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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第20章 後輩とダンジョンへ

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第558話 いざ、ダンジョン内部へ

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 皆で建物の中に入ると、早速受付手続き待ちの長蛇の列が目に入ってきた。大荷物を抱えた探索者達は5つ程ある受付窓口の前に綺麗な列を作って並んでおり、その多くは周りの迷惑にならない程度の声量で雑談しながら大人しく待っていた。

 特に待ちくたびれ剣呑な雰囲気が醸し出されている様な事も無く、何時もお馴染みの光景だとばかりに誰かが騒ぐことも無い。


「凄い行列ですね……」

「これでも少ない方なんだけどね。学校が長期休み期間に入っている時なんかは、この何倍もの学生探索者がダンジョンに来るんだからさ」

「これ以上に並ぶんですか……」

「下手をしたら、1時間待ちとかも普通にあるだろうね」


 受付待ちの行列に驚く舘林さんと日野さんに、これでもまだましな光景だと伝える。俺達が初めてダンジョンに通っていた頃は、ろくに整備されていなかったとはいえ、これ以上の地獄絵図だったからな。 

 これでも昔に比べれば受付窓口の数も増えたし、手続きも簡略化や効率化されたんだろうけどね。


「そうなんだよね。実際問題、ダンジョンに入るまでに時間がもう少し短くなってくれないかなって、私も沙織ちゃんもここに来る度にいつも思ってる」

「こういった手続きが必要な事だと分かってはいるんですけど、毎回毎回こうも待たされるのはちょっと……って思っちゃいますよね」

「これでも昔に比べて、大分短縮化はされてるんだからね? 昔だったらこれ、1時間待ちコースは確実なんだよ?」


 休日の朝早い時間帯という事もあるんだろうけど、多分100人位は順番待ちしているからね。今日の感じなら、15分か20分も待てば中に入れるだろうから早い方だと思う。

 俺達が普段は少し辺鄙な所のダンジョンに通っているのは、この手の混雑を嫌ってというのもある。交通費が掛かる分、活動資金の厳しい学生探索者は遠くまではいかないからな。


「おいおいお前ら、そういう話はまず列に並んでからにしろよ。ここで立ち止まっていたら、何時まで経っても俺達の番にはならないんだからな」

「そうね、まずは私達も列に並びましょ?」

「「「「は、はい!」」」」

「ああ、ごめん。そうだよね、まずは並ばないと」


 入り口近くで美佳達と話し込んでいると、裕二と柊さんが行列の方を指さしながらまずは列に並ぶように促してきた。確かにまずは並ばないと始まらないからな、俺達が足を止めている間に同じシャトルバスに乗った数組に先を越され並ばれてしまっているしな。

 そして俺と美佳達は裕二と柊さんに軽く頭を下げて謝りつつ、他のパーティにこれ以上先を越されない様にと急いで列に並んだ。






 思ったより順調に列は進み、15分程待って俺達に受付手続き順が回ってきた。

 そして何事も経験だと、俺達は少し緊張した面持ちを浮かべる舘林さんと日野さんを、受付窓口からこちらを見ている女性係員さんの真ん前へと背中を押し進めた。


「いらっしゃいませ、本日はどのような御用件でしょうか?」

「えっ、あっ、その……えっとダンジョン探索に」

「はい、ダンジョン探索ですね。本日探索を行われる方々は……7名様でお間違いありませんか?」

「は、はい! そうです!」


 小さく微笑みを浮かべる受付窓口の係員さんは、緊張で少し上ずった声で答える舘林さんと日野さんに微笑まし気な眼差しを向けていた。パッと見で分かる、初々しい新人探索者らしい反応だからな。

 係員さんは小さく咳ばらいを入れた後、緊張する2人を落ち着かせるような口調でマニュアルに沿って話を進める。


「それでは入場手続きを行います、入場を希望される皆さんの探索者カードの提出をお願いします」

「「は、はい!」」


 係員さんに促され、舘林さんと日野さんは少し慌てた様子で用意していた受付カウンターの上に提出する。俺達もその慌てている姿に苦笑を漏らしつつ、用意していた探索者カードを提出した。

 まぁ初めての手続き関係って、何故か無駄に緊張するから仕方がないよね。


「はい、たしかにお預かりします。少々お待ちください」

「「は、はい!」」


 係員さんは預かった俺達のカードを素早くスキャンし、微笑まし気な笑みを小さく浮かべながらデータベースと本人照会を始める。

 しかし舘林さんと日野さんの探索者カードを照会した時は微笑まし気な表情を浮かべていた係員さんも、美佳と沙織ちゃんの探索者カードを照会した時には怪訝な表情を浮かべ、俺達3人のカードを照会した時には驚愕の表情を浮かべていた。


「えっ、ええと、ありがとうございます。本人確認の方は大丈夫です、探索者カードの方はお返しします」

「「は、はい、ありがとうございます!」」

「「「「「……」」」」」


 探索者カードを返却しつつも動揺を隠せない係員さん、緊張のあまり係員さんの動揺した様子に気付いてない舘林さんと日野さん、何ともいい難い笑みを浮かべる美佳と沙織ちゃん、何だか若干気まずげに視線を逸らす俺達3人。

 まぁ係員さんが驚くのも無理は無いよな。一見すればただの学生パーティーなのに、民間トップクラスの探索者と中堅探索者と新人が混在したパーティーだなんて、どういった目線で見れば良いのか不明だよ。


「そ、それではこちらが更衣室のロッカーのカギになります。それでは皆様、事故の無いダンジョン探索を心がけご安全に」

「「あ、ありがとうございます! 頑張ります」」

「「「「「ありがとうございます」」」」」


 舘林さんと日野さんが皆のロッカーのカギを受け取りつつ、俺達は軽く頭を下げながら受付窓口の前を後にした。

 





 柊さん達に舘林さんと日野さんの事を任せ、俺と裕二は更衣室に入り手早く着替えを済ませる。

 いつもの事なので2人とも迷う事も無く短時間で終わり、更衣室近くの空いている待合席に腰を下ろす。

 

「今日は舘林さん達もいるし、着替えには少し時間かかるだろうね」

「そうなんだよな、慣れないと意外と防具の取り付けなんかは手間取るしさ。それに忘れ物がないかと気にし出したら切りが無くなって、無駄に時間を食うんだよな」

「そうそう、あれを持って来たっけ?これは身に着けてるから大丈夫!とかって、念入りに一つ一つ確認していくからね」

「まぁ手間を惜しんで、確認が不十分のままダンジョンに入るよりはましなんだけどな。ライトの予備電池を忘れでもしていたら、最悪ダンジョン探索中に視界不良になって不意打ちを……何てのもあり得るから確認は念入りにしておかないと」


 そうそう偶に見掛けるんだよな、壊れてもいないのに消灯しているヘッドライトを身に着けた探索者とか。大抵パーティーメンバーに叱られたのか、気まずい表情を浮かべながら怯えた雰囲気を醸し出しつつ過剰に周辺を警戒していたりするんだよね。

 でもまぁ、ちゃんと不具合が発生した時点で撤退という判断が出来る時点で慎重なパーティーなんだろうけどね。ああいう探索者達が無事に生き残り大成するんだろうな。


「そうなんだよね、ダンジョンって深く潜れば潜るだけちょっとした物資管理ミスで探索計画全体が崩壊するもんだし」

「ああ。物資補給部隊がいる様な企業系探索者パーティーはともかく、個人や少数の探索者が集まる系のパーティーだと、それこそペットボトル一本分の水が無いだけでも死活問題に直結したりするからな。前にそこそこ深い階層でモンスターの襲撃にあって、滞在用の物資を喪失したらしいパーティーを見た事があったよな。撤退は出来そうだったけど、遠征費用を考えたら苦渋の決断だったろうな」

「うんうん。遠征費用の回収とドロップアイテムの売却利益を考えたら、あのくらいの階層になると日帰りは厳しいだろううからね。探索予定期間終盤ならまだいいけど、初日とかだったら目も当てられないよ」

「流石にそれは無い……と良いよな」


 バックアップ体制が整っている企業系ではなく、20階層を越える階層まで遠征に行ける少人数グループは貴重だからな。30階層を探索できる企業系以外の探索者が増えてくれた方が、俺達の存在感を少しは緩和してくれる。

 まぁ学生探索者パーティーが30階層を越えている時点で何をいってるんだ?と、思われるのに変わりはないだろうけどね。でもほら、他にも居るしといえるようにはなる。


「あっ居た居た、2人ともお待たせ」


 裕二と話し込んでいる内に時間はそれなりに経っており、着替えを済ませた柊さん達が俺達の元にやってきた。

 

「いや、大丈夫だよ。それより……大分緊張しているみたいだけど2人とも大丈夫?」

「はっ、はい!」

「だ、大丈夫です!」


 うん、大丈夫じゃないねこれは。着替えを済ませ装備品を身に着けた事で2人とも、いよいよだと緊張がピークに達している様だ。 

 流石にこの状態のまま、2人をダンジョン内部へ連れて入るのは危なさすぎる。


「かなり緊張してるみたいだね。でもダンジョンに入る前にする事があるから、まずは緊張を解していこうか?」

「「はっ、はい」」

「じゃあまずはフリースペースに行って準備運動をしようか、念入りにね?」


 という訳で、緊張マックス状態の舘林さんと日野さんの緊張を解す為に、フリースペースで準備運動を行う事にした。体を動かしていたら自然と緊張感はある程度解れるからね、ジッとしている方が緊張感は高まるものだ。

 因みにフリースペースはそこそこの広さが確保されているものの、利用者が多くいるので全員で準備運動をするスペースを確保するのには中々難儀した。レンタルルームを借りた方が良かったかな? いやでも、最初から貸し切りってのもね?


「それじゃぁ始めるよ」


 スペースは確保出来たので、まずは全員でラジオ体操から始める。音楽は無いが皆知ってるし、これが一番全身を満遍なく動かせるからね。そしてラジオ体操終了後は、男女で分かれてストレッチ運動を行う。しっかり解して柔軟性を確保していないと、咄嗟に動いた時に最悪筋断裂とかいった怪我をするからね。

 そして15分程かけてしっかり体を解し終えると、緊張で強張った表情を浮かべていた舘林さんも日野さんも柔らかな表情を浮かべるまでに改善していた。うん、これなら大丈夫そうだ。 


「良し、準備運動はこれぐらいで大丈夫だな。2人も大分緊張が解れたみたいだし」

「はい、まだ少し緊張しますけど大丈夫です!」

「私も大丈夫です。なんか何時もの訓練と同じことをしていたら、何だか緊張が取れました!」


 普段から訓練目前にはこうやって準備運動しているから、一種のルーティーンになっているんだろうな。だから自然と精神面も整う様になったって感じなんだろう。良い傾向といえばいい傾向だな。

 過剰な緊張もしなければ慢心もしない、運動に適した程良い緊張を保った状態ともいえる。


「そっか、それじゃぁいよいよダンジョン内部へと向かおうか?」

「「「はい!」」」

「うん!」

「そうだな」

「そうね」


 準備も整った事だし、いよいよ本番だな。

 あっそうそう、ダンジョンに入る前には皆ちゃんとトイレに行っておこうね。ダンジョン内だと、トイレ問題はかなり深刻だからさ。






 ダンジョンの入場ゲートがある建物に足を踏み入れると、やはりここにも何重にも折り返された長蛇の列が出来ていた。

 とはいえ並んでいる探索者も慣れている様子でテンポ良く入場ゲートを通過しているので、列はゆっくりとだが順調に進んでいる。待ち人数は多いが、それ程待たなくとも入場できそうだ。


「良し、俺達も列の最後尾に並ぼうか? 入場ゲートを通過する際に探索者カードが必要になるから、2人とも何時でも手元に出せるように準備はしておいてね。直前になって余り手間取っていると、後ろに並んでいる人達に睨まれるからさ」

「分かりました。でも何だかこうして見ているとダンジョンに入る場所なのに、何だか朝のラッシュ時の駅の改札口に見えますね?」

「あっ、それだ! 何か見た事あるなって思ってたんだ」


 確かに舘林さんと日野さんがいう様に、並んだ探索者達がゲートの認証機に探索者カードを押し当て次々に通過していく様は、朝の通勤ラッシュを彷彿とさせる光景だな。

 ダンジョンのゲート(駅の改札)を潜り、ダンジョン(会社や学校)へ出勤する探索者か……。


「ははっ、まぁそんな感じかな? それよりほら、列に並ぶよ」

「「はい」」


 俺達は列の最後尾に並び、ゆっくりとした速度でダンジョンの入り口へ向かって足を進めて行く。

 そして10分と掛からずに俺達の入場順が回ってきた。俺達5人は何時もの事なので慣れた手つきでカードをゲートの認証機にかざし入場するが、舘林さんと日野さんは一瞬躊躇しながら少し震える手で真新しい探索者カードをゲートの認証機に押し当てる。


「良し、皆無事にゲートを通過できたね。舘林さんに日野さん、いよいよダンジョン内部に入るからね」

「「は、はい」」

「入り口付近は他の探索者が沢山いるからそうそう危ない事は無いけど、ダンジョン内部である事に変わりはないから決して油断しない様に。普段の訓練を思い出しながら、常に周囲への警戒を切らさない事……良いね?」

「「……はい!」」


 不安と恐怖で揺れる眼差しを浮かべながらも、舘林さんも日野さんも覚悟を決めた表情を浮かべながら真っすぐに俺達の顔を見ながら返事をしてきた。

 さぁて、いよいよだ。俺達もしっかりサポートするから、2人とも頑張ってくれよ。 
















準備も整いいよいよダンジョン内部へ、2人は最初の試練を乗り越えられるのか。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
入り口直前の入場確認と更衣室の受付をもっと手前でカードと顔認証にして機械大量に置けばよくない?新人だけ人がいる所にして高速入り口のETCと一般みたいに分ければ渋滞減らん?新人だけだとたぶんもたつくし。…
後輩ちゃん 行列や受付に一つ一つ反応していて初々しい ほっこりしました
初めてだと、塩を用意しているのかな?あと、周囲のモンスターが少ないから、拍子抜けかな?索敵は、どうするのだろう?付き添いは、今回のみ?
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