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第403話 話すだけでも結構スッキリする

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 重蔵さんの話を聞き、今度の協会との面会がかなり面倒な交渉になりそうな事態に、俺達は揃って溜息を漏らした。厄介な事態になるとは思っていたが、俺達の手に余る事態になりそうな気がするな。

 そんな不安気な表情を浮かべる俺達の姿を見て、重蔵さんは軽く溜息を吐きながらとある提案を口にする。


「まぁどうしても不安というのなら、ワシがその面談とやらに同行しても良いぞ。その招待状?には、お主等3人だけという記載は無かったんじゃろ?」

「えっ? ああそう言えば、3人だけで来てくれとは書いてなかったな。何時何時に来てくれとだけ書いてあったけど……」

「ならば、ワシが保護者として同行しても問題無かろう。何と言っても、お主等は未成年の高校生じゃしな。何か重要な話し合いに、保護者が同行すると言うのは可笑しな事じゃ無い。例え話の内容が内容で保護者が別室待機になったとしても、保護者が同行してると聞けば向こうも余り無茶なことは言わんじゃろうて」

「そうして貰えると助かるけど、良いの? 爺さんも結構忙しいだろうし……」


 確かに重蔵さんに保護者として同行して貰えれば、何か無茶な提案をされた際に保護者と相談しますと言って、交渉自体を一時的に中断して嫌な流れを打ち切る事も出来るな。何せ俺達は未成年の高校生だ、同行してくれている保護者と相談するのは可笑しな事では無い。

 

「何、特に急ぎの用事も無いしの。ちょっと調整すれば良いだけじゃ」

「それなら良いけど……無理はしないでくれよ」

「心配せんで良い、始めから無理ならこんな提案はしておらん」

「それもそうか……じゃぁ、お願いするかな。一緒に来て貰えて心強いよ」


 協会との面談に、重蔵さんが同行してくれる事が決まった。事が事なので3人だけだと少々不安だったが、重蔵さんが同行してくれるのならかなりの安心感がある。

 

「それは良かった。まぁしかし、事が事だから仕方がない面もあるが、本来この手の契約は子供……未成年者だけでは結べないんじゃがな」

「ん? それって、どう言う事?」

「? 気付いておらん……いや、そこまで気が回る余裕が無かったと言う事かの? 基本的な事じゃが、この手の契約は保護者の庇護下にある未成年者だけでは結ぶ事は出来ん。ほれ、たまにニュースなんかで聞くじゃろ? 保護者が了承していない未成年者が勝手に結んだ契約を、例外はあるにはせよ無効に出来るというヤツじゃ」

「ああ、そう言えばたまに聞くな。そんな感じのニュース」


 重蔵さんの説明に、俺達は思い当たるニュースがある事を思い出した。小中学生の子供が親のクレジットカードを勝手に持ち出し、ゲームに数百万円単位の無茶苦茶な課金をしたのを訴え出て返金されたとかってヤツだ。確かにあれも子供が勝手に契約を結んで……と言う話だな。

 まぁ今回俺達が遭遇している国単位の機密事項が絡まるケースだと、例外事項に該当しそうで当てになるかは分からない決まりだけどな。


「そう、それじゃ。まぁその辺を強調して、ワシも交渉の席に同席させて貰うとしよう。無駄に情報を広めたくない協会としては、保護者も弁護士などの第3者も交えずにってのが望ましいんじゃろうがな」

「それなら俺達は、爺さんの同席を認められないのなら話し合いには参席出来ないって、軽く揺さぶりを掛けるのも良いか」

「そうじゃな。向こうが無茶な契約を持ちかけてくる気が無いのなら、同席を拒否したりはせんじゃろう。逆に同席を頑なに拒否するようなら、話を聞くだけ聞いて何の契約も結ばずに退席すれば良い。何なら、弁護士に相談した後、契約を結ぶと言った感じでな」

「そう言う断り方もあるか。でも、弁護士か……」


 複雑で難しい契約を結ぶのなら、専門家の意見は聞いて置いた方が後々面倒が無くなるよな。仮に向こうが、俺達に不利な契約を結ばせようとしているのなら防ぐ牽制にもなる。

 だけど……。


「でも爺さん、俺達弁護士さんに伝手なんて無いぞ? どうやって依頼するんだよ? しかも、国がらみの機密事項に関する契約だぞ?」

「その辺は心配せんで良い。どうしても必要になった場合は、ワシが良い奴を紹介してやる。国相手の案件でも、忖度無く意見を言う根性が据わったヤツを知っておるからの。この手の交渉も、ある意味やり慣れておるじゃろう」

「そ、そうなんだ。それは心強そうな人だな」

「まぁそのせいでスッポンやワニ亀などと呼ばれ、1度食いついたら離さないと法曹界では厄介者扱いされておるがの」


 えっ、それは……大丈夫な人なんだろうか? 俺達は穏便に今回の話を収めたいのであって、事を荒立てたいわけじゃ無い。何と言うか、その人が参加すると大事に発展しそうな気がするな。

 俺達は若干の不安を抱きながら、重蔵さんに丁寧にお断りというか、最終手段でよろしくお願いしますと伝えた。


「ふむ。悪い奴では無いんだが、確かに穏便に済ませるなら彼奴への依頼は最終手段、協会の出方を見てからにした方が良いじゃろうな。何かにつけて事を大きくしたがるヤツじゃからの」

「いや、事を大きくって……」

「彼奴からすると、依頼者の利益を最大化する為に動いておるだけなんじゃが、その過程がの?」

「頑張った結果が、大騒ぎって事か……」


 いやいや、利益の最大化はありがたいが、だからと言って事を大きくされると更に困る。例え利益が平凡な結果に終わっても、今回の件が事を荒立てずに終わる方が俺達としてはありがたい結果だ。

 うん、やっぱりその弁護士さんを紹介して貰うのは最終手段だな。


「とりあえず、彼奴に頼るかどうかは後の話じゃな。先ずは向こうさんの出方を見て、不利な条件をのまないように気を付けながら様子を見る事じゃな。相手の出方が分かれば、その後の対応も変わってくるからの」


 結局の所は事前準備を整え、相手の出方を伺いつつ対応することしか出来ないって事だな。まぁ重蔵さんと言う大人の保護者が同行してくれる様になったので、相手が俺達の様な子供3人だけと侮り横柄な対応に出る可能性が減っただけ良しとしておくべきだろうな。どうしたって今回の件では、俺達は相手の出方を伺いつつ対応することしか出来ないから。

 まぁ変に欲を出さずに無難な対応をしておけば、妙な事にはならないと思うけど……どうなる事やら。 






 週末に行う協会との面談の話は一応一段落したので、俺達はお茶を飲みながらダンジョンを発見した時の状況を重蔵さんに報告することにした。協会との面談に重蔵さんも来て貰う以上、ある程度の事情は知っておいて貰いたいからな。いざ面談している時に、そんな話は聞いてないとなったら面倒だからな。もし協会から何か言われたら、保護者に同行して貰う為に説明したと言おう。

 もし何か言われたら、俺達未成年者だけを呼び出せば簡単に言うことを聞かせられると考えていたのですか?とでも聞いても良いしな。普通に考えれば、同行してくれる保護者に最低限の説明をするのは当たり前だ。寧ろ、同行してくれた一人だけにしか話してない事を褒めて貰いたい。


「なるほどの、そう言う状況で見付けたのか」

「ああ、殆ど人が寄りつかない山奥の秘境だからな。山林調査で人が入りでもしない限り、見付かってなかったと思うよ。俺達の場合運が良かったのか悪かったのか、そんな中の一つを見付けちゃったって感じだね。宇和島さん……現場確認に来た協会の担当者の人の事なんだけど、ダンジョンを見付けたって言う報告自体は珍しくないらしい。まぁ、見間違いも多いらしいけど、俺達が報告してから現場まで調査員が到着するまでの素早い対応を考えると、そこそこの頻度で未発見ダンジョン自体は見付かってるのかもね」

「急な報告にも素早い対応が出来るという事は、それだけ似たような事例を多く熟し、確りとしたマニュアルが出来あがっているという事じゃからの。ダンジョンが出現してから1年と少し、未発見ダンジョンというモノはワシ等が思っておるより多くあるのかもしれんな」


 少し考え込むような仕草をする重蔵さんの言葉に、俺達も軽く頷きながら同意する。日本の国土の7割8割は木々が生い茂る山だからな、衛星写真や航空写真のように上から見ただけでは判断し辛いだろう。かといって、日本中の山々を歩き回って探して回るとなると1年や2年で終わるような仕事では無い。その上、山に不慣れな人員を下手に投入しようモノなら、一体どれくらいの遭難者や殉職者が出ることやら分かったものじゃ無いだろう。そりゃぁ俺達みたいな登山や仕事で山に入った人が、偶然見付け通報した際の対応も早くなるだろうな。一般人がボランティアで調査をしてくれるんだから、後は目星を付けた場所を調査員がピンポイントで調査したら良い。今はダンジョンの危険性が周知されているので、一般人なら無闇に中には踏み込まず通報を優先するだろうし。

 まぁ俺達みたいな探索者が中に入る事はあるだろうけど、その場合はよっぽどの強突く張りでも無ければ今回のようにアイテムの買取と守秘義務に関する話し合いで片はつくだろうしな。対応がマニュアル化されていても不思議では無い。 


「そう考えると今度の協会との面談は穏便に済むじゃろう……ダンジョンの方はの」

「……そうだよな。やっぱり今回の問題はもう一つの方か」

「それはそうじゃ。お主等が渡したというアイテム、マジックバッグじゃったな。それの有用性を考えれば、あちらさんも明確な口止めの一つもして置きたいと考えるじゃろう。下手をせんでも、他のアイテムに比べて社会的影響が大きすぎる」

「見た目の容量以上にモノが収納出来るバッグだからな……輸送コンテナ辺りにその技術が応用出来れば流通革命一直線だ。既存産業に大打撃を与えながらな」


 今回渡したマジックバッグでも、容量の拡張率は見た目の4、5倍はある。祐二が言うように輸送コンテナに技術応用出来れば、輸送に携わっているトラックや船などの数を4分の1、5分の1に減らす事が出来るだろう。まぁそこまで行かなくとも、半分ぐらいに減る可能性はある。だがそうなれば待っているのは、事業効率化という名の大規模リストラだ。会社にとって重たい固定費の一つが人件費、減らせるモノなら減らしたいと考えるのは自然の流れだろう。

 もしかしたらマジックバッグの噂が流れるだけでも、気が早い企業などは見通しも立っていないのに早まってしまうかも知れない可能性があるからな。あっ、関連企業の株価乱高下が起きるかも知れない。国を動かす政治家や官僚にとって、景気の乱高下や失業率の上昇など嬉しい出来事では無いからな。防げる出来事なら防ぎたいと、ダンジョン関係の国の出先機関である協会が口止めに動くのは当然か。 


「ファンタジー物の定番アイテムとは言え、今はあるかもしれないと言う可能性の段階の代物じゃ。存在確定情報等、何の準備も整っていない段階で表に出したくないじゃろう」

「そうだな……あれ? 爺さんって、マジックバッグの事知ってるのか?」

「馬鹿にするでない。コレだけダンジョン関連の情報が錯綜する世の中になったんじゃ、その手のことにも軽くじゃが手は出しておる。RPGゲームやファンタジー小説、漫画ではありきたりなアイテムじゃろ?」

「あっ、知ってるんだ。まぁアニメやゲームだと更に、マジックバッグの中が時間停止していて物品を長期保存出来たり無限に収納出来たりするな。流石に俺達が提出したマジックバッグには、そんな機能はついてなかったけどさ」


 まぁそんな機能がついていたら、ドロップアイテムの査定額もこの程度では済まなかっただろうし、情報規制の為に即座に身柄を拘束されていた可能性もあっただろうな。後々世間に知られれば非難される可能性はあるが、事が事だからやるだろう。

 それを思うと、今はまだマシな状況か。 


「まぁ、そうじゃろうな。それらの機能がついてれば、この程度の騒ぎで事は収まっておらん」

「ははっ、そうだよな」

「だがまぁ、中身の容量が拡大出来るだけでも十分驚異的な代物と言える。協会の方が発見者を警戒するには十分じゃな」

「だから宇和島さん達のやった鑑定結果を聞かずに、素直に手放したんだけどな……」


 無駄な努力では無かったと思うが、結局の所は厄介事に巻き込まれている。まぁ未発見ダンジョンの発見に関連する後始末に巻き込まれなかっただけでも、俺達としては良かったとは言えるけどさ。これで下手にマジックバッグを確保しようとしていたら、更に面倒事に巻き込まれていただろうな。

 と言った感じで、重蔵さんに愚痴を聞いて貰った後、俺と柊さんは胸のつっかえが取れスッキリとした表情を浮かべ祐二の家を後にした。今度来る時は重蔵さんに、愚痴を聞いて貰ったお礼に何か手土産を持ってこようかな。
















未成年者が交渉の席に座る場合、保護者がいてもおかしくはないですよね?


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 協会が把握していない山奥のダンジョンがG〇〇gleMapに! くらいの怪奇現象があっても良さそう。
[一言] 社会の基本は報連相、ということはお爺様は相談に来るの待ってた感じですかね? ただ前に報告した時の様子は世界の強制力が働いていたのかと思う程に未成年者であるという事がスルーされていたので違和感…
[一言] 渡したマジックバックは10倍程度位の容量の拡張しか付与されていないとはいえ、 それでも何年かかるか知らんけど解析と研究次第で内部の拡張の技術をコンテナに転用できれば軽い物限定とはいえ一度に…
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