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第398話 順調な事は良い事だけど……

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 気付かなかった事実に気付き若干落ち込みつつ、俺は美佳に話の続きを促し耳を傾ける。


「ええっと、ね。ウチのクラス、今回の文化祭ではピタゴラ装置をやるんだ」

「……ピタゴラ装置? それって、テレビやネット動画でやってる、色々な仕掛けを組み合わせてゴールを目指すって言うアレか?」

「うん、それそれ。色んな仕掛けを作って、文化祭の当日にお披露目するって感じだよ」

「へー、面白そうな企画だな」


 ピタゴラ装置か……テレビなんかでやってるのを見ると、成功するまで細かく調整したり時間が掛かって大変そうだったけど、文化祭ならその大変さも面白さなんだろうな。

 実際、クラスの出し物について語っている美佳も、どんな仕掛けを作ろうか楽しげに考えている様子だ。と言うより、随分テンションが高いな。コレはアレかな? 後藤君グループの勧誘という、精神的重しが外れた影響とか?


「それでね! 小さな仕掛けの展示物は事前に用意しておくんだけど目玉の企画として、大がかりな仕掛けを文化祭当日に調整しながら何時成功するのかってヤツも企画してるんだ!」

「仕掛けを当日に調整するのか……それって、何時成功するのか分かったものじゃないな?」

「そこが良いんだよ! 何時成功するのか分からないドキドキ感! それなら観に来るお客さんも、只並べられてる仕掛けを見るだけより楽しめるだろうしね!」

「まぁそうだろうけど……」


 中々大変そうなイベントを企画してるな。仕掛けが大掛かりに成れば成るほど、調整も大変だろうに……まぁ本人達が楽しそうならいいんだけどさ。事前準備の大変さも、当日のトラブル処理の苦労も、文化祭の味だからな。

 短い高校生活で数少ない大騒ぎ出来るイベントだ、思う存分楽しんで(苦労して)みると良いよ。


「でもそうなると、クラスと部の出し物の掛け持ちは辛くないか? クラスの出し物がそんな感じだと、時間をとりそうだしさ」

「うーん、今の所は大丈夫かな? 部の出し物の資料集めは大体終わってるし、クラスの出し物も放課後にチョコチョコ作業するだけだしさ」

「そうか。まぁ両立が厳しそうなら、何時でも言えよ。部の方の出し物なら、俺達でフォローするからさ」

「うん、ありがとう」


 一番面倒な資料集めが終わっているのなら、纏めるのにもそう手間も掛からないだろうからな。幸か不幸か俺達のクラスの出し物は、手抜き感満載のお茶濁し企画だ。準備も手間が掛からないモノばかりなので、文化祭前に使える時間ならある。

 とまぁ、そんな話を美佳としながら通学路を歩いていると、何時の間にか校門の前に到着していた。いやホント、珍しく学校に着くまでに誰とも会わなかったな。


「それじゃぁお兄ちゃん、また放課後に部室で」

「おう、頑張れよ」


 短い挨拶を交わし美佳とは昇降口で別れ、俺は自分の教室へと向かう。道中、まだ朝早く登校している人数も少ないのだが、もう直ぐ文化祭があるという事もあり、何となく学校全体から浮ついた雰囲気を感じながら。






 教室に辿り着いた俺は、既に登校している数少ないクラスメート達と挨拶を交わしながら、自分の席へと腰を下ろした。改めて辺りを軽く見渡して見るも、裕二も柊さんもついでに重盛のヤツもまだ登校してないようだ。

 暫く暇潰しをしながら待つかと、スマホを弄りネットニュースを軽く確認していく。

 

「ふむ……まぁ当然かな」


 トップニュース欄を軽く流し見した後、俺は今一番の気掛りであるダンジョン協会のサイトにアクセスした。昨日の件が、既に公示されているかいないか少し気になったからだ。

 だが結果は当然、流石に昨日の今日では新ダンジョン発見の発表は無かった。まぁ発見場所が町中なら話は違うのだろうが、人里離れた山奥だからな。協会としては、都合が良いタイミングで発表したいだろう。


「公示されるまでは、まだ時間が掛かりそうだな。まぁ一応、定期的にチェックはしておくか」


 俺は小さく息を吐きながら、ダンジョン協会のサイトを閉じスマホから視線を外す。時計を確認して見ると、時間潰しを始めてから10分ほどが経っていたので、何時の間にか疎らだった教室の椅子もそこそこ埋まっていた。

 そして軽く辺りを見回してみると、裕二が席に座っていたので俺はスマホを仕舞い椅子から立ち上がり話し掛ける。


「おはよう、裕二」

「おう、おはよう」

「いやぁ、昨日は色々大変だったな」

「ああ、そうだな。中々予想外というか、まさかの展開だったとしか言いようが無い」


 裕二に朝の挨拶をしながら、昨日の事をネタにしながら軽く話す。まぁ、かなり曖昧な言い方になるけどな。

 そして暫く雑談をした後、裕二が幾ばくか真剣な表情を浮かべながら軽く周りを見回してから、顔を俺に少し近づけながら話を始めた。 


「出来れば柊さんが居る時に一緒に言った方が良いのかも知れないけど、後々の予定とかもあると思うから先に大樹には話しておくな」

「ん? 何だよ話って、改まってさ?」

「実はな? 今朝ウチのポストに協会から書類が届いたんだよ、昨日の件で」

「昨日のをもう? 随分手早い対応だな……」


 昨日の件で書類が届いたと言う事は、恐らくマジックバッグの査定書が届いたと言う事なのだろう。

 裕二も俺が話の内容を察したのに気付いたらしく、軽く眉を顰めながら口を開く。


「ああ。それで、だ。その中身が少々問題でな? 2人には直接ウチに来て書類を見て貰いたいんだよ」

「……つまり、ココ(学校)に持って来るのには憚られる内容が書かれているって事?」

「そう言う事だ」

「……」


 頭が痛いとばかりに眉間を揉んでいる裕二の態度に、俺は思わず達観した表情を浮かべながら天井を仰ぎ見る。持ってくるのが憚られる内容(金額)が書かれた査定書類か……裕二が持って来たくないと考える書類となると7桁後半、もしくは8桁の数字が書かれてたのだろうか?

 そこまで考えると、俺も急に頭痛がしてきた。マジか……。


「だから、さ。悪いんだけど、帰りにウチに寄って行ってくれると助かる」

「了解、お邪魔させて貰うよ」

「助かるよ。後は柊さんだけど、来たら話を通しておくよ」

「そうだな……」


 一難去ってまた一難というわけでは無いが、ココまで素早い対応(口止め)をとるとなると、やはり桐谷さん関係や協会関係は暫く静観しておく方が良さそうだな。下手に突くと、本当に藪からヘビが出て来そうだ。

 俺と祐二は小さく溜息をつきながら、互いに半笑いの笑みを浮かべあった。すると……。


「おはよう、お二人さん。朝っぱらから何だか、随分と憂鬱そうな表情を浮かべてるな? 何かあったのか?」


 今登校してきたのか、通学バッグを肩に掛けた重盛が俺と裕二に声を掛けてきた。どうやら相当憂鬱そうな表情を浮かべていたのか、重盛は俺と裕二を心配げな眼差しを向けてくる。 

 ハッとした俺と裕二は軽く頭を振り、若干引き攣ってそうな笑みを浮かべつつ挨拶を返す。


「えっ? ああ、おはよう。いや、ちょっとな……」

「おはよう。大した事は無いんだけど、ちょっと面倒そうな問題がさ。一応もう終わった事だから、心配してくれてありがとな」

「そっか。月曜の朝っぱらから深刻そうな顔してたから声を掛けたけど、大丈夫なら良いんだけどさ」

「「ははっ、ご心配お掛けします……」」


 俺と裕二はバツの悪い笑みを浮かべながら、重盛に向かって軽く頭を下げる。内容自体は濁して周りに分からないようにしていたが、確かに朝っぱらの学校でやるような話じゃ無かったかもな。

 まぁ待ち合わせの約束を取り付けるのなら他の予定が埋まる前にと、早ければ早いほうが良いのは確かなんだけどさ。内容が内容だけあって、気落ちしないってのは無理だったけど。


「まぁいいや。そう言えば文化祭の準備って、どうなんだろうな? 他のクラスとかは結構、もう動いてる所もあるらしいぞ?」

「そうみたいだね。まぁウチのクラスの出し物は、そう手間も掛からないだろうから慌てなくても大丈夫じゃ無いかな?」

「まぁ飲食物の発注は担当がやってくれるし、内装系も凝った感じにはしないって言ってたから大丈夫だろう。俺達は当日、ローテを守って接客をすれば良いさ」

「……何と言うか、自分らで決めた事とは言え張り合いが無いな」


 重盛の愚痴にも似た呟きに、俺と裕二は頷いた。確かにウチのクラスの文化祭の出し物は、正直手抜きと言える。他のクラスで似た企画が採用されたと言う話は耳にしているが、それはウチより拘った作りをしているっぽい。と言っても、内装や衣装に拘るって話らしいけどな。

 まぁウチのクラスよりは、幾分かは真面目に文化祭に参加しようとしていそうだ。


「そうかもな。でもその分、自由時間が空くんだ。他のクラスの出し物を見て回って、文化祭を楽しめば良いさ。色々と拘った出し物を企画してるクラスもあるだろうしな」

「そうだね。まぁ今回は、いち参加者として楽しめば良いんじゃないかな?」

「……そうだな。イベントの楽しみ方なんて、いくらでもあるか」

「「そうそう」」


 そんな感じで雑談をしている内に時間は経ち、予鈴のチャイムが鳴るのとほぼ同時に先生が教室に入ってきたので俺と重盛は自分の席へと戻った。

 さて、色々疲れてるが今日も1日頑張るか。 






 何とか精神的な疲労を抱えつつ1日を乗り切り放課後、俺達3人は部室に移動した。美佳達の姿はまだ無いので、恐らくクラスで足止めされているのだろう。

 実際、文化祭まで後少しという事もあり、放課後とは言え学校には沢山の生徒が残っており、大分賑やかな声が響いているしな。


「とりあえず、美佳達が来るまではココで待機していよう」

「そうだな。何の説明もせず帰るってのもアレだし、皆の顔を見てからの方が良いだろう」

「そうね。でも広瀬君、本当に家に行くまで内容は教えて貰えないの?」

「ああ、うん。ちょっと衝撃的なアレ(金額)だから、出来れば周りに誰も居ない所で見た方が良いかな? 衝撃から立ち直る時間も取れるしさ」

「……そう」


 祐二がここまで言うという事は、本当にアレ(高額)なんだろうな。こうなると、やっぱり8桁説が有力だろう。7桁評価なら、祐二もココまで引っ張りはしないだろうからな。

 俺と柊さんは若干の期待感が混じった怪訝気な眼差しを、ドコか達観した表情を浮かべる祐二に向けた。


「それはそうと祐二、あれから桐谷さんの所から連絡は来なかったか?」

「ああ、流石に昨日の今日だしな。向こうも色々忙しいんだと思う。もう2,3日経っても連絡が無いようなら、様子伺いで電話してみるよ。一応俺達も当事者だしな、深掘りしない程度の様子伺いなら問題無いだろう?」


 俺の質問に祐二は若干眉を顰めつつ、連絡は無かったと答える。まぁ無理も無いかな。多分、初めてのダンジョン案件という事もあって、今が一番忙しそうだしね。 


「そうだと良いけど、まぁ全くの音沙汰無しってのも変だろうしね」

「ええ。でもまぁ聞くとしても、いつ頃物件の内見が再開出来そうか、位ね。変に深く聞かない方が良いわ」

「ああ、俺もそんな感じで聞いてみるつもりだよ。藪蛇は嫌だからね」


 祐二は苦笑を浮かべつつ、欲を掻くような真似はしないと約束した。祐二が驚くような口止め料が振り込まれている以上、下手な干渉は百害あって一利無しだからな。元々俺達が練習場の土地を探して桐谷不動産に紹介して貰っていたのは向こうも把握しているだろうから、次回の内見の日時確認くらいなら問題は無いはずだ。

 そして暫く雑談をしながら待っていると、部室の扉が開き美佳達4人組が姿を現した。


「「「「すみません、遅れました」」」」

「いや、クラスの文化祭の出し物の準備をしてたんだろ? 問題無いよ」

「特に急ぎの用があるわけじゃ無いんだし、多少遅れても大丈夫だよ」

「ええ、そんなに慌てて来なくても大丈夫よ。さっ、座って座って」


 少し焦った様子で部室に入ってきた美佳達を宥めつつ、とりあえず着席するように促す。

 そして全員揃ったので、各々で進めている文化祭で発表する部の出し物の進行状況確認を行う。


「とりあえず、出し物の準備は順調そうだね」

「うん。資料集めも殆ど終わってるから、今週中には完成出来ると思うよ」

「此方の方も、今週中には完成出来ると思います」

「俺のも大丈夫だから、ウチの部の発表物は今週中に準備完了に出来ると考えて良さそうだね」


 どうやら、順調な進行状況らしい。コレなら文化祭前日に、皆で部室を飾り付けるだけで済みそうだ。となるとクラスの出し物が出し物だけあって、俺達の手は結構空く事になるな。

 順調なのは良い事なんだけど……どうしよう?
















祭りは本番より準備が楽しいって言いますからね。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 文化祭の出し物に自分たちが獲って来たダンジョン産食材を使った模擬店をやりたいって声は出なかったのかな?
[一言] 条件付きかなぁ 協会の紐付きにされるや職員か自衛隊へ貸与とか企業研究機関への借用等々 これらの条件飲まないと超減額超分割とかね すんなり提出とアドバイスに素直な点が報告されて上の方が容赦無く…
[一言] マジックバッグ 前向きな有効利用は要人警護用かな? アメリカ大統領の護衛用としてピッタリ
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