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第492話 事前調査終了

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 地表のチェックが終わり、いよいよこの物件最大の問題点、地下洞窟のチェックが始まった。

 俺達は2度目となる、地下洞窟への入口を前にし湯田さんに話し掛ける。 


「湯田さん。ここのチェックは良いんですけど、如何やって下に降りるんです? ここの昇降用の階段、根元が腐り落ちてますよ。俺達は飛び降りれますけど、河北さんは……」

「大丈夫ですよ、今回は伸縮式のハシゴを持ってきてますのでそれを使います。車からとって来ますので、少し待っていて下さい」

「あっそれなら湯田さん、鍵を貸して貰えれば俺がとって来ますよ。ここから車まではそこそこ距離がありますし」


 俺は湯田さんの代わりにハシゴを取ってくると申し出た。無駄に広い土地なので、車を停めている場所まで湯田さんの足だとそこそこ時間が掛かるからな。それに比べて俺達の足なら、5分と掛からずにハシゴを取って帰ってくることが出来る。

 何より俺達だけで、河北さん達の相手を暫くするのは少し気拙いというモノがあるからな。

 

「いえ、でも……」

「大丈夫ですって、ちょっと一っ走りするだけですよ。ハシゴは車のトランクにはいってるんですよね?」

「……ええ、そうです。お手数ですが、よろしくお願いします。伸縮式で少し変わった形をしていますが、他にハシゴは無いので間違えないと思います。それと一緒に、ライトとロープもお願いします」

「分かりました、5分ぐらいで戻ってきます」


 俺は湯田さんから車の鍵を受け取り、ハシゴを取りに走り出した。

 ここは俺達以外に誰も居ない場所なので多分、全速では無いが原付並の速さが出てたんじゃ無いかな?


「おっ、コレだな。さて戻りますか」


 車のトランクに入っていた、銀と黒で彩られた伸縮するハシゴを取り出し肩に背負う。このハシゴ、支柱に貼られているシールの表記を見るに6m程伸びるらしい。車のトランクに入る大きさで、そんなに伸びるんだと感心する。いつか使うかもしれないし、俺も空間収納に一つ購入して入れておくかな?

 まぁそんなどっちでも良い考え事は後にして、皆が待ってる事だし早く地下空洞の入口に戻るとしよう。俺は車の施錠を確認し、ハシゴとついでに隣に置いてあったライトと登山ロープを持って来た道を同じ速さで走って戻る。


「お待たせしました、ハシゴ持ってきましたよ。これで良いですよね?」

「はい、それで大丈夫です。ありがとうございます、お手数をお掛けしました」


 ハシゴを持って戻ると、少し驚いた表情を一瞬浮かべた湯田さんが出迎えてくれた。本当に俺が5分かからずにハシゴも持って帰って来たことに驚いた様だ。

 まぁ一般人の足だと、早歩きでも30分位は掛かる道のりだろうからな。


「じゃぁ早速下に降りましょう。ハシゴを伸ばしてロープで倒れないように固定しますので、少し手伝って貰えますか?」

「勿論。それで湯田さん、このハシゴってどうやって伸ばすんですか?」

「固定バンドを外してハシゴを伸ばし、踏み板に付いたロックを掛けて貰えれば大丈夫ですよ」

「了解です。裕二、伸ばすの手伝ってよ」

「おう、良いぞ」


 そうして俺と裕二でハシゴを伸ばしていく間に、湯田さんは地下洞窟への入口の対面にある木に登山ロープを巻き付け固定していた。伸ばしたハシゴを登り下りしている間に、ハシゴが倒れないようにロープを結んで固定する為らしい。

 そして5分後、入口にロープが結ばれ固定されたハシゴが設置された。


「お待たせしました。それではコレより地下洞窟内部を御案内します。とはいいましても、流石に広大に広がる洞窟の全容を案内するのは無理ですので、大空洞と呼ばれる大穴部分へ向かいます」

「よろしくお願いします。それにしても地下洞窟が土地全体に広がっている、ですか。中々難儀な土地柄ですね」

「ええ、その為に大型の建造物を建てようとすると大規模な地盤強化が必要という問題があり、今までココがそのままの姿で残った訳です。1度はリゾート開発候補地になった事もあったんですが、コレにより計画は頓挫しました。まぁ大規模建築をしないのであれば、利用するに当たって問題は無いんですけれど」

「そうですか……」


 河北さん達は若干緊張した表情を浮かべつつ、下の洞窟へと続く階段を眺めながら土地の由来についての話題を口にしながら不安を誤魔化しているようだった。まぁいきなりハシゴを使って真っ暗な下の洞窟に降りろといわれたら、不安になるよな。

 なので先ずは、経験者である俺達から下に降りることになった。万一河北さん達がハシゴの踏み板を踏み外したとしても、下に俺達の誰かが待機していれば受け止めることも可能だからな。河北さん達の不安対策と安全対策の為にも、先ずは俺達から降りるべきだろう。 


「じゃぁまず、下に降りた事がある俺達からいって下準備をしときますね。湯田さん、ライト持って降りても良いですか?」

「ええ、お願いします。足下が明るければ、それだけ安心感が強くなりますから。実をいうと、自分もココから下に降りるのは初めてなんですよ。御覧の通り、下に降りる階段は腐食して使えなくなってましたから」

「確かに事前に階段が使えなくなっているのを知らなかったら、今回みたいに下準備をして来ないと降りられませんよね」


 俺達が先に降りると提案すると、少し安堵した表情を浮かべつつ湯田さんが申し訳なさげに頭を軽く下げていた。前回俺達が地下洞窟に入ったのは、止める湯田さんを無理矢理丸め込んでだったからな。

 実際あの時の湯田さんは、洞窟の中にまではいるのは想定してなかったって感じだろう。その証拠に、今回持ってきていたハシゴは持ってきてなかった訳だしさ。


「それじゃぁ先に俺と柊さんが降りるから、裕二は上で3人のサポートをしてから降りてきてよ」

「了解、下は頼むな」

「分かったわ」

「それじゃぁ手早く下に降りようか、柊さん」


 俺と柊さんは湯田さんからライトを受け取り、ハシゴの固定具合を確かめつつ地下洞窟の中へと降りていく。普段から閉鎖されている空間だけあり、洞窟内は前回内見時と大して変わった様子は見られない。

 そして柊さんも降りてきたのを確認してから、ライトで床を照らしつつ怪我をしそうな物が落ちていないか確認し、ハシゴの上から少し心配げな表情を浮かべ覗き込んでいる湯田さんに軽く手を振りながら合図を送る。


「大丈夫です。ハシゴも確り固定されていますし、危ない物も落ちてませんので降りてきて下さい!」


 大声が洞窟内で反響し少々耳に響くが、どうやらちゃんと声は届いたようで湯田さんは了解と軽く手を振り返してきた。

 そして湯田さん達3人は裕二の補助を受けつつ、少々時間は掛かったモノの無事にハシゴを下り洞窟内へと到着した。






 地下洞窟に全員降りた後、河北さん達は軽く周辺の状況を観察し始めた。地下洞窟が崩落しないか、酸素濃度に問題は無いか、危険なガスは発生していないか等の確認らしい。

 一応桐谷不動産から渡された書類にはその辺の情報も載ってはいるが、念の為に自分達でも確認しておきたいとのこと。まぁ提出された書類を精査せず鵜呑みにした結果、後々重大な事故が起きて……となったら目も当てられないからな。当然といえば当然の対応だろう。


「どうやら提出して頂いた書類通り、大丈夫そうですね。空気やガスの方も問題は無いと思います」

「それは良かった」

 

 どうやら問題なしと判断されたらしい。

 しかし河北さんは軽く洞窟の天井を眺めた後、一言注意を口にする。


「ですが、あくまでも洞窟自体が大丈夫なのであって、練習場として使う場合に衝撃で天井が崩落しないかは……」

「それは……そうですね。確かに上で暴れた場合、ココにどんな影響が出るのか何てのは分かりませんよね」

「ええ。特に探索者の方が練習に使う場合、レベルによってはどんな影響が出るかは……」

「「「……」」」


 湯田さんと河北さん達から、疑いというか心配というか何ともいえない視線が俺達に向けられる。まぁ湯田さんは内見で散々俺達に同行しているし、河北さん達もデータとして俺達の成果は知ってるだろうから、そういった視線を向けられるのも無理は無いかもしれない。

 とはいえ、流石にこのまま疑惑の視線を向けられ続けるのも辛いので弁解をしておこう。


「ええと俺達、地下洞窟が崩落するような無茶はしませんよ?」

「なんで態々そんな面倒……大変なことをしないといけないんですか?」

「私達、せっかく作った練習場に大穴を開ける趣味はありませんよ?」


 俺達はそんなことはしないと口々に主張し、湯田さん達3人に弁解する。全く、せっかく買った練習場を壊す意味はないよ。そんな俺達の説得?に湯田さん達も一応納得の表情を浮かべ、視線を外してくれた。

 まぁ出来ない(・・・・)、とはいってないんだけどね。


「そうですか。まぁ練習をする際は、崩落が起きる可能性もあると言うことを忘れずに気をつけて下さい」

「はい。敷地内には地下空洞の無い場所もありますので、練習をする際は主にその辺で行おうと思います」

「その方が良いと思います」


 俺達の主張に賛成する様に、河北さんは大きく頷いていた。

 しかし洞窟が無い部分って敷地の3割程度しか無いけど、元の敷地が広いから問題は無いかな。下手な球場なんかより広いしさ。


「それじゃぁそろそろ先に進みましょう。奥に大空洞がありますので、目的地はそこになります」

「あっ、この間そこに俺達いったので先導しますよ。足下も少し悪いんで、十分に気をつけながら付いてきて下さい」


 俺は先導を買って出て、大空洞がある方へと足を進める。只でさえ明かりは手持ちのライトだけで暗い上、舗装されているわけでも無い緩やかな下りのデコボコ道だ。幸い結露こそしていないものの、山道なんかに慣れてない者では転倒のリスクが跳ね上がる。

 俺達が土地を借りたら、このへんは早めに平坦化しておこう。


「洞窟と聞いていたので、もう少し狭い所をイメージしていたんですが結構広いですね」

「ええ、人の手の入っていない天然洞窟です。元はココを海水が通っていたんじゃないか?っていわれています」

「という事は、今も洞窟のドコかには海水が?」

「ええ。台風などで海水位が上がった時には、洞窟内に海水が上がってきた、何て話を聞いたことがあります」


 湯田さん達は慎重に進みながら、洞窟の由来について話していた。

 それにしても海水が入ってくる時もあるのか……台風や波が高い時は入らない方が良さそうだな。


「もうすぐ大空洞に着きますよ」


 目的地を目前にし空気感が変わった事を察した俺は、皆にもうすぐ到着する事を知らせる。

 そして……。


「お疲れ様です、ココが大洞窟です」

「「「……」」」


 ライトで照らし出された地下に広がる大空洞に、湯田さん達3人は圧倒されたかのように押し黙る。

 まぁ中々目に出来ない光景だから当然といえば当然か、場所によっては十分観光地に出来る光景だろうからな。


「コレは……凄い所ですね」

「ええ、写真などでは何度も見たことはあったんですが、こうして生で見てみると……コレは凄いです」


 自然が生み出した圧巻の光景、とでもいえば良いのだろうか? 湯田さん達は暫くの間、何も言葉を出さずに大洞窟を見渡していた。

 もしこの土地を購入して後に売るような時が来たら、ある程度整え観光資源付きとして売りに出したら買って貰えるかも知れないな。


「はっ!? ゴホンッ! すみません、少し見とれてしまいました。調査の方を進めさせて頂きます」

「いえいえ。自分達もココを初めて見た時は今の河北さん達みたいに暫く見とれてましたから、無理も無い事だと思いますよ」

「ははっ、そういって貰えると幸いです」


 河北さんは少し恥ずかしげな笑みを浮かべながら、野原さんに次々指示を出し調査を進めていく。河北さん達は特に壁面や天井を中心に入念に調べ、罅や崩落しそうな部位が無いかをチェックしていく。この大空洞、中々の天井高があるのでもし一塊ほどの大きさの岩が落下でもしてきたら大惨事になるからな。

 特に今回俺達が希望する使用方法が訓練施設であり、上で暴れた際に崩落する危険は他の場所より大きい。天井高が出れば地表面までの高さとの差で、天井の厚みが分かるので特に念入りに計測している。


「なるほど、この空洞の天井の厚さは2m~3m程ありそうです。普通にしていれば崩れないと思いますが、1度専門家の意見を聞いてみたいものですね」

「そうですね、ウチの方で伝手のある専門家に尋ねてみます。発見当時の関係者達の意見としては、大規模建築等をおこなわないのであれば問題は無いとのことでしたが……今回の利用目的とは異なりますからね」

「お願いします」


 そうして河北さん達は幾つか確認をした後、俺達は地下空洞の調査を終えた。

 そして車を止めた場所まで戻ってきた後、河北さんから事前調査終了の宣言がされる。


「それではコレで事前調査の方を終了とさせて頂きます。今回の調査結果の方は後日、改めて書簡にてお送りいたしますのでご確認の程よろしくお願いします」

「いえ、コチラこそ今日は遠い所までご足労いただきありがとうございました。ご要望にあった確認事項の方は、早急にお送りします」

「「「「お疲れ様でした」」」」


 こうして俺達は互いに頭を下げながら労いの挨拶を交わしあい、一日がかりの長い調査を終える。

 結果がどうなるかは分からないが、練習場計画が確実に一歩進んだという実感が湧く思いだ。
















事前調査終了、検査結果は後日書簡にてってヤツですね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] スムーズに事前調査がすんでよかったです 仕事できんちょうしているのに、きれいな景色に見惚れたため本当に絶景ですね  [一言] 無茶をしたら壊しそうって目と 壊せるけど壊すつもりはないってと…
[一言] 小さくなる伸縮梯子というと一段ずつ伸ばすアレかな。あの梯子って案外重いしかなり撓むんですよね。 小さくなるメリットは大きいけど個人的には使い勝手は二段式アルミ梯子とか脚立に負けるかな。
[良い点] 一般人とのずれが出て来ましたね。たとえば、梯子は探索者なら必要なくても、一般人なら必要なので階段を作れとの条件を付けることがあったり、壁の強化についてもスキルを使えばできるのに、スキルを使…
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