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第421話 クレーマー撃退するも?

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 不可能と思われていた最難関の仕掛けをクリアした事で、俺の挑戦を見守っていたお客や店員をしていた生徒達が成功者である俺を褒め称え騒ぎ立てる。更に爆発的な歓声が上がった事で、店の外にいた何人もの生徒達が何事かと入り口から覗き込んでいた。 

 思わず少し落ち着けお前等、と言いたい程の騒ぎ具合である。

 

「おめでとうございます、成功です!」

「ああ、ありがとう」


 店員をしていた女の子も興奮した様子で、俺に笑顔をむけながらゲームの成功を告げる。すると更に周囲からの歓声が上がり、もはや手が付けられない位騒がしくなった。

 確かに誰もクリアしてないゲームをクリアしたという凄い事をしたという自覚はあるが、流石に周りが騒ぎすぎ俺は逆に一人だけ冷静になってしまう。どうやって収拾を付ければ良いんだ? 


「流石です先輩、先輩ならやれると思ってました!」

「ははっ、どうにか期待に応えられたよ」


 沙織ちゃんは俺の成功を、我が事のように喜んでいた。普段の探索者活動を知っていれば俺が能力的には出来るだろうと思っていても、こういうゲームはどうなのか定かでは無いからな。俺なら出来ると自信満々にクラスメートに紹介した手前、俺が失敗していたらいたたまれなかっただろう。それが一回目の挑戦で成功したんだ、鼻高々って気分だろうな。

 俺は沙織ちゃんの称賛を控えめな態度で受け取りながら、周囲に耳と視線を巡らせる。


「凄ぇー、アレを成功させやがった!」

「何だよ、あの迷いの無い手さばきは!?」

「あっ、あの人!?」

「ちっ! 成功させやがった……無様に失敗すれば良かったのに」


 驚愕といった表情を貼り付けている客、目を見開き戦慄している客、俺の(体育祭での活躍)を知っているらしい客、小さく舌打ちをしながら忌々しげな表情を浮かべている男子店員……って、おい。最後のヤツ、無様に失敗って……俺何かしたか?

 一部の反応が少々気になったが、店員の女の子に声を掛けられたので意識を其方に向ける。


「おめでとうございます、コチラがゲームの景品になります!」

「ありがとう。へぇー、結構一杯入ってるね」


 俺は女の子からゲームの景品、そこそこの大きさの籠盛お菓子詰め合わせを受け取った。中身を軽く確認すると、結構な種類のお菓子が山盛りと言っていいほど詰め込まれている。基本的に小袋タイプのお菓子が多く詰められているので、文化祭の打ち上げで皆で食べる時に便利そうだ。


「飽きないように、色々な種類のお菓子が詰め込まれています。大袋ばかりだと、最後の方は飽きて来ちゃいますから」

「配慮して貰いありがとうございます、って感じだね。ありがとう、食べる時に皆喜ぶと思うよ」

「はい。あらためて、ゲーム成功おめでとうございます!」


 俺は受け取った籠盛のお菓子を、未だ周りで見ている客に見せつける様に笑みを浮かべながら掲げる。沙織ちゃんが相談してきた問題を解決する為に、難しいけど景品が取れないゲームじゃ無いぞというアピールだ。目の前でゲームを成功させて景品を手に入れる姿を見せたんだ、コレで景品を惜しんでクリア不可能な難易度にしているというクレームは無くなるだろう。

 そして俺の意図が通じたのか、俺が景品を掲げた事を合図に再びお客の歓喜と称賛の声が教室の中に響いた。


「取りあえず、これで良いかな?」


 景品獲得騒ぎが一段落した後、俺は教室の入り口の前で沙織ちゃんに要望に応えられたかと確認していた。少々騒がしくなったが、アピールと言う意味では満点だったと思うしな。


「はい。コレで変なクレームも無くなると思います、ありがとうございました」

「力になれて良かったよ」


 沙織ちゃんは軽く頭を下げながらお礼の言葉を口にし、俺も安堵した表情を浮かべた。


「じゃぁコレは部室の方に持って行っておくから、打ち上げの時にでも皆で食べる事にしようか」

「良いんですか? 先輩が獲った物なんですし、持ち帰った方が……」

「いや、流石にこの量は一人で食べるには多すぎるし、皆で食べた方が早く捌けるからね。打ち上げの時の賑やかしの一つにした方が、良いんじゃないかな」

「そうですか……じゃぁ打ち上げの時にご馳走になりますね」


 というわけで、景品のお菓子は部の打ち上げ品へ転用する事に決まった。結構な量があるので、皆で分けても十分に行き渡るだろう。

 

「じゃぁね沙織ちゃん、また後で」

「はい」


 俺は沙織ちゃんに別れを告げ、教室を後にした。

 さぁて、次はドコを回ろうかな……?






 美佳達のクラスを出た俺は、取りあえず1年生の教室を外から見て回る事にした。入ってみれば良いじゃないのかと言われそうだが、先程の教室内での1年生達の反応を見るに安易に入るのは少々気後れする。美佳達の為という建前があるにしても、1年生達の環境を色々と引っかき回した自覚はあるからな。先程の女の子のように良い感情を向ける生徒もいれば、色々引っかき回してくれた先輩と快く思わない生徒、学校に残った後藤君グループの元メンバーといった負の感情を向けてくる生徒も居る。

 そんな俺達に対し複雑な感情が渦巻いているだろう1年生達の元に、元凶とも言える俺が美佳達のような特別な繋がりも無いのにフラッと入るのはな……。


「おっ、ココはウチと同じ喫茶店か……かなり趣味的だけど」


 何処の国かは分からないが、教室の中は東南アジア系風の内装の喫茶店になっていた。特に特徴的な物は、おびただしい数の魔除けの仮面? っていうか、ドコから持ってきたんだ? それに壁一面に魔除けの仮面を張り巡らせるって、流石にどうかと思うぞ? 店内でお茶?を飲んでるお客さんも、仮面の壁を見て表情が引き攣ってるしさ……。

 そして一通り内装を確認した後、次の教室を覗いてみる。


「こっちは、バルーンアートの展示か……」


 教室の中は、色取り取りの風船で動物やアニメのキャラクター等が沢山作られ展示されていた。教室の前方にある黒板を利用し、沢山のバルーンが配置され一枚の絵のようになっている物。教室の中央に聳え立つように作られている、巨大なバルーンタワーなどが目を引く。

 そして教室の一角ではバルーンアート教室が開かれているらしく、犬の形を作っているらしく破裂音が何度も響いてきた。


「いやまぁ、確かに風船使ってるから割れるのは分かるけど、もう少し難易度低いというか割れづらい題材にした方が良いんじゃないか? 流石にこうもパンパン言わせてたら、他の迷惑になるぞ……」


 風船が割れる音が響く度に、何人もの生徒や外来客が立ち止まり教室の中を覗き込んでいた。実演中、破裂音に注意!とでも書いた看板でも出してた方が良いんじゃないか?

 そんなことを考えつつ俺は風船の破裂音が続く教室の前を離れ、次の教室を覗き込む。 


「ココは……射的か?」


 次の教室の出し物は、手作りの小弓を使った射的小屋だった。教室の後ろの黒板の前に的が設置されており、難易度毎に距離と的の大きさが変えられている。一番難易度が低い物は、かなり大きな的が設置されており結構賑わっていた。一番難易度が高いと思われる物は、教壇の位置から500円玉ほどの大きさの的が設置されている。

 ココも美佳達の教室の出し物のように、一番難易度が高いゲームは挑戦者から文句が出てるんじゃ無いのか?


「あっ、やっぱり無理か……」


 学生探索者らしき男子生徒が最難関と思われる的当てに挑戦していたが、予想通り惜しい所で的を外していた。手作りの弓と矢という事でまともな精度は出ておらず、1射1射ごとに矢は上下左右にブレブレに飛んでいるからな。

 あっ、全部打ち終わった。


「おい、こんなオンボロじゃ的当てなんて無理だぞ! 景品を獲られたくないからって、卑怯な真似するな!」

「卑怯だなんて、そんな。景品が惜しいとかどうかでは無く、その難易度のゲームはその弓と矢でやって貰う決まりです。現に数は少ないですけど、その弓と矢で的を射貫いている人は居ますよ!」

「嘘を言うな! こんなのでまともな結果が出せるか!」


 うん、やっぱり面倒なクレーマーというのはドコにでも出てくるらしい。不正を訴え店員の生徒に詰め寄る客に、困ったような表情を浮かべながらどうにか宥めようとしている店員。周りの客も心配げな表情を浮かべながら、事の成り行きを見守っている。

 下手に仲裁に入ると、更に事態がややこしくなる可能性があるからな。


「そこまでにして下さい」


 誰もが手を出せず、事の成り行きを見守っていると店員の一人らしき女子生徒が進み出た。


「何だ!?」

「お言葉ですが、彼女の言う様に不正はありません。この難易度をクリアされた方は、間違いなくその弓矢を用いてクリアされています」

「はぁ? 好い加減なことを言うな、だったら実際にやって見せてみろ!」


 クレームを訴えていた男子生徒は女子生徒に喧嘩を売られたと思ったのか、手に持っていた弓矢を仲裁に入った女子生徒に突きつけていた。女子生徒も弓矢を差し出され一瞬驚いた様な表情を浮かべたが、ドコか苦笑いにも似た笑みを浮かべながら弓矢を受け取る。

 クレームを付けた手前引くに引けないのか、頭に血が上っている男子生徒は大人気ない真似をするものだな。


「……では私が成功させたら、不正だというクレームは撤回して頂けますか?」

「ああ、出来る物ならな! まぁそんなボロ矢じゃ、誰がやっても無理だろうが!」

「分かりました。では……」


 売り言葉に買い言葉、どっちも引かなかったことで事態は悪い方に進展してしまったらしい。周囲の客や店員から心配される中、女子生徒が射点に立ち弓矢を構えると心配げな眼差しが向けられる。失敗を確信しているのか男子生徒は射点に立つ女子生徒をニヤついた表情で眺めており、射点に立つ女子生徒は周囲から向けられる視線など感じていないかのように集中している。

 そして女子生徒が弓矢を構えてから数秒の間が空いた後、的に目掛けて矢が放たれた。


「なっ!?」

「「「おおっ!」」」

「凄ぇ!」


 女子生徒が放った矢は狙い違わず的を射貫き、周囲から歓声が上がる。クレームを付けていた男子生徒は、信じられないと言いたげな表情を浮かべながら目を見開き絶句していた。まぁアレだけ無理だ無理だと騒いでいた以上、一発成功という目の前の状況は信じられないだろうな。

 そして間を置いて正気を取り戻したらしき男子生徒が軽く頭を振り、今の成功は偶然や偶々と言い張ろうとしたが、その言葉が出る前に女子生徒は周囲の反応などには構わず次の矢を構えていた。そして……。


「!」

「「「おお、連続で成功したぞ!」」」


 女子生徒から放たれた矢は2つ目の的を射貫き、先程の成功が偶々成功した物では無いと言う事を証明した。1度なら偶然でも、2度続けば……というヤツだな。

 そして矢を打ち終えた女子生徒は緊張を解くように息を吐き、和やかな表情を浮かべながらクレームを付けてきた男子生徒に言い放つ。


「どうですか? コレでクリア出来ないゲームでは無いという事が分かって頂けましたか?」

「……!」


 最難関の射的を連続成功させた女子生徒の宣言に、クレームを付けてきた男子生徒は悔しげな表情を浮かべ女子生徒を睨付けていた。一触即発とでも言うような緊迫した空気が一瞬張り詰めたが、男子生徒が軽く頭を下げた事で霧散する。


「悪かったな、言いがかりを付けて……」

「いえ、ご理解頂けたのなら幸いです」

「っ! 邪魔したな!」


 女子生徒の酷く丁寧な物言いに男子生徒は一瞬激高しそうになったが、軽く舌打ちをした後不機嫌そうな表情を浮かべ一目で苛立っていると分かる雰囲気を纏いながら荒い足取りで射的小屋の教室を出て行った。ただ出て行く際にチラリと見た男子生徒の顔には、恥を掻かされたと言いたげな忌々しげな表情が浮かんでいたので、後々に面倒事にならなければ良いのだが。

 そして男子生徒が去った教室では、見事にクレーマーを撃退して見せた女子生徒を客や店員の生徒が称賛している光景が見られた。


「凄かったぞ!」

「良くやった!」

「皆様、お騒がせしました。引き続き、ゲームの方をお楽しみになって下さい」


 等々、女子生徒は恥ずかしげな表情を浮かべながら軽く一礼し言葉を発していた。

 そして彼女は周囲を軽く見回した後、入り口で覗いていた俺の存在に気付き声を掛けてくる。


「そちらの方もどうですか? やって見ませんか?」

「……俺?」

「はい。興味深そうに見られていましたし、遠慮なさらずに」

「ああ、うん。じゃぁ……」


 俺は彼女に促されるままに教室の中に入り、ゲームの受付を行う事にした。

 うーん、俺が挑戦して良いのかな?

 















クレーマーの撃退に成功はするも……?


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 高難易度ミッション達成おめでとうございます 男子生徒からのひがみ、かわいい同級生が男性と楽しく話しているってのもありそうで微笑ましいです また、豪華景品を独り占めでなく山分けするの部が仲…
[良い点] なるほど、1年生の教室ですか。 新キャラですね。 1回目射て外し、なるほどとなり、ふむふむ。 [一言] 更新ありがとうございます。
[一言] 沙織ちゃんのクラスの男子くん態度に出過ぎやろww
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