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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第15章 夏休みは最後まで大忙し
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幕間 五拾壱話 噂の正体は その2

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 前班と合流を果たした俺達は、早速引き継ぎ作業を始めた。引き継ぎ作業自体は決まった形式なのだが、時折重要な情報が混じるので気が抜けない。その証拠に蘇我さんや前班のリーダー平井(ひらい)も、眉間に若干のしわを寄せながら渋い表情を浮かべながら情報交換をしている。

 実際、今回も重要な情報が混じっていたし……。


「そうか。少しとは言えど、モンスターのベースキャンプ襲撃頻度が上がってるのは気を付けないといけない情報だな。……ヤッパリココにも、盆休みの影響が出てるって事か?」

「ああ。最近、ココの階層にベースキャンプを張っていた企業系パーティーの一つが、一階層狩り場を下に移動した影響で襲撃率が若干上がっていたんだ。その上、盆休みって事で学生パーティーが一時撤退……帰省してるんだろうな。そのせいで現在、この階層に居る探索者の数が減ってモンスターの間引きが間に合っていないみたいなんだよ」

「つまり、今この階層には常にモンスターが定数一杯存在してるって事か……それだと確かに襲撃率も上がるな」


 モンスターとの遭遇率が上がるのは収集ノルマ的に考えると助かるのだが、ベースキャンプへの襲撃率上昇はいただけない。ベースキャンプへの襲撃頻度が上がるという事は、それだけ気が抜けない時間が長くなると言う事だ。つまり、休息が取れず精神的疲労が抜けないという事。探索者はレベルアップ効果のお陰で身体的な面で言えば一般人を大きく超えているが、精神面は普通の一般人とそう変わらないからな……。気が抜けない時間が長引けば気が滅入って、精神的に不安定になってしまうかもしれない。

 嫌だぞ、突然奇声を上げながら武器を振り回し始める同僚が出る職場環境だなんて……。

 

「ああ。その上、滞在している探索者の人数も減ってるから、襲撃対処に回せる人員を普段以上に確保しておかないと拙いぞ。普段なら他のベースキャンプを設置しているチームやパーティーからも迎撃要員が出てくるが、今はパーティーの数自体が減ってるから人手がな……」

「確かにな……その点は気を付ける。はぁ、今回はローテを変えないといけないな」


 平井さんの助言に、蘇我さんは頭を掻きながら頭を悩ませている。普段は3交代……出撃・待機・休息とローテを組んでいるのだが、今回はベースキャンプ防衛に多めに人数を割かないといけないので、若干このローテを変える必要が出てきたからだ。

 とは言え、人数もそう居ないので出撃・待機・準待機・休息といった感じかな? 休息時間が削られる事になるのだろうが、襲撃を許して怪我を負うよりはマシだろうな。


「まぁ、最近の状況はそんな感じだ。俺達は予定通り2時間後、休憩を終えてからこの場を後にするから、頑張ってくれ」

「ああ、頑張るよ」


 平井さんは苦笑を浮かべつつ、コレからの事に頭を悩ませる蘇我さんの肩に手を乗せながら励ましの言葉を掛けていた。蘇我さんも小さな溜息を漏らしながら、疲れた様な表情を浮かべながら短く返事を返す。

 蘇我さん、今から本格的に勤務(探索)を始めるんですから、今からそんな調子だと持ちませんよ? 気持ちは重々理解出来ますけど……はぁ、ヤッパリなんか理由付けて帰省しとけば良かったかもしれないな。






 予定通り、引き継ぎ作業が終わった2時間後、平井さん率いる前班は探索の成果であるドロップアイテムを抱え地上目指して出発していった。前班の班員達はようやく帰れると言った解放感を感じる笑みを浮かべながら出発していくので、蘇我さんは別れの言葉として「平井、帰るまでが遠足だぞ! 今は普段以上にモンスターと遭遇するから、最後まで気を付けろよ」と声を掛ける。すると、そんな蘇我さんの声に平井さんは軽い調子で「おう」と短く答えていたが、自分達が浮かれて気が抜けかけていた事に気付いたらしく、若干バツの悪そうな表情も浮かべていた。

 そして前班が去った事で、本格的に俺達のお仕事(探索)は始まる。

 

「さて、前班も去った事だし始めるぞ。それと前班からの引き継ぎ報告であった事を踏まえ、申し訳ないが若干だがローテーションを変更する」

「モンスターの襲撃に備えベースキャンプの待機人数を増やす、って事ですよね?」

「そうだ。本来のローテでは1度に4人に休息をとって貰うんだが、その半数を準待機扱いとして襲撃時のバックアップ要員として控えて貰う。準待機中に襲撃があった場合、すぐに待機組の支援に出てくれ」

「まぁ、仕方ないですよね……了解です」


 皆渋々と言った感じではあるが、状況は理解しているので溜息を一つ漏らしながら、文句を口にする事なくローテーション変更を了承していた。自分達の安全に直接関わることだからな、文句を言っても仕方が無い。

 と言うわけで、早速お仕事開始である。


「では予定通り、1班は探索に出発! 2班はベースキャンプにて警戒待機、3班は準待機の順番を決めた後休息に入れ!」

「「「「了解!」」」」


 蘇我さんの号令に従い、俺達は動き出す。俺と田森は1班所属なので、最初のローテは探索からだ。装備品や荷物を確認し、問題が無い事を確認してから同じ一班の香川(かがわ)船橋(ふなばし)と共に探索へと出発する。因みに、1班の班長は俺だ。

 さぁて、ノルマ達成目指して頑張りますか。後、臨時収入も……。そして探索に出発して5分後、早速俺達はモンスターを発見した。ミノタウロスが2体いる。


「って、早速お出ましか」

「情報通り、何時もより人が少ないから遭遇率が上がってるみたいっすね」

「そうですねって、来ますよ」

「俺と田森がいく、香川と船橋は援護と警戒頼む」

「「「了解!」」」


 ミノタウロス達も俺達の存在に気付いたらしく、唸り声を上げながら2体共に突っ込んできた。俺と田森は迎撃する為、互いに邪魔にならない様に通路の左右に分かれながら、ミノタウロスに向かって突撃を開始する。俺には香川が援護につき、田森には船橋が援護につく。 

 そして数秒後、俺と田森の動きにつられ左右に分かれたミノタウロスと交戦を開始した。


「先ずは一撃……オラッ!」

「ブモッ!」


 俺は手に持っていた武器、大型の剣鉈をミノタウロスの脇腹目掛けて振り抜き、そこそこ深い傷を負わせる。ミノタウロスは苦痛の呻きを漏らしながら俺に切られた脇腹を押さえ、突撃をやめ動きを止めた。

 そして俺は素早くバックステップでミノタウロスから距離を離し、援護についている香川に援護攻撃開始の合図を出す。


「香川!」

「了解! ファイヤーボール!」

「ブモオォォッ!」


 俺が距離を開けると同時に、香川が間髪入れずに攻撃魔法をミノタウロスに撃ち込んだ。香川の攻撃はミノタウロスの顔に直撃し、ミノタウロスは絶叫を上げながら両手で焼け焦げた顔を押さえ悶絶する。

 そして今なら反撃は来ないと判断した俺はチャンスとばかりに全力で間合いを詰め、剣鉈を無防備にさらけ出されているミノタウロスの胸部に深々と突き刺す。


「フッ!」

「ブモッ!?」


 俺が突き刺した剣鉈は狙い違わずミノタウロスの胸部を貫き、碌な反撃もさせずにミノタウロスを倒せた。ミノタウロスは大の字で仰向けに倒れ、胸部から止め処なく血を吹き出している。多分、即死だろう。

 そして最後っ屁を警戒し気を抜かず残心を続けた十数秒後、ミノタウロスは粒子化を始めたので俺は一息つき緊張を解く。


「ふぅっ……」

「無事に倒せましたね」

「ああ、それより、田森達の援護に回るぞ」

「はい。って、あ」


 自分達の分を倒し終えたので援護に回ろうと振り向くと、ソコには俺達と同じようにミノタウロスを倒し終えた田森と船橋の姿があった。

 どうやら、向こうもスムーズに倒せたらしい。


「お疲れ、どうやらそっちも怪我もなく倒せた様だな」

「ええ、これ位なら問題なく。とは言え、油断は禁物ですけどね」

「ああ、その通りだ。相手を舐めてかかると、痛い目を見る事になるからな」


 笑みを浮かべながら軽口を叩き合いつつ、互いに怪我なく無事である事を確認し安堵の息をつく。まだ序盤も序盤だからな、人数で優ってるのに怪我を負う様な苦戦していたらこの先大変だからな。

 そして暫し待っているとミノタウロスの粒子化が終り、跡地に2つのドロップアイテムが出現した。


「何がドロップしたんだ?」

「ええっと、コアクリスタルが2つですね」

「……今回はハズレっすね」

「コアクリスタルか……まぁハズレですね」


 1班最初の戦果は、まぁハズレと言って良い結果だった。コアクリスタルは……昔はそれなりの値段で引き取って貰えていたが、今はせいぜい子供のお駄賃程度だからな。噂では、コアクリスタル発電に必要なコアクリスタルは自衛隊や警察などの公的機関のチームが専門で回収しているので、民間から態々高額で買い取る必要がなくなったらしい。まぁ自前で回収出来る手駒があるのなら、そうなるよな。

 一応コアクリスタルを回収しつつ、装備の手入れを済ませてから俺達は探索を再開した。それにしても探索開始してすぐにモンスターと遭遇か、どうやら今回は無駄に歩き回って探す必要ないかもしれないな。






 俺はベースキャンプの側にある上の階層に続く階段を眺めながら、田森と雑談をしつつ感慨にふけっていた。俺達がダンジョン探索を開始してから6日目、お盆休み期間も終わり徐々にではあるが人が戻ってきている様に感じる。新しい企業系探索者パーティーが1組、この階層にベースキャンプを設営し始めているしな。ベースキャンプこそ設営していないが、大学生らしき学生探索者パーティーの姿もチラホラ見られる。正直ホッとした。宿泊仲間が複数いるという事は、それだけ合同でベースキャンプの防衛に回る人数が増えると言う事だからな。これでユックリ休憩出来る様になる。

 ああ因みに、俺達も予定では明日交代要員が到着したら地上に向かって移動を開始する予定だ。

 

「明日が終われば、漸くお天道様が拝めるな」

「ははっ、そうですね。にしても、今回は本当に疲れましたよ……」

「ああ。まさかこの階層に居る人が少ないからと言って、あんなにモンスターと遭遇する事になるとはな……遭遇率高すぎるだろ」

「ええ。でもお陰で探索4日目で収集ノルマを達成、後はお小遣い稼ぎに専念出来たじゃないですか」

「それだけが今回の探索での唯一の救いだな……」


 遭遇するモンスターの数が多かったお陰で、多数のレアドロップ品を確保出来たので臨時ボーナスは期待出来る。出来るが……正直、勘弁して欲しかった。


「でも、ベースキャンプへの襲撃が短時間で連続して起きるのは勘弁してほしかったですよ」

「まさか、2時間おきに襲撃してくるとはな……」

「定期的に間引きして、階層内のモンスターの数を減らしていないと、こうなるって事ですね」

 

 俺と田森は大きな溜息をつきながら、この6日間で起きた出来事を思い出す。今回の探索では思いもしなかった事態、大体2時間おきにモンスターによってベースキャンプが襲撃されるという珍事が発生したのだ。お陰で休憩ローテである筈なのに、念の為のバックアップ要員である筈の準待機組が度々出撃するハメになった。休息時間なのに、全然気が休まらない時間だったよ。

 えと、だいたい2時間おきだから……50回以上はベースキャンプを襲撃されてた計算になるな。


「襲撃を撃退しただけで、収集ノルマの物品が三分の一は溜まったからな……ありがたいはありがたいけど、ありがた迷惑ってヤツだ」

「ははっ、ほぼほぼ強引な押し売りでしたからね」

「押し売り……随分屈強な販売員達だったな」


 俺の脳裏に一瞬、名刺を持って突撃してくるスーツ姿の販売員(人型モンスター)達の姿が浮かんだ。ああ、うん、俺……疲れてるな。

 頭を軽く振って馬鹿な妄想を振り飛ばし、改めて田森に顔を向け話を続けようとすると、視界の端に映っていた階段から誰かが降りてくる気配を感じた。


「ん? 誰か降りてくるな」

「何処かの企業パーティーか、一時撤収したって言う大学生のパーティーですかね?」

「かもしれないが……そんなに大人数の団体さんって感じじゃないな」


 足音と気配からするに、多くても5人ほどかな? 随分少ないパーティー編成だな……ベースキャンプをこの階層に作るための先行偵察員って感じか?

 俺と田森は誰が階段から降りてくるのかと、興味と若干の警戒が混じった視線を向ける。


「ふぅ、26階層に到着っと」

「人混みがなくて空いてると、早いな」

「普段の半分近くは、移動時間を節約出来てるわ」


 子供? しかも3人だけって……おいおい、どう言う事だ? 

 階段の奥から現れた高校生らしき3人組の姿に、俺と田森は思わず思考が停止した。
















階段を下りてきた3人組……どこの3人組なんでしょうか?


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて掲載中です。よろしくお願いします。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第2巻が7月7日に発売されます。よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] 階段を下りてきた3人組……どこの3人組なんでしょうか? 最後に(笑)を付け加えるべきですね。(笑)。
[一言] ふふふふ、これは次回彼らにビックリさせられる期待ですね!反応が楽しみです。 今回は読みごたえもあって更に面白い!
[一言] 今後のことも考えるとまずは企業に所属してある程度レベルが上がったら退社して独立探索者になるってのが鉄板になりそうですね 所属してる間は安定して中階層でレベリングできますし
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