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第501話 一仕事終えたのでダンジョン探索へ

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 無事に訓練場建設地を手に入れた俺達は、慣れない物件探しで最近疎かになっていたダンジョン探索に励むことにした。夏休みも終わり長期滞在型の探索は無理なので、いつも通っているダンジョンでの日帰り探索だけどな。

 そういう訳で俺達は今、いつものダンジョン最寄りの駅に到着しシャトルバスが来るのを待っていた。 


「町中にあるダンジョンよりマシとはいえ、ココに通う人も大分増えたね」

「そうだな。まぁ年度が替わってから半年は経っているし、結構な数の1年生に誕生日が来たんだろう。夏休みが過ぎて新しい学生探索者が一気に増えた、って感じなんだろうな。まだまだダンジョンブームは沸騰中、探索者に挑戦して一儲けしようって輩の勢いは衰えず、って事なんだろう」

「そうね。ネットや先輩探索者からダンジョンに関する怖い話を色々聞いていても、魔法やモンスターといったファンタジー要素テンコ盛りだから皆、興味を抑えられないって感じなんでしょう。仕方ないとはいえ、一度は自分で体験してみたいって感じなんだと思うわ。それからでしょうね、探索者を続けるか諦めるかって話は……」


 俺達はシャトルバスに乗る為に出来た行列を眺めながら、意外に早かったコレまでの時間の流れに感慨深いものを感じていた。新年度に替わってから半年が経つという事は即ち、俺達が探索者になってからもうすぐ1年を迎えるという事だからな。

 ……いやホント、短い期間で色々とやったものだな俺達。引き出しの中のプライベートダンジョンから始まり、重蔵さんや幻夜さんとの訓練、悪質探索者や被害者探索者との遭遇、ダンジョンの奥深くまで走破、運動会や文化祭の学校イベント、そして極めつけが私設訓練施設の建設……うん、普通の学生探索者じゃココまで濃い経験は1年程度の短期間ではしないよな、絶対。


「そうだね。まぁダンジョン業界が盛り上がるのは良い事じゃないかな? 新人さんが多く参入してくれるって事は、それだけダンジョンや探索者の存在が社会に浸透し受け入れられているって事なんだしさ。後続者が続かないような業界じゃ、何れ市場も縮小していって何時かは無くなる可能性もあるんだし」

「ああ。まぁこの調子ならまだ暫くはダンジョンブームも続くだろうから、その間に確り業界としての基盤が出来れば持続可能な市場になるだろうな。ダンジョンから産出された素材は各分野で色々研究され、少なくない数のモノが商品化されてるみたいだし、早々に不要だと見切られるって事は無いと思うぞ?」

「ええ、現状でも食品系の素材なんかは一般市場に沢山流通し始めているわ。他にもエネルギー分野ではコアクリスタル発電が、新世代のエネルギーや代替エネルギーの登場って感じで宣伝されているわ。余程のリスクが発生しない限り、早々に見切られる可能性は低いと思うわ。時間が経てば経つほど、社会にダンジョンが浸透すればするほどに、安易にダンジョン業界を切る事は難しくなるでしょうから」


 そうだよね。安易に切ったら経済損失や失業者の増加、失業した探索者による治安の悪化などが懸念されるようになる。まぁ皆が納得できる様な緊急性が高い理由でもなければ、既得権益者がメシのタネを捨てたりしないだろうからね。仮に即時撤退ではなく段階的に業界を縮小していくにしても、ダンジョン由来の商品の代替品が揃えられる様になってからでないと難しいだろう。ダンジョンが社会に浸透すればするほど脱却にかかる時間は増え、撤退完了までにはいったい何年かかる事やら……。

 そして、そんな話を3人でしながらシャトルバスが来るのを待っていると、シャトルバスの到着を知らせるアナウンスが流れる。視線を駅のロータリーに向けると、シャトルバスが2台続けて入ってくるのがみえた。夏休みの頃は臨時で増便されている形だったが、ついに常設で増便するほどにダンジョンの利用者が増えたんだな。


「さぁて、バスも来た事だし乗ろうか」

「おう」

「ええ」


 乗る人が多く1台目には乗れず、俺達は2台目に立ち乗りで乗車しダンジョンへ向かう事になった。






 シャトルバスに乗りダンジョン前のロータリーに到着した俺達は、バスを降り少し離れた場所で背伸びをしたりし体のコリを解していた。車内は息苦しいというほどでは無かったが、大きな身動きがしにくい程度には混んでいたからな。

 そして他の乗客も俺達と同じ様に背伸びをしたりし、体のコリを解していた。


「ここの駐車場は大型ショッピングセンター宜しく広く確保されてるから、その内自家用車の利用も考えた方が良いかもね。ワゴンタイプの車なら、長物や重い荷物も問題なく運べるしさ」

「そうだな、運転免許が取れたら移動の足として自家用車を運用するのもありだと思うぞ。長期間探索対応で、1日定額で数日間は駐められるみたいだしさ」

「向こうの開発にも使えるから、自家用車の所有はありよね。とはいっても、1年近く後になる話だけど」


 ロータリーの反対側には山林を切り開き作られた広大な駐車場が設置されており、半分近くが様々な種類の車両で埋められていた。このダンジョンに探査をしに来た、企業系探索者や専業探索者が利用しているようで、中にはキャンピングカーらしき車両もあるのでココに泊まり込んでダンジョン探索を行っている者もいるらしい。

 そして残念ながらウチの学校では、在校中に自動車免許を取得すること自体は禁止されていないが、在校中に車を運転する事は禁止されている。そして在学中に運転している事が発覚した場合、停学を含め処分が下される事になっているらしい。実際、毎年1,2人は見つかり停学処分を下される生徒が出ているそうだ。


「そうだね。俺達って、良い意味でも悪い意味でも学校では目立ってるからね。もしココのダンジョンにウチの学校の生徒が通って、万一運転している姿を見られていたら……」

「まぁ即停学処分になるかは別にしても、呼び出しされ厳重注意は避けられないだろうな。学校としても、在校生の違反行為を報告され事実だったら処分を下さないって訳にもいかないだろうしさ」

「そうなるでしょうね。私達の事をよく思ってない生徒もいるでしょうから、事実を面白おかしく誇張して報告されたら、悪い方向に傾く危ない可能性が無いとはいい切れないわ。現状でそこまで困っていないのなら、危ない橋は渡らない方が無難でしょうね」


 ダンジョンに自家用車で乗り付けるというのには少々あこがれを感じるが、停学のリスクを背負って迄在校中に行う事ではないからな。在校生の顔を全員把握している訳でも無いので、誰が見ているのか分からない状況下でやるモノではない。

 まぁキャンピングカーとかは訓練場の建設でも仮住居として利用できそうなので、使えたらかなり便利だと思うので残念ではある。移動可能で最低限の生活設備が整っているってのは、未開拓地の開発では大きなアドバンテージだからな。


「まぁ自家用車利用は将来的に何れは、って事かな。それよりも、そろそろダンジョンに入る手続きをしに行こう。同じバスに乗って来てた人達はもう、先に行ってるみたいだしさ」

「そうだな、行くか」

「ええ」


 人影も疎らになったロータリーを後にし、俺達は受付がある建物へと向かって移動を始める。バスが到着してすぐは受付も込み合うので、ある程度待ってから向かった方が待ち時間で受けるストレスを溜めずに済むからな。

 





 増設された受付窓口のお陰で、予想通りあまり混む事無く受付をすませる事が出来た。一昔前だと、バス2台分の人が一斉に受付をしたら優に30分以上待たされていただろうからな。

 ダンジョン探索者が増えたせいというかおかげで、こんな辺鄙な所のダンジョンにも手厚い支援が回り便利になったものだ。


「じゃぁ柊さん、着替えを済ませたらいつも通り待合席の方で待ってるね」

「ええ、出来るだけ手早く着替えて来るわ」


 柊さんと軽く挨拶を交わし別れた後、俺と裕二は更衣室で着替えを始めた。更衣室の中は結構込み合っており、割合的に学生探索者グループの姿が多くみられる。俺達より若い感じなので、たぶん夏休みデビュー組が多いんだろうな。

 その証拠に夏休みデビュー組と思われるグループは、まだ身につけている防具が何処となく着こなせていない感じがする。動きが硬いというか、防具の存在を前提にした動きを意識しきれていないというか。


「良し、着替え完了っと。裕二、そっちは?」

「ちょっと待ってくれ、もう直ぐ……終わったぞ」


 着替えを終えた俺達は、互いに軽く相手の装備品を確認する。忘れ物や装着不備等があると、場合によっては危ない場面に遭遇する事になるかもしれないからな、念の為に相互チェックは欠かせない。

 そして互いに問題ない事を確認し終えた後、俺達は未だに着替えを済ませてもお喋りを続けている夏休みデビュー組を尻目に更衣室を後にする。


「うーん、半分位は夏休みデビュー組って感じかな?」

「そんな感じだな」


 柊さんを待つ間、待合席に腰を下ろし裕二と一緒に周囲を観察し感想を口にする。パッと見まわした感じ、装備を着慣れてない感じがするグループが結構いた。

 この感じだと、今の上層階部分はかなり混んでいそうだな。夏休みデビューだとすると、10階層辺りまで進めていれば有望株のルーキーって感じかな?


「お待たせ、2人共」

「あっお疲れ、そんなに待ってないよ。じゃぁみんな揃った事だし、軽く準備運動をしてからダンジョンにいこうか?」

「おう」

「ええ」


 今日は仲間内だけの込み入った話し合いをする事も無いので、共有の運動スペースの方で準備運動を行う事にした。このままダンジョンにいっても問題は無いが、時間があるのなら準備運動をしてからの方が怪我予防や動きのキレには良い。

 しかしながら、地味かつ細かくも重要な基礎を疎かにしている者は多いらしい。共有スペースで準備運動をしているのは、主にある程度ダンジョン探索歴を重ねている中堅グループばかりだ。夏休みデビュー組グループの姿は殆ど見受けられない。無論、個室の方を借りて行っている可能性もあるが、金欠傾向の多い新人探索者がお金を払って個室を借りてまで行うかといえば……しないだろうな。


「学校の体育の授業とかでも、始める前には準備運動はするものなんだろうけどね」

「そうだな。ダンジョン内だと怪我するのが一番厄介なんだけど……一度やらかして体験しないと分からないんだろう。知識としては知っていても、実感が湧かないだろうからな。一応協会の資格取得講習の時でも、準備運動の必要性は教えているんだけどな」

「そうかもね。中堅探索者にもなれば大小ケガの一つはした事あるでしょうから、ダンジョン内でのケガの厄介さには骨身に染みてるでしょう。探索を始める前の数分を準備運動に充てるだけで防げるのなら、やらないって事は無いモノ。回復薬を使えば短時間で治るとはいえ、安定した収入を得る前だと出費が痛いってのもあるしね」


 ある程度価格変動はあるが、初級回復薬でも1万円はするからな。ダンジョン素材の供給が増えた事で買い取り額が低下している昨今、人口密度が過多気味のダンジョン上層階で数名のグループが一人頭1万円の収入を得るのは中々に大変な状況だ。装備品の購入費や消耗品の購入費、交通費を考えると新人探索者にとって回復薬の使用は痛い出費になる。

 つまり新人探索者にとって、ダンジョン探索においてケガをしないというのは重要な節約術なのである。無論、回復薬の使用を渋ったせいで怪我が悪化し……となっては意味が無いけどな。


「まぁ他人の心配ばかりして、自分達の方を疎かにしたら意味がないよ。早く準備運動を終わらせて、ダンジョンに入ろう。この感じだと、下の階層に移動するだけでもいつも以上に時間が掛かりそうだしさ」

「ああ、そうするとしよう」

「そうね」


 俺達は共有スペースでストレッチ運動が出来そうな空いているスペースを見つけ、10分程かけ手早く準備運動を熟した。

 そして良い感じに体も温まったのを確認し、俺達はダンジョンの入り口ゲートがある建物へと移動する。すると直ぐに、入り口ゲート前に出来た見慣れたものが見えてきた。


「うん、予想通り人が多いね」

「昔の行列の長さに戻ったって感じだな。まぁ入場ゲートの数が増えてるから、進むスピードは速いけど」

「ココで愚痴を漏らしていても仕方がないわ、私達も並びましょう」


 行列の長さに少々ウンザリしつつ、俺達は最後尾に並ぶ。

 早く入場できると良いんだけどな。
















慣れない駆け引きも終わり、気分転換を兼ねダンジョンへ。

第19章スタートです。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
学年ではなく年齢切り替えなので、夏休みデビュー 初々しく危険もあるので、先輩としては心配しちゃいますね
[気になる点] 家のある町からどれくらい離れてるんだろう? 電車乗って、麓からシャトルバスでしたっけ? シャトルバス乗り場にレンタサイクル置いたらがっぽがっぽかなとか思ったり [一言] 自分たちで探索…
[一言] やっと次からダンジョン! 新しい階に行こう!!
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