれてありがとうね、美佳ちゃん沙織ちゃん!」

「今の所大丈夫そうですが、数日は注意深く見守ってあげてください」

「娘を怪我無く無事に帰してくれてありがとう、忠告通り確り様子を見ておくわね」


 舘林さんのお母さんに懸念点を伝えた後、俺達は長居することなく舘林さんの家を後にした。

 良し、これで本当の意味で今日のダンジョン探索は終了だな。ああ疲れたな、気苦労で精神的に。


 














大きな目標もですが、小さな目標があると頑張れますからね。


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挿絵(By みてみん)

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「俺達も気にはしておくけど実際、どんな違和感なのか、どう気分が悪いのか、ちゃんと言葉に出して伝えてくれないと周りは気付けないものだからさ」 探索に限らず、例えば日常生活であっても、そして相手が家族であ…
疑似生物だからいいけど死体のこる感じだったらもっと精神にきてるだろうなぁ このうちどれくらいの人間が逆に普段眠って忘れられた闘争本能に火がついてバトルジャンキーのごとくハマるのだろうか?……あれよく考…
しかし下級のポーションでも市価はかなりするだろうから御守り代わりに持たせても良かったかもしれないな。その場合はお祝いは先輩払いだろうけど。
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