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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第15章 夏休みは最後まで大忙し
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第346話 夏休み最後のバーベキューへ

お気に入り30190超、PV60720000超、応援ありがとうございます。


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 朝食を食べ終え出かける準備を済ませた俺は、母さんと茶飲み話をしながらリビングのソファーに座り美佳が降りてくるのを待っていた。因みに父さんは、既に仕事に行っているので家にはいない。

 そしてコーヒーを飲みながら朝のTVのニュースを眺めていると、とあるニュースが流れてきた。


「“コアクリスタル発電1号機、定格運転を開始。送電開始は9月半ばを予定”か……」

「これって確か、あなた達が潜ってるダンジョンから回収したものを使った発電よね?」

「うん、そうだよ。モンスターを倒すと手に入るコアクリスタルを使った発電で、原子力より高出力で安全な発電方法って事らしい。ダンジョンが出現してから、エネルギー資源の国産化を目指して開発してたみたいだね」

「へぇ、そうなの。じゃぁ、電気代が安くなるかもしれないのかしら?」

「発電コストも他の発電方法と比べたら安いみたいだから、コアクリスタル発電が普及すれば今よりは安くなるんじゃない?」


 石油、原子力と言ったこれまでの主要エネルギー資源に代わるかもしれない、新エネルギー資源の本格稼働を告げるニュースのはずなんだけど、母さんには日々の電気代が安くなるかどうかが気になる所らしい。まぁ一般市民目線で見ると、石油だ原子力だコアクリスタルだと世間で騒がれたとしても基本的には、だからどうした?って位にしか思わないからな。今見ているTVを動かしている電気が、火力発電したモノか風力発電したモノか太陽光発電したモノか気にしている様な消費者はまずいない、電気は電気と言う認識でしかないのだ。気にするとしたら……国とか電気事業者辺りか? 

 そして母さんとそんな話をしながら過ごしていると、少々乱暴にリビングの扉が開けられ美佳が姿を見せる。


「お待たせ、お兄ちゃん!」

「こら美佳! もう少し静かに扉は開けなさい、壊れるでしょ!」

「ひっ!? ご、ごめんなさい……」


 元気よく入ってきたは良いが、鋭い眼光を向ける母さんに叱られ美佳は縮こまり意気消沈した。夏休みの探索でレベルが上がったから、力加減が上手くいってないのか?

 いや……皆でやるバーベキューが楽しみでテンションが上がってるだけか。


「まぁまぁ、母さん。……それで美佳、準備は出来たのか?」

「えっ、ああ、うん。大丈夫だよ」

「そっか、じゃぁ待ち合わせ時間には少し早いけど出よう。もしかしたら、早めに何人か来てるかもしれないしね」

「う、うん! そうだね、待たせちゃ悪いもんね!」


 若干の不機嫌さを残す母さんから逃れたいのか、美佳は俺が出した助け舟に一も二も無く飛びついてきた。俺はそんな美佳の様子に苦笑を浮かべながら、カップに少し残ったコーヒーを飲み干しソファーから立ち上がる。


「じゃぁ母さん、そう言う訳だから俺達そろそろ出かけるよ」

「はぁ~、もう大樹は美佳に甘いわね。気を付けて行ってくるのよ」

「うん、了解。あっそうそう、もしかしたら帰りは遅くなるかもしれないから、その時は改めて連絡するね」

「夏休みとは言え、あまり遅くまで遊びほうけないようにしなさいよ?」

「気を付けるよ、美佳」

 

 ソファーの脇に置いて置いた荷物を肩に担ぎながら、俺は溜息と苦笑を漏らす母さんに出発の挨拶をした。


「はーい。じゃぁお母さん、行ってくるね」

「あんまり羽目を外しすぎないように気を付けるのよ?」

「うん!」


 と言う訳で、母さんに挨拶をすませた俺達は荷物を持ってリビングを出る。まぁ荷物と言っても殆どの品はレンタルしたり現地調達する予定なので、俺は財布等の小物を入れたショルダーバッグと、お楽しみ食材を入れた小さめの保冷バッグしか持ってないけどな。

 美佳は……何を入れてるんだか、中身が詰まった大きめのトートバッグを肩に掛けている。


「なぁ美佳? そんなパンパンにして、一体何を入れてるんだ?」

「ん? 向こうに行って遊ぶ時に使うヤツとか……まぁ色々と」

「……そうか」


 パッと見は重そうだが、美佳も探索者だからな。まぁコレくらいの荷物なら、そう負担にはならないか。俺は美佳の荷物の件は忘れる事にして、靴を履き玄関を出る。


「じゃぁ、行ってきます」

「行ってくるね!」

「周りに迷惑を掛けない様にして、楽しんできなさい」


 少し心配げな表情を浮かべる母さんに見送られながら、俺と美佳は家を出た。

 





 集合時間より早めに駅に到着した俺と美佳は、辺りを見渡し他に誰か来ていないか確認する。だが残念ながら、俺達が一番乗りだったらしい。まぁ、集合予定時間より20分近く早く来ちゃったからな。

 俺は右手で目元を覆い燦燦と降り注ぐ真夏の日差しを遮りながら、駅前広場に設置されている時計を眺めながら若干後悔した。


「少し早く着きすぎたみたいだな……」

「そうだね……でも皆、集合時間よりは早めに来るだろうし、このまま待ってよ」

「まぁ、そうだな。とりあえず……あそこの日陰に移動しよう。このまま何の備えも無しに日差しを浴び続けてたら、熱中症になりかねないしな」

「うん」


 一応今日は俺も美佳も野外でバーベキューを行うので、日除けの帽子は装備している。だが流石に、炎天下を帽子一つだけでしのげるとは思っていない。あくまでも、熱中症予防の一つでしかないからな。

 と言う訳で、俺と美佳は駅の構内に一時的に移動する。


「ふぅ、日陰に移動するだけで気分的に違うな」

「そうだね、肌が焼けるジリジリ感が無いだけでもだいぶ楽かな」


 俺も美佳も耐性が上がっているので暑さ的にはそれほどないが、流石に陽炎がチラホラ見える場所に長時間立っているというのは気分が良い物ではない。見てるだけで暑苦しくなってくるからな、アレ。

 そして美佳と雑談をしながら日陰で待っていると、5分ほどして新たに1人集合場所に到着した。アレは……。


「麻美ちゃん! こっち! こっち!」

「!? あっ、美佳ちゃん!」


 美佳に声を掛けられた舘林さんは少し驚いた表情を浮かべた後、俺と美佳の姿を確認し安堵の表情を浮かべながら近づいてきた。どうやら一番最初じゃなかった事に安心したらしい。

 

「おはよう、舘林さん」

「麻美ちゃんおはよう!」

「おはようございます九重先輩、美佳ちゃんもおはよう」


 舘林さんは軽く会釈をしながら、俺と美佳に挨拶を返してくる。


「早かったね舘林さん、集合時間までまだ時間あるよ?」

「遅くなったら悪いなと思って、少し早めに家を出たんですよ。そういう九重先輩達こそ、一番乗りじゃないですか?」

「ははっ、まぁ、ね」

「ははっ、そ、そうだね」


 俺は舘林さんの質問に苦笑を浮かべながら返答しつつ、早く到着した原因の美佳を見る。すると美佳は軽く頬を引きつらせつつ、俺の視線を避ける様に顔を逸らしていた。


「??」 


 そんな俺と美佳のやり取りを舘林さんは不思議そうな表情を浮かべつつ、気を取り直し話を切り出す。


「そう言えば九重先輩、今回のバーベキューのお誘いありがとうございます」

「いやいや、こっちこそ急な誘いになっちゃってごめんね。何か皆で思い出になる催しをしよう!、って感じで話が盛り上がっちゃってさ……本当に大丈夫だった?」

「はい。特にコレと言った予定も無かったので、何をして過ごそうか考えていたところに先輩達からのお誘いがあったので渡りに船って奴でしたよ」

「そっか、それならいいんだけど……。いやね? 昨日の今日みたいな急ぎのスケジュールだったから、無理やり誘っちゃったかもって少し不安だったんだよ」

「そんな事ないですから、気にしないでください」

「そう言ってもらえると助かるよ……」


 俺が若干不安気な表情を浮かべながら確認を取ると、舘林さんは笑顔で誘ってもらえてよかったと返事をくれたので、俺はホッと安堵の息を吐いた。誘った後に思ったんだけど、先輩から後輩へ直接断りづらいお誘いをするのは拙かったよな、と。……せめて、美佳経由でお誘いを掛けておけば良かったよ。

 と、そんな遣り取りをしていると、それほど間を開けずに3人到着した。 


「おはよう九重君、美佳ちゃん、麻美ちゃん」

「「おはようございます」」

「おはよう、二人とも」

「「おはようございます」」


 来る途中で合流したのか、柊さんと日野さんと沙織ちゃんが一緒に俺達の前に姿を現した。集合時間までは、まだ10分はあるのに皆早いよな。俺は軽く手を上げながら、柊さんと日野さんと沙織ちゃんに挨拶を返す。

 そして女性陣はコレで全員揃ったので、後は裕二だけだな。


「それにしても、大荷物だね柊さん」

「例のアレよ。今日のバーベキューに持って行くって言ったら、お父さんとお母さんが他にも色々用意してくれたの」

「重くない? 何なら持つけど……」

「大丈夫よ。大きくて少し邪魔だけど、この程度なら重くないわ。それに九重君だってクーラーボックスを持ってるんだし、2つは難しいわよ。心配しないで」


 大きめのクーラーバッグを肩に掛けた柊さんに、俺は荷物を代わりに持とうかと提案したが苦笑を浮かべながら丁寧に断られた。まぁ確かに、クーラーボックスの2つ持ちは持ちづらいし絵面的にアレか。俺はクーラーボックスを2つ抱えた自分の姿を思い浮かべ苦笑を滲ませながら、柊さんに向かって軽く頷いた。

 それにしても、こうも女性陣ばかり先に集まると少々肩身を狭く感じてくるな。何と言うか、煌びやかな花束の中に紛れ込む添え物感ってヤツ?

 

「へー、そうなんだ」

「そうそう」

「良いなぁ……」

「あっ、実は私も……」

「あっ、狡い」


 挨拶が済むと俺を話の輪の外に置いて、女性陣の5人の話は盛り上がっていた。そんな女性陣に対して、俺は出来るだけ気配を消し黙って見守るしかないんだが……裕二、早く来ないかな。

 あっ因みに、今回はバーベキューをするという事もあり、皆それなりにラフな格好をしている。美佳はTシャツにハーフパンツ、沙織ちゃんはTシャツにデニムパンツ、柊さんはTシャツにボトムス、館林さんはTシャツにガウチョパンツ、日野さんはTシャツにオーバーオールと言った服装だ。ついでに俺は、Tシャツとクロップドパンツと言った感じだな。

 

「……」


 嫉妬の眼差しで俺を睨んでくる男共の視線を感じつつ、集合時間はまだかと時計をチラチラと眺め確認する。だが残念ながら、柊さん達が合流してから未だ3分と経過していない。

 そんなこんなで居心地の悪い時間を過ごすことになった俺が解放されたのは、集合時間の5分前に裕二が合流してからのことだった。遅いって、裕二! 


「悪い悪い、遅くなったな。どうやら俺が最後か……」

「いや、別に遅れてないぞ。集合時間までにはもう少し時間あるしな」

「そうか、それなら良いんだけど……。と言うか大樹、何か少しやつれてる感があるぞ? 体調が悪いんなら、無理はするなよ?」

「ははっ、お気遣いどうも……」


 誰のせいでこうなったと思ってるんだ!と、俺は表に出さないように少し表情を引き攣らせつつ、内心で裕二に見当違いな八つ当たりをおこなった。いや、本当に裕二が悪い訳じゃないのは分かってるんだけど、この数分間の精神的ストレスを何処かに吐き出したかったので、つい……。

 そんなやり取りを俺と裕二が行っていると、裕二の到着に気付いた柊さん達が声を掛けてくる。


「おはよう広瀬君」

「「「「おはようございます」」」」

「おはよう、皆。悪いね、こんな暑い中で待たせちゃって」

「日陰に居たし、それほど待ったわけじゃないから気にしないで」

「はは、そう言って貰えると助かるよ」


 裕二は少しホッとしたような安堵の表情を浮かべつつ、皆に挨拶をすませる。


「それじゃぁ皆揃った事だし、バス停の方に移動しようか?」

「そうね。あっでも、バスの到着時刻までは未だ時間あるわよ?」

「バスは電車ほど時間に正確に運行してないから、少し早めに待つぐらいで丁度良いよ。それに郊外の公園に向かうバスだから、一本乗り遅れると次のバスが来るまで20分位待つ事になるしね」

「まぁ確かに乗り遅れを考えたら、少しぐらい待つのは必要ね」


 と言う訳で、俺達は荷物を持ってバスロータリーの方へと移動する事にした。

 その移動中、裕二と一緒に集団の最後尾を歩くことになった俺は、裕二に気になっている事を尋ねる。


「そう言えば裕二、その頑丈そうなクーラーボックスには何が入ってるんだ?」

「ん、コレか? お裾分けだよお裾分け、家に届いてたヤツを1つ貰ってきたんだよ」

「お裾分け……」

「まぁ、向こうに着いてからのお楽しみだよ。夏と言ったらコレがないとな……」

「??」


 ドコか楽しげな笑みを浮かべつつ、お楽しみは後だと告げる裕二に俺は首を傾げた。

 夏の定番か……スイカかな?
















夏休み最後の思い出作り、バーベキューに出発です。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!にて明日9-2話が更新されます。よろしければ見てみてください。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第一巻が12月7日に発売されました。よろしくお願いします。

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 追い付いたぁ〰️ [気になる点] 30層の油の草原地帯、放火して29層へ戻り、燃え尽きた頃に30層へ戻ればトカゲを楽に狩れないかな?草に潜むから厄介だけど草が燃え尽きた状態なら楽勝だと思う…
[一言] 幕間 二拾八話 とあるスカウトマン達          ↓ 幕間 弐拾八話 とあるスカウトマン達 昨日から読み始めて現在此処まで読み進めた。
[一言] コアクリスタル発電機で小型の発電機ができれば夢が広がるけどなぁ~ 女の子たちのラフなスタイルがまぶしすぎる~~~ショートパンツはいないのか… 発泡麦ジュースかな~毒耐性とか状態異常耐性とかあ…
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