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第439話 生徒会からの依頼

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 橋本先生と共に部屋の中に居たのは、元生徒会書記にして現会長の南城さつきさんだった。7月の生徒会選挙で3年生の久松先輩から代替わりして、書記からスライドする形で今期の生徒会長を務めている。

 とはいえ、何で生徒会長がウチの部にいるんだ?


「お久しぶりです、南城生徒会長。直接顔を合わせるのは、体育祭対策の頃以来ですかね?」

「お久しぶりです、皆さん。確かに直接顔を合わせたのは、大体その辺りになりますね。でも、皆さんの活躍のお噂は度々耳にしていますよ?」

「ははっ、それはそれは、どんな噂が流れているのか気になりますね」

「噂の多くは、良い噂ばかりですよ」


 裕二と南城さんは和やかな笑みを浮かべつつ挨拶を交わしていた。

 多くはって、じゃあ残り少ない噂は?と聞いてみたいが、どんな答えが返ってくるか怖いので深追いはしないでおこう。この手の場合、大なり小なり余り気分の良くない尾ひれがついているものだからな。取りあえず全体的に悪い感じでは無い、という部分だけ覚えておくことにしておこう。  


「それにしても先生、生徒会長が同席するってのはどういう事なんですか? 部員全員に集まって欲しいという話でしたが……」

「その事については、1年生組が来たら話すわ。悪い話ではないから安心して」

「そう言われても……」


 裕二は若干心配げな表情を浮かべつつ招集理由を橋本先生に尋ねるが、橋本先生はドコか疲れた表情を浮かべつつ心配するなと返してくる。

 流石に生徒会長同席の下での話し合いともなると、悪いことでは無いと言われても不穏感が漂ってくる。部活単位や学校関係で悪いことをした記憶は無いので、いきなり叱られることはないとは思うけど……知らない所でやらかしてたのかな?


「それはそうと、直接こうやって話をする機会も少ないのでお礼を言っておきますね」

「お礼……ですか?」

「ええ。アナタ達の活躍?のお陰で、1年生の留年生による強引な勧誘問題が解決しましたので」

「ああ……解決、と言われても……あの結末はちょっと」


 軽く会釈しながらお礼を口にする南城生徒会長に、俺達は微妙な表情を浮かべてしまう。美佳達の悩み事を何とかしたいという思いで体育祭でパフォーマンスを行ったのだが、中々に後味の悪い結末を迎えてしまった。集団中退の原因が全部俺達のパフォーマンスのせいというわけでは無いだろうが、間違いなく一因を担っているだろうというのは間違いない。

 その為、あの件でお礼を言われると如何しても渋い顔をしてしまう。


「確かに、少々後味の悪い結末にはなってしまいましたが、問題が解決し迷惑を被っていた多くの1年生が助けられたというのも間違いの無い事実です。誇って欲しいとは言えませんが、自分達の行いを卑下することでもありません」

「そうなんでしょうが、ヤッパリ自分達としては他にもやり方があったんじゃ無いかな?と思ってしまうんですよ」


 裕二の解答を聞き南城生徒会長は軽く頷きつつ、俺達の心境を理解しているような表情を浮かべながら話を続ける。


「確かに、他に方法があったのかも知れません。ですがあの時は、私達生徒会を含め学校側でも有効な解決策を出すことが出来ませんでした。そんな私達が出来たのは、貴方達が提案してくれた牽制策に乗ることだけです。他に代案が示せなかった時点で、私達生徒会や学校側が貴方達の行いを間違っていたと非難することは出来ません」

「……」

「後味の悪い結末にはなってしまいましたが、あくまでも彼等が選んで中退するという決断を行っています。決断に至る理由はどうであれ、彼等自身が自分で進む道を選んだ。冷たい言いようにはなりますが、それだけの事です」

「ええ、会長の言う通りなんでしょうけど……」


 頭では会長の言っていることが正しいと理解出来る、理解出来るのだが中々納得しきれないというだけなのだ。恐らくコレは、時間を掛けて自分の納得出来る形で消化するしかないんだろうな。

 そして暫く部屋の中に何とも言えない沈黙が広がった後、俺達のやり取りを見ていた橋本先生が少し控え目な感じで話し掛けてきた。


「その件に関してなんだけど、学校側としては多少問題はあれど生徒の意思を尊重するって形で結論付けたわ。高校は小中と違って義務教育では無く、あくまでも自主的に学ぶ事を選んだ結果として通う場所だから。今回中退した子達も、学校に通い学ぶ事より社会に出て働くという選択をした、という事よ。それに探索者という職業が出来た昨今、こういった事例(中途退学)は今後も続くだろうしね」

「学校としては止めない、という事ですか?」

「あくまでも、生徒本人や保護者が納得の上で中退するのならば学校側としては止められないわ。さっきも言ったけど、高校は義務教育では無いからね。勿論、もし生徒本人や保護者が一方的に中退しようさせようとしているのなら、学校側としても話し合いの場を持って思いとどまるように説得するわ」

「という事は、今回の場合は両方の同意が得られていたという事ですか?」


 橋本先生の話に少し引っ掛かりを覚えた裕二が、少し踏み入った内容について問いただす。俺達が聞いている話はあくまでも、夏休み明けに1年生から大量の中退者が出た、という事だけだからな。


「ええ。中途退学の意思確認に行った先生によると、生徒本人と保護者の同意を確認出来たそうよ。保護者の方は多少不安気だったそうだけど、本人の選択した進路だからと最終的には中途退学手続きを行ったと」

「そう、ですか」

「無論、中退に全面的な賛成を示している保護者はいなかったそうよ。仕方なし、といった印象だったらしいわ」

 

 もしかしたらその保護者さん達には、彼等が学校で何をしていたかという話が伝わったのかも知れないな。体育祭の見学とかで学校に来る機会もあっただろうから、周りの子供や自分の子供の反応に違和感を覚えて問い詰めた結果……とか?

 もしそんな感じなら、子供が辞めて別の道に進みたいと言い出したら消極的ながらも賛成をするかも知れないな。


「なるほど、確かに両者の同意があるのならば、学校側がどうこう言うことでは無いでしょうね」

「ええ。流石にこの人数が1度に中退するという事態は想定していなかったので学校としても慌てましたが、話の内容としては保護者同意の下に生徒が中退をする、ですからね。手続きが正当な物ならば、学校として否とは言えません。まぁ中退の手続きを進める前に、事前に学校とは相談をしておいて欲しかったですけど」

「いきなり複数名が事前相談も無く中退手続きをしたら、それは驚きますからね」

「ええ、お陰で何か大きな事件に巻き込まれでもしたのか?みたいな話にまで発展しかけたわ」


 ある意味、大きな事件(体育祭の演武)には巻き込まれてるのかな? 

 とはいえ、中退者全員が保護者同意の下に中退したとするのなら、俺達もどうのこうの気にしても仕方が無いか。中退した彼等が探索者として成功しないと決まったわけでも無いのだから、部外者である俺達が心配しすぎる必要も無いな。余り冒険しすぎなければ、大成功とは言えなくとも程々の成果は出せるだろう。 


「ん? 来たみたいね」


 若干しんみりとした雰囲気で話をしていると、部屋の扉をノックする音が響く。

 どうやら、美佳達も来たようだ。






 俺達に少し遅れ美佳達が部室に来た事で、橋本先生が声を掛けたと思わしき全員が揃った。想定外だったオブザーバー?が一人居るけど。

 そして全員椅子に腰を下ろした所で早速、今日全員来る様にと念を押され呼び出された理由の話が始まる。


「先ずは皆、お疲れ様。急な呼び出しという形になってしまったのに、こうして全員が来てくれたことに感謝するわ」

「いえいえ、それで、全員出席での話っていうのは何ですか? 南城生徒会長も同席しているって事は、部以外に学校全体に関係する話なんでしょうけど……」

「ええ、今回の話は生徒会からの依頼……というか、お願いね。その関係で今日は、南城生徒会長に来て貰っているのよ」


 橋本先生が視線で話を振ると、話を振られた南城生徒会長は軽く会釈をしながら自己紹介をする。美佳達の場合、南城生徒会長とは直接の面識は無いからな。


「1年生の皆さんと直接顔を合わせるのは初めてですね、生徒会長をしている南城さつきです。今日はよろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします!」」」」


 美佳達は少し慌てた様子で、南城生徒会長に返事をする。1年生が生徒会長と話す機会など先ず無いだろうから、美佳達はかなり緊張した表情を浮かべて少し居心地悪そうにしている。

 別にとって食われるわけじゃないんだから、そんなに緊張しなくても良いだろうに。見てみろ、南城生徒会長も美佳達の反応に苦笑を浮かべているぞ?


「それで会長、早速で不躾ですが話というかお願いとは?」

「では、単刀直入にお話しさせて頂きます。私生徒会からのお願いというのは、今回の文化祭で貴方方が配布したプリントの件です」


 文化祭で配ったというと、探索者が関わりそうな税金関係の話のアレか。

 南城生徒会長は俺達の顔を軽く見回した後、話を続ける。


「貴方方が配布されたプリントですが、文化祭実行委員会経由で提出された物を私も見ました。普段意識していない内容でしたのでかなり驚きましたが、あのプリントというか書かれていた内容は全校生徒に配布しておいた方が良い内容の物だと判断しました」

「全校生徒に、ですか」

「はい。正確な人数は把握出来ていませんが、ウチの学校で探索者資格を持っていると思わしき生徒の数は、現時点で全校生徒の半分を超えていると思われます。その中の何人が、貴方方が配布したプリントの内容を理解しているか……」

「まぁ税金関係の話は、高校生が意識しにくい部分ですからね。俺達も年末に親なんかと話している内に気付いて、慌てて詳しく調べ始めたぐらいですから」


 いやぁ本当、探索者活動を始めるのが皆より遅れていて良かった。最初っから活動してたり、下手にレアドロップ品を換金していたら、えらい騒ぎになって親に迷惑を掛ける所だったよ。あの頃はドロップ品の買取単価も凄く高かったから、直ぐに扶養控除の上限範囲を超えていただろうからね。

 もしダンジョンの一般解放時期がもう2、3ヶ月早かったら、去年というか今年の年始の辺りで学生探索者の脱税問題って感じで大問題になってたんじゃ無いかな?


「そうでしょうね。私も貴方達のプリントを見て、ハッとしたぐらいだもの。殆どの探索者をやっている生徒は、税金問題なんて気にしていないはずよ」

「調べない方が悪いと言い切れれば良いんでしょうが、この手の話は軽く触り程度にでも全校生徒に伝えておいた方が良いかもしれませんね」

「ええ。その為のツールとして、貴方達が配布したプリントを全校生徒に生徒会名義で各クラスに配りたいと思っているのよ」

「生徒会名義で、ですか?」


 配ること自体は問題無いと思うが、ウチの部名義ではダメなのだろうか?

 そんな事を疑問に思い俺達が首を傾げていると、南城生徒会長が事情を説明してくれる。


「ええ。作成者の貴方達には申し訳ないけど、部活名義のプリントを全校生徒に配布するのは如何なのか?という話が学校側から出たのよ。貴方達が作ったプリントが有意義な物だという事は分かっているのだけど、探索者生徒に関係していても生徒全員に関係しているモノでは無い以上、校費で作って配布するのには適していないってね」

「……随分とけちくさいと言いたいですけど、全校生徒分のプリント印刷ともなればそれなりに印刷代も掛かりますからね」

「ええ。全校生徒に関わる事柄のモノなら問題無いのでしょうけど、あくまでも探索者生徒は一部生徒という括りになってしまうみたいなので。その代案としてクラス単位での配布を提案したのだけど、各部活が発行するプリント等は共用の掲示板に貼り出すのがコレまでの通例であり、個別の部活の名義で発行した物を全クラスに配布するのは……」

「他の部活からも、自分の所の作ったモノも全クラスに配布してくれという要望が乱立しかねないと?」


 面倒そうな表情を浮かべ、南城生徒会長は裕二の問い掛けに頷いた。


「ですので、生徒会名義で配布したらどうかという話になりました。生徒会名義なら、生徒の代表機関から注意喚起文の配布という形になるので、個別の部活から配布要望は上がらないだろうと」

「なるほど」

「ですがそれでは皆さんの功績を横取りしてしまう形になってしまうので、今日はこうしてお願いに来ました。勿論、配布の際にはプリント制作の協力者として、この部の名前は明記させて貰います」

「……お話は分かりました」


 頭を下げ協力をお願いする南城生徒会長の姿を見た後、裕二は心底面倒といった表情と眼差しで俺達に問い掛けてくる。

 どうする、と?

 















文化祭での反響を受けた結果、注意喚起の協力要請を受けるですね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 部費の増額くらいは要求してもよさそうですねぇ
[一言] 主人公らに何時迄もウダウダ言うな的な意見があるが 人生経験の少ない高校生だしなぁ 性格もあるだろうし 悩みなんて人それぞれよ つか、 ダメ出ししてる人だって、あの時ああすればってある筈なのに…
[一言] "成功しないと決まったわけでも無い" 生徒会も結構上から目線だけど大樹もソコソコw 国関連は国からは動かず民間には必要最低限のお知らせのみ 知らない奴等が悪い 国はちゃんと情報を仕入れるト…
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