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第359話 衝撃的発表

お気に入り31260超、PV67240000超、ジャンル別日刊65位、応援ありがとうございます。


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小説版朝ダン、ダッシュエックス文庫様より書籍版電子版に掲載中です。よろしくお願いします。


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 興味津々と言った様子で美佳と日野さんの会話に耳を傾けていると、少々不安げと言うか怪訝気な表情を浮かべながら館林さんが俺に話し掛けてくる。


「九重先輩。やっぱり霧島君の退学って、気になるんですか?」

「えっ? ああ、うん。探索者業に専念したいって気持ちは分からなくも無いんだけど、流石に高校を中退してまでってのはね……。確かにまだ探索者業が始まって1年も経ってないから、今から探索者業に専念すれば新人でもトップ勢に追いつける可能性はあるよ? でもさ、それってかなり無茶な探索をしないと難しいと思うんだ」

「……やっぱり難しいですよね」

「うん。仮にだけど、その無茶の過程で大怪我を負ってしまった場合はどうするんだろう? 確かに上級回復薬なんかを使えば、大体の怪我(四肢欠損級)でも治せるよ。でもその為には、上級回復薬を手に入れる実力か資金が必要になってくる。その霧島君って子は、そのどちらかを持ってるんだろうか……ってね」

「「「……」」」


 俺が退学し専念するという霧島君に関する心配事を語ると、館林さんは考え込むような表情を浮かべ沈黙する。ついでに、俺と館林さんの話が聞こえていたらしい美佳と日野さんも、目を泳がせながらバツの悪げな表情を浮かべながら黙り込んでいた。

 うん、少々釘を刺しすぎたかな? でも、下手に共感されても困るから……。


「それにさ。例え怪我が治ったとしても、治るのは身体的傷だけだ。精神的な傷、トラウマを抱えてしまった場合は簡単には治しようが無い。軽度のトラウマでも抱えたら、それまでの様に無茶な探索は出来なくなるだろうから、トップ勢に追いつくってのは無理……とは言わないまでも困難になる。そうなると、態々高校を中退してまで探索者業に専念した意味も無くなってしまうよ」

「「「……」」」

「まぁ、そもそも、トラウマを抱えて探索者業を続けられるものなのか?って話にもなるんだけどさ」


 俺は視線を進行方向に向けたまま、美佳達の方を見ずに抑揚の無い口調で語る。

 その時の俺の脳裏には、かつてダンジョンで関わったとある4人組の探索者達の姿が浮かんでいた。ああなってしまったら、探索者業どころか日常生活だって困難になるからな。


「……」

「「「……」」」


 俺の纏う何とも言い難い心配気な雰囲気に飲まれたらしく、美佳達は顔色を暗くし互いの顔色を窺いあっていた。って、拙い拙い。新学期早々、朝から醸して良い雰囲気じゃ無いってコレ。ほら、その証拠に……俺達の話が聞こえていたらしい通学者まで意気消沈したように落ち込んじゃってるしさ。

 ……朝からこんな話をして、ごめんなさい。


「まっ、まぁ今更俺達がどうこう出来る話でも無いんだし、今はそう深く考えないで良いよ。それに、何事も悪い方悪い方に転がる物でも無いんだし、霧島君が大成し一角の探索者になる事を祈ってた方がまだ健全だ」

「そ、そうだよね。きっと霧島君も上手くやって、一角の探索者になれるよ。うん、そうに決まってる」

「う、うん。そ、そうだね……」

「……うん」


 無理矢理ではあるが、俺は何とか場の雰囲気を和ませようと、努めて明るい表情を浮かべながら、きっと霧島君なら上手くやるさと口にする。まぁ俺、その霧島君て子の姿形もどんな性格をしてるかも知らないんだけどさ。

 とは言え、皆の協力もあってどうにか企みは辛うじて成功。重苦しい雰囲気が漂っていた場に、多少ではあったが軽い雰囲気が流れた様な気がする。

 

「さてと。それよりも、ほら。ユックリ歩きながら話していたせいで、少々時間をくっちゃったらしい。少し急ぐとしようか?」

「えっ? あっ、本当だ!」

「確かにコレは、少し急いだ方が良いかもしれませんね」

「そうだね。じゃぁ、行こう」


 場の雰囲気が変わったのを見計らい、俺は再び雰囲気が暗くならないようにと時計を見せながら少し急ぎ登校しようと伝える。まぁ実際には、それほど時間が押している訳では無いが、下手に会話を続けていると再び地雷を踏みそうだしな。ココは話題を完全に打ち切る為にも、素早く登校してしまった方が良いだろう。

 そんな訳で、俺達は周りの雰囲気がまだ暗く落ち込んでいるのを申し訳なく思いつつ、小走り気味でその場を後にした。






 美佳達と昇降口で別れた後、俺は一人教室に向かって歩いていく。無論その道すがら、周囲を確認していたのだが、幸い冬休み明けの悪夢の様な光景を再び見る事は無かった。

 いやぁ、良かったよ。またお化け屋敷みたいな光景で、新学期を始める事に成るかもとドキドキしてたからな。


「おはよう」

「「おはよう」」


 挨拶をしながら教室に入ると、ドアの近くにいた普通の姿のクラスメイトが返事を返してくれた。普通のやり取りだが、普通の挨拶が帰ってくる事に思わず安堵する。何せ冬休み明けの時は、包帯塗れのミイラが挨拶を返してきたからな……。

 そしてチラリと教室の中を観察しながら、俺は自分の席に腰を下ろした。


「ふぅ……登校しただけなのに疲れたな」


 まぁ主な原因は、会話の最中に不穏な言葉のチョイスをミスした自分のせいなんだけどな。朝からあんな重苦しい雰囲気になるなら、“そうなんだ、チャレンジャーなんだね”等ともう少し軽く返しとけば良かったよ……。

 そして軽く溜息を漏らしつつ荷物の整理をしていると、先に登校してきていたらしい重盛が話し掛けてきた。


「よう九重、久しぶり。どうした? 登校早々、そんな溜息なんて漏らしてさ?」 

「ん? ああ、重盛か……。いや、登校の時にした会話が原因でね」

「登校中の会話? なんだ、別れ話でもしたのか?」

「ははっ、残念ながら、そんな色気がある話じゃ無いよ」


 俺の話に興味を持った重盛が、どんな話だったんだと興味津々と言った表情で聞いてきたので、少々気が引けたが登校中に美佳達と行った話を小声で教える。と言っても途中途中端折りながら、雰囲気が暗くなりすぎないように気を付けてだけどな。

 そして話し終えると、重盛は渋い表情を浮かべながら腕組みをしながら考え込む。


「うーん、成るほどな。確かに朝からそんな話をしてたら、溜息の一つも漏れるか」

「だろ? と言っても、話が重くなりすぎたのは、俺が言葉をチョイスしたせいだと思うんだけどな」

「いや、それは無いだろ。確かに重い言葉だったかもしれないけど、その話題に触れるなら考えておかないといけない事だろうからな」

「まぁ、そうなんだろうけどさ……朝からするには少々重い話題だったなって・・・」


 ホント、朝からするような話題じゃ無かった。せめて、学校が終わってから部室ですれば良かったよ。それなら多分噂話も事前に耳にしていて、美佳達向けに話す内容も考え纏められていたと思う。

 さっきは又聞きしてる所にいきなりアレだったから驚いて、言葉をオブラートに包む事無くストレートに口にしちゃったけどさ。


「とは言え、その退学した一年って、やっていけるモノなのか?」

「さぁ? 今日初めて聞いた名前だし、どんな為人をしてるのか全く分からないからな。そんなヤツがやっていけるのか?って聞かれても、さぁ?としか言いようが無い」

「まぁ、そうだよな。じゃぁ、一般的な探索者の目線で見ると如何なんだ?」


 重盛は俺の言い分に納得しつつ、一般的な高校生探索者としてはどうかと聞いてくる。一般的な目線、ね……。俺が一般的な探索者視点を語るって、うん。それは流石に、ね?

 とは言え、何か返事をしなければいけないわけで……。

 

「……仲間次第、かな?」

「仲間次第?」

「ああ。知ってるとは思うけど、一人ではダンジョン探索は出来ない。一緒にダンジョンへ潜る、信頼の置ける仲間が必要だ。その仲間とキチンと連携が取れていれば……いけるかもしれない、と思う」


 今のダンジョン探索は規定上、仲間が居なければパーティーが組めずにダンジョンへは潜れない。無論、個人事業主などのソロ探索者達が業務提携という形でパーティーを臨時で組む事はあるが、基本的に固定パーティーでダンジョン探索は行われている。特に学生探索者は、その傾向が強いからな。

 そして例の霧島君は学生探索者ではあったが退学してしまった以上、仲間も一緒に退学してパーティーを継続し組んでいなければ仲間の集め直しからとなる。また、ソロ探索者として臨時パーティーを組んでダンジョン探索するというなら、それこそ慎重に仲間集めをしなければならない。ソロ探索者同士で臨時パーティーを組むという事は、探索目的が一致していなければ連携もままならなくなるからだ。

 例えば一定の成果が上がれば良しとする探索者と、可能な限り潜行したい探索者が組んでしまったら、目的意識の不一致でダンジョン内でパーティー瓦解の危機が発生する。最悪は……ね?


「と、思うか……」

「まぁ、詳細を知らないからね。でも、上手くいく可能性は……うん」

「……」


 霧島君が仲間を説得していて、パーティーが継続している事に期待しておこう。まぁそうなるとこの夏、1年生から複数の退学者が出たって事に成るんだけどさ。……大丈夫か、ウチの学校? 少々不安になる予想が新たに出て来たが、まぁ別の退学者情報は今の所聞いていないので大丈夫だと思っておこう。

 そして話題を変え暫く重盛と話していると、誰かが俺達に声を掛けてきた。まぁ誰というか、つい先程登校してきた裕二なんだけどな。

 

「よっ大樹、重盛。おはよう」

「おはよう、裕二」

「おはよう」


 軽く手を上げ応えながら、俺と重盛は裕二に挨拶を返す。俺は昨日も会っているのでどうと言う事は無いが、重盛は久しぶりに会うので若干懐かしげな様子で裕二と話し合う。

 まぁ、さっきの話の雰囲気が少し残っているので、気分転換って意味合いもあるんだろうけど。

 

「それにしても、何を2人で話し合ってたんだ? 何か重苦しい雰囲気が周りに漏れてるぞ?」

「ああ、それは……」


 若干バツが悪いと言った表情を浮かべながら、裕二に先程の話を教える。

 そして話を聞き終えた裕二は軽く溜息を漏らした後、若干呆れたような表情を浮かべながら口を開く。


「朝っぱらから何を話してるんだよ、お前達は。確かに大樹の心配は尤もだろうけど、態々こんな所で話す話でも無いじゃないか? それにその霧島君?が既に退学してるってんなら、俺達に出来るのは彼の進む道が良いモノである事を祈るぐらいだ。深く考えすぎなんだよ……」

「まぁ、そうなんだけどさ……」

「大樹は考えすぎなんだよ。言い過ぎたから気を付けよう、って位で終わりにしておけって」

「ハハッ、そうだね……」


 裕二がバッサリ切り捨てた事で、少々シコリが残っていた話に決着がついた。考えすぎ……まぁその通りだな。俺は馬鹿を見るような眼差しを向けてくる裕二から視線を逸らし、頭を掻きながら誤魔化しておいた。

 そして裕二も参加し、3人で夏休み期間中の出来事について話し合う。と言っても、話のメインは重盛の話だけど。何せ俺と裕二は、夏休み期間の殆どダンジョンに潜っていたからな。ダンジョン探索尽くめの夏休みか……間違った選択では無かったとは思うが、重盛の夏休み話を聞いてると失敗したかなと思ってしまう。海……いや、プールぐらい行っておくべきだったかもしれない。折角、誘える綺麗所がいたのにさ。






 教室前方の扉が開き、平坂先生が入ってきた。久しぶりに姿を見るけど、先生も日に焼けてるな。

 そして平坂先生は教壇に立ち、席を離れ動き回っている俺達に大声で呼び掛ける。


「お前等、席に着け! HRを始めるぞ!」


 平坂先生の号令を合図に、席を離れていた生徒達は自分の席へと戻っていく。

 そして全員が着席した事を確認し、平坂先生は話を始める。


「先ずは皆、おはよう。こうして全員欠ける事も無く、元気な姿が見れた事を嬉しく思う」


 ありきたりな長期休み明けの挨拶の筈なのだが、感慨深げな表情を浮かべ俺達を眺める平坂先生の姿に些か違和感を感じる。あれ? たかが長期休み明けに俺達の姿を見ただけで、こんな表情を浮かべるような先生だったか?

 そんな俺の疑問に答えが出る前に、平坂先生は深刻気な表情を浮かべながら重苦しげに口を開く。


「だが、だからこそ残念なお知らせをしなければならない」

「残念なお知らせ……ですか?」

「ああ」


 平坂先生は1拍間を空けた後、その残念なお知らせというヤツを口にする。


「既に噂等と言う形で話を聞いている者もいるだろう、探索者業に専念すると言う理由で1年生から自主退学者が出てしまった」

「「「「……?」」」」


 それを何で2年生のHRで言うんだ?と、全員の頭の上に疑問符が浮かぶ。

 だが、平坂先生の次の言葉で全員絶叫を上げる。


「しかも、10人という集団でだ」

「「「「……はぁ!?」」」」


 残念極まりないという表情を浮かべながら口にした平坂先生の言葉に、思わず俺達クラス一同一斉に大声を上げてしまった。

 えっ、マジか!? 霧島君1人の事じゃ無く、10人も一斉に退学したの!?  
















流れに乗って連鎖的にではなく、一度に集団退学してました。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしくお願いします。


■■■ コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしくお願いします! ■■■


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が高校生でメインキャラに女子が居て夏休みと云うシチュエーションを得たのに水着回が無いなんて・・・ ところで自主退学した十人は親の庇護から抜けて独り立ちしたのかな?
[一言] 自分も同じ状況なら退学しますね お金ではなく"肉"のためですがw 可能な限りどんな雑魚でもサーチ&デストロイを四六時中続け強さに貪欲に! 先ずはオーク肉!目指せ霜降りミノ肉!!きっと美味しい…
[気になる点] そろそろ後藤組黒幕の作戦が見られるのかな
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