表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
423/636

第367話 今日は運が良い、かも? 

お気に入り31820超、PV69910000超、ジャンル別日刊39位、応援ありがとうございます。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしければ見てみてください。


小説版朝ダン、ダッシュエックス文庫様より書籍版電子版に掲載中です。よろしくお願いします。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしければお手に取ってみてください。






 受付でダンジョンの利用手続きを済ませた後、俺達は着替えを行う為に更衣室の前で別れた。今日は日帰り探索なので野営装備がない分、擬装用の荷物もなく軽装だ。レベルアップ恩恵のお陰で重くは無いのだが、擬装用荷物があると嵩張って邪魔なんだよな。

 そして手早く着替えを済ませた俺と裕二は、更衣室前に設置されている待合席に腰を下ろし柊さん達が出てくるのを待つ事にした。


「夏休みに比べたら、学生の数は少なめかな?」

「そうだな。やっぱり学校が始まったら、夏休みと同じような頻度での利用は無理だろうし、そうなるんじゃ無いか」


 暇潰しがてらに裕二と周辺観察をしていると、夏休みと比べダンジョン利用者の年齢分布が変わっている事に気がついた。無論、俺達のような学生探索者も居るのだが、夏休みのようにダンジョン利用者の半分位を学生探索者が占めている、と言った感じでは無い。ダンジョン利用者の多くが大人、社会人……企業系と思われる探索者で占められていた。

 まぁ夏休み前もこんな感じだったから、元に戻ったって感じかな?


「そっか……それにしても最近ますます増えたよね」

「増えた? 何がだ?」

「いや、企業系探索者の数がさ。ほら、結構装備に同じ企業ロゴを付けてる人が居るじゃ無い?」

「? ああ、本当だな。言われてみると、企業ロゴ付きが増えてるな……」


 周囲を歩く大人の探索者達の装備の一部には、企業所属を表す企業ロゴが敵味方識別用のダンジョン協会のマークと共に貼り付けられていた。大体、見渡せる範囲にいる大人の半数は企業ロゴつきと言った感じかな? 彼等は数人単位で同じロゴマークを付けており、昔……4月辺りから徐々に数を増やしてきている。もう少ししたら学生探索者を除き、個人勢と企業勢の比率が逆転するかもしれないな。 

 やっぱり個人事業的に行うより、企業所属という形で探索を行った方が1度の探索で得られる利益は減るが、安全に探索が出来るからだろうな。


「この光景を見ていると、この先のダンジョン探索は企業活動がメインになるのかな……って思えてくるな」

「まぁダンジョン探索は、個人でやるには中々厳しい所があるからな」


 裕二の言う様に、確かに個人でやるには厳しい部分がある。

 特にソレを実感するのは、ダンジョン泊を伴う長期間長行程の探索だ。潜る階層が増えれば増えるだけ、探索者に掛かる負担は増大していくからな。安全の確保、治療と休息、潤沢かつ確実な補給……俺達の場合は裏技のお陰でクリア出来ている問題だが、コレを一般的な探索者が個人で賄うのは至極困難な問題である。


「そうだね。企業所属なら十人単位のチームを複数用意出来るから、余裕を持ってローテーションが組めるのは企業の強みだよ。最近はドロップアイテムの買い取り価格も下がって……安定してきたから、コレから十分な利益を出そうとするなら、更に下の階層をメインの活動場にしないといけないだろうしね」

「俺達のような学生探索者なら小遣い稼ぎ程度の利益でも良いだろうけど、仕事ってなったら十分な利益を出さないと会社や生活が成り立たなくなって倒産や破産するからな」


 最近は探索者も増え、ドロップアイテムの供給量が増えたお陰で買い取り価格が下落している。今までなら数万円で買い取って貰えた量でも、1万円いくかいかないかと言う事もザラだ。その為、利益を維持しようと思えば、より稀少なドロップアイテムが出現する下の階層へと活動の場を広げるしか無いのだ。基本的に、より下の階層でドロップする物ほど高額で買い取られるからな。

 だがソレは、同時により長時間長行程の探索を行った上、より高レベルのモンスターと戦うという事であり、個人勢がすぐに対応出来るような物では無い。焦りから十分な準備をしないまま強行すれば、その代償は……まぁそう言う事になるだろうな。


「となると数年後には、学生時代に軽く探索者活動の基礎的な物を経験して、学校を卒業したらダンジョン企業に就職って感じになるのかな?」

「よほど学生時代に実力や実績が突出していない限り、探索者を続けていくとしたらそうなっていく流れになるのかもしれないな」

「つまり、学生時代に学外活動?を頑張ってアピールポイントを作り就活へか……探索者もダンジョンが出現する前と変わらない進路の一つになるって事か。となると、今みたいな特別感は無くなるな」

「まっ、何れはそうなるだろうな。そうなったら探索者業も、世間に受け入れられたって証明さ」


 とまぁ俺と裕二は周囲の人達を見渡しながら、今後の探索者業界がどんな風に進んでいくのか?について考えを巡らせ暇をつぶし合う。他にする事も無いしな。

 そして俺達が待ち始めて5分後、柊さん達も着替えを済ませ更衣室から出て来た。






 何時も通り長蛇の列が連なる、探索者達の入場ゲート待ちの列に並ぶ。夏休みに比べ学生探索者の数が少ないので、そんなに待たずに入場出来そうだ。

 と言っても、15分は待ちそうだけどな。


「今日は美佳達に合わせて10階層辺りまで潜る予定だけど、二人とも大丈夫か? ゴブリン討伐には慣れたか?」

「う、うん。慣れたと言えば慣れたけど……」

「私達二人だけだと、まだ少数のゴブリン集団としか戦ってないので、ゴブリンの大集団が出て来た時の戦闘対応が少し不安です」


 予定を確認すると共に美佳と沙織ちゃんに近状を聞いてみると、若干不安げな表情を浮かべながらゴブリンの大集団との戦闘には不安が残るといった返事が返ってきた。盆明けの段階で二人には10階層まで潜る許可は出していたが、ゴブリンと戦うのになれるまでは7階層辺りまでとしておけと伝えておいた。なので二人は7階層辺りでゴブリンの小集団と戦い、ゴブリンとの戦いに慣れる事に精を出していたらしい。最近はゴブリンと戦う事にも慣れてきたそうだが、基本的に5体前後の集団との戦闘がメインらしく、十数体で徒党を組んで出てくる様な大集団との戦闘はまだした事が無いそうだ。

 確かにゴブリンと戦う場合は、場合によって数十体の集団と戦う時があるからな。少数のゴブリン集団との戦いになれたからと言って安易に階層を下げたところ、ゴブリンの大集団と遭遇し援護の探索者パーティーが駆けつけてくれるまでに思わぬ損害を負ったという話は偶に聞く。


「そっか……じゃぁ今回の探索はゴブリンの大集団との戦闘を経験するってのを目標にするか」

「となると……随分前に引っ掛かった8階層のトラップ部屋を目指してみるか? 夏休み明けだし、運が良ければ空いてるだろうしさ」

「そうね。当てもなく無闇矢鱈にゴブリンの大集団を探して動き回るより、戦える可能性は高いかしら?」


 俺達3人は美佳達の近状?要望?を聞き、随分昔に引っ掛かったトラップ部屋の事を思い出していた。確かあれは、俺達がダンジョン探索を始めたばかりの頃だったっけ? 

 現在ではモンスター部屋トラップは新人探索者には危険な罠とされているが、中堅クラスになるとドロップアイテム目的で数を稼ぎたい時に利用されていると聞く。再使用までに時間が掛かるので順番待ちをしているパーティーもあると聞くが、運が良ければ待ち時間も短く確実に多数のモンスターと戦う事が出来るので、数時間ダンジョン内を徘徊するより効率が良い。待ち合い客が多ければ……地道に探すしか無いけど。

  

「モンスタートラップ部屋……それって、部屋の中に入ったら一杯モンスターが出てくるって言うアレだよね? 大丈夫? 私達、いきなりそんな所に行って大丈夫?」

「さ、流石にいきなり数十体のモンスターと戦うのは……」


 俺達の会話を聞き、美佳と沙織ちゃんは緊張というか引き攣った笑みを浮かべながら、腰が引けた雰囲気を出しつつ不安を口にする。まぁ大集団との戦闘に不安があると言ってるのに、目の前で数十体のモンスターが出てくる所に放り込む相談をしていたら、そう言う反応になるよな。

 まぁ勿論、いきなりそんな事はしないけど。


「ははっ、心配するな。流石にいきなりそんな事はしないって、先ずは二人がどれくらい出来るかを確認してからだって」

「そうだな、流石に俺達でもそんな事はしないって。大樹から二人の成長具合は聞いてるけど、先ずは自分達の目でも確認したいな」

「まずは肩慣らしからよ。トラップ部屋での戦闘は、とりあえずの目標って事ね」

「「……ほっ」」


 少し意地の悪い笑みを浮かべる俺達の言葉に、美佳と沙織ちゃんは安堵した表情を浮かべながら胸をなで下ろす。緊張を解そうと思っての軽口だったけど、少しカラカイすぎたかな?

 とまぁ、そんなやり取りをしている内に時間は経ち、俺達にゲート入場順が回ってきた。


「どうぞ」


 カードをゲートの読み取り機にかざすと扉は開き、脇に控える係員さんに軽く会釈をしながら俺達は足を進める。

 さぁて、ここからが本番だ。






 探索者達の移動の流れに乗り、俺達はダンジョンの中を進む。夏休み明けで学生探索者が少ないとは言え、相も変わらずこの列は途切れないな。

 俺達は流れに乗ったまま進み、1時間ほどかけ5階層の階段前広場に到着した。


「ふぅ。真っ直ぐ歩いて来るだけだってのに、何時もながら時間が掛かるな」

「ああ、やっぱり上層階はこの移動の遅さがネックだよな。下の階層なら人の数も少ないから走って移動出来るのに……」

「二人とも、イライラしないの。確かに下と比べたら遅いけど、人の数が違うんだし愚痴を漏らしても仕方ないわよ」


 たった5階層を移動するだけで1時間も掛かるという事に若干の苛立ちを憶える俺と裕二に、柊さんは溜息交じりに苦言を呈する。確かに柊さんの言う様に、滞在人数が違うのだから仕方ないとは思うが、もう少しどうにかして欲しいとは思う。

 まぁ対策としてはダンジョンへの入場を予約制にして、入場制限をかけるとかしか無いんだろうけど、予約が取れないから、何ヶ月も入場出来ない!とかって不満が出るだろうな。


「まっ、そうだね。……良し、切り替えよう! 美佳、沙織ちゃん!」

「な、何!?」

「は、はい!」


 軽く自分の頬を叩きつつ意識を切り替えながら、美佳と沙織ちゃんに声を掛ける。


「先ずはこの階層辺りから肩慣らしをしつつ、8階層のトラップ部屋を目指そうと思う。準備は大丈夫?」

「うん、大丈夫! ダンジョンに入ってるんだから、何時でも来いだよ!」

「私も大丈夫です!移動の流れに乗っていてもモンスターは襲ってくる事もありますから、何時でも戦える準備は万全ですよ!」


 俺の問いに美佳と沙織ちゃんは、自信に満ちた表情を浮かべながら返事を返してくる。どうやら二人とも、常在戦場の心構えは大丈夫らしい。俺達(高レベル探索者)と一緒に居るから……と言った感じで気が緩んでいたらどうしようと思っていたが、コレなら大丈夫そうだ。

 軽く頷き返しつつ、俺は視線を裕二と柊さんに向ける。 


「じゃぁ、行こうか?」

「ああ。二人とも、気を抜かずに頑張れよ」

「じゃぁココからは私達は援護に回るから、モンスターが出て来たら戦闘はお願いね?」

「「はい!」」


 美佳と沙織ちゃんは元気に返事を返し、俺達に背を向けダンジョンの奥へつづく通路に視線を向けた。ここから先は美佳達が先頭に立ち、俺達が後ろを付いていく形になる。どう言った進路で先に進むかは美佳達に任せ、背後や側面から俺達3人に襲い掛かってくるモンスター以外は相手にしないつもりだ。

 そして俺達は暫く移動の流れに乗って5階層を半ば辺り進んだ後、流れから逸れ本格的な探索活動を始めた。


「先ずは1度モンスターと戦って、今日の調子を確認するって所からだな」

「うん。と言っても、中々遭遇しないんだけどね」

「もう少し奥まで進んで、他のパーティーの人達が居なくならないと厳しいですね」


 夏休み明けとは言え、それなりに5階層で活動する探索者パーティーは居る。基本的にモンスターとの戦闘は先に遭遇したパーティーに優先権があるので、近くに複数のパーティーがいると中々戦闘にまで至らない事が多々ある。モンスターとの戦闘を行いたい場合は、ダンジョンの奥まで進み周囲に他のパーティーが居ない状況を作るのがセオリーだ。なので、移動の流れから逸れたばかりの俺達は暫くモンスターと遭遇出来ないだろう。

 そう思っていたんだけど……。


「……居たな」

「……居たね」

「……居ましたね」


 移動の流れを逸れ、およそ5分。200m程移動した段階で最初のモンスター、レッドボアと遭遇した。

 あれ? 上層階でモンスターとこんなに簡単に遭遇出来る物だったっけ? だけど、うん、まぁ今日は運が良かった……って事で良いかな? この運が続いて、8階層のトラップ部屋も空いてると良いんだけど……そこまでは難しいか?
















運が良い時は、何故か何をやっても上手く行くものですよね。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしくお願いします。


■■■ コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしくお願いします! ■■■


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 9月上旬なら3学期制の高校生はともかく、前後期の大学生はまだ夏休みでは? なんで急にいなくなってるんです? 高校生が減ったからむしろ大学生が増えてもおかしくないのに。
[一言] 主人公達が高校卒業した頃に探索者のための専門学校の大学・高校が出来たらそちらに行くことになりそうだけど、そこら辺についてはどう考えてんだろ?
[一言] ここは長期休みで全員で50階層キャンプができるようにならなくては!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ