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幕間六拾参話 新規ダンジョン管理課 その3

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 互いに自己紹介も終わったので、先ずは発見者本人からの聞き取り調査からだな。彼等が見付けたというダンジョンについては既に概要資料を貰っているが、発見者本人の感じた印象という物は資料では中々読み取り辛い物があるからさ。

 こう言ったダンジョン調査において、些細な見落とし聞き落としが原因で怪我を負うと言うのは往々にしてある事だ。何時もの事と高を括って適当にしていると、手痛いしっぺ返しを貰ってしまう。 


「なるほど。では、普段通うダンジョンとそれほど差異は無いと言う事で良いかね?」

「はい。と言っても、俺達が見て回ったのは入り口を入って少しの所までなので、確実なことは言えません。ただ、モンスターと遭遇した時の相手は単体でしたし、トラップらしきモノも見受けられなかったので、基本的な構造は他のダンジョンと同じモノだと思います」


 彼等を代表し広瀬君から証言を聞く限り、一階層の入り口付近に関しては他のダンジョンとの差異は殆ど無い様だ。彼等のような豊富な実績を誇る探索者がそうだと言うのなら、恐らくこのダンジョンも例に漏れず基本構造は同じと考えても良いのだろう。今日はダンジョン認定の為に必要なモンスターの存在確認という軽い探索だけの予定なので、罠やモンスターの分布調査などと言う本格的な物は後日、別途組織される調査隊が行うことだ。故に、油断せず基本的な行動を守り注意していれば、この調査において私達が怪我を負う事は避けられるだろう。 

 まぁそれはそれとしてもう1つ、この話を聞いてからずっと気になっていた事に関して話を振ってみるとしよう。


「それにしても、君達は随分と凄い実績を上げているね。報告者という事もあって軽く君達のこと調べさせて貰ったけど、民間探索者の少人数チームとしては間違いなくトップ層だったよ。無論企業系探索者チームに比べれば実績は少し落ちるけど、向こうは多人数の探索者が会社組織単位でやっている事だからね。その企業勢と張り合えるだけでも、驚きの実績だよ」

「は、はぁ。ええっと、ありがとうございます?」

「ははっ、随分と謙遜するんだね。君達のような若者がコレだけの実績を上げていれば、声高々に自慢出来るだけのモノだと思っていたんだが……」


 彼等の為人を確認を確認する為に、俺は少々褒め称えるような話し方で彼等の自尊心と功名心を軽く擽ってみた。コレまで多くの若者……学生系探索者を見てきたが、これだけの実績を上げているチームとなれば、意識無意識問わず多少なりとも傲慢とも言える浮ついた雰囲気を窺わせている。別に彼等が上げている実績を考えれば、調子に乗った態度を見せても可笑しいことでは無い。それ自体は、短期間で成功者と呼ばれる実績を上げた者達によく見られる傾向だからだ。

 問題は、その傲慢さに飲まれ自分を見失いかけていないかどうかである。自制が効かずに傲慢に飲まれてしまった者の末路は、大抵それまでの栄華に反比例するように悲惨なモノになってしまう事が多いからな。


「いえ、確かに俺達が探索者として上げている実績自体は誇って良いモノだとは思っていますけど、それを鼻に掛けて傲慢に振る舞っていたら、お世話になっている人達に顔向け出来ません。確かに俺達は宇和島さんが言ってくださる様な実績を上げてますが、それは俺達がダンジョンで不覚を取らないように指導し支えてくれる人達が居たからこそです。この程度と言っては語弊が生じるとは思いますが、この程度で驕り高ぶっていてはキツく叱られてしまいますよ」

「……そうか、良い人に指導して貰えてるんだね。嫌われる事をも覚悟し、厳しい事を言ってでも諫めてくれる人ってのは中々得られないよ」

「ええ。大分厳しい指導ですが、探索者をやっている俺達の事を思っての指導だと思っています。それに……調子に乗って驕り高ぶった奴らの末路とか色々見ますから」

「末路か……そう言えば確か君達は以前、ダンジョン内で犯罪を犯した連中を捕縛した経験があったと資料に書かれていたね」

「ええ……他にも学校でヤラカシた奴らもいましたから」


 広瀬君は苦々し気な表情を浮かべながら、その事を思い出し疲れたと言いたげに溜息を漏らしていた。確かに学生探索者によるヤラカシは、今ウチでも色々と問題になっており予防対策が進められている。精神的に未熟で自制が効きにくい若い内に、大きな力とお金を得て身を持ち崩したと言う学生探索者は多い。傲慢な立ち振る舞いで周囲から孤立すると言うケースはまだマシで、中には犯罪紛い……犯罪そのものに手を出し逮捕されるというケースも最近では耳にする機会が増えてきた。

 それを思えば民間トップクラスの探索者である彼等が現実を直視出来ており、自制し謙虚に振る舞っているというのはウチとしては大助かりである。


「そうだね。それが分かっている君達には、是非ともウチの専属になって欲しいものだが……」

「はぁ、ありがとうございます。でも、俺達まだ学生なのでその手の話は……」

「ああ、すまない。すこし気が逸ってしまってたね。だがまぁ、協会としては君達のような有望な若者が門を叩いてくれる事を何時でも待っている」


 社交辞令っぽく聞こえたのだろうが、コレは本音である。勇気と善良な倫理観を持つ若く有能な探索者。ダンジョンが有る社会と言うのが普通になっていく事を考えると、彼等のような人材は是非とも手元に置いておきたい。これから探索者が増えれば増えるほど問題は発生し、諸問題解決の為の人材は幾ら居てもいいのだからな。

 それはそうと俺が彼等に勧誘の言葉を掛けた時、一瞬不動産屋さんの湯田さんが鋭い目付きで俺の事を睨み付けて見えたが……アレは向こうさんも彼等の事を狙ってるって事かな? まぁ彼等のような有望な人材は、向こうさんも採れるモノなら採りたいと思ってるのが思わず漏れたって事か。






 それはそうと、出発前にもう一つの本題を済ませてしまおう。俺は菅原さんに目配せをしつつ、改まった口調で広瀬君に話し掛ける。

 ダンジョンの真偽確認と並んで任された、重要な仕事だ。


「ダンジョンで入手したというドロップアイテムは? 今、手元にあるかね?」

「えっ? ああ、それなら車の中に放り込んであります。持ってきましょうか?」

「ああ、頼むよ。それの回収も、私達の仕事の内でね」

「はぁ、じゃぁ少し待って下さい」


 要請に従い広瀬君が例のファーストドロップアイテムを車に取りに行ってくれたので、俺達はその間にアイテム鑑定の準備を始める。菅原さんが持ってきてくれた頑丈なアタッシュケースの中から、稀少マジックアイテムの1つである鑑定眼鏡を取り出し待機する。協会の方でも未だ十分な予備数が確保されていないモノで、宮下課長からも重々丁寧に扱うよう注意された代物だ。

 そして暫くして、広瀬君が持ってきてくれたドロップアイテムである革袋を鑑定……うえっ!?


「……君達はドロップアイテムの正体が気にならないのかい?」


 何とか声を絞り出しつつ怪訝気な表情を浮かべた俺は、神妙な表情を浮かべる広瀬君に問い掛けた。元々厄介なモノだったと言う認識があっての提出という行動だったのだろうが、鑑定結果を考えるにコレ(・・)は素直に渡すには惜しい品だ。多少目を付けられたとしても、何とかゴネて所有権を主張し確保したいと思うほどの。

 何せコレ(・・)は、彼等のように少人数パーティでダンジョンの深い階層まで潜り活動する探索者にとって垂涎の品と言える。コレがあるだけで、どれだけ負担が減りどれだけリターンを増やせることか……。


「……ええ、ドロップアイテムの鑑定・・・・は手順通りに終わりましたか? 変に欲を掻いて火傷する人なら探索者になってから沢山見てきた俺達としては、藪蛇は突きたくないです。それに言わないと言う事は、聞かない方が良いと言うことですよね?」


 だが彼、広瀬君の返事は色々と経験を積み身の程を知っている大人な対応だった。確かに彼が言うように、現時点でコレ(・・)を社会に放出する事は協会としては到底了承出来ない。表に出た時の影響が、ドコまで波紋を広げるか分かった物では無いからだ。少なくとも、原理を解明しデッドコピー品でも作れるようになるか、市場が要求する需要を満たせる在庫を確保出来てからで無いと、世間に公表出来るようなモノでは無い。

 仮に彼等がコレ(・・)の提出を拒否していたのなら、彼等には暫くの間は警護(・・)が派遣されていたかもしれない。モノがモノだけに、何もせずに放置は出来ないからな。彼等の素行調査に意識調査確認ぐらいはしていたはずだ。


「そうか……納得してくれるのなら、コチラとしてはありがたい」

「いえ」


 何事も無くドロップアイテムの引き渡し確認が終わると、広瀬君は微かにドコかホッとしたような表情を浮かべていた。色々な問題を引き起こしそうな物品を、無事に厄介払いが出来たと言った所かな?

 それにしても、探索者という非日常的な経験を持っているって事もあるんだろうけど、彼等って本当に高校生と言っても良いんだろうか? 今回のドロップアイテムの引き渡し交渉の手腕は勿論だけど、危機管理能力や山を買おうとする財力が高校生離れしすぎてないか? そう言えば色々指導して貰ってると言ってたけど、探索者としての技量だけで無くこの手の手腕も鍛えられてるって事かな?






 大きな目的の1つを終えた俺達は、広瀬君達の先導に従って発見したというダンジョンへ行く事になったのだが、思っていた道程と大分違う状況になって居た。山奥にある湿地帯の小島にダンジョンがあると聞いていたが、まさかココまで険しい山道を進む事になるとは……。


「大丈夫ですか、宇和島さん? もうすぐ着きますよ」

「あ、ああ、大丈夫だ! それにしても、随分奥まで入るんだな! もう少し手前の方にあると思ってたよ!」


 広瀬君達は平然とした様子で山道を駆け抜けているが、俺達には付いていくだけでも中々きついモノがある。人の手の入っていない未整備の不整地という事もあるが、根本的に広瀬君達の走るペースが速い。彼等的には軽いジョギングペースなのだろうが、俺達にとっては真面目に走る長距離走ペースだ。

 初めはまだ、お喋りする余裕があったんだけどな……もう少し鍛えるか。


「目的地の湿地帯は、ヘリが下りた広場から山を越えた所にありますからね。もっと短距離で移動出来そうなルートもあるんですが、道の途中に崖や谷があって……」

「ははっ、流石に短縮ルートとは言えそんな所は進めないな」

「……ええ、そうですね」


 若干苦しげな表情を浮かべる俺達に、気を紛らわせる為か広瀬君が冗談交じりの軽口で提案してくる。移動距離は短くしたいとは思うが、流石にレベルアップ補正が効いているとは言え崖や谷は流石に越えて通れない。寧ろルート変更より、ペースダウンしてくれた方がありがたいんだがな。

 そんな事を考えながら必死に足を動かし彼等の後ろを付いていくと、不意に広瀬君の背中に補助具を用いて背負われている湯田さんと目があう。その瞳には驚愕と矢張りと言った感情が色濃く出ており、湯田さんは暫く俺の事を同じ目で見詰めた後、ドコか疲れた様な表情を浮かべながら微笑を浮かべながら目礼をし顔を逸らした。……今の反応は一体何なんだ?


「あっ、もう着きますよ。この速度で足を踏み入れると泥水が飛び散って足下が濡れるので、少し手前で1度止まります」

「ああ、分かった」


 湯田さんが示した反応について考えようとしていると、何時の間にか俺達は目的地の眼前に到着したようだ。そして広瀬君は宣言した様に徐々に速度を落としていき、木々が減り視界が開け足下に軽く湿気を感じるようになり始めた所で足を止めた。

 そして足を止めた俺達の視界の先には、湿地帯の中央付近に浮かぶ様に小島がポッコリと鎮座していた。ああ、中々に雰囲気があるな。


「アソコの小島の中央付近に、今回発見したダンジョンの入り口があります」

「そこそこ大きめの島だね。アレなら島上の木々を伐採してしまえば、簡単な住居を含めた警備施設を設置する事も難しくは無さそうだ」

「島の周りが全て湿地帯ですからね。建物を建てようと思ったら、相当しっかり地盤工事をしないと地盤沈下しちゃいますよ。最低限の施設だけなら島上だけで済むと思いますけど、ココを本格的に開発しようと思ったら相当手間が掛かると思いますよ?」

「そこら辺は調査後の話だね。先ずは今回発見されたダンジョンが本物かどうかを確定させてから、別の部署が警備を含めた開発計画を立てる筈だよ」


 とは言え、ダンジョンの警備管理をするだけなら兎も角、ココを民間探索者に解放し本格利用するのは相当厳しそうだけどな。ダンジョン認定された後の展望を考えてるのか、湯田さんの面倒くさそうだがドコか期待しているような表情を浮かべているのを眺めながらそう思った。

  















無事に厄ドロップアイテムの受け渡しに成功です。


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 流石にレベルアップ補正が効いているとは言え崖や谷は流石に越えて通れない。 流石に・・・は1回のほうが・・・
[気になる点] 彼等の為人を確認を確認する為に、 確認がダブってます
[気になる点] 傲慢にも自分たちなら大丈夫と油断全開で新発見ダンジョンに潜っておきながら、「鼻にかけて傲慢に振る舞っていたら〜亅、とか語るやつwwww スライムダンジョン知らないならまだしもね [一言…
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