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第365話 変化は意識していないと気付きづらい

お気に入り31650超、PV69280000超、応援ありがとうございます。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしければ見てみてください。


小説版朝ダン、ダッシュエックス文庫様より書籍版電子版に掲載中です。よろしくお願いします。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしければお手に取ってみてください。






 夏休みも終わり、色々衝撃的な始まりで迎えた2学期最初の週末。何時もの俺達3人と美佳達を加えた5人で、何時も利用するダンジョンへとやってきた。美佳達の夏休みでの成長がどれ程のモノか見てみたいと裕二が言い出したので、久しぶりの5人でのダンジョン探索である。

 美佳達が居るのでダンジョン泊探索は出来ないが、明日は不動産屋で再度条件詰めを行う予定なので丁度良いと言えば丁度良いタイミングだな。


「うわぁ、コッチに来るのは久しぶりだけど、駅前も随分開発が進んでる感じだね。コレもやっぱり、ダンジョンブームのお陰かな?」

「そうだね。前に来た時はまだまだ建設中のお店ばかりだったけど、もうこんなに開店しちゃってるんだね……」


 俺達が何時も利用するダンジョンの最寄り駅に到着すると、久しぶりに訪れた美佳と沙織ちゃんは軽く目を見開き驚きの声を上げていた。駅自体はまだまだ田舎駅の風情を残しているが、その周辺の発展具合は凄まじいからな。俺達も探索者制度が始まり、民間向けにダンジョン解放された初期の頃から通っているが、一年も経たずに町のこの変わり様には俺達も驚くばかりだ。

 何も無かった田舎駅のすぐ側にコンビニが建った事に驚いていた頃が、酷く懐かしく感じるほどの発展具合だ。やっぱり確りとした需要があれば、どんなに人里離れた田舎でも短時間で発展するものなんだな。だがまぁ逆に言うと、その需要が無くなれば一気に寂れる可能性もあるんだけど。


「2人とも、もうすぐバスも来るし、何時までも驚いてないで先に行くぞ」

「えっ? ああ、うん。ごめん、すぐ行く」

「あっ、すみません」


 俺が声を掛けると2人はすぐに正気を取り戻し、バス停に向かって歩いていた俺達の後を追ってくる。夏休みも終わり多少人数は減っているモノの、駅前のロータリーにはそれなりに人集りはあるからな。夏休みも終わり臨時増便もないので、ダンジョン行きのバスの数はそう多くない。なので乗車待ちの列には並んでおかないと、何時まで経ってもバスに乗れないって事になる。まぁタクシーって移動方法もあるけど、まぁ金が掛かるので他に方法が無いと言う場合以外は使いたくはない。

 念の為言っておくが、それなりに稼いでいるのでタクシー代を出せないって事は無いからな? ただ、高校生グループがタクシー移動ばかりしていると悪目立ちして、面倒な連中に絡まれる可能性があるからだ。何処にでも居るんだよ、何でアイツらばかり……って考えて絡んでくる面倒な輩ってのは。見た目だけで判断して、相手の力量を大まかにでも察せられないのは探索者として命取りだとは思うがな。


「どうにか全員乗れたな。後は待ってれば到着するけどって……どうした美佳? 窓の外ばかり眺めて、何か見えたのか?」

「えっ、ああうん。随分アパートが沢山建ってるなって。と言うかさお兄ちゃん、ここら辺殆ど新興住宅地みたいな感じなんだけど、こんな山奥に引っ越してくる人ってそんなにいるものなの?」

「あっ、本当だ。確かに同じような家が建ち並んでますね」


 美佳の言葉に促され窓の外を眺めてみると、確かにワンルームアパートらしきモノが、多数乱立している。ある意味見慣れた景色になっていたので、特に意識していなかったが……確かに多いな。

 あれ? 何時の間にココまで数が増えたんだ? 奥に見える大型の建物は物流倉庫っぽいけど……何処かの大手ダンジョン企業がテコ入れでもしたのかな?


「前々からココのダンジョンに通う探索者向けって形で、賃貸アパートは結構な数が作られてたけど……何時の間にかこんなに増えてたんだな」

「確かに探索者向けってのもあるだろうけど、ここまで町が発展したんなら探索者相手のお店の従業員向けの住居も確保しないといけないだろうから、それで一気にここまで増えたんじゃ無いか?」

「そうね。お店が増えるって事は、従業員を揃えなきゃいけないって事だし、ここら辺に住んでいた元々の住人を雇用するとしても到底まかない切れる数じゃないわ。そうなると、新規に流入してきた人を雇用するって事になるけど……」

「受け皿になる住居が足りないから、急いでつくったって事か……」


 需要増を見込んだ不動産業界が、儲け話を逃すかとばかりに一気に動いたんだろうな。


「最初に来た頃は、この辺りは原っぱや畑ばかりだったからな。都会に比べれば土地の確保も、それほど難しくは無かったんじゃないか?」

「確かにそうかもな」


 畑や田んぼは一つ一つが広いからな、広大な土地を複数の地権者と交渉しなくて済んだから一気に建てられたって所だろう。土地開発で一番の問題は、地権者との買取交渉だって聞くしな。後は先行者達の羽振りを見て、今なら確実に売れて儲かると考えた他の業者や投機目的の人達も参入した結果……って所なんだろうな。

 とは言え、増えすぎじゃ無いか、コレ? まだまだ建設途中の建物も一杯あるみたいだし……その内数合わせのアパートだけじゃ無く、高層マンションとかも建設されそうな勢いだな。


「なるほど。じゃぁやっぱりコレも、ダンジョンが現れた事による経済効果って事だね。今度の文化祭の良いネタに出来そう……」

「あっ、そうだ。美佳ちゃん、写真撮っておこうよ。これ、麻美ちゃん達の発表資料に使えるかもしれないよ?」


 そう言うと美佳と沙織ちゃんはスマホを取りだし、窓の外の光景を撮影し始めた。

 ダンジョン出現による地域経済への振興効果と住民の人口増加推移、って所か? 確かに町中に出現したダンジョン周辺だと、ここまで劇的な変化は余り見られないからな。空いた土地や開発しやすい土地があったからこそ、ここまで一気にダンジョン中心の開発が進められたのだろう。

 そう言う視点で見ると、この町は分かり易い形でダンジョンの影響を受けているモデルケースだろうな。今度の文化祭で発表するなら、この町の変化を中心にするのは良いかもしれない。


「……らしいけど、責任者としてはどう思うんだ裕二?」

「良いと思うぞ。見慣れていた光景だったから忘れてたけど、確かにココはダンジョン出現の影響を強く受けてる。漠然としたテーマで曖昧なまま資料を集めて回るより、この町を中心に据えて資料を集めた方が面白く話を纏められそうだ。何なら、俺が見てきたこの町の変化を感想として載せるのも有りだろうからな」

「体験談か……確かにここら辺に何も無い頃から通ってたからな俺達。駅前にあるコンビニやファミレス、今でこそ当たり前だけどあそこら辺も最初は原っぱだったしな。今こうして辺りと見比べてみると、信じられない変化だよ」

「そうだな。だからこそ面白く……興味を引ける展示物になるだろうさ。たったの一年でこれだけの変化だ、数年経てば……ってな?」


 確かに明確な事例があれば、ダンジョンの影響で将来的にはどんな社会的影響が出てくるのかって興味が沸いてくるよな。その上、今の所は良い方向に変化しているから明るい展望に期待出来る。長く続いた不況もダンジョン出現のお陰で脱しかけているしな。

 固い内容ばかりだと飽きられるけど、これなら来訪者の興味を引く事は十分に可能だろう。


「どうやら、面白そうな展示物になりそうだな」

「ああ。だけどまぁ、こうやって人に指摘されないと気付けなかったってのは情けなく思うけどな」

「仕方ないだろ。ある意味見慣れきってしまった光景なんだ、一定の期間をおいて見たヤツの方が変化に気付くってのは、あるあるだと思うぞ?」

「そう、かもな」


 俺の慰めの言葉を聞き、裕二は苦笑を浮かべながら窓の外へ視線を向ける。そこには長閑な田園風景が広がっていた田舎町から、急速に開発され発展していく街の姿が広がっていた。

 うん、何で今までこの変化に特に関心を持たなかったんだ俺達?






 俺達を乗せたバスは何事もなく、時間通りにダンジョン前ロータリーに到着した。前も思ったけど初期の頃のデコボコな山道を思うと、良くこの短期間で綺麗な舗装道路に敷き直したよな。

 まぁそれだけ市か町に、補助金かダンジョン特需の収入が入ったと言う事なのだろう。


「到着っと……如何する? このまま行くか、少し休憩を入れてから手続きに行くか?」

「俺は特に休憩はいらないかな……3人は?」


 裕二が話を振ると、3人は軽く顔を見合わせてから口を開く。


「休憩はいらないけど、手続きをする前に売店(フードショップ)の方に行ってみないかしら? さっきのバスの中での話を聞いて思ったんだけど、ココの売店なら何か珍しいダンジョン産の物を使った商品とか置いてるかもしれないじゃない?」

「お兄ちゃん。私も何か良いネタがあるかもしれないから、売店に寄ってみたい」

「私も少し見てみたいです。さっきみたいに、何か気が付くモノがあるかもしれませんし……」


 どうやらさっき気付いた町並みの変化の件で、柊さん達も文化祭に出展する展示品のネタを探したいらしい。確かに裕二達の方はさっきの件で、話の骨子が決まり一歩リードしたって感じだからな。

 まぁ売店の品でどうネタ探しするのか分からないが、そう言った目で改めて見てみれば何か気付く事もあるだろう。


「そっか、じゃぁ先ずは売店の方に寄ってから行こう。帰りだと、ダンジョン探索の疲労で見て回る気力が無いかもしれないしな」

「そうだな。そう時間が掛かるわけでも無いし、寄って行くか」

「「やった!」」

「ありがとう」


 先ず売店に寄ってからと話が決まり、希望が叶った3人は笑顔を浮かべ喜ぶ。裕二も自分の方で面白いネタを見付けた、見付けて貰ったと言う事もあり特に反対する事は無かった。

 とは言え、だ。一応俺もそっち組(柊さん達チーム)の筈なんだけど、そこはかとなく疎外感を感じるんだよな……。


「それじゃあ早速移動しようか、何時までもココにいてもアレだしさ?」


 一応、他人の邪魔にはならない場所に陣取ってはいるが、利用者が多くいるバスロータリーに何時までも居座り騒いでいては邪魔と言われかねないしな。さっさと移動してしまおう。

 俺達5人は荷物を持ち、ロータリーから受付へと向かう人の流れから逸れつつ売店へと向かった。


「へー。ここのダンジョン、こう言う施設があったんだ」

「もう少し小さい店舗かと思ってたんですけど、結構広くて一杯商品が並んでますね」


 初めて売店を見た美佳と沙織ちゃんは、予想外に豊富な品揃えに驚きの表情を浮かべていた。


「夏休みの少し前にオープンしてたみたいだぞ? 俺達も1度覗いてみたんだけど基本的に保存食……ダンジョン内で食べられる系の食品が中心に置かれてたな。レトルト食品やフリーズドライ製品とかさ」

「じゃぁお土産屋って言う感じじゃ無くて、本当に売店みたいな感じなんだ」

「ああ。まぁ一部ダンジョン食材を使ったプレミアム商品みたいなのもあるし、お土産を買う事も出来なくは無いかな?」


 ただしダンジョン食材を使った商品は、一つ数千円もする感じだけどな。まぁそれらの商品はお土産ってより、数日間泊まり掛けでダンジョンに潜る探索者のご褒美食的な扱いの品かもしれないけど。

 何せ疲労と緊張が満ちるダンジョン内で、美味しい食事は何にも勝る安らぎ時間だからな。ダンジョン泊を経験した探索者なら誰だって、せめて食事くらい美味しいものを食べたいって思うよ。


「ダンジョン食材を使った商品……ねぇ、お兄ちゃん。それってどこら辺にあるの? 正に今回私達が探しているモノだよ!」

「確かに、ダンジョン産の品を使った商品って意味合いだと、正にその通りだな。ええっと? 確か……あの辺りに置いてあった筈だぞ」

「アッチだね、沙織ちゃん見に行こう!」

「うん!」


 俺から大体の場所を聞くと、美佳と沙織ちゃんは急いでダンジョン食材を使った商品が置かれているコーナーへ脇目も振らずに向かっていった。

 美佳達を追って俺達も真っ直ぐ向かおうかと思ったが、辺りを見回していた柊さんが止める。


「ちょっと待って2人とも、皆一緒に同じ方向に向かったら、せっかく何か面白そうなネタを見付けようとしてるのに、見て回る意味がなくなっちゃうわ。ここは別々のコーナーを見て回りながら、最終的に美佳ちゃん達と合流する形にしましょう」

「ああ確かに、柊さんの言う通りだね。それじゃ店内を見て回りながら、後で合流って事で」

「了解。じゃぁ俺は向こうの方から見て回るよ」

「じゃぁ私はアッチね」


 と言うわけで3方向に分かれて、店内を見て回る事になった。さてさて、何か面白いモノが見付かると良いんだけど……何かあるかな?

 そして暫く歩き回りながら見て回ると、店の隅に食料品以外の品が置かれているコーナーを見付けた。パッと見、地方の物産館にある工芸品コーナみたいな感じだけど……。


「ん? コレは……」


 俺は工芸品?コーナーの一角に置かれていたソレに目が止まり、商品名と簡易説明が書かれたポップに視線を向けた。

 へー、こう言う利用法もあるんだな。
















ふと気が付くと街並みが変わっていた、そんな事ってありますよね。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしくお願いします。


■■■ コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしくお願いします! ■■■


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] ダンジョン産の食材を最初期から積極的に取り入れたお店が身近にあることを忘れていませんか?妹ちゃん'sは(笑)。
[一言] 工芸品…気になる! 珍しい素材が多いわけだから何でも売れそうだけど。
[一言] この小説だと、スタンビート(氾濫)は起きてないから、 ダンジョン門前町として珍しい作りになっていない? これから、ダンジョンからモンスターが集団で出てくるか 分かりませんが、大被害が出た後…
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