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第358話 新学期が始まる

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 カーテンの隙間から柔らかい日差しが差し込み、スマホの目覚ましアラームは部屋中に鳴り響く。俺はタオルケットの隙間から手を伸ばし、眠気の残る鬱陶し気な眼差しを向けながらアラームを停止させる。

 自分でセットしておいてなんだが、気持ち良く寝ている所に耳元で無粋な電子アラームが鳴り響くと、寝惚けていたと言い訳をして叩き壊したくなるな。……まぁ、流石にしないけどさ。

 

「……朝か」


 俺はアラームを停止させたスマホを枕元に放り投げた後、ベッドの上で上体を起こし背を伸ばす。数時間寝てただけなのに、体のあちらこちらが凝り固まってるな。

 そして寝惚け眼のままベッドを降り、薄っすらと日差しが差し込んでくる窓にかかったカーテンを開いた。カーテンを開くと夏の日差しにふさわしい眩い日差しが一気に窓から部屋全体に差し込み、寝惚け眼だった俺に『さっさと起きろ!』と言う様に促し照らしだす。


「夏休みも……昨日で終わったんだよな」


 俺は部屋の壁に掛けられたカレンダーを眺めながら、夏の思い出を思い浮かべながら名残惜し気な声色で呟いた。色々とあった夏休みではあったが、終わってみれば貴重な体験が出来た良い夏休みだったと言える。まぁ、充実した夏休みだったと言って良いだろうな。

 そして俺は軽くベッドを片付けた後、朝食をとる為リビングへと向かった。

                                                                                                     

「おはよう」

「おはよう、大樹」

「おはよう大樹、早かったわね」


 洗面所で顔を洗った後、リビングに顔を出すと新聞を見ながらコーヒーを飲んでいる父さんと、朝食の準備を進めている母さんが俺を出迎えてくれた。どうやら美佳は、まだ起きてきていないようだ。夏休み気分で寝坊しないといいんだけどな。

 そんな事を考えつつ、俺は母さんに声を掛け目覚まし用にコーヒーを貰う。


 「まぁ、目覚ましアラームをセットしてたからね。とは言え、夏休み明けって事もあって体が少し怠いけど」

「休み明けだからと言って、学校を休みたいとか言わないでよ?」

「ははっ、勿論分かってるよ」


 俺はコーヒーを受け取りながら、苦笑を浮かべつつ母さんの冗談交じりの軽口に返事をかえす。少々それも良いかなと思ったけど、流石にそんな事口にしたら怒られるよな。

 そして俺はコーヒーを持ったままテーブルに座り、1口飲んでからテレビから流れるニュースをチェックする。相も変わらず、ほっこりするニュースから殺人事件まで色々なモノが報道されているが、一つ気になるニュースが流れてきた。


「へー、9月末から海底資源の試掘開始か……随分素早い動きだね」

「9月末か……やっぱり、ドコからか圧力を受けたのかな?」

「圧力というと、外国からの外圧?」

「じゃないか? いきなり需要が無くなる事は無いだろうが、海底資源採掘が上手くいけば需要が減るのは確実だろうからな。実績を積む前に潰しておきたい……と考え、手を出してきそうな所に対する牽制かもしれないな。1度実績を上げて大々的に発表してしまえば、無かった事には出来ないだろう?」


 父さんの言う様に、1度実績が上がってしまえば簡単には潰しづらくなるからな。需要自体は無くならなくとも、利益が減ると考え行動に出そうな所があったのだろう。それに対しての牽制として、実績を携えた上で発表したのなら、確かに現状で早々に手を出してくる事はないだろうな。今の状況で手を出したら、誰が何の目的で手を出したかが丸わかりで、流石に外聞が悪すぎる。

 まぁその分、裏から色々と手を回す的な搦め手が増えそうだけど。


「うん。でも逆に言うと、それだけ海底資源採掘の将来性に世界中が注目してるって事だよね? ソコは日本が世界に誇っても良い事の筈だよ」

「ああ、その通りだな」

  

 埋蔵資源が乏しく多くを輸入に頼ってる日本としては、資源を内製化出来るこの機会は是が非でも掴みたいチャンスだろうからな。今回は少々の外圧では、譲らないつもりなのだろう。

 それに、海底資源採掘関係で実証……試掘で成果を上げれば世界から一歩リードする立場だ。そうなれば日本は、海底資源の採掘に関する多くの特許を確保できる筈だ。海底資源採掘が世界規模で広まれば、莫大な特許料や採掘施設の建設受注で儲けられるようになる。それらも、今回事を強硬に進めた一因だろうな。

 

「おはよう……」


 父さんとニュースを見ながら話しをしているとリビングの扉が開き、寝癖を爆発させ寝ぼけ眼を擦っている美佳が姿を見せる。 

 チラリと時計を確認して見ると、中々良い時間だった。


「おはよう。随分眠そうだな?」

「……うん。昨日は遅くまで、沙織ちゃん達としゃべってたから……」

「達って……もしかして、館林さん達もか?」

「うん。夏休み最後の夜だし、バーベキューとかの話で盛り上がっちゃって……」


 若干呆れたような表情を浮かべている俺の質問に、視線を逸らしつつ美佳は照れ臭そうな表情を浮かべながら答える。

 いや、まぁ、それは良いんだけど……あっちあっち。


「おはよう美佳。すぐ御飯にするから、まずは顔を洗って寝癖を解いてきなさい。夏休みも終わって、今日から学校だってのにだらしないわよ。何時までも夏休み気分を引きずってるんじゃないの!」

「あっ、うん!」


 眉を顰める母さんに一喝され、美佳は寝ぼけ眼を少し見開きながら、慌ててリビングを後にし洗面所へと走っていった。はぁ、美佳も顔を洗ってから来れば良いのに……でもまぁ、何となく学校が始まったなって感じがするやり取りだよな。

 そして数分後、寝癖を直しばっちり目が覚めたと言った表情を浮かべた美佳が戻ってきた。






 朝食を食べ終えた俺と美佳は学校へ行く準備をする為、一旦自分の部屋へと戻る。昨日の段階で所持品チェックは出来ているので、後は制服に着替えるだけだ。俺はスマホで軽くメールチェックをした後、素早く制服へと着替えを済ませ通学バッグを持ち部屋を後にする。今日は始業式だけなので、特別持って行く物も無いしな。

 そして登校の準備を済ませリビングへ降りると、丁度父さんがソファーから立ち上がり出勤しようとしている所だった。何時もは俺達と同じタイミングで家を出るので、今日は少し早いな。


「あれ、もう行くの?」

「ああ、今日はちょっと早めに出ようと思ってな。美佳は間に合わなかったみたいだけど、気を付けて学校に行くように言っておいてくれ」

「了解、行ってらっしゃい父さん」

「ああ、大樹も気を付けてな」


 父さんは俺に軽く手を振った後、リビングを後にし出勤していった。

 そして父さんを見送った後、俺はソファーに腰を下ろしテレビを見ながら美佳が降りてくるのを待つことにする。すると朝食の洗い物を終えた母さんがソファーに座り、お茶を飲みながら話し掛けてきた。


「そう言えば大樹、昨日お友達と出かけてたけど何をしに行ってたの? 行く時はワクワクしてたのに、帰ってきた時は暗い顔で意気消沈してたみたいだし……」

「ああ、昨日ね……。昨日はちょっと買い物(山林購入)をしようと思って出かけたんだけど、色々手違いと思い違いがあって、買おうと思ってたモノ(専用練習場)が手に入らなくってさ……それで意気消沈してたんだよ。結局昨日は購入は先延ばしにして、暫くは探し直しに力を入れてみようって事で話が纏まってさ」

「そう。それは残念だったわね。でも、変に妥協すると後で後悔する事も多いし、良いんじゃないの?」

「うん、まぁ……焦って買う事も無いしね。じっくり腰を据えて探してみるよ」


 何となく俺と母さんの話が食い違ってる事には気付いていたが、ある程度話が形になるまではこのままにして置いた方が良いだろう。何せ、数百万円単位の買い物だからな。具体的な話が固まっていない段階で教えても、反対されるのがオチだ。話すとしても、具体的な計画書や資料を揃えてからの方が話しやすいし説得しやすい。

 その場の勢い任せで始まった計画だけど、やる以上はちゃんと下準備を行い計画を立ててやらないと失敗するからな。それを俺達は昨日、重蔵さんプロデュースの社会勉強(実地)で学んだ。 


「お待たせ、お兄ちゃん! って、あれ? お父さんは?」


 母さんと話をしていると、何時の間にかそれなりに時間が過ぎており、着替えを済ませた美佳がリビングに降りてきた。どうやら父さんが居ない事が不思議の様だが、時計を見ろ時計を。

 あと5分ほどで、俺達も家を出て登校する時間だぞ。


「父さんなら、先に家を出たぞ。気を付けて学校に行けってさ」

「ええっ、そうなんだ。もう行っちゃったんだ……」


 父さんが既に家を出たと聞き、美佳は少し残念そうな表情を浮かべた。


「見送りたかったんなら、もう少し早く降りて来いよ」

「コレでも急いだんだよ? ただ、忘れ物が無いかもう一度チェックしてたら、何時の間にか時間が経ってたんだって」

「……そうなんだ」


 気恥ずかしげな表情を浮かべる美佳の理由説明?言い訳?を話半分に聞きつつ、俺はバッグを持ちソファーから腰を上げる。

 もう少し時間はあるけど、まぁ後5分も無いし良いだろ。


「じゃぁ母さん、少し早いけどもう学校に行くよ」

「そう? じゃぁ二人とも、車には気を付けるのよ」

「うん、了解」

「はーい」


 俺と美佳は母さんに一声かけてから、連れ立って玄関へと向かう。

 それにしても、お決まりの文句とは言え、車に気を付けてか……。探索者になった今となっては、車に(・・)気を付けてなのか、車が(・・)気を付けてなのか……どっちが正しいんだろうな?





 美佳と一緒に通学路を歩いていると、久しぶりに制服姿の学生が沢山登校する姿を目にする。夏休み期間中は、部活に向かう生徒が着ているぐらいで殆ど見掛けなかったからな。何となく、懐かしく感じる。

 とは言え、何の変哲も無い制服姿で登校する多くの学生達の群れに俺はホッと安堵の息をつく。


「? どうしたのお兄ちゃん? 急に溜息なんてついて?」

「いや。何の変哲も無い登校風景って素晴らしいモノなんだな、と思ってさ」

「? 何の事を言ってるの?」


 遠い目をしながら口にした俺の抽象的な言葉に、美佳は首を傾げながら怪訝気な眼差しを向けてきた。まぁ、コレだけじゃ何を言ってるのか理解出来ないか……しかし、そんな可笑しな人を見るような目は辞めてくれ。中々、くるモノがあるからさ。

 なので、俺は変な誤解が深まる前に言葉の意味を説明する事にした。


「いや、な? 少し前……冬休みが明けて三学期が始まった時にな? 結構な人数の生徒が体の所々に、包帯や絆創膏やら治療跡が目立つ姿で登校してきたんだよ。それを思うと、今の所治療の跡が目立つヤツはそんなに居ないなって思ってさ。それで少し感慨深くて感動?、してたんだよ」


 俺の説明を聞き、美佳は思いつかなかったと言いたげな表情を浮かべながら辺りを軽く見回し、少し間を置いてから納得と行った表情を浮かべながら頷いていた。


「……そう言われてみると、確かに治療跡が目立つ人って居ないね」

「そうだろ? 俺は最悪、ミイラ集団の中を歩いて登校しないといけないかもしれないな、って思ってたからさ。この当たり前の光景が感慨深くてな……」

「確かに夏休み期間で学生探索者が増えてる事を思うと、この光景は凄いね……」

「新人探索者が上手く立ち回れる環境が整ったのか、回復アイテムが十分に探索者にも回る様になったのかは分からないけど、新人が育つ良い方向に行ってる……のかもしれないな」

 

 と言った感想を述べながら周囲を観察しつつ学校に向かって歩いていると、後ろの方から声が掛けられる。うん、聞き覚えのある声だ。


「おはようございます。九重先輩、美佳ちゃん」

「おはようございます!」

「おはよう、館林さん日野さん」

「おはよう、麻美ちゃん涼音ちゃん!」


 声を掛けてきたのは、館林さんと日野さんの後輩2人組だった。どうやら俺達を見付け声を掛ける為に少し走ったらしく、二人は少し息を切らせている。


「大丈夫? 少し息が切れてるけど?」

「はい、大丈夫です。珍しく先輩達の姿が見えたので、挨拶をしようと思って」

「そうなんだ、ありがとうね」


 二人の息が整うのを少し待ってから、俺達は世間話をしながら歩き出す。と言っても、話の中心は女の子3人なので俺が入る隙間は無いんだけどな。ただ適当に相槌を打ちながら、聞き役に徹するだけだ。

 だが暫く話を聞いてると、少々聞き流せない話題が聞こえてきた。


「そう言えば美佳ちゃん聞いた、5組の霧島君が学校辞めたんだって」

「? 5組の霧島君? うーん、ごめん。ちょっと誰だか分からない。どんな人?」

「ああ美佳ちゃんは、知らないのか。えっとね、5組で最初に探索者になった人だよ。回ってきた噂だと、夏休み中にかなり成果が上がったらしくって、学校辞めて探索者に専念する事にしたんだって」

「ええっ!? それホント!」

「うん。まぁ、噂によるとだけどね……」


 美佳は日野さんの話を聞き、信じられないといった表情を浮かべている。俺も表情にこそ出してないが同感だ。所詮は噂なので真偽は定かでは無いが、随分リスクの高い賭に出たモノだな、その霧島君って子は。探索者には怪我がつきものなんだから、高校ぐらいは出て置いた方が潰しは効くと思うんだけど……まぁ本人が選んだ道だしな。人がとやかく言う問題でも無いだろう。

 しかし問題は、この噂が真実だとする場合だ。一人行動に出る者が居ると、後に続けとばかりに連鎖的に行動する者は一定数居るからな。学生探索者による、退学連鎖とか起きないと良いけど……心配になってくる。
















やっぱり出てしまいましたね、無謀?な挑戦者。大きな怪我なく無事に成功者にになれれば良いのですが……。

今話から新章を開始です。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしくお願いします。


■■■ コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されました。よろしくお願いします! ■■■


挿絵(By みてみん)

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