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第502話 探索者業界も日々変わっていく

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 入場待ちの行列も入場ゲートの数が増えた事で以前より改善されていたのだが、使い慣れていない新人探索者が一気に増えた事で少々手間がかかっていた。まぁそれでも、ゲート増設以前よりはかなり早く入場できているんだけどな。

 と言う訳で、俺達は15分程行列に並んだだけで無事にダンジョン内へと入る事が出来た。


「入場ゲートは数が増えて割とスムーズに通過できるようにはなったけど、この階層移動の行列だけは改善されないね」

「まぁ、最短距離で階層移動をしようとしたら、必然的にこの行列に巻き込まれるからな。それに、仮にここ以外の通路を使って回り道をしても、階段まで行ったら今度は階段待ちをしないといけなくなる。新人が階層探索後に階段を使うのなら割と間に入れてくれる人もいるけど、中堅あたりが行列に並ぶ事を嫌って回り込んだら中々入れてくれないって事も多いからな。それなら最初から行列に乗って移動する方が、幾らかマシってモノだ」

「そうね。強引な割り込みなんかをすると揉め事の要因になるもの、マナーが成っていないって。暗黙の了解というか、何時の間にか出来たローカルルールというべきか分からないけど、皆出来るだけダンジョン内での揉め事は避けたいっていう意識の表れよね」


 柊さんの言う様に、このお行儀が良い移動行列は探索者間での揉め事を避けるという意味では大いに役立っていた。ダンジョンが民間に開放された直後には、我先にダンジョンの奥へと進もうとする者達が一定数いたそうだ。まぁ開放当時のドロップアイテムの暴騰していた買取レートを思えば、そういう者達が出るのも無理はないかな? まぁ当然の様にそんな利益に目が眩んだ者達の間で揉め事が発生し、穏便にすまなかった場合は負傷者が多数出たそうでDPが介入し逮捕者が複数出たらしい。

 そして、そういった者達が盛大に晒した醜態を目にした他の探索者達は、流石にアレ等の二の舞は御免だと自然と順番待ちの行列を作るようになった、という経緯になる。そんな経緯もあって、面倒ではあるものの今でも移動行列はこうして維持されていた。 


「そうだね。順番待ちをするなら御行儀良く行列を作って待つ、っていう習慣があったから成立したローカルルールだよね。たまに海外のダンジョン関連のニュースを見てると、日本みたいにお行儀よく並んでってやってる所は少ないみたいだし」

「そうだな。小学校辺りから散々いわれてた事だから皆、自然とやってるって感じなんだろうけどさ。お陰で海外のダンジョンなんかと比べて、順番待ち系の揉め事はかなり少ないっていってるのを聞いた事があるな」

「物騒な所だと、順番待ちしている所に割り込まれたからって理由で乱闘が発生し……っていう事件も起きてるみたいだしね。探索者って見た目では相手が強いのかどうか判断しにくいから、レベルの高い探索者が自分を基準にこれぐらいなら大丈夫って感じで軽く絡んだ結果、絡んだ相手のレベルが低くてという事が起きない事もないってのが怖いわ」


 つまり移動行列を作り揉め事を避けお行儀良く移動するという事は、レベルが低い探索者からすると格上の探索者との揉め事を避けられ、レベルが高い探索者からすると万が一の事態を避けられるというメリットが互いにある。

 無論、移動に時間が掛かるというデメリットもあるが、揉め事が避けられるというメリットの方が勝ると判断され今があるという事だな。






 7階層ほどまで下りてくると、移動行列の密度も夏休み前あたりの基準まで減ってきた。いや、むしろ夏休み前より少し減っているかな? たぶん、上の方の階層で夏休み前から活動していた探索者達が、夏休みになり新人探索者が多数入って来たので活動階層を移動し分散したのが原因かもしれない。1階層あたりの人口密度が余り上がり過ぎると、モンスターとの遭遇率が減って実入りが減るからな。

 なので、狩場にしている階層よりも下の階層で活動できる実力があるのなら、実入りを考え階層を移動するというのは起きてしかるべき現象といえる。そしてそれは初心者が中心に活動する上の階層だけの話だけでなく、中堅が活動する階層にも影響は波及する出来事だ。


「新人探索者が入って来たから、既存の探索者の活動階層も上手く分散し始めた、って感じかな」

「そうかもな。実力はあっても何か切っ掛けが無いと……って感じで動いていなかった層が、新人探索者の大量参入って切っ掛けを受けて動いたって事じゃないか? まぁ押し出された結果、って事でもあるだろうけどさ」

「ダンジョンでの活動をメインにしている専業の人からすると、人口増加によるモンスターとの遭遇率が低下して収入が減るっていうのは致命傷だもの。その上、今まで収入源にしていたドロップアイテムも、人が増えて供給過多になったら買取レートも当然低下するわ。収入を維持しようと思ったら、必然的に買取レートを維持しているドロップアイテムを確保する為に、活動階層を下げるしかないでしょうね」


 俺達がダンジョン探索を始めた当初は数千円していたドロップアイテムも、今では数百円にしかならないってモノも多いからな。それだけこの短期間で探索者が増え、多くのドロップアイテムが安定供給される様になったことでもある。

 ダンジョン探索のノウハウが溜まって安全にモンスターと戦え稼げるようになったと考えれば良いのか、危険度が変わらず賃金が安くなったと考えれば良いのか……何かしらか最低保証対策を取っておかないと、十数年後には新人探索者を確保する障害になりそうだな。新人の参入が難しい業界など、衰退する未来しか見えないよ。


「まぁそうなんだろうけど……順調にダンジョン探索が進んでいるって考える方が良いんじゃないかな? 実際ほら、探索者の数も増えてるしダンジョン系企業も増えてドロップアイテムが安定供給できるようになってきてるんだしさ」

「そういえば学校の就活掲示板に貼られてる求人票にも、ダンジョン系企業のものが増えてたな。3年の先輩達の中にも、進学辞めてダンジョン系企業に就職するって人がそれなりに出てるって話だ」

「ダンジョン企業が学生の就活先として人気になっているって、どこかのテレビとかでやってたわね。企業だからバックアップ体制も整っている上、実力があれば稼げるからって人気が出ているらしいわ。確かに装備一式そろえるだけでもそれなりの初期投資は掛かるし、今の買取レートだと直ぐに採算が合う様になるとはいえないもの」


 開放初期の頃はドロップアイテムの平均買取レートが高かったので、初期投資も早々に回収でき学生探索者も金銭面では低リスクで始めやすかった。

 しかし現在では探索者も増え、ドロップアイテムも豊富に供給されるようになった為、初期投資を回収するには運良くレアイテムを手に入れるか、長い時間を掛けコツコツ回収するしかない。昨今では、ダンジョン探索に関するノウハウはそれなりに溜まり共有されているので、安全面でのリスクは減っているモノの、金銭面でのリスクを嫌い最初から企業所属を選ぶ層は確実に増えていた。企業としてもダンジョン探索を継続的な事業として考えるのなら、スカウトだけに頼らず自前で探索者の育成を考えているだろうからな。無論、噂にある様な探索者育成学校が創設されたのなら、一般校出身者より育成校出身者を優先雇用する様になるんだろうけど。


「そうだね。スライムを倒してコアクリスタルを1つ得たにしても、今と昔じゃ買い取り額に数倍の差があるからね。同じ時間と労力をかけて収入に数倍の差があるんじゃ……初めから企業所属を狙うってのも分からないでもないよ。企業としても市場の求める需要を満たせているとはいえないから、ダンジョンに潜る人材は欲しいだろうからね」

「そして新人が入ってある程度使える様になったら今いる人材と交代させ、熟練者達をより奥の階層に潜らせ高価値のドロップアイテムを得られるようにしていく、だな?」

「そうじゃないかな? 今市場に流通している食品系のドロップアイテムとかは、必要量を集めるにはとにかく数がいるだろうからね。需要を満たそうと考えたら高レベルの探索者より、ある程度のレベルの探索者の数を揃える必要があるだろうから」


 ダンジョン食品は、まだまだ供給量も少なく高価格帯のものが多いからな。まぁ既存商品との差別化が出来ているから、嗜好品に近いダンジョン食品は現状のままでも問題ないといえば問題ないと思うけど。

 しかし当然のことながら、市場からはより多くより安くという声が上がっているのも現実だ。企業としても限界はあれど、要求を完全に無視するわけにもいかないだろうな。要求を無視し続けた結果、お客にそっぽを向かれ市場自体が縮小するのは一番困るだろうし。


「そうね。このままダンジョン景気が続くのなら、数年もすれば探索者の数も今の数倍に増えるでしょうけど、現状では人手不足極まりないと思うわ。それこそ素人でも意欲があれば雇う、って企業もあるでしょうね。まぁ完全素人だと、色々問題はあるでしょうけど」

「そういえば就活掲示板にあった求人に、1度はダンジョンに入ってモンスターを倒した事があるってのが最低条件になっている求人があったような……」

「まぁモンスターを倒せないってなったら、探索者の適性が無いよな。せっかく探索者として雇ったのに、モンスターを倒せませんじゃ意味がないしさ。雇用の最低条件としては、まともな部類だと思うぞ?」


 それこそ探索者登録もしておらず、モンスターを倒せるかも分からない完全素人を探索者として雇うともなれば、別の目的があるのではない?と疑うレベルの暴挙である。個人がお試しでやる訳でなく、社員として雇うともなれば最低限の能力の確認は必須だろうな。

 

「そうだね。それにしても一口に探索者といっても、色々な選択肢が出て来たよね。本当に、たった1年程度で随分変わったものだよ。個人にグループ、企業とかさ」

「ダンジョン産の素材の有用さが今以上に広まれば、これからはもっと変わっていくだろうな。今市場に出回ってる物なんて、ダンジョン全体からすれば氷山の一角程度だろうしな」

「そうね。探索者の育成校を作るなんて噂もあるし、ダンジョン探索が今以上に進めば色々出てくると思うわ」


 今の段階でもエネルギー分野では、コアクリスタル発電なんて既存のモノにとって代わりそうな代物も登場しているからな。流通革命を起こしそうなマジックバッグなんて代物も出てくるぐらいだ、他にどんなものが出てくるのか分かったものではない。

 現に俺の空間収納にお蔵入りしているモノを放出するだけでも、かなりの騒ぎになりそうなものが入っているからな。まぁこれらも多分、数年もすれば普通に流通しそうな気はするけど。 






 20階層近くになると、殆ど移動行列は無くなっていた。予想通り中堅探索者も階層移動したりしており、程よい人口密度に分散したらしい。

 まぁこの階層くらいになってくると、短時間での日帰り探索は難しくなってくるからな。時間に余裕がない学生探索者では、殆ど降りてくるものはいないだろう。主に活動している専業の個人事業者系探索者か企業系の探索者達だ。


「ココからは何時も通り、駆け足で移動しよう。目的地はとりあえず、30階層でいいかな?」

「そうだな。最近のドロップアイテムの買取レートを考えたら、そこら辺からドロップアイテムを集め始めた方が良いだろう。練習場の整備に、どれくらい資金がかかるか分からないからな。練習場とダンジョン探索を交互にするのなら、稼げる時に稼いでおいた方が良いだろう」

「私も一度に持って帰れる量にも限度があるし、暫くは単価が高いドロップを中心に集める方が良いと思うわ。道中は出来るだけモンスターを避けていきましょう」


 訓練場の整備というお金が掛かりそうな事をする以上、資金は稼げるだけ稼ぎたいという3人の意見が一致する。勿論、あまり深い階層のドロップアイテムを提出すると変な疑いを持たれかねない為、30階層あたりの高価格帯ドロップアイテムを狙うつもりだ。それにマジックバッグなんかを持っていないという事になっている以上、自分達が背負っているバックパックの容量以上のドロップアイテムを持ち帰ったら変なので、買取単価の低いドロップアイテムは無視する事になった。

 とりあえず、スキルスクロール等のレアドロップを除いて、100万円分ぐらいを集める事を目標にするとしよう。
















練習場の整備費用を頑張って調達しよう、ですね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
初期の手探り混乱を超え、ルールや常識がどんどんできたり変わってて面白いです
階段等での順番待ちですか…新しい階段を作るスキルが重宝されそう
[一言] 夏休み終盤の時にフロアボスがいるエリアの扉手前の29階層でキャンプ拠点が出来ていたから、 あれから一月ちょっと経っているから少なくとも規模が大きい企業チーム1組から2・3組程30階層に入って…
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