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第397話 俺って仲間外れだったのかな?

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 内見見学で予想外のモノを見付けた翌日、俺は普段通り自宅のベッドの上で目を覚ました。ダンジョン発見者に対する事情聴取とかいう名目で、協会に身柄拘束されたりしなくて良かった。モノがモノだけに、情報保護の為に一時拘束される可能性も無くは無いからな。宇和島さん達には言葉にこそされていないが、言外の口止め(水増し査定表)はされているしさ。

 昨今のダンジョン事情を考えれば、どこぞのダンジョン系企業が産出されるドロップアイテムの独占を目論見、ダンジョン自体は国の管理になるとしても周辺の土地を私有地として買い占めて他者の立ち入りを拒むという手法をとらないとも限らない。例え初期費用が数十億掛かったとしても、数年もあれば十分な利益を出す事は可能だ。


「もう朝か……」


 特に今回、俺達が見付けたダンジョンは人里離れた秘境とも言える山奥にある。仮にダンジョン周辺の土地を買い占め立ち入り禁止にしたとしても、誰かから苦情が出る可能性は極めて低い。ダンジョン系企業が半民半官?のダンジョンを作り秘匿しようと考えるならば、このダンジョンは限りなく都合が良い場所にあるモノだ。そんなダンジョンの情報だ、最低限の公開準備が整うまで秘匿しようと協会が画策したとしても可笑しくは無い。

 まぁその際に内部でどんなやり取り(合非な誘致合戦)があるかは、知りたくも無いけどな。

 

「降りるか……」


 大きく背伸びをして体を解してから、眠気眼を拭いつつ重たげな足取りで俺は部屋を出る。あんな事があった昨日の今日で少々気は重いが、学校に行く時間は決まっているので余りのんびりともしていられないからな。洗面所で顔を眠気と共に洗い流した後、俺はリビングの扉を開き気怠げな声で朝の挨拶をする。


「おはよう……」

「おはよう大樹、何か疲れが取れてない感じね?」

「まぁ、ね。昨日の事があって、少し気持ち的にさ」

「……まぁ厄介なモノを見付けて後始末に苦労したって言ってたし、そんなモノかしらね?」

「ははっ」


 挨拶を返してくれた母さんの質問に小さく手を振って誤魔化しつつ、俺は何時もの椅子に腰を下ろし座る。今テーブルに座って居るのは父さんだけで、母さんは朝食を準備しており美佳はまだ姿を見せていない。寝坊か、アイツ?

 因みにだが、母さん達には昨日新規ダンジョンを見付けたとは言っていない。家族とは言え、秘密保持は確りしておかないとドコから漏れるか分かった物では無いからな。特に今回は口止め料(水増し査定表)が発生しているので、あのダンジョンが公表されるまでは気を付けておかないと……。


「おはよう、父さん」

「ああ、おはよう。昨日は何だか大変だったみたいだな?」


 先に席に座っていた父さんに挨拶をすると、父さんは読んでいた新聞から視線を上げ俺の顔を見ながら挨拶を返してくれた。

 昨日あった事は探索者関係とぼかして教えてあるので、門外の父さんは若干心配げな表情を浮かべている。


「うん、まぁね」

「何か困った事があるのなら直ぐに相談しなさい。探索者関係だと力不足かも知れないが、出来るだけ相談には乗るからな」

「うん、ありがとう。でも、今の所は大丈夫かな? 俺達がする後始末はだいたい昨日終わったし、あったとしても見付けた時の話を聞かれるくらいかな?」

「そうか。まぁ面倒な事になっていないのなら、それに越したことはないからな」


 面倒事にはならないと思うと伝えると、父さんは小さく安心したような表情を浮かべた後、手に持っている新聞に再び視線を落とし続きを読み始めた。俺の事を心配してくれているのに、詳細を教えるわけにはいかないのが少し心苦しい。

 そして母さんが朝食の皿を並べていると、リビングの扉が開き元気な声が響く。


「おはよ!」

「おはよう」

「おはよう、美佳」

「遅いわよ美佳。ほら、朝御飯食べるから早く席に着きなさい」

「はーい」


 美佳が座ると朝食を並べ終えた母さんも席に座り、全員揃ったので朝食を食べ始める。


「「「「いただきます」」」」


 今日の朝食は白御飯と大根の味噌汁、白身魚の西京焼きと冷や奴といった和食だ。

 そして俺達は朝食を食べつつ、各々の近況について話をする。


「そう言えば大樹と美佳の学校は、今月末が文化祭だったな。どうだ順調か?」

「うん。準備は大変だけど、半分お祭りだし楽しみだよ」

「そうそう、特に今回はクラスと部活で出し物が2つもあるから大変なんだよ!」

「ちょっと美佳、止めなさい! 汁がコッチまで飛んできたわよ!」


 美佳は如何に文化祭の準備が大変かを身振り手振りを交え説明し始めるも、箸を持ったままやったので箸先に付いた味噌汁の汁が飛び、母さんに行儀が悪いと叱られバツが悪そうに意気消沈した。

 苦労話を伝えたいというのは分かるけど、もう少し落ち着けって。


「美佳の方は、中々充実した文化祭になりそうじゃないか。大樹の方は大丈夫なのか?」

「うん。まぁ2回目だしね、皆何となく要領は掴んでるよ。まぁそれでも、お祭り騒ぎでテンションが高いから気苦労が絶えないんだけどさ」

「そうか。そう言えば2人のクラスは何の出し物をやるんだ?」

「ウチは喫茶店をやるって事になってるよ。と言っても、飲み物と業務用のお菓子を出すだけの簡単なヤツだけどさ」


 決まったのはつい先日の事だ。文化祭で何がやりたいかHRの時間で意見を聞いた所、準備に手間が掛からないヤツが良いと言う意見が大半を占め、喫茶店擬きをやる事になった。詳しく賛成理由を聞いてみると、放課後の時間はダンジョンでの探索者活動に回したいとの事だ。文化祭で活動成果の発表を義務付けられている文化系部の出し物なら兎も角、お茶を濁すだけで良いクラスの出し物なら極力手間は省きたいという事なのだろう。ウチのクラス、帰宅部が多いからな。

 その為、接客衣装も制服の上にエプロン、飲み物もペットボトル飲料の注ぎ分け、お菓子も業務用のモノを切り分け出そうという事に決まった。特にコレと言った目玉も無い喫茶店モドキなので、客足もそれほど来ず気楽だと言っていた。うん、やる気と積極性は共にほぼゼロだな。 


「そうか。まぁイベント何てモノは、人それぞれに楽しみ方があるさ」

「そうだね。まぁクラスの方は手間が掛からないことだし、部活の方の出し物で頑張ってみるよ」

「高校で3度しか無い機会だ、頑張ってみると良い」

「うん」


 確かに父さんが言う様に、楽しみ方は人それぞれだ。文化祭出し物人気投票で一位を絶対にとるぞ!なんて気概は、俺も持ち合わせていない。のんびり程々に文化祭を楽しみつつ、部活の出し物が成功するように頑張るというのが妥当な所かな?

 まぁ部活の出し物の方は、美佳達が気合いを入れて制作しているので、今の調子で進めていれば大丈夫だとは思う……ん? あれ? そうなると、俺は何を文化祭で頑張れば良いんだ?






 朝食を終えた俺と美佳は先に家を出る父さんを見送った後、制服への着替えなど学校に登校する準備を進める為に各々の部屋に戻っていた。

 姿見で服装に乱れが無い事を確認し、俺は学生鞄を手に持ち部屋を出る前に部屋を一瞥し……机の引き出しの所で視線を止めた。


「コイツの扱いも良い加減、どうするかハッキリさせないといけないよな……」


 今回の新規ダンジョン発見報告で、ダンジョンが見付かった際にダンジョン協会がとる対応をある程度だが確認することが出来た。事務的な手続き関係の方は未確認だが、其方の方は今回の件がある程度落ち着いた頃の桐谷さんや湯田さんに確認をとろうと思う。一応俺達もダンジョン発見報告をした関係者なので、後学の為にどのような手続きがあるのか聞いても可笑しくは無い立場にはあるからな。

 もしこの引き出しダンジョンを引き渡す事になった時、出来るだけ穏便に済むように参考にしたい。発見報告をせずダンジョンを秘匿していた場合、法的な罰則規定とかあるのかどうかとかは是非とも知っておきたい事項だからな。それによっては、色々と対応は変わってくる。


「湯田さん達に確認して、今回の件が終わるまではもう暫くは様子見だな。今へんに動き回ると、新規ダンジョン発見者という立場が目立ちすぎる」 


 だが今、桐谷さん達に接触しダンジョンの関係法規を調べて回っていると、今回見付けたダンジョンを独占する為に動いているんじゃ無いかと邪推される可能性が出てくる。只でさえ俺達の成果は、学生探索者としては飛び抜けているからな。元々あのダンジョン周辺の土地を買うかどうか下見に行っている立場だ、金銭面で見れば今の地価なら周辺の土地を買い占める資金力があると判断されかねない。既にダンジョン公開後の利権関係が発生している可能性もあるので、俺達のような学生探索者が下手に手を出すと火傷をするかもしれない。警戒しすぎかも知れないが、現在のダンジョンにはそれ(色々牽制する)だけの価値があるからな。

 なので、ある程度(地権の引き渡し後)落ち着いてからじゃないと、俺達が桐谷さん達に接触するのは危ないだろうな。地権引き渡し後なら、俺達が利権争いに加わる事は無いと判断されると思いたいけど。


「……良し、とりあえず学校に行くか」


 軽く頭を振って雑念を振り払うと、俺は部屋を出た。

 そしてリビングへ降りると、先に準備を済ませたらしい美佳がテレビを見ていた。


「お待たせ、早いな美佳。ああ、どうする? 少し出る予定の時間より早いけど、行くか?」

「そうだね……少し早いけど、後数分だし行こうか」

「そうか。じゃぁ行くとするか。母さん、そう言う訳だから俺と美佳はもう行くね」

「あら、もう行くの? 早いわね、気を付けるのよ」


 椅子に座っていた美佳は立ち上がり、俺と一緒に玄関へと向かう。


「そうそう母さん、もしかしたら文化祭の準備で遅くなるかも知れないから」

「あっ、私も遅くなるかも」

「はいはい。気を付けて帰ってくるのよ」

「「行ってきます」」


 母さんに挨拶をした後、俺と美佳は玄関を出た。

 少し早めに出たので、通学路の顔ぶれというか人口密度は普段に比べ少ない。軽く辺りを見回してみたモノの、知り合いの姿は見受けられない。普段ならウチの部の誰かしらかと、通学路上で顔を合わせることが多いんだが……今日は誰とも出会わなそうだ。


「そう言えばお兄ちゃん。ちょっと聞きたいんだけど」

「ん、なんだ?」


 知り合いと誰とも会わない事に暇したのか、美佳は少々怪訝気な表情を浮かべながら俺に話し掛けてくる。


「昨日お兄ちゃん達ってさ、練習場候補地の下見に行ってたんだよね?」

「ああ、重蔵さんの知り合いの不動産屋さんの紹介でな。それがどうしたんだ? 前から何回か行ってるのは美佳も知ってるだろ?」

「うん。でも、そこで厄介なモノを見付けたって言ってたけど、一体何を見付けたの? お兄ちゃん達からすると野生動物……熊なんかが出たとしても厄介事って言わないよね? お父さん達の説明も、曖昧な受け答えしかしてなかったしさ」


 美佳の追求に俺は何と答えて良いか悩み、後頭部を掻きつつ思案を巡らせる。

 一応口止め(水増し査定)されている事柄なので、新規ダンジョンを発見したという事実を教える訳にもいかない。適当なことを言って誤魔化しても良いのだが、変に探り回られても困るからなぁ。なので、言える事だけ教えて牽制しておく事にした。


「誰にも言うなよ、深掘りも無しだ」

「……うん」

「……内見に行った俺達3人が揃って口止めされるような厄介事だ。何があったか何時かは言えるかも知れないが、今は何も言えない」

「……うげっ。ゴメンお兄ちゃん、私もう何も聞かないよ」


 美佳は俺の答えを聞き、聞かなきゃ良かったという表情を浮かべながら嫌そうに顔を歪める。具体的な内容は一切言っていないが俺達3人が一緒に出かけて口止めされるような厄介事だ、どの程度の厄介事だったのか美佳にも推察出来たようだ。

 その為美佳は引き攣りそうになる頬を必死に抑えつつ、俺に軽く謝りながらこれ以上は追求しないと約束した。 

 

「そうしてくれると助かる。まぁ話せるようになったら、何があったかは話すよ」

「……うん、楽しみにしとくよ。憶えてたらね」


 その後暫く美佳はバツが悪そうな表情を浮かべながら、何も言わずに俺と並んで通学路を歩いていた。とは言えだ、流石にこんな状態の美佳をこのまま学校に行かせるのは問題なので、場の雰囲気を変えようと俺は美佳に話を振る。


「そう言えば美佳、美佳達のクラスは文化祭でどんな出し物をするんだ?」

「えっ? あれ、言って無かったっけ?」

「ん? この間聞いた時は、まだ意見が纏まってないって言ってなかったか?」

「あれ? ああそう言えば、お兄ちゃんには直接言って無かった様な気が……」


 話を聞いてみると、柊さんには展示物を一緒に作成している時に話した記憶があるそうだ。となると、裕二も日野さん達から聞いているかも知れないな。つまりアレか? ウチの部で、俺だけが美佳達のクラスの出し物のことを知らされていなかったって事か? ……うわぁ、マジか。 

 先程とは違った意味でバツの悪そうな表情を浮かべる美佳を見た後、俺は右手で顔を押さえながら空を仰ぎ見た。コレからはもう少し、積極的にコミュニケーションをとるようにしよう。
















新章開始です、よろしくお願いします。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 引き出しダンジョンって、ある意味、 三種の神器を上回るお宝とも言えますね。 命の危険無く、物凄く簡単にレベルアップできて レアアイテムの取得効率も他のダンジョンの数百倍ですもんねぇ。…
[一言] 書き込み忘れてた。 気づいた時期も発生時点では関係するから。例えば日記とかで過去にその時点で気づいた。 と書いてあり、その気づいた日付が法律の施行前なら白って判断です。施工後なら黒になる…
[一言] ダンジョンの発見報告かぁ。 日本の場合はグレーです。というか犯罪という面で言えば白です。 どんな法律ができようとも、解釈としては発生時点での法律に基づく裁判をします。 なので所有権を有す…
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