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第461話 最近の冷食は凄いな!

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 幸いピークの時間帯を過ぎている事もあり、5人分の空いてる席はすぐに見つかった。元々このフードコートのテーブルは、探索者達がパーティーで利用する事を想定しているためか、一度に8人が座れる仕様になっている。

 因みに、一人で利用できるカウンター方式の席も複数設置されてるので、お一人様利用でも肩身の狭い思いをしなくて済む。実際、お仲間は先に帰ったのか何人かのお一人様が食事をとっているしな。


「ピークの時間帯は過ぎてるのに、そこそこ利用客はいるもんだね。席が取れてよかったよ」

「まぁガッツリとした食事目的だけでなくても、俺達の様に帰る前に小腹を満たそうって利用客もいるだろうからな」

「反省会をココで、って人達もいるでしょうね」


 俺達3人は先程購入したピザとフライドポテトをテーブルの上に広げ、レンジで商品の温めをおこなっている美佳達を待っていた。ココに設置してあるレンジは業務用の高出力型なので、そんなに待たなくていいのはありがたい。

 そして俺達が席について1分程して、美佳と沙織ちゃんが笑顔を浮かべながら席に腰を下ろす。


「お待たせ!」

「お待たせしました!」


 美佳と沙織ちゃんがテーブルに置いた品から、凄く良い香りが漂ってくる。


「二人のは美味しそうだな、それは何ていう商品なんだ?」

「えっとね。私が買ったのは洋食プレートで、ハンバーグステーキとオムライスにワッフルが付いてるやつだよ」

「私が買ったのは麵物で、台湾まぜそばです」


 容器は冷凍食品にありがちのプラ製だが、料理の見た目は結構本格的だ。普通にプラ容器からお皿に移し替えれば、この料理が冷凍食品だとは思わないだろうな。

 たぶん俺なら冷凍食品の載せ替えだとは気付かずに、普通に本格的で美味しいという感想を口にすると思う。


「ココの自販機って、そんなのも置いてあるんだな」

「チラッと一通り見て回ったんだけど、ココの自販機に並んでる商品は結構本格的なモノが多かったよ?」

「コラボ商品らしく、専門店で出されるような料理が並んでましたね。私が買った商品も、どこかのお店とのコラボ商品だったみたいですよ」

「なるほどな」

 

 そこまで商品ラインナップが充実しているとなると、ココの自販機を目的に探索者以外の一般人が集まってくるようになるかもな。珍しい商品やあの店のアレが有るとかいってさ。

 万が一のことが起きると危ないからと、一般人が来ないで済むようにって自販機を設置しているのに、そうなったら本末転倒だよな。


「そういえば、お兄ちゃん達は何を買ったの? ピザってのは分かるけど、それ、凄い焼き立てって感じがあるんだけど……」

「焼きたてのピザを提供してくれる自販機だったらしくてな、5分ほど待っただけでコレが出て来たぞ?」

「ええっ、自販機で焼き立てって……」

「オーブンを内蔵しているタイプの自販機だったんだろうな。俺も最初は冷凍されたピザが出て来て、自分でレンジで温めるもんだと思ってたよ」


 本当に、まさかだよな。ピザを売ってる自販機があるなと思ってよくよく説明文を見てみると、選んだ商品を焼きたてで提供してくれるっていうんだからさ。

 最近の自販機ってのは、こんな事も出来るようになってたんだな。 


「自動販売機って知らない内に進化してるんだね……」

「そうだな」


 その内、自動調理ロボが作った料理が出てくる自動販売機が登場するかもしれないな。

 とはいえ、何時までも話していたら折角の料理が冷めてしまう。まずは冷めない内に食べ始めるか。


「さて、まずは食べよう。折角の料理が冷めるしな」

「そうだな」

「ええ」

「うん!」

「はい!」

「「「「「いただきます」」」」」


 軽く手を合わせてから、俺達は食べ始めた。 






 自販機の商品だしと侮っていたが、口に入れたピザは中々の味だった。もちもちとした食感と弾力がある厚めの生地に、程よい辛みとスパイスの効いたソース。程よく塩味が効いた数種類混ざりあった濃厚なチーズ。

 そして何より、それらの味わいに負けないふんだんに乗せられた具材のおいしさ。

 

「美味いな、このピザ」

「ああ、少し侮ってたな。まさか自販機で買えるピザが、このクオリティーを出してくるとは……」

「料理全体のバランスが凄いわね。上に乗っている具材が具材だから生地が力負けしそうなのに、ソースがいい塩梅で両者をつなぎ合わせてるわ」


 俺達3人はピザを食べながら、予想外のおいしさに驚愕していた。自販機商品と言う未知の分野の商品なので高望みはしていなかったのだが、食べてビックリと言うやつである。

 ピザの上に乗っている具材が具材なので、ほどほどの味は保証されているだろうと思っていたのだが……良い意味で予想を超えてきた。


「オーク肉とミノ肉を具材に使ってるから、ある程度の味にはなると思っていたけど……普通にお店に出しても良いんじゃないか? 多分、人気出ると思うよ。少し値段は高いけど」

「俺もこの味のピザが食べられるのなら、お店に食べに行くかもしれないな。少し高いけど」

「そうね。この味なら、これだけでもお客さんを呼べるかもしれないわね。少し高いけど」


 俺達はピザを美味しく食べつつも、少し気になった部分について愚痴を漏らす。

 何せ俺達が食べているこのピザ、1人前サイズで1枚5000円もするからな。ご当地食材(ダンジョン食材)を使ったピザと書かれていたので、物は試しにと買ってみたのだ。確かに値段相応かは分からないが、美味しさは間違いない。しかし、高いモノは高いと思うな。


「やっぱり、探索者なら出せなくはないだろうって考えの値段のせいかな?」

「まぁ、その辺のショッピングモールなんかに置くよりかは需要はあるだろうな。数日にわたって長期間ダンジョンに籠って探索するパーティーなら金は持ってるだろうし、そんな連中がダンジョンから出てきてすぐに何か食べようと思ったら、多少高くとも美味しいモノを食べたいと思うのは当然の反応だろうさ」

「そして近場に多少高くても手軽に美味しいモノが食べれる場所があれば……まぁ需要は多そうね」


 数日間にわたってダンジョン内で活動するとなるとかなりの物資を消費するので、物資管理の面から節制が求められるからな。食卓の色どりを良くしようと思い、あれこれ持ち込もうとしたら運搬物資がえらいことになる。俺達の様な例外を除くと、専用のバックアップチームを作るなど体制を整えていない探索者パーティーでは、毎日カップ麺の様な乾物やレトルト食品に頼るしかない。カップ麺やレトルトが悪いというわけでは無いが、やはり限定された種類の食事しかとれないというのはストレスが溜まるものだ。

 特にダンジョン内は閉塞感と何時モンスターが襲ってくるか分からない緊張感で、ストレスが溜まりやすい環境をしている。たった数日間の食事の不満ぐらいと軽く考えていると、精神的に追い詰められ容易に不和が広がりパーティー崩壊の危機につながるからな。


「お兄ちゃん達のピザ、そんなに美味しいの?」

「ん? ああ、中々に美味いぞ。まぁ使ってる具材が具材だから、少し高いのが難点だけどな」

「へぇー」

「……やらないからな?」


 美佳がピザを凝視した後、俺に物欲しそうな眼差しを向けてきたので軽く両手の人差し指を使ってバツマークを作っておく。流石にこの大きさのピザを更に分けるのは難しい。

 と言うより美佳、お前自分のがあるだろう?


「ええっ……」

「そんな残念そうな顔しても駄目だぞ。どうしてもと言うなら、まずは手元のそれを全部食べてからにしろよ。それ、結構なボリュームだしな」

「うん」


 ハンバーグステーキにオムライス、オマケにワッフル迄ついてるとなると完全に食事メニューだからな。ダンジョン探索でそれなりにお腹が空いたとしても、更にピザまでと言うのは流石に食べ過ぎだろう。

 実際プレートの中身も、それほど勢い良く減ってるようには見えないしな。


「それに美佳のだって、十分に美味しそうじゃないか。そのハンバーグ、オーク肉やミノ肉を使ってるんじゃないか?」

「コレは使ってないと思うよ。自販機の商品写真にもダンジョン食材使用とは書いてなかったし、値段もダンジョン食材を使ってるのなら安かったし」

「幾らだったんだ、それ?」

「1800円ぐらいかな。どこかのお店の商品みたいだったけど、そこまで高くはなかったよ。たぶん、地元の洋食屋さんのメニューを冷凍して持ってきてるんじゃないかな?」


 そう言いつつ美佳はハンバーグを一口食べ、美味しかったらしく表情を綻ばせていた。


「沙織ちゃんの麵の方はどう、それも地元のお店の商品なのかな?」

「あっ、はい。これも少し辛みが強いですけど、結構おいしいですよ。とても冷凍食品だとは思えないクオリティーですね」

「そっか、最近の冷凍技術はすごいって聞くしね。お店とほとんど変わらないクオリティーを出せるのか」

「実際のお店で出されてるのを食べたこと無いのではっきり言えませんけど、これでも十分に美味しいですし、お店の方にも食べに行ってみたいなって思わせてくれます」


 それはそれで、ココに商品を出品したお店としては成功なんだろうな。料理に興味を持ってくれた探索者が客として来店してくれれば、更に他の客を呼び込んでくれるきっかけになる。昨今注目を集める探索者がダンジョン帰りに好んで集まるお店、と言う噂が立てば一般の客の集客にもつながっていく。

 まぁ探索者御用達となり過ぎて、他の一般客が近寄りづらくなるリスクもあるけどな。


「そっか、それを聞くと俺も食べてみたくなるね。今まで見向きもしなかった施設だけど、今後はちょくちょくココに立ち寄るのも良いかもしれないかな?」

「混んでなかったら手軽に食べれるし、良いかもしれないな。商品ラインナップもかなりあるし、暫く使っても早々に飽きは来なさそうだし」

「そうね。1つの自販機の商品を制覇するだけでも、それなりの時間が掛かりそうだわ」

「1つの自販機に5,6種類は入ってるし、週末だけの利用だと1台制覇するのに1ヶ月は掛かるよ?」

「ココにある自販機を制覇するとなると……1年以上かかるんじゃないんですか?」


 確かに沙織ちゃんが言う様に、この数の自販機を制覇しようと思ったら1年は楽にかかるだろうな。その上、1年も時間をかけていたら確実に商品ラインナップの入れ替えがおこなわれるだろう。そうなったら、最初っからのやり直しになるのかな……。

 毎日ダンジョンに通う様な専業探索者ならばともかく、俺達の様な週末だけの利用が主な学生探索者がココの自販機メニューを制覇するのは厳しいだろうな。勿論1回ダンジョンに来る毎に、1台ずつ制覇していくのなら可能だろうけど……流石に一度の食事で5個も6個も食べきれる自信は無いな。


「とは言っても、1回で1台の商品を食べつくすっての厳しいだろうな」

「かと言って、購入した物を家に持ち帰るってのも難しいしな」

「持って帰る途中で溶けるだろうしね」


 お持ち帰りしようにも、ココで購入した商品はここで食べる事が前提になっているのか、保冷剤の類は置かれていない。下の町に住んでいる人なら兎も角、俺達の様に遠方からダンジョンに来ている者では持ち帰ってる途中で溶けてしまう。

 ドロップ肉の保存用に保冷バッグは持っているので、下のコンビニで氷や保冷剤を買うという方法もあるけど……氷を入れるまでに半解凍状態になるかもな。


「そうね。制覇するとか考えないで、来れる時に来て好きなモノを程々に食べるって方が良いのかもしれないわ」

「うんうん。無理して制覇を目指すより、のんびり好きなものを選んで食べる方が楽しいよね」

「私も無理して食べるというのは、ちょっとどうかなって……」


 柊さん達3人から乗り気ではない声が上がる。立ち並ぶ自販機のメニューを全て制覇したという称号?には少し魅力を感じるが無理して取得する様な代物でも無いので、3人の言う様に制覇など目指さず程々に楽しむのが良さそうだな。

 

「そうだね。いくら物珍しいからといっても、無理する様なモノでもないし程々に楽しむ方が良いか」

「ああ、偶にダンジョンの帰りに楽しむぐらいがちょうど良いんだろうな」


 柊さんの意見に賛成しつつ、俺と裕二は残りのピザを食べる。話が盛り上がり少し時間が経って冷めたせいか、チーズの伸びが悪くなったがそこまで味は落ちていなかった。冷めると生地が水っぽくなったり、チーズの塩味が強く出るモノとかあるからな。いやホント、冷凍でこのクオリティーを出せるって凄いな。

 俺は心底感心しつつ、皆で美味しいものを食べるというひと時を楽しむことにした。
















最近の冷凍食品のクオリティーには驚きしかありませんね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  主人公は時間経過無しの収納庫を持っていたはず。
[一言] この間面白映像かなんかでホットドッグの自動調理ロボ販売出てた。 面白映像だからセットされたパンがずれて落ちてソーセージだけ出てきたんだけどね。
[一言] やっと追いついた! 追いついてしまった、、 Audifyって言うブラウザ読み上げアプリでウォーキングとかしながら聞いてました!
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